きょうのコラム「時鐘」 2012年1月14日

 ヒラリー・クリントン米国務長官は「元大統領夫人」だが、今や大変な存在(そんざい)だ。もう「元大統領の妻」と呼ぶ人はいない

日本で「夫婦とも議員」といえば、田中真紀子(まきこ)・直紀夫妻(なおきふさい)が知られた。妻の方は説明のいらないほどの有名人で、夫はいささか影が薄(うす)かった。が、初入閣で防衛相に就任(しゅうにん)。これで「真紀子議員の夫」から、晴れて「田中防衛相」と呼ばれるだろう

本人にすれば「○○の妻」や「○○の夫」と呼ばれるのは不本意(ふほんい)なことだが、これは夫婦のどちらが著名(ちょめい)かの問題であり、評価(ひょうか)は社会が決める。夫婦で問題がなくて家庭の平和が保(たも)たれているなら、それはそれでいい

かつて、高名な作家の夫人が「○○の妻」との肩書(かたがき)の名刺(めいし)をつくったという。ある女性作家から聞いた話だが「○○の妻という名刺はおかしい」と笑うのだった。自立した女性作家の誇(ほこ)りが言わせたのだろう。夫婦間に従属(じゅうぞく)関係はない

が、現実には力関係が等しい夫婦もまた珍しい。どちらが上か下か、他人がかまうことではないのだろう。政治家の話が脱線してしまった。夫婦で同じ仕事につくのは難(むずか)しいということか。