【萬物相】リスクの高い飲酒

 フランスの劇作家モリエールが、友人たちとパーティーを開いた。酒に酔って議論を交わしていた友人一人が「こんな面倒くさい世の中、どうせならセーヌ川に身を投げて死んでしまおう。どれほど詩的なことか!」と叫んだ。酔っ払った文人たちは喚声を上げ、そのうちの一人が「言うだけでなく、今すぐセーヌ川に行こう」と言い出した。慌てたモリエールは「それほど崇高な出来事を歴史に残したければ、夜が明けてから皆の前ですればいい。きょうはこのまま飲もう」と引き止めた。その翌日、友人たちは昨晩のことを全く覚えていなかった。

 米国では、飲酒に関する事故で毎年2000人近い大学生が死亡し、60万人が負傷している。また、学生の1.5%が飲酒後に自殺したい衝動に駆られ、25.0%は学業に支障が出たという。飲酒が原因の性的暴行事件は9万7000件と集計された。韓国の大学でも、新入生歓迎会での飲酒で死亡するケースが後を絶たない。政府は、飲酒をめぐる事件・事故によって発生した社会的・経済的費用を20兆ウォン(約1兆3400億円)と推定している。飲酒による通院・入院に要した健康保険診療費は、2009年に1600億ウォン(約107億円)を超えた。

 食品医薬品安全庁が先日発表した15歳以上の男女1000人を対象にした調査結果によると、26.5%が1週間に1回以上「リスクの高い飲酒」をしていることが分かった。1週間に2回以上の比率も17.3%で、リスクの高い飲酒をする比率は男性が女性より4倍ほど高かった。世界保健機関(WHO)が定めるリスクの高い飲酒とは、1回の飲酒で男性は60グラム、女性は40グラム以上のアルコール摂取量を指す。

 今回の調査で、回答者の4割は自分が何杯飲んだのかも分からずに酒を飲んでいると答えた。一気飲みや最初に飲む量を決めておかない習慣も問題視されている。各国のガイドラインによると、適性アルコール摂取量は1回8-14グラム。ポーランドは酒を1滴も飲まない「アルコール・フリーデー」を週に2日以上設けるよう国民に呼び掛けている。イタリアは、1日のアルコール摂取量を体重1キロ当たり0.6グラム以下に抑えるよう勧告している。

 韓国でも、飲酒文化の改善を推進する団体「青い鳥フォーラム」と保健福祉部(省に相当)が「119節酒署名運動」を展開している。「1種類の酒を飲み、1次会だけで午後9時前に終わる飲み会」を呼び掛ける運動だ。かつて、古代ギリシアの都市国家・スパルタの人々は奴隷に酒をたくさん飲ませ、宴会場に連れて行った。奴隷がふらつきながら歩く様子を若者たちに見せ、酒に酔ったらどうなるのかを肝に銘じさせたという。この年末年始の宴会シーズン、酒席が長引くと寿命が縮まるということもお忘れなく。

キム・グァンイル論説委員
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