大粒の涙~証~
テーマ:*父のこと母のこと心の 悲しみを溜める入れ物がいっぱいになって
溢れて 止まらなくなって 朝まで泣いた日
あの日は めずらしく弟の方から1本の連絡が入りました
嫌な予感がして
重たい気持ちで電話に出ました
親父から 30万貸してほしいと連絡が来た
弟は そう迷惑そうに言いました
昨年 借入総額が
年収の3分の1に制限される法律が施行されてから
自転車操業なりに
なんとか回せていたお金が 回せなくなっていました
半年程は持ち堪えていたようですが
毎年1月と2月は閑散期だから
1月の支払い分が
どうしても工面できなかったのだと思います
もちろん父が
弟やわたしにこんなお願いをするのは初めてのことでした
弟は 30万円を父の口座に振り込んでくれました
そして 父宛に1通のメールを送りました
その30万は返してくれなくていいです
そのかわり 今後一切連絡してこないでください
こんな歳まで母親働かせて
嫁に行った姉ちゃんにまで迷惑掛けて
息子に金借りて
このままでいいわけないってわかるでしょ?
親父の店が全ての元凶になってるんだよ
そのせいで 家族全員が巻き込まれています
メールの返事もいりません
今後の進退について
しばらく一人で考えてください
父は
泣いていました
家族のために守り続けてきたお店
自分と同じ思いは絶対にさせないと誓って
守り抜いてきた息子
その息子への 初めてのSOS
父は どれほど自分を責めただろう・・・
父が あのメールをどんな気持ちで読んだのか
考えるだけで 涙が止まりませんでした
次から次から 涙が溢れて
わたしは一晩中泣き続けました
髪を切ってくれる父の姿とか
父と繋いだ手のぬくもりとか
優しい笑顔とか
一緒にバージンロードを歩いた 父の腕とか
温かい思い出がいっぱい蘇って
胸がつぶされそうでした
わたしの中に こんなに温かい思い出が溢れているのは
お父さんがずっとずっと頑張ってきてくれたからだよ
わたしは 父が注いでくれた愛情と
同じ量の涙を流しました
弟へ
全部全部 お父さんが一番よくわかってることだよ
お母さんに苦労を掛けてること
お父さんが 誰よりも 誰よりも わかってる
それでも 自分の思いとは正反対に動く現実に
一番苦しんでるのは お父さんだよ
子どもに平気でお金を借りられる親なんていない
それでも借りるしかなかった
そこまで追い詰められたお父さんを
さらに追い詰めるような言い方しかできなかった?
お金の問題じゃない
貸したくなければ 貸さなくてもよかった
やってもらうだけ やってもらって
自分に降りかかってきたら真っ先に切る捨てる
そんな人間は 大っきらいだけど
考え方や大切にしたいモノなんて人それぞれ違うから
それなら それでいい
だけど
どうしてもっと 優しい言葉を選べなかったの・・・?
わたしもお母さんも お父さんのお店のこと
1度も迷惑だなんて思ったことはない
巻き込まれているんじゃない
自らの意思で向き合っているだけ
わたしたちは
弟の言うところの賢いやり方を知らないんじゃないよ
全部わかった上で
その方法を選ばなかったんだよ
なぜだかわかる?
わたしはお父さんに
お父さんが頑張ってきた証を残してあげたいの
いつか本当に経営がダメになって
お店も信用もお金も 何もかも失ったとしても
お父さん 全てが無くなってしまったわけじゃないよって
お父さんが頑張ってきてくれた証は ちゃんとわたしの中に生きてるよって
お父さんから教わった大切なものは ちゃんとここに残っているよって
お父さんと向き合うわたしの姿から感じ取ってほしい
だからわたしは 精一杯お父さんを支えるよ
お父さんがわたしを守ってきてくれたみたいに
だって 30年以上もの間
家族のために お店のために
全てを懸けて働いて
最後に何も残らなかったら・・・
人は 何のために頑張るのか
何のために生きているのか
わからなくなってしまうじゃない・・・
弟のやり方じゃ 何も残らないの
悲しみと失望感しか 残らない
でも わたしたちが精一杯がんばったら
もしダメになってしまっても
きっと 温かいものは残るはずだから・・・
だから わたしは頑張るよ