琴奨菊はどうなってしまったというのだろう。中盤戦にかかったところで、黒星先行だという。
なんといっても勝負事の話だから、一寸先のことは分からない。その意味合いに関して、負う傷のまだ浅い内に、早く対策を立てよ−という考え方もある。だが、5戦して3敗という結果は、正直目も当てられないといったところに近い。
こんな時にこういった話は慎まなければいけないのかもしれないが、この大関に関して一番印象に残っているのは、昨年の九州場所の10日目からの4連敗である。あのときの連敗は優勝に直接関わりを持っているから、かなり印象が強いのだが、気をつけなければ、あのときの再来となることだろう。
そんな愚かさに振り回されることなく、ここで考えなくてはならないのは、せっかく国産大関という形で芽生えたものを力強く育てることであろう。
今場所の意外なことといえば、言うまでもなく琴奨菊なのだが、最も大きな驚きをもって見せてくれているのは、これまでの土俵で一応の注目株として見ていた上位陣の何人かが、今場所の序盤戦では、見違えるような相撲を見せてくれていることだろう。どんなことが原因でそうなっているのかは不明だが、中盤戦、終盤戦にこの勢いを持ち続けることができたとすれば、めったに見ることがない大相撲のひと場所になるのだが。 (作家)
この記事を印刷する