四日市農芸の目指す頂は、花園ではない。花園を制することだ。県代表として初めてBシードで臨む今回は、他のシード校など全国の強豪を打ち倒さなければ、目標は果たせない。今、ひたすら練り上げているのは、全国制覇のための方策だ。
「自信を持たせることが一番大切。練習はうちが一番やっているし、力も付いてきた」と下村大介監督(51)は淡々と語る。今の3年生は、下村監督の就任後、一、二を争うほどひたむきに練習に取り組んでいるという。
「練習量です。あれだけやって負けるわけにはいかない」。花園の切符をつかんだ要因について、選手たちは口をそろえる。だが、頂点を目指すためにはまだ足りない。
下村監督はシード校との対戦について「パスを回すオーソドックスな展開ラグビーをきれいにできるほど甘くはない」と分析する。プレーの精度をさらに高め、意表を突くプレーも必要だという。
県大会決勝では、ラインアウトのミスが目立ったこともあり、修正に取り組んできた。練習中は、ブレークダウン(タックル成立後のボールの争奪戦)時のカバーの素早さや、当たりの強さを意識する。バックスはキックの精度の向上にも取り組む。そして、決定力の高いサインプレーも鍵を握るため、練習でも繰り返し動きを確認している。
また、体力を試合終盤まで維持することも課題だ。下村監督によると、四日市農芸の過去の花園での試合は、激しいぶつかり合いで後半まで競り合うものの、終盤で一挙にトライされることがあったという。今年のチームは強豪校との練習試合などを繰り返し、試合を通しての体力が身に付いているという。
県大会決勝、前半は動きが硬く、本来のプレーができていなかった。伊藤玖祥主将(3年)は「予想以上に緊張し、思い通りにいかなかった。でも、あれほど重圧がかかる緊迫した試合ができたことは良かった」と話す。
がむしゃらにやるだけではなく、シード校からの勝利を計算し、練習を進めている。「散ったチームの分まで戦って、三重のラグビーはこんなにもレベルが高いと教えたい」と伊藤主将は言葉に力を込める。チームの思いは一つ。30日、四日市農芸の花園は開幕する。【谷口拓未】
〔三重版〕
毎日新聞 2011年12月29日 地方版