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社説:一体改革 与野党で問題点を洗え

 民主党が11日、自民、公明両党に対し、消費増税法案などに関する与野党協議に向けた幹事長会談を開くよう要請したのに対し、両党は野田佳彦首相が13日に行う予定の内閣改造を見極めたうえで判断するとの姿勢を崩さなかった。確かに政権与党側の態勢を整えるのが先だろう。しかし、両党はその後も協議を拒み続けるつもりだろうか。「責任野党」とは何か、今一度考える時だ。

 特に分かりにくいのは自民党だ。谷垣禎一総裁は前回衆院選(09年)の民主党マニフェストには消費増税が記されておらず、当時の鳩山由紀夫代表が「増税しない」と繰り返した点を指摘し、「民主党に問題を提起する資格はない」という。だが、10年の参院選でいち早く「消費税10%」を公約したのは自民党だ。

 さらに自民党は政権交代以来、民主党にマニフェストの見直しを迫ってきた。ところが民主党が見直しに転じると今度は「その資格もない」では、はじめに衆院解散・総選挙ありきの党利優先でしかない。仮に次の衆院選で自民、公明両党が政権を取り戻しても、現状では参院は両党だけで過半数に足りない。ねじれは続き、いずれ与野党協議が必要となる可能性も高いのである。

 自民党内でも「解散一点張りでは国民の理解は得られない」という声は強まっている。増税の必要性を否定していないなら、少なくとも協議に応じ、その中で自民党の主張を具体的に展開したらどうか。今、いきなり衆院解散・総選挙となっても、民主党とどこが同じで、どこが違うのか、有権者も戸惑う。

 私たちが与野党協議を求める理由はそれだけではない。政府・与党の素案はまだ生煮えだ。例えば、民主党は逆進性対策として、低所得者には生活必需品などに課せられる消費税相当額を後に還付することや、給付付き税額控除を検討しているが、どの所得で線引きするか、所得をきちんと把握するシステムはどこまで構築できるのかなど課題は多い。

 欧州では生活必需品などについて標準より低い税率を適用する複数税率が広く導入されている。文化を守り、育てるため、新聞や雑誌、書籍や劇場などに対する「知識課税」を避け、軽減税率を採用している国も多い。これらも与野党協議のテーマになり得るはずだ。

 消費税だけでない。従来、社会保障政策は高齢者優先に傾いてきたが、現役世代の負担は今のままで耐えられるのか。将来を見すえて各党が知恵を出し合ってほしい。

 そして国会議員の定数削減や国家公務員の人件費削減問題などについても同時進行で議論し、早急に結論を出すのが国会の責任だろう。

毎日新聞 2012年1月12日 2時31分

 

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