原発関連施設の法定検査機関で独立行政法人の「原子力安全基盤機構」が、検査対象の事業者の作成した原案を丸写しした検査手順書(要領書)を基に検査している問題で、機構の第三者委員会は12日、要領書を機構自らの手で作成するよう求める報告書を提出した。中込良広理事長は記者会見で「真摯(しんし)に反省している」と謝罪し、改善策やスケジュールをまとめた「工程表」を1~2週間で作成・公表する方針を明らかにした。
報告書は「丸写しは事業者への依存体質を示し国民に疑念を抱かせる」と批判した。さらに研修体制について、米原子力規制委員会(NRC)に比べ「詳細かつ体系的なプログラムとは言えない」と指摘。「検査の重要性を自覚させるための教育・研修の強化」など13項目の改善策を提言した。
第三者委の柏木俊彦委員長(大宮法科大学院大学長)は記者会見で「検査によって原子力の安全が確保される。要領書は検査の基準。(原案を作らせたのは)適切ではなく、どんなに面倒でも自分で作るべきだ。報告書をたなざらしにせず是正してほしい」と述べた。中込理事長は「疑念を招くような検査をしてきたことは大変反省している。心を新たにし(改善を)できる限り早急に行いたい」と応じた。
報告書は「検査の質を保つには人材の確保が不可欠」と指摘している。機構の検査員は75人(非常勤を除く)に過ぎず、増員など人件費の増額には閣議決定が必要。実現性に疑問があるとの質問に、中込理事長は「我々としては(国に)どうすべきだとは言えない」と答えるにとどまった。【川辺康広】
・事業者の電子ファイル(原案)をコピーしたものが検査要領書の本体となっている。事業者への依存体質を示し、主体性、独立性に問題があり、国民の信頼に疑念を抱かせる
・要領書の作成を事業者に委ねてはならず、自ら主体的に行う
・要領書の作成過程を明確にし、責任者を定める
・事業者との打ち合わせは議事録を作成する
・検査の重要性について自覚させるため、研修を強化、充実する
毎日新聞 2012年1月12日 22時34分(最終更新 1月13日 0時52分)