Q&A(新たな人権救済機関の設置について)
平成23年8月2日に法務省政務三役が公表した「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」に関して,ご意見やお問い合わせが数多く寄せられました。そこで,幾つかの点について,一問一答の形でご説明をさせていただくこととしました。
Q&Aの全体については,こちらからも御覧になれます。[PDF]
【総論】
Q1 平成23年8月2日,法務省政務三役から,「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」が公表されましたが,検討の経緯はどのようなものなのですか。
【組織・委員】
Q5 新たな人権救済機関を法務省の外局として設置することとしたのはなぜですか。
Q6 人権委員会の委員長や委員に外国人が就任することはないのですか。
Q9 外国人に地方参政権が付与されることになれば,外国人が人権擁護委員を委嘱されることになるのですか。
【調査・措置】
Q10 「基本方針」では,かつての法案にあったマスコミ条項の導入が見送られていますが,マスコミを不当に優遇しているのではありませんか。
Q11 新たな人権救済機関が取り扱う「人権侵害」の定義は曖昧ではありませんか。
Q12 新たな人権救済機関によって自由な言論が弾圧されるのではありませんか。
Q13 新たな人権救済機関は,令状なしに,家宅捜索をしたり,証拠を差し押さえたりするのですか。また,調査の不協力には,罰則があるのですか。
Q14 救済措置として,調停・仲裁を広く利用可能なものとするというのは,どういうことなのですか。
Q15 新たな人権救済機関は,人権侵害をしている人を摘発して処罰するのですか。
Q16 新たな人権救済機関は,公権力による人権侵害のみを取り扱えばよく,私人間の人権侵害まで取り扱う必要はないのではありませんか。
【その他】
Q17 新たな人権救済機関が設置されると,何ができるようになるのですか。
Q18 新たな人権救済機関ができると,5年後に,強大な権限を有する組織に変えられてしまうのではありませんか。
Q1 | 平成23年8月2日,法務省政務三役から,「新たな人権救済機関の設置について(基本方針)」が公表されましたが,検討の経緯はどのようなものなのですか。 |
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A 検討の経緯は次のとおりです。
(1)平成8年 人権擁護施策推進法の成立
(2)平成9年 人権擁護推進審議会の設置
(3)平成13年 人権擁護推進審議会の答申
(4)平成14年 人権擁護法案を国会に提出
(5)平成15年 人権擁護法案が廃案
(6)平成22年6月 法務省政務三役が中間報告を公表
(7)平成23年8月 法務省政務三役が基本方針を公表
Q2 | なぜ,新たに人権救済機関を設ける必要があるのですか。 |
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A 我が国では,差別,虐待などの人権問題が起きており,公権力による人権侵害への対処も含めて実効的な救済をする必要があります(答申)。また,国際的にも,政府からの独立性を有する新たな人権救済機関の設置が要請されています。
Q3 | 新たな人権救済機関を三条委員会とするのはなぜですか。 |
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A 新たな人権救済機関には,政府からの独立性を有し,中立公正さが制度的に担保された組織とすることが要請されています。このような要請を満たす組織としては,国家行政組織法第3条第2項のいわゆる三条委員会が最もふさわしいと考えられます。
Q4 | 三条委員会では,権限が強すぎるのではありませんか。 |
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A 委員会の権限は,法律がその委員会にどのような権限を与えるのかによって決まるものです。三条委員会であることから,直ちにその権限が強すぎるということにはなりません。
Q5 | 新たな人権救済機関を法務省の外局として設置することとしたのはなぜですか。 |
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A 法務省には,60年以上にわたる人権擁護行政の知識・経験の蓄積があります。これを活用することによって,新制度への円滑な移行を図ることができると考えられるため,新たな人権救済機関を法務省の外局として設置することとしました。
Q6 | 人権委員会の委員長や委員に外国人が就任することはないのですか。 |
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A 人権委員会の委員長や委員は,日本国籍を有する者であることが当然の前提であり,外国人が就任することはありません。
Q7 | 人権委員会の委員と人権擁護委員は違うのですか。 |
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A 違います。人権委員会の委員は,人権委員会そのものの構成メンバーですが,人権擁護委員は,全国の各地において人権擁護の活動を行う民間の人たちです。
Q8 | 外国人も人権擁護委員になることができるのですか。 |
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A 外国人が人権擁護委員になることはありません。
Q9 | 外国人に地方参政権が付与されることになれば,外国人が人権擁護委員になることができるのですか。 |
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A 外国人に地方参政権を付与するか否かの検討過程で,改めて議論される問題です。
Q10 | 「基本方針」では,かつての法案にあったマスコミ条項の導入が見送られていますが,マスコミを不当に優遇しているのではありませんか。 |
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A マスコミを優遇するものではありません。
Q11 | 新たな人権救済機関が取り扱う「人権侵害」の定義は曖昧ではありませんか。 |
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A 救済手続の対象となる「人権侵害」については,「特定の人の人権を侵害する違法な行為」,すなわち,憲法の人権規定に抵触する公権力による人権侵害のほか,私人間においては,民法,刑法その他の人権にかかわる法令の規定に照らして違法とされる行為がこれに当たるものとされています。
Q12 | 新たな人権救済機関によって自由な言論が弾圧されるのではありませんか。 |
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A 新たな人権救済機関が言論の自由を侵害し,国民の言論を弾圧するようなことはありません。
Q13 | 新たな人権救済機関は,令状なしに,家宅捜索をしたり,証拠を差し押さえたりするのですか。また,調査の不協力には,罰則があるのですか。 |
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A いずれについても,そのようなことはありません。
Q14 | 救済措置として,調停・仲裁を広く利用可能なものとするというのは,どういうことなのですか。 |
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A 平成14年に国会提出された政府の法案では,調停・仲裁は,特定の事案のみで利用できることとされていましたが,「基本方針」では,これをあらゆる人権侵害事案について利用可能なものとする方向性が示されました。
Q15 | 新たな人権救済機関は,人権侵害をした人を摘発して処罰するのですか。 |
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A そのようなことはありません。新たな人権救済機関は,人権侵害をした人を摘発したり処罰したりする機関ではなく,広く国民に人権についての理解を深めてもらうための機関です。
Q16 | 新たな人権救済機関は,公権力による人権侵害のみを取り扱えばよく,私人間の人権侵害まで取り扱う必要はないのではありませんか。 |
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A 私人間の人権侵害は重要な社会問題であり,新たな人権救済機関は,現行の法務省の人権擁護機関(法務省人権擁護局など)と同様,私人間の人権侵害も取り扱う必要があります。
Q17 | 新たな人権救済機関が設置されると,何ができるようになるのですか。 |
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A 新たな人権救済機関では,(1)政府から独立性を有する立場で,公権力による人権侵害を始めとする人権侵害に,より実効的な救済を図ること,(2)新たに調停・仲裁の制度を取り入れ,私人間の問題についても,当事者双方が納得できる解決に適した仕組みの下での救済を推進すること,(3)政府に対し,国内の人権状況に関する意見を提出することなどができるようになります。
Q18 | 新たな人権救済機関ができると,5年後に,強大な権限を有する組織に変えられてしまうのではありませんか。 |
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A 5年後の法改正の要否や内容については何も決まっていません。
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