セシウム137の半減期は約30年だが、チェルノブイリ付近の土壌に含まれるセシウムの「環境的半減期」は、180〜320年と算定されている。
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画像はWikimedia
[この記事は、2009年12月に掲載された記事を再編集したものです]
1986年に史上最悪の事故を起こしたチェルノブイリ原子力発電所は、期せずして、放射能の影響を研究する格好の実験場となった。事故から20年以上たった現在でも、現場には驚きが隠されている。
周辺の放射性セシウムが、予想されたペースでは消失していないことが、2009年12月14日(米国時間)、米国地球物理学会の秋季大会で発表されたのだ。
[放射性の]セシウム137の半減期(物質が元の量の半分まで崩壊するのにかかる期間)は約30年だが、チェルノブイリ付近の土壌に含まれるセシウムの量は、およそそんなペースでは減少していなかった。
ウクライナ政府が将来的には再びこの土地を利用したいと考えるのは無理もないことだが、研究チームは、セシウムの半量が周辺の環境から消失するまでの期間—–研究チームはこれを「環境的半減期」と呼んでいる—-を、180〜320年と算定している。
今回の調査結果は驚きをもって受け止められた。専門家らはこれまで、放射性同位体の環境的半減期は、物理的半減期よりも短くなると予想してきた。どんな土壌サンプルにあっても、自然の拡散作用によって放射性物質の減少が促進される、と考えられたためだ。
ストロンチウムに関しては、この考え方は妥当だった。だがセシウムには逆のことが当てはまるようだ。
セシウムの物理的特性は変化しておらず、それゆえ研究チームは、環境に理由があると考えている。たとえば土壌採取地点には、チェルノブイリ原発の付近から新たにセシウムが供給されているのかもしれないし、あるいはセシウムは地中深くの土壌にまで拡散しているのかもしれない。今回の研究チームの1人である、サバンナ・リバー国立研究所のTim Jannick氏(原子核科学)は、さらなる調査で真相が明かされることを期待している。[4号炉は事故直後、「石棺」と呼ばれるコンクリートの建造物に覆われたが、老朽化が激しく雨水が石棺の中に流れ込んでおり、原子炉内部を通って放射性物質を周辺の土壌へ拡散しているとされる(日本語版記事)]
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