GREEがDeNAの営業利益を逆転!というエントリーをお届けしました。しかし、もう一つ大きな逆転劇がありました。
それは、ARPU(Average Revenue Per User)。いわゆる、「一人当たり売上高」というやつです。その逆転劇を一枚にまとめてみました。
赤線がDeNA、青線がGREEです。それぞれの推移を追いかけてみましょう。
◆ モバゲー、ARPUアップダウンの要因は?
DeNAは変曲点が3つあります。まずは、2009年6月から9月期にかけての下落、そしてその後の急上昇、さらに2010年9月以降の停滞です。それぞれの動きの要因は何だったのでしょうか?DeNAのプレスリリースを追ってみました。
2006年6月期・9月期の下落の要因を「アバター需要の落ち込み」としています。当時のDeNAは売上の多くをアバターに依存していました。その上、2Dアバターから3Dアバターへの移行期にあたり、顧客は買い控えを起こしていたためこのような客単価の減少となってしまったのです。
これに対し、DeNAは「ソーシャルゲーム」を投入し、復活を図ります。このソーシャルゲームの投入により、客単価は急上昇。さらに、モバゲーというプラットフォームを第三者のソフト開発会社に提供する「オープンプラットフォーム化」と合わせてDeNAはその業績を大きく伸ばします。
しかし、2010年9月期をピークに停滞気味となっています。こちらについては、後ほど種明かしをしましょう。
◆ GREE、ARPU急上昇!
これに対し、GREEの一人当たり売上高は一貫して上昇傾向、ただ2011年6月期以降、急上昇しており、直近ではDeNAを逆転しています。この急上昇の要因についてGREEは次のように述べています。
- スマートフォンにおけるマネタイズの進展
- マネタイズ基盤の強化
(出所:2012年6月期第1四半期決算説明会資料より)
オープンプラットフォーム化ではDeNAの後塵を拝したGREEですが、スマホ対応ではDeNAに先んじることができました。その影響はそこまで強かったのでしょうか?さて、一人当たり売上高は「一人当たり売上高 = ①売上高 ÷ ②客数」というメカニズムで決まります。それぞれの要素に分解して見ていくことにしましょう。
◆ GREE、DeNAの売上を猛追!(再録)
四半期ごとの売上の推移(08Q4-11Q3) |
直前の四半期と比較すると、横ばいだったDeNAに比べ、GREEは44%増(!)の304億円。
SNS各社の売上は①課金②広告宣伝から構成されています。GREEの場合、①の課金が大きく伸びています。その額275億円と直前の四半期に比べ91億円も伸びています。この課金売上の上昇に、一人当たり売上高の増加が大きく貢献していたのは間違いありません。
◆ 顧客の「量」を求めたDeNA、その代償は
DeNA、GREE会員数の推移 |
次に、②会員数の推移を見てみることにしましょう。
2011年9月末時点の数字はDeNAが3,200万人、GREEが2,760万人(数字の大きさに驚かされます)。
DeNAは2010年12月期にyahooと提携し(yahooモバゲー)、以後毎四半期200万人以上の会員数の増加をみせています。他社との提携により顧客を引っ張ってきた形になります。
さて、この2010年12月期ですが、一人当たり売上高が下落に転じた時期と重なります。DeNAはyahooとの提携により顧客の「量」を追求したため、一人当たり売上高という「質」の点は犠牲になっているといえそうです。
一方のGREEは相対的に小幅な伸びにとどまっています(とは言っても、3ヶ月で100万人を超えるスピードで増えているわけですが・・・)。
◆ 高齢化するSNS市場、両社の違いは?
さて、この会員数を年齢別に分解してみましょう。両社の客層に違いはあるのでしょうか?
両社を比べて何が言えるでしょうか?
- 両社とも30代以上の割合が多く、「高齢化」している。
- DeNAは「高齢化」進行速度が早い。
- GREEは早い時期から「高齢化」していた。
・・・一般に、「年齢層が高いほど、客単価が高い」というのがよく言われるセオリーです。だとすれば、「高齢化が進んでいるGREEの一人当たり売上高はもっと高くてもいいはず」といえるかもしれません(逆に言うと、その高いポテンシャルをこれまでは活かせていなかったといえるのかもしれません)。
とすると、2012年6月期のGREEの予想営業利益、600億~700億という数字さえも保守的な数字に見えてきます。というのも、第1四半期の営業利益(166億)を単純に4倍した数字に近い数字だからです。
果たして、GREEはこの高い一人当たり売上高を維持しつつ、顧客数を伸ばすことができるのでしょうか?
◆ 凄まじすぎるGREEのARPU上昇のナゾ
さて、再びGREEの一人当たり売上高について考えてみましょう。仮にスマホアプリの増加が収益化の要因であれば、もっと②顧客数が増えていてもおかしく内容に思います。この新規顧客層の伸びが大きくないとすると、GREEの一人当たり売上高の上昇は既存顧客の貢献が大きいといえそうです。
ということは、スマートフォンに限らず、フィーチャーフォン(ガラケー)でもマネタイズが順調に進展した結果なのでしょう。それにしても、この一人当たり売上高の伸びは物凄いものがあります。
GREEはいったいどんなマジックを使ったのでしょうか・・・
社内にヘビーユーザーがいることがわかったので、続報をお待ちください!
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