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[31156] コードギアス 帝国のルルーシュ 【第2話更新】
Name: しまうー◆5ca8d63b ID:ce789aa4
Date: 2012/01/11 22:00
初投稿のしまうーと言います。よろしくお願いします。


・ 『 もし特区日本の式典で、ギアスが暴走しなかったら 』
・ メインはルルーシュ、スザク、ユーフェミアの3人(多分)
・ オリジナルのキャラ、舞台などはナシ

こんな内容のSSです。
ルルには特区日本のために働いてもらいます。


特にカップリングのようなことはしない予定です。
スザクとユフィは甘酸っぱくキャッキャするかもですが
過度に三角関係みたいのを期待する方は回れ右、が吉かもしれません。
(ルルとスザクまで×で繋げるよーなのを希望する方は特に)


目指すは 『 ほのぼの政治暗闘劇 』
最後まで(書ききるか分かりませんが・・・)お付き合い頂ければ幸い。



[31156] コードギアス 帝国のルルーシュ 1
Name: しまうー◆5ca8d63b ID:ce789aa4
Date: 2012/01/10 20:09

リヴァル・カルデモンドにとって、ゼロという名の持つ意味は複雑だ。

オレンジ事件での華々しいデビュー以来、
リヴァルはゼロのことを好意的に捉えていた。

たしかに彼の思想や言葉が理想主義的で
彼を盲目的に支持する「日本人」には閉口もした。

だが、この世界に正義や真実が一つしかないと思うほど頭脳が子供でもない。
ブリタニアという国の大原則に関して少なくない疑問を持っていた彼としては
黒の騎士団をある程度支持していた。

しかし友人シャーリーの父親がゼロの行動に伴って死亡したことにより、考えを改めねばならなくなる。
これまでリヴァルにとってゼロはどこか物語上の人物だった。
けれど彼のコミュニティー内の人物を傷つけたことで
ゼロの行う革命を他人事でない、現実として評価しなければならなくなったのだ。

しかし・・・

「あぁ~、もう何やってんだよぉ。ゼロも、副総督も!」

生徒会室でミレイ・アッシュフォードと共に
テレビを見ていたリヴァルはたまらずに叫んだ。

今日はユーフェミア副総督による行政特区日本の式典日。
ゼロへの評価を決めるためにも
授業をサボって中継の様子を見ていた。

しかし式典会場にゼロが見たこともないナイトメアで現れたかと思ったら
そのままユーフェミアと二人きりで会談したいと言い、
舞台の奥に姿を消してしまった。
そしてそのまま二人が密室に入ってから30分が経とうとしていた。




「本格的に交渉してるんじゃないかしら。だとしたら1,2時間じゃ済まないかもね」

同じく授業をサボタージュしたミレイが答える。
リヴァルが振り返ると
普段は「明るく楽しく」がモットーのような彼女だが、
セミロングの金髪に飾られた美貌に遊びの色はない。

「えぇ? フツーはそういう協議って式典前に済ませておくモンじゃないんですか?」

「普通なら、ね。でもテロリストのワンマンリーダーと、・・・まだ若い皇女様よ?
 そういう下準備ができてない方が自然かもしれないわ」

口元に手を当ててテレビ画面を見たまま考えこんでいる。
普段の天真爛漫なキャラもいいが
貴族の娘然とした今の姿も見惚れるほどだ。
しかし茶々を入れる雰囲気でもないので言わないでおく。

「あ゙~、今日はバイトもあるから早く決まってくれないと・・・」

言いかけたところでテレビから歓声が聞こえてきた。
慌ててテレビに向き直る。
画面には式典会場の舞台奥から現れるゼロがユーフェミア副総督が映し出された。

ミレイ共々息をのんで画面を注視するなか
こちらが焦れるほどゆっくりと歩を進め、檀上につくとまずはゼロが口を開いた。




『黒の騎士団よ! 行政特区日本に参加せよ!!』

『現在の団は解散するが、それは我々の敗北を意味しない!』
『黒の騎士団よ! 行政特区日本の中で生き続け
 潜在的な脅威として私の為すことを見張るがいい!』
『もし私がブリタニアに取り込まれ、殺されたと思ったのであれば』
『諸君が仮面を被り、新たにゼロを名乗るのだ!』

『ゼロの真贋はその行いで決められる』
『全ての「ゼロ」よ! 私の為すことを見届けるがいい!!』




「いや、ムリでしょ・・・」

テレビからは万雷の拍手が聞こえてきたが、リヴァルはそう呟いた。
ブリタニア側にとって必須条件である武装解除に応じる、というのは評価できる。

しかし彼らは帝国に反逆したテロリストなのだ。
司法取引をするにしても、ユーフェミアを前に
実力行使の大義名分を失ったテロリストに
ブリタニア側が大きく譲歩する理由はない。

