◇初場所<5日目>(12日・両国国技館)
稀勢の里(右)は土俵際で粘り、鶴竜を押し出しで下す=両国国技館で
|
 |
3場所連続22度目の優勝を狙う横綱白鵬(26)=宮城野=は小結雅山(34)=藤島=を突き落として5連勝とした。新大関稀勢の里(25)=鳴戸=は関脇鶴竜(26)=井筒=を激しい攻防の末に押し出し、連敗を免れて4勝目を挙げた。鶴竜は初黒星で4勝1敗。
他の大関陣は日馬富士が北太樹を、琴欧洲は隠岐の海をそれぞれ寄り切り、把瑠都は豪風を押し出して5戦全勝。琴奨菊は豪栄道の上手ひねりに屈し、2勝3敗と黒星が先行した。
大きく体をぐらつかせながらも右足で巨体を残し稀勢の里が2連敗のピンチを免れた。土俵際に鶴竜を追い詰めたところで投げの打ち合い。相手の内股に一瞬、腰が乗って揺らいだが、最後は鶴竜がバランスを崩し、体を反転させて軽く押し出した。
「うまく(左足を)下ろせて良かった。全然、余裕はなかったが、攻めたから残れた。残って、残っての形なら出ていたと思う。前へ出る意識が大事ということです」と肩をなで下ろす。
「土俵の外は千尋の谷と思え!」は、亡くなった先代の鳴戸親方(元横綱隆の里)の教え。大関とりがかかった昨年11月の九州場所終盤戦で相手の寄りに詰まりながらの逆転勝ちに「土俵際こそ一番面白いところでしょう」と天国に向かって語りかけた。だからこそ、この日の辛勝にも「入門した時からそう言われてますから」と満足げにほおを緩める。
新大関の奮闘に刺激されるかのように横綱白鵬はもちろん把瑠都、日馬富士、琴欧洲と先輩3大関も全勝。「人の評価まではできない。自分のことで精いっぱい。一日一日が勝負。その結果ですよ」と稀勢の里は平静を保つ。ただ、放駒理事長(元大関魁傑)は「最近では珍しい形になってきた。横綱、大関が先頭を走っていい形に。まだ早いが、この調子なら優勝争いが面白くなる」とご満悦だ。
打ち出し後は大広間前で今場所からテストケースとして始まったファンサービスの「握手、撮影会」で19人のファンと触れ合った。かつての連敗癖も一掃し、確実な成長を遂げる新大関は角界の第一人者としての自覚も漂わせて初優勝へまい進していく。 (竹尾和久)
この記事を印刷する