特定のコンテンツ≒特定のURLという前提が崩れるとき - 後悔しないためのWebデザイン
URL(Uniform Resource Locator)−情報の場所を示す一定の記述方法−とは、便利なものだ。 たとえば、http://support.microsoft.com/default.aspx?id=870669 というURLによってマイクロソフトのサポート情報サイトの「Internet Explorer で ADODB.Stream オブジェクトを無効にする方法」というコンテンツにたどり着くことができる。 逆に、このコンテンツを他人に示したければコンテンツの内容そのものの代わりにこのURLを伝えればいい。
つまり、特定のコンテンツ≒特定のURLという前提こそがWebの世界に利便性をもたらしている根幹であり、Webそのもののはずだ。
しかし、このあったりまえのはずの前提が崩れてしまうケースは驚くほどよくある。 そしてその落とし穴がどんな結果をもたらすのか?という話をしよう。
ケース1:GETではなくPOSTでしかアクセスできないような動的ページを作ってしまったサイト
http://www.jisc.go.jp/app/pager?%23jps.JPSH0020D:JPSO0010:/JPS/JPSO0020.jsp=このURLはJIS(日本工業規格)を検索するページだ。 「名称検索」のところにたとえば「ウェブコンテンツ」と入れて検索してみると、今話題の規格の説明ページにたどり着くことができる。 そのとき、URLに注目してほしい。
http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=69569
のようになっているはずだ。(数字部分は若干ちがうかもしれない)
もうお分かりの方もいるだろう。もう一枚ブラウザを開いて、
http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=69569
と入力しても、「Not Found」になってしまう。
JISX8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針...のページにたどり着くことはできない。
つまり、こういうことだ。
- jisc.go.jpのサイトでJISやその他の規格を見るには、 何らかの情報をGETではなくPOSTメソッドで送信することが必須になっている。 つまり基本的に検索のページでキーワードを入れるという動作でしかアクセスできない。
- www.jisc.go.jpを構築したWebデザイナーやあるいはCGIプログラマーは、 「検索ページがあって、そのキーワードでインデックスDBを検索して、結果を一覧表示して」・・・ という画一的な画面遷移だけしか考えなかった。 URLを指定して直接たどり着くというWEBなら当然あるべき概念を完全に無視していた。
というページの最後のほうに、直接飛べるリンクが張られている。これは、 GETではなくPOSTでアクセスしなければならないがために単純なアンカーリンクが使えず、 仕方が無いのでPOSTメソッドを発行するJavaScriptをわざわざ埋め込むという手間ヒマをかけ、 ようやく普通のアンカーリンクっぽく見せている。
ケース2:フレーム構成を使っているWebサイト
過去のネタを使いまわすようでナンなのだが(苦笑)。 よほど特殊なコンテンツマネジメントシステムを使っている場合をのぞき、 フレーム構成を使うと、特定のコンテンツ≒特定のURLという前提が崩れてしまう。 詳細は過去の記事「フレームを使うと「ここを見てください」とURLを伝えることが事実上できなくなる − 後悔しないためのWebデザイン」をご覧いただきたい。
ケース3:すべてFlashで構成しているサイト
これまた過去のネタを使いまわすようでナンなのだが、 URLとコンテンツを相互に一意に結びつけるという概念がFLASHにはない。 いや、あるのかもしれないが、それを考慮しているFLASHにお目にかかったことが、筆者は無い。 この落とし穴に見事にはまっているサイトが、 横浜の元町に本店がある人気のジュエリーショップ「スタージュエリー」のサイトである。 過去の記事「スタージュエリー:使い勝手の悪いサイトの例」 をご覧いただきたい。
ケース4:アドレスバーを表示しないようにJavascriptなどを駆使しているサイト
銀行のインターネットバンキングシステムに多い。 アドレスバーが無ければURLがわからない。URLがわからなければ他者に伝えようが無い。 銀行のATMの設計と同じ感覚でWebサイトをデザインしようとするとこういう落とし穴を自らの手で掘ってしまう。 過去の記事:ツールバーもアドレスバーも消すな! − 後悔しないためのWebデザイン もご覧いただきたい。
落とし穴で待っているもの
特定のコンテンツ≒特定のURLという当たり前のはずの前提が崩れるとどうなるのだろう?-
メールという重要なマーケティングとサポートのためのツールが事実上使えなくなる
例えば商品の詳細情報のコンテンツがあるWebページのURLが一意に定まらないのなら、 「今週のオススメ!」といったメールマガジン上にURLを書きようが無い。 また、ECサイトではなくユーザーサポートを目的としたサイトであるならば、 ユーザーからの問い合わせに対し、「詳しくはこちらをご覧ください」といった形で詳細情報のURLを伝えるということができない。 -
他のサイトからのリンクを期待できなくなる
リンクは、基本的に<a>というアンカーリンクタグを使う。 Flashコンテンツの内部のひとつのアクションに飛ばすようなリンクは(たぶん)書けない。 また、POSTしてくれるようなJavascriptをわざわざ書いてリンクを 張ってくれる人もめったにいない。 ということは、プレスリリースを出してもプレスのサイトはリンクを張ってくれないし、 誰かがblogで取り上げてリンクを張ってくれることも望めない。 他のサイトからのリンクだけでなく、自分のサイトのほかのページからのリンクを 張るのにもひと苦労ということになる。 これはケース1の最後に述べたとおり。 -
検索エンジンにもひっかからない
フレーム構成されたサイトならそれほど影響はないが、 www.jisc.go.jpのようなサイトのページはGoogleにもYahooにもひっかからない。 (現在の)検索エンジンはWebページのクローリングにPOSTは使わない。GETだけだ。 POSTメソッドは通常は「IDとパスワードを入力してログインする」といった用途に使われるべきものだ、という前提で検索エンジンは設計されている。 検索エンジンは、基本的に<a>タグによるアンカーリンクで表現されたURL(≒GETでアクセスできるURL)にしかアクセスしないのだ。 むやみにコンテンツの多くをFLASHに詰め込んでしまったサイトもしかりである。
どうしたらよいのか?
もうそうなってしまったサイトに対する特効薬は無い。全部作り直すしかない。 幸いなことにこれからサイトをつくるという場合には、簡単ないい方法がある。
どんなWeb屋に構築を頼むのであれ、たいていはサイトマップというものをまず考えてくれる。
(フロー図と呼ばれる場合もある)たとえばこんなやつだ。
玉すだれ型サイトマップ:
ちなみに、もしもサイトマップを出してくれないようなWeb屋にあたってしまったら
即座にお引取りいただいたほうがいいだろう。
このサイトマップにひと工夫加えてもらうのだ。たとえばこう。
赤のマークは「コンテンツ毎に一意なURLでアクセスできる」という意味だとする。
これを要求仕様とすればいい。
注意しておくが、「コンテンツ毎に一意なURLになるように・・・」 という要求をナントカの一つ覚えのように全てのページに課してはいけない。 たとえば、ショッピングカード機能の決済方法の選択画面は、 正確な意味ではコンテンツではないし、URL直打ち入力で飛んでこれるべき画面ではないから必要ない。 赤マークをつけるページはきちんと取捨選択しなければならない。
追記:
古い記事だが、より専門的な書き方で同様の趣旨を書いてる記事があったので紹介。
Webの「正しい」アーキテクチャ(@IT 2002/11)
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