そもそもこの特区日本は『 お飾りの副総督 』であるユーフェミアの独断らしい。
武闘派として名高い姉コーネリアとの関係は良好だと聞いていたが
早くも特区日本絡みで姉妹の仲が拗れたというゴシップも流れている。
はたして総督がブリタニアの敵を許すのだろうか。

そもそもこの演説は何だ?
まるでゼロ本人は武力を放棄したがっていて
黒の騎士団を説得しようとしてるようにすら感じる。

いや、あるいはゼロの何らかの陰謀か?
今のゼロが殺された事にして
新ゼロが旧ゼロ殺害を大義名分に特区日本を潰す、とか・・・




リヴァルがまとまらぬ思考を続けるうちに
ゼロからマイクを渡されたユーフェミア副総督が演説を始めた。
特区日本の理念に関する話だったが
ゼロの言葉と比べるといかにも「誰かが用意した原稿を読んでます」感が強い。

『・・・最後に、この特区日本への参加者が日本人だけでないことをお伝えさせていただきます』
『信じられないかもしれませんが、ブリタニア人から私以外にも参加者はいるんです』
『その、特別というわけではないのですが、その人を紹介させてもらいます』
『少し・・・ええと・・・ワケありなので舞台にあがってきてもらいましょう』

「なんだあ?プロレスじゃないっての・・・」

リヴァルの疑問が声に出てしまう。
前半の原稿丸暗記演説が一転、妙な流れになっている。
口にしているユーフェミア自身、躊躇っているような感じで歯切れが悪いし
カメラマンも明らかに撮るべき場所が分からず慌てている様子だ。

しばらく画面が右往左往したあと
テレビは人ごみをかき分けて前に進む一人の青年のを映し出した。
角度から後姿しか見えないが制服のようなものを着ていて・・・

「あれ、もしかして、アレってうちの制服じゃん!?」

「・・・っ!まさかっ!」

血相を変えて立ち上がるミレイ。
驚いて振り返りかかるリヴァルだが、
好奇心か不安か、画面から目を離せない。

徐々にアップになっていく後姿。
制服がアッシュフォード学園のものである事はもう疑いようもない。
問題はその痩せぎすな体格に、
やや無造作な黒髪に、
妙に貴族然とした歩き方に見覚えがあることだ。

護衛がその男を止めようとするのを副総督が制し、男は壇上に上がった。
神聖ブリタニア帝国第3皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアから悠然とマイクを受け取り
聞きなれた、しかしどこか初めて聞くような口調ではっきりと言った。




『この中継はこのエリア11全体に流れています。
 特区日本に関して様々な立場の方が様々なこと考えているでしょう。
 なので色々と話す前に、まず私から大事なことを言わせてもらいます』

『私、神聖ブリタニア帝国の第11皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは皇籍を返還し、
 皇籍返還特権に基づき黒の騎士団の恩赦を要求します。』




リヴァルは




フリーズした。



[31156] コードギアス 帝国のルルーシュ 2
Name: しまうー◆5ca8d63b ID:599ebe0a
Date: 2012/01/11 21:56

窓からはやわらかい朝日が差し込んでいた。
誰もいない廊下を栗色の髪をした青年が歩く。

顔付きはまだ幼さを残しており、服装もいわゆる学生服だ。
しかし服の下の筋肉は無駄なく鍛えられているのが外見からも分かる。
隙のない身のこなしで颯爽と歩を進める。




青年はある部屋の前で立ち止まると、やや躊躇してからドアを叩いた。

「ルルーシュ、殿下。枢木スザクです。お迎えに上がりました。」
「入っていい」

そっけない言葉を聞き、枢木スザクは自動扉を開ける。
部屋の主は机に向かって何やら書類に目を通していた。
着替えも既に済ませており、一分の隙もない恰好はその人の内面を表すようだった。

「悪いなスザク。2、3分待ってくれ」

神聖ブリタニア帝国の第11皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアはしかし、
肩書には似つかぬ言葉を口にする。
わかったよ、とこちらもぞんざいな口調で返しながら
手持ち無沙汰になったスザクは部屋を見回してみた。




行政特区日本の式典で
彼が『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア』を名乗ってから
ひと月が経とうとしていた。

「ユフィの補佐をする」

ルルーシュがそう言ったのは正直な所意外だった。
7年前の別れ際に彼が叫んだ言葉、

「ブリタニアを、ぶっ壊す!」

あの言葉は彼の全てのように感じたからだ。

新宿の地下で偶然彼に再会した時も
その憎しみの火は消えてはいなかったし、
学園でゼロに関してちょっとした言い合いになった時も
ゼロの武力による改革に関して一定の理解を示していた。




(まぁ心強いのは確かなんだけどね)

