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きょうのコラム「時鐘」 2012年1月12日
野球には敗戦処理投手(はいせんしょりとうしゅ)がいる。損な役割だが、負け試合を淡々(たんたん)とこなし次の挽回(ばんかい)につなぐ大事な仕事だという
経営トップの責任が問われる最近の事件に、その敗戦処理の難(むずか)しさを思う。巨額損失(きょがくそんしつ)隠(かく)しがあったオリンパスは、歴代経営陣(れきだいけいえいじん)19人に損害賠償(そんがいばいしょう)を求めた。責任を取るのは最初に敗戦のきっかけをつくった投手だけではないことの一例だ JR西日本脱線事故(だっせんじこ)では前社長が無罪となったが、この裁判も歴代社長の責任が焦点(しょうてん)だった。きのうの判決は安全対策に問題があったとして、歴代トップの責任を間接的に問うている。もうひとつの歴代3社長の公判に影響(えいきょう)は必至(ひっし)だ バブル崩壊(ほうかい)期の破綻(はたん)企業で経営責任が追及されながら、最高裁(さいこうさい)で逆転無罪になったケースもあった。歴代トップの責任をどこまで認めるか、最後の一人に押しつけるのが酷(こく)な場合もないではない。政治も同じだ。自民党最後の麻生内閣と同様、民主党の野田内閣も前内閣の失敗を背負っている 挽回するつもりでも敗戦処理に終わることもある。トップに就(つ)く者には、功名心(こうみょうしん)だけでなく負の遺産もかぶる厳(きび)しさが必要なのだろう。 |