GDP:年率6%成長 4期ぶりプラス…7~9月期

2011年11月14日 11時6分 更新:11月14日 16時50分

GDP成長率と内外需寄与度の推移
GDP成長率と内外需寄与度の推移

 内閣府が14日発表した11年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比1.5%増、年率換算で6.0%増と大幅なプラス成長となった。東日本大震災で打撃を受けた国内の生産体制が復旧し、低迷していた輸出、個人消費が急伸した。プラス成長は10年7~9月期以来、4四半期(1年)ぶり。実質GDPの規模は震災前(10年10~12月期)の水準を上回った。

 古川元久国家戦略・経済財政担当相は会見で、復興需要で、当面、経済の回復基調は続くとの見通しを示す一方、欧米経済の減速懸念や急速な円高など景気の下押し要因が多いことを理由に「景気の持ち直しテンポは緩やかになっている」との現状認識を示しており、10~12月期の成長率は大幅鈍化する可能性が高い。また「民間調査機関は(政府の)試算より厳しい見方を示している」とも述べ、11、12年度の成長率見通しを下方修正する可能性を示唆した。

 GDPの約6割を占める個人消費は1.0%増。2期連続でプラスで、プラス幅は前期(4~6月期)の0.2%増から急伸した。製品出荷の正常化で自動車販売が好調だったほか、地上デジタル放送の完全移行に伴うテレビの買い替え需要も消費の増加に寄与した。自粛ムードの緩和で旅行などサービス産業にも持ち直しの動きが広がった。

 震災で凍結されていた住宅建設や企業の設備投資計画も動きだし、住宅投資は5.0%増と2期ぶり、設備投資は1.1%増と4期ぶりに前期実績を上回った。仮設住宅の建設需要が一巡し、公共投資は2.8%減と前期(3.7%増)から急減したものの、個人消費の増加に支えられ、内需全体では成長率を1.0%押し上げた。

 一方、外需関連では、輸出が6.2%増と前期(5.0%減)からV字回復。主因は自動車の生産回復だ。震災後、供給が間に合わない状況が続いていたビデオ機器なども大きく伸びた。外需はこの1年、GDPの下押し要因となってきたが、5期ぶりに0.4%の押し上げ方向に寄与。内外需の寄与度がともにプラスになったのは10年1~3月期以来となる。

 物価の動きを反映し、生活実感に近い名目GDPは1.4%増、年率換算で5.6%増と4期ぶりにプラスに転じた。ただ、総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比1.9%減と8期連続のマイナスとなり、デフレ圧力が依然、根強いことを裏付けた。【赤間清広】

 ◇大震災後の混乱脱し回復基調に

 11年7~9月期の実質GDPが4期ぶりにプラス成長に転じたのは、東日本大震災で寸断されたサプライチェーン(部品供給網)の復旧が進み、企業の生産活動が正常化したことが要因だ。日本経済は震災後の混乱を脱し、ようやく回復基調に入ったといえる。

 ただ、足元では歴史的な円高や欧米経済の失速懸念が鮮明になり、日本経済の回復ペースは既に鈍化。月内にも成立が見込まれる11年度第3次補正予算案に盛り込まれた復興関連事業が本格的に動き出すのは年明け以降とみられ、これから年末に向け、日本経済が一時的に踊り場入りする可能性もある。

 GDPがV字回復した背景には、震災後も内外需は底堅く、サプライチェーンの復旧に伴い、輸出や個人消費が持ち直したことがある。住宅建設などに再開の動きが広がり震災後のGDPの落ち込みを半年で取り戻した。

 しかし、ここにきて需要の先細り懸念が強まっている。欧州債務危機がイタリアなどに飛び火し金融市場が動揺、好調だった新興国経済にも減速感が出始めた。歴史的な円高傾向に歯止めがかからず、日本経済のけん引役の輸出を下押ししかねない。タイの洪水被害も、自動車などの生産停滞を通じて日本企業の収益を圧迫する可能性がある。

 10~12月期の実質GDPは、民間調査機関の予測平均で0・5%増と急減速する見通し。政府は3次補正によりGDPが年間1.7%押し上げられると見込んでいるが、欧州債務危機がさらに深刻化すれば復興需要も相殺しかねず日本経済の先行きは楽観できない状況だ。【赤間清広】

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