アリアが予定以上にブラコン化してる回です。
どうしてこうなった……。
アリア・スプリングフィールド
sideアリア
私、アリア・スプリングフィールドは、他人の記憶があります。
……いえ、おかしいと思いますよ。幼児の戯言と取られるかもしれませんが、紛れもない事実です。
最初に夢に、時折白昼夢に出てきて、三歳の時にハッキリと自覚できました。
その記憶は、鈍感でまっすぐで儚くて、正義の味方に憧れていた男性の物でした。
ただ、私がその男性の記憶を持っている理由は皆目検討もつきません。
その男性の生きざまを観たお蔭で、幼児の状態で精神が二歳から三歳にかけて、高校生並に成長しました。
ただ問題は、他人の記憶を持っており、それを言動などでハッキリみてとれるのが問題でした。
そんな事がバレれば、間違いなく病院送りでしょう。
それに異端は碌な目に遭わない事は、『彼』の記憶を観た私には明白でした。
生まれた感情は恐怖。
あるはずのない他人の記憶が怖い。そんな自分が異常と、異端と見なされて排斥されるのが怖い。
何より、
――――大好きなレンにいさまにそんな目で視られたくない……ッ!!
大好きなにいさまに気味悪がられたくない。
大好きなネカネ姉さまに嫌われたくない。
大好きなスタンおじさまに嫌われたくない。
ネギにいさんはこんな自分をどう思うだろう?
遂に私は、異常な自分と周りに対する恐怖で塞ぎ込んでいしまいました。
塞ぎ込んでいたと言っても、周りにはおくびにも出しませんが。
そんな時、自分を心配してレンにいさまが声をかけてくれた時、恐る恐る私はにいさまに質問しました。
――もし、私が他人の記憶を持っていたら、にいさまはどう思いますか? と。
その時の私は何を考えていたのでしょう。そんな質問をして、にいさまにどう思われるか考えなかったのでしょうか?
いえ、そんな考えすら浮かばないほど混乱していたのかもしれません。
私の質問に、にいさまは――――、
『……はァ? そンな事で悩ンでたのかァ?』
――――呆れられました。
『な、何ですか! 人の悩みに対してその反応は!?/// いくらにいさまでも怒りますよ!』
『だってよォ、そォ考えた上で俺を見てみろよ。異常の塊だぞ?』
……そう言えば、にいさまは一人で分厚い本を読んでました。
にいさまは、たまにスタンおじさまの愚痴を聞いてあげていました。
にいさまは幼児と思えない喋り方をしていました。
にいさまは幼児なのに、溜め息を吐きながら珈琲をブラックで飲んでました。
……あれ? 間違いなく異常ですよね……?
『アリア、オマエは俺が気持ち悪いか?』
『そっ、そんな事ありません!!』
『じゃァそれでイインだよ』
にいさまの言葉を聞いた時、ストンと、しっくり来た感じがしました。
『そンなバカみてェな異端児を周りは放任した上、喜んでンだぜ? それを今更他人の記憶持ってるだけでどォこォ言われる訳ねェだろ。それに――――』
――――例え、周りがどンなにオマエの事を気味悪がろォと、俺はオマエを絶対ェ忌避しねェよ。
そう言って、笑いながら私の頭を撫でてくれました。 私を、受け入れてくれました。
この時の嬉しさは言葉に出来きません。大泣きしたのは私の黒歴史ですが。
私はにいさまが大好きです。
私はにいさまに撫でられるのが好きです。
私はにいさまに何かを教えてもらうのが好きです。
将来の夢はにいさまの愛人です。兄弟は法律上結婚出来ませんから。
ブラコンと言われても全くもって構いません。
近親相姦する気満々の変態と言われても、誉め言葉だと返してみせます。
それだけ、私にとってレンにいさまはかけがえのない存在です。
――――なのに、
「いや……いやッ……」
そんな最愛のにいさまが、私を庇って切り刻まれた。
片腕は切り落とされ、出血も激しい。
兄は約束通り自分を護ってくれている。
なのに何だ、この体たらくは。
にいさまの足を引っ張っているだけではないか。
自分の無力が憎い。最愛の兄を傷付けた女が憎い。
そして兄を失ってもしまう恐怖。
塞ぎ込んでいた時とは比べようもない恐怖。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!
力が、力さえ有れば――――ッ!!
――――思い描くのは、常に最強の自分だ。
『彼』の言葉が頭に響く。
そうだ、盾。にいさまを守れる最強の盾をイメージするんだ。
◆◆◆
sideレン
「俺が、最高の素材……だァ? ハッ、つまり俺を実験体か何かにしよォって魂胆か?」
「Exactly」
首謀者がサイエンスキチだとは考えなかったな。気になる点はいくつかあるが、今は最低アリアを逃がさねェと……。
転移符は一人分は準備完了だが、使う隙がねェ。
クソッ! 手詰まりか……。
「まぁ、詳しい話は博士が聞いてちょうだい。できれば自主的にご同行頂けると助かるのだけど」
「そォして欲しがったら、あの愚図狗共差し向ける前に言え。つかどのみちアリアは殺すンだろ? フザけんじゃねェ」
主にいきなり武力行使して無力化してからの脅迫とかな。
しかし実験と来たか……。
「はぁ……博士に叱られるのはキツいのだけど――――仕方無いわね」
フリューリングの目の色が変わる。
勿論色彩が変わってるのではなく、殺意の色が変わった。
「既に腕一本無いのなら、全部無くなっても変わり無いわ」
――――こりゃァマジで覚悟決めるかァ。
閃光しか視覚出来なかったフリューリングの抜刀が、ハッキリと知覚出来た。
知覚加速現象。
人間の眼は300コマ/毎秒以上。
時間にして0.003秒というとんでもないスピードで、物体を捉え脳にその情報を送り続けているらしい。
脳はその他の膨大な情報を処理しつつ命令を下すために実際に知覚できるのは、80コマ/毎秒程度しかできない。
ところがある種の緊張状態や生命の危機に瀕すると、脳は視覚以外全ての状態をシャットアウトし300コマ以上全てを知覚するようになる。
走馬灯とか、一瞬が10秒にも1分にも感じてしまうシステムの正体がこれだ。
実際に俺が体験するのはこれが初めて。
前世は自覚が無いまま死んだらしいからなァ。
さァて、どォする。
知覚加速現象は加速した知覚に体が全くついて行けない。
つまり体が動かない。
破片が使えれば幾らでもどうとでもなったが、博士とやらが封印中。
出来て精々、魔力で障壁耐久度上げるのが関の山。
万事休すだ。
「―――――I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている)」
――――――――は?
