【北京】ガイトナー米財務長官は10、11の両日、北京で中国首脳部にイラン産原油の輸出削減を求めるとともに、イランの金融セクターを対象とする米追加制裁について説明する。この際中国側からは懐疑的な反応が示される公算が大きい。
中国は原油の主要な供給源を失うことを懸念しており、その状況は日本も同じだ。ガイトナー長官は今回の訪中後、日本を訪問する予定。中国の場合、この問題は国家主義の政治とも重なってくる。特に最新の制裁が国連の新たな合意によるものではなく、米議会が主導していることから、中国としては、制裁強化を求める米国の圧力に屈したとみられるのは避けたいところだ。
実際、欧州連合(EU)がイラン産原油の輸出削減計画を実行し、中国が残ったイラン産原油の最大輸入国の一角となる場合には、石油業界の契約上の紛争に関してイランから取引上の譲歩を引き出す上で、中国は有利な立場に立てる見通しだ。欧米はイランに対し核兵器プログラムの停止に向けて圧力をかけようとしているが、イラン側は核兵器を開発していないと主張している。
北京・清華大学の経営学教授パトリック・チョバネク氏は、「米国に対し、中国は“受動攻撃的”となろう」と言及。「米国に従わないとは言うのではなく、『指図は受けない』と暗に示すことになるのではないか」と語った。
中国の崔天凱外務次官は9日、メディア向けの会見で、米国のイラン制裁追加措置を露骨に退け、「こうした問題は制裁によって解決できるものではない」と主張。「問題の解決には交渉も必要だ」と語った。
オバマ米大統領は、イランとの取引で重要な役割を果たすイラン中央銀行と取引を行う外国金融機関を米金融市場から締め出す法案に当初の反対から一転し、最近署名し法律が成立した。この法律の例外措置を受けるにはイラン産原油輸入の「大幅削減」を示す必要がある。
米政権は法成立前に一層柔軟性を持たせるという変更を勝ち取ったと説明している。米財務省当局者の1人は、「イランと取引を行う全ての向きにイラン産原油輸入の大幅削減を呼び掛けている」と述べた。
米国の当局者によると、中国は国連が承認した制裁の要件には従っているが、米側は中国政府に対し、中国の銀行にイラン兵器プログラムに関与するイランの銀行と取引をしないよう指導することなどを含め、一段の措置を要請している。
米国の新たな法制定前でも、中国の最大手行は米国の制裁努力にますます協力していると米政権はみていた。しかし、米政権は、香港や中国本土のより小規模な銀行を通して国際金融への新たな「アクセスポイント」をイランが模索していると懸念している。
今回のガイトナー長官の訪中は、習近平国家副主席および李克強副首相と同問題について協議するまれな機会となる見通し。両氏は指導部の世代交代が決まる今年秋の中国共産党大会で、新指導部を主導するものとみられている。
ガイトナー長官は両氏と11日に会談する予定。習近平国家副主席は10月か11月に党総書記になる見通しで、李克強副首相は首相に就任するとみられている。
米当局者らは今年、できるだけ両氏に折衝したいと考えている。また、今回のガイトナー長官の訪中で、今年おそらく2月に予定されている習国家副主席による訪米に向けた準備を巡る協議が可能となるもよう。
(ダウ・ジョーンズ)