正直な所、行政特区日本が
ゼロとユフィの二頭体制では不安が大きすぎるのは確かだ。

あまり大声では言えないが、今のユフィはあらゆる面で経験不足である。
コーネリア殿下やシュナイゼル殿下からも
優秀な人材を送ってもらってはいる。
しかし彼らがユフィの夢を理解しているかが疑わしい上に
そもそもユフィの人を使う能力が圧倒的に不足しているため
信頼できたとしても適材適所に使うことができないのだ。

一方でゼロの側からは何人かの幹部を送り込む要望をされた。
最悪、特区日本がゼロの傀儡になる恐れすらあったのだ。




だがルルーシュがユフィの補佐に入ると状況が変わる。
ゼロの出す案に修正を入れ、
スタッフに的確な指示を出し、
ユフィの夢を具体化してそのロードマップを考える。
今やルルーシュは特区日本に不可欠な存在になりつつあった。

今日は放課後に予定されたコーネリア殿下との会談にかこつけて
前日の深夜にトウキョウ租界まで移動し、
租界に訪れるブリタニア貴族用のゲストハウスで一泊。
会談までは久しぶりにアッシュフォード学園に登校することになっている。




澄んだ表情で書類に目を通すルルーシュの姿は
流石と言うか、王族としての気品を感じさせるものだった。
なるべく落ち着いた内装の部屋を希望した、ということで
調度品も落ち着いた色使いのものが多いように感じる。
もっとも、彼が書類を見ている机1つとっても恐ろしい価格なんだろうが・・・

「高いぞ。この机1つでお前の給料10年分は下らない」

書類から目を離したルルーシュと目が合った。
口元には邪悪な笑み。
皮肉で応戦する。

「猫に小判ってやつじゃないか?その書類、『ルルーシュ・ランペルージ副会長』のヤツだろ?」

そう言うと、リヴァルによればファンクラブまであるという美貌が見事に苦く歪んだ。

「ああ・・・。そう、そうなんだ。まったく会長は何を考えているんだか。
 アイデアをだすのはいいが、事務仕事をやる身にもなってくれないと・・・」

「手伝おうか?」

「いや、もう済んだ。待たせて悪かったな。行こう」

ルルーシュはそう言って立ち上がり、手早く書類を鞄に詰めて廊下に向かった。




車に乗り込んで運転席との間の仕切りを上げさせると
ルルーシュは再び話し始めた。

「悪いなスザク。こんなことにつき合わせて」

「いいよ。・・・というか僕もユーフェミア殿下の命令で登校してるわけだしね」

今日のスザクの公式なスケジュールはルルーシュ殿下の護衛だ。
これは
『皇籍返還を申し出て、特区日本への参加を表明したブリタニアの皇子』
というのが極めて微妙な立場であるため。
黒の騎士団や他のテロリストだけでなく、ブリタニア側からも襲われる可能性があり
信頼できる護衛がいない、という理由による。

加えてユフィに学業のことを言われ
ルルーシュの会談と登校にスザクも付き合うことになったのだ。

そのことはいいのだが・・・




「不安か?ユフィのことが」

再びこちらの心情を察してかルルーシュが話しかけてきた。

「まあ、ね。殿下は大丈夫だって言ってるけど、ゼロの行方は分からないわけだから・・・」

特区日本の式典以後、ゼロは姿を現していない。
メールで意見を述べてきたり、
重要な案件では液晶越しにで会議に参加したりはしているが
正直な所、特区内にいるのかどうかすら分かっていないのだ。

今日もユフィには何度もゼロに注意するよう言ったが
彼女は笑って大丈夫、と繰り返すばかりだった。

不安は尽きないが、今言ってもしょうがないので
やや強引に話題を逸らす。

「それより君が特区の仕事を手伝ってくれてることに感謝してるんだ」
「ユフィも君が出てきてくれて本当に助かってるよ」

「俺がしていることは本来はスザク、お前の仕事だぞ?」

「ゔ」

藪蛇だった。

「騎士が剣の腕前だけ、なんて時代は遥か昔に終わってる」
「ユフィを支えたいのであれば、こういう仕事も・・・」

耳に痛すぎる小言が始まった。
確かに現在の騎士は有事の際の武力よりも
平時での補佐能力が求められることの方が多い。

最近は腕力に不安があ(りすぎ)るものの、
この男がユフィの騎士になった方が良いのではないかと思うことすらある。

もちろん譲るつもりはない、が。

小言がひと段落した後
ルルーシュはぽつりと呟いた。




「負けたからな、お前たち二人に」




え、と言ってルルーシュの方を見ると
彼は「これ以上話すことはない」と言うように窓の方を向いてしまった。




何のことかは分からなかったが
その顔は「ブリタニアをぶっ壊す」と言い放った時の憎悪のソレではなく。

恥ずかしそうにそっぽを向いた横顔は
純粋さをプライドで隠そうとする、『 あの夏 』 の表情に見えた。


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