「なっ!?」
俺の後ろから莫大な魔力が迸り、フリューリングの表情が驚愕に染まる。
オイオイ、マジかよ。
「熾天覆う七つの円環ッッ!!!」
「上出来だ、アリア」
俺の目の前に、ギリシャ神話の大英雄ヘラクレスの斧剣すら受け止めた七つの花弁の盾が展開される。
勿論、宝具でもない刀がその護りを突破出来る訳もなく。
刀が弾かれ、初めてフリューリングに隙が出来た。
この隙を、待ってたンだよッ!
「『変身』――――鋼鉄化ッ!!」
自身の拳の構成物質が変わる。
地面を踏み込み、踏み込んだつま先から生み出された円運動エネルギーを蓄積しながら肉体上部へ加速させる。
やがて集約された回転エネルギーは、遠心力と気や魔力によって針の様に鍛え、円運動から直線運動させる。
鋼鉄化された拳の威力に、肩口に溜め込んだエネルギーを乗せ、相手の鳩尾にブチ込むッ!!!
「しまっ――――」
「喰らえよッ!!」
――――――――――――龍形気功鍛針功
ゴオッッ!!!
フリューリングの鳩尾に硬質化された拳が入り、追撃に鍛針功が貫いた。
「がはッッ!!?」
流石に体勢が崩れた状態で避すことは出来ず、フリューリングの体が辛うじて残っていた木々に直撃する。
あの体勢で回避されたら、グリズリー相手の鍛練が虚しく感じるわ。
「にいさま、良かった……!」
殴ると同時に地面に崩れ落ちた俺に、大粒の涙を流しているアリアが寄ってくる。
「ハハハ、アイアスの盾とか教えた覚えねェンだがなァ。流石俺の妹だよ」
「……ッ!/// そ、そんな事より早く逃げましょう!! 襲撃者があの女だけとは限りません!」
「まだだ。あのアマ、直撃する前に後ろに跳ンでダメージを軽減しやがった。今から逃げても、俺はこの有り様だ。追いつかれる」
魔力でこれ以上の出血は抑えてンだが、いかせん血ィ流しすぎた。それに、
「そんな事ありません!! 私が背負いますから、だから早く傷を――――」
「充電、完了だ」
俺は転移符をアリアに貼り付ける。
同時に、魔方陣がアリアを中心に顕れる。
「にいさま……何を……」
「スタンのジイサンに謝っといてくれるか? 無理言って借りた本、返せてねェから」
チッ、結局ネギの修正は出来ずじまいか。惜しかったな。
「転移符が使えるなら、にいさまも――」
「残念ながら、魔力は一人分しか充填出来なかった」
フリューリングに斬られた辺りから魔力は延命措置だけに使ってたからな。
使わなかったにせよ、時間が足りねェだろォしな。
「嫌ですにいさま!! 私はにいさまが居ないと――」
「アホか。誰が死ぬッつたよ」
「でも……私は――――」
「必ず戻る」
俺の言葉と同時に転移が完了し、アリアの体が消え失せた。
「……フゥ」
「それで満足?」
「もちっと堪えてくンねェかなァ?」
後ろを向けば、口から血を流しているフリューリングが平然と立っていた。
「そんな事ないわ。肋骨と内臓が潰れたし」
そりゃァ上々。
「美しい兄妹愛ね」
「アイツは特別だ」
事情が事情だ。衛宮士郎みてェに性格が破綻したら大変だしな。
「アラ、シスコンだったの? 意外ね」
「俺の全存在を懸けて否定させて貰う」
失礼にも程があるわ。
「そう、じゃあ連れていかせて貰うわね」
「……好きにしろ」
――――ガッ!!!
首元を打たれ、視界がシャットダウンした。
さァて、後は野となれ山となれだ。
実験とやら、楽しませて貰うぜ。
その後、血だらけのアリアが泣きながら村に帰り、事情を知った村人達が現場に駆け付けた時には、レンや襲撃者の姿は無かった。
破壊された森と、レンのモノらしき血痕と片腕を残して。
テレテテッテテー。アリアが投影、強化を覚えた。
……アホか、くだらんわ(;´д`)
龍形気功鍛針功はレンがイヴキャノンを撃つのが不自然、アダムキャノンは語呂悪いので却下。
かといってただ殴るだけでは味気なかったので、これからの天上天下繋がりで使わせました。
しかし…幼児が拳からビーム……シュールだ。
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無双が書きてー。
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