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【社説】消費税増税は大きな間違い


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 日本の政治家が消費税増税を唱えることは危険だ。これまで増税を支持した政治家は次の選挙で敗れることが多かった。参院選を間近に控え、菅直人内閣はこの政治的、そして経済的過ちを犯そうとしているようだ。

 菅首相は先月5%から10%への消費税増税のアイデアを明らかにし、有権者をあぜんとさせた。前任の鳩山由紀夫首相は、既に停滞していた景気への影響に対する懸念を理由に、少なくとも4年は税率を据え置くと言明して先の衆院選を戦った。小沢一郎前民主党幹事長も最近こうした考えを、菅首相に向けて吐いている。けだし正論だ。

 この議論を今、強いるのはおかしい。デフレにあえぐ日本経済は消費拡大を必要としている。増税は国内投資を促し成長を加速するために法人税率を引き下げるという首相の表面上の目標とも矛盾する。日本が繁栄を遂げた戦後、税金の国内総生産(GDP)比は今よりずっと低かった。日本の停滞は、政府が借金と増税で調達した資金で浪費に走ったこの20年と重なる。

 菅首相は、GDPの200%に向けて増えている公的債務を減らす唯一の方法が消費者に対する増税だと思っているようだ。所得の低い家計は除外するとしているが、具体的に誰が免除されるかについては言を左右にしている。野党自民党も同様の案を打ち出しているため、政治的に増税の好機だと考えている節もある。

 税制の効率を高めることに何ら間違いはなく、申告の簡素化、所得税率のフラット化、課税基盤の拡大などによって達成できる。しかし現時点では、菅内閣は逆方向に向かっている。菅氏は首相就任前の財務相時代に所得税増税を支持していた。一方、後任の野田佳彦財務相は高額所得者の課税強化ともっと「平等主義的」な税制をうたっている。

 さらに心配なのは、菅首相が公的債務問題の究極の解決策である成長に十分な時間を与えていないことだ。日本を活気づけるには貿易、移民、投資の徹底的な自由化が必要だ。法人税を40%から25%前後に引き下げれば好スタートになろう。郵政民営化の続行を言明すれば、一段と強く改革を支持するシグナルになる。政府によって参入障壁の築かれた業界の競争を促す規制緩和計画も同様だ。

 有権者は不安だ。4日に発表された2つの世論調査では、菅内閣の不支持率が10ポイントほど上昇している。普通の日本人は前任者よりも菅首相が好きなようにみえるかもしれないが、彼らは差し引きでの増税が経済にどんな影響を与えるかを知っている。

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