60年前の歴史の暗部を照らし出す貴重な写真が見つかった。
8月1日に東京に開館する「女たちの戦争と平和資料館」(西野瑠美子館長)が、旧越来村(現・沖縄市)の収容所キャンプ・コザで撮影された朝鮮人「慰安婦」の写真を公開した。
同館は戦時下での軍隊による性暴力に関する資料を展示する日本初の資料館で、写真は林博史関東学院大学教授が昨年8月、米国国立公文書館で発見した。
撮影時期は1945年10月ごろとみられ、カメラに視線を向けている7人の女性が写っている。いずれも夏物の服装だ。
歴史にかかわる資料に対し、安易な想像は慎まなければならないが、女性たちの姿は白い歯がこぼれ、ほほえみを浮かべているように見える。少なくとも、おびえているふうに見えないのは明白だ。
資料性を高めているのは写真説明が付いている点で、英文で「日本軍によって沖縄に連れてこられた」と明記されている。
女性たちについて朝鮮人「慰安婦たち」と説明し、「11月に集められ、朝鮮に引き揚げた。軍政府にとって問題の種だった」とも記されている。
あらゆる事象は光と影から成り立つ。歴史とて例外ではない。影の部分を覆い隠したがるのは人の心理の常ともいえ、歴史分野ではしばしば政治も介入する。
従軍慰安婦の言葉は教科書から消えた。文部科学省は「慰安婦の存在は否定しないが、従軍慰安婦という言葉は当時はなかった」との立場を取る。
従軍慰安婦を特集したNHKのテレビ番組改編問題では、政治的圧力の有無をめぐって朝日新聞とNHKが鋭く対立した。
同資料館は近く、発掘された写真を基に韓国の政府機関・強制動員真相委員会に7人の消息を依頼する。西野館長は「申し出てくれる方がいれば、沖縄で一緒に足跡をたどる調査をしたい」と語る。
慰安婦問題は、韓国や中国との関係にも影を落としている。写真が解き明かす「歴史の真実」に期待したい。
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