厳寒期に入り、「風呂を追いだきできるようにしてほしい」という切実な声が仮設住宅の住民から相次いでいる。県内約1万4000戸の仮設住宅に取り付けられているのはすべて追いだきできない風呂だが、県は多額の改修費用がかかることから難色を示している。【鬼山親芳】
「お湯がすぐに冷めてしまう」。宮古市中里団地の愛宕公園仮設住宅で暮らす70代の女性がこぼした。住宅は給湯器が屋外壁掛け式になっている。やむなく女性は45度ぐらいに沸かして入り、冷めた浴槽の湯を排水しながら新たに給湯。家族も短時間での入浴を心がけているという。
家族6人暮らしの別の女性(85)は自費で昨年10月、追いだきできる風呂に取り替えた。女性は「15万円かかった。夏まではシャワーで済んだが、仮設住宅はそうでなくても寒い。ぬるま湯では風邪を引く」と健康を心配した。市役所からは「退去の際には前の給湯器を取り付けるように」と言われたという。
山田町第4仮設団地の62歳の女性は「みんな困っています」としながらも「88歳の母は熱い湯をはって浴室を暖め、最初に体を流してから入っています。でも風呂に入れなかった避難所生活を思えばあるだけで感謝しなければ」と話す。
県建築住宅課によると、追いだきできる風呂に改修するには多額の費用がかかるほか、追いだきできない風呂は一般の住宅でも少なくない点を強調。自費改修についても「何かあった場合、責任問題も生じる。基本的には好ましくない」という。
毎日新聞 2012年1月11日 地方版