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2011年10月8日19時37分

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被災3県に支援経費を請求 22都県が44億円

表:東北3県への災害救助費の請求状況拡大東北3県への災害救助費の請求状況

 東日本大震災で福島、宮城、岩手の3県を支援した自治体が、その経費を3県に請求する手続きを進めている。朝日新聞社の調べでは、これまでに22都県が約44億円を請求し、今後も増える見込みだ。災害救助法に基づく手続きで、最終的には国が費用の大半を負担する見通しだが、被災県に請求することに疑問の声も出ている。

 災害救助法の規定によると、被災地を支援した都道府県は、経費(災害救助費)を被災地の都道府県に請求できる。対象となる経費として、避難所の設置や、炊き出しなどの食料・飲料水の供給、被災者の救出など10項目が定められている。

 厚生労働省によると、こうした請求は1995年の阪神大震災でも例がない。今回は厚労省が同法の規定を踏まえた積極的な救助を都道府県に要請したことが影響したとみられる。

 1回目の請求申請が7月末に締め切られたのを受けて、朝日新聞社が47都道府県の担当部局に取材したところ、東京、鳥取、長崎など22都県が約44億円を請求したと回答。うち東京都が約15億円と最も多く、秋田県の5億3600万円、埼玉県の4億9千万円が続いた。

 請求の締め切りは11月末と来年2月末にも設定されている。大阪や兵庫、北海道など他の18道府県も7月末時点で計約45億円の請求を見込んでいる。非公表の県もあり、請求済みの都県も追加して申請できるため、請求額はさらに膨らむとみられる。

 兵庫県の場合、炊き出しで3千万円、医療費1億1千万円、物資などの輸送費5600万円、派遣職員の旅費や超過勤務手当といった救助関連の事務費1億4千万円など、6月末までの概算で5億4千万円にのぼる見通しだ。

 これらの災害救助費について、国は被災県の財政力に応じて請求額の5〜9割を国庫で負担する。また、被災県が負担する分についても特別法で起債(借金)を認め、元利償還金の95%は国からの地方交付税で埋め合わせをする。

 ただ、財政負担が一部にとどまるとはいえ、大量の請求内容を審査する事務負担が被災県にかかることから、制度のあり方に疑問の声も上がっている。

 関西広域連合(連合長=井戸敏三・兵庫県知事)は3月29日、災害救助費を国へ直接請求できるよう国に制度変更を求めた。また、大阪府の橋下徹知事は4月27日、「被災県に請求書は送れない」として国が全額を負担するよう提案。広域連合の7府県のうち、鳥取県以外は7月末の1回目の請求を見送っている。

■請求自治体「当然」「葛藤あった」

 被災地への請求に疑問の声があがるのは、財政負担や事務負担に加え、心情的な理由も大きい。

 ある被災県は震災直後、近隣の県から億単位の食料支援を受けた。被災県の担当者が費用負担を心配すると、「知事がいいと言っていますんで」と返され、恩義を感じた。しかし最近、支援した県から「費用は請求させていただきます」と告げられた。被災県側は「善意が出発点だったはずなのに……」と困惑する。

 「お金は二の次でいいという支援部署と、取り戻せるものは取り戻したいという財政部署の間で葛藤があった」。4千万円を請求した山梨県の担当者はこう明かす。岐阜県や三重県の担当者は「費用面でも事務手続き面でも被災県に迷惑をかける制度。何とか変えられないのか」と話す。

 阪神大震災で支援を受けた兵庫県の担当者は「心情的に被災県に請求書を回すのはつらい。法の趣旨は災害救助費を国民全体で広く浅く負担しようという精神のはずだ」と説明。15億円を請求した東京都の担当者は「都民の税金を使って支援した以上、被災県に請求して取り戻すのは当然」と話す。

 自治体側の要望を受け、厚労省は4月末から、3県への請求書類を国がいったん取りまとめ、3県に送付するよう運用を変更した。ただ、被災県が災害救助費を支払う形は変わらない。(日比野容子)

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