11日午前、広島市にある広島刑務所から、殺人未遂などの罪で服役中の中国人の40歳の男が脱走し、警察は、逮捕状を取って全国に指名手配し、行方を捜査しています。男は、工事のため刑務所の塀に組まれていた足場を使って脱走したとみられ、警察は、刑務所の管理態勢についても問題があったとみて調べています。
脱走したのは、殺人未遂などの罪で平成20年から広島刑務所に服役していた中国人の李国林容疑者(40)です。刑務所によりますと、午前11時ごろ、敷地内にある運動場で刑務官が点呼をしたところ、李容疑者の姿が見当たらなくなったということです。その後、近くに住む人から、刑務所の塀の外に白い服を着た人が倒れていて、その後、東の方向に走っていったと連絡が寄せられました。また、刑務所の防犯カメラの映像にも、午前10時半ころに塀を乗り越える男の姿が映っていたということで、警察に通報しました。警察は、李容疑者が運動場から足場に移動して逃走したとみて、逮捕状を取って全国に指名手配し、行方を捜査しています。警察によりますと、李容疑者は身長1メートル73センチ、体重66キロくらいの中肉で、頭は丸刈りにしていて、脱走した当時は上下とも白っぽい下着のような姿だったということです。刑務所によりますと、李容疑者は当時、およそ50人の受刑者と共に運動場で運動していて、複数の刑務官が監視していましたが、点呼で確認するまで、いなくなったことには気付かなかったということです。刑務所は現在、塀の工事中で、高さ4メートル50センチの塀の内側と外側に、一部工事用の足場が組まれています。また、刑務所の塀の上には、触れると反応する特殊な電線も張り巡らされていましたが、工事のため11日は作動しないようになっていたということです。警察は、刑務所の管理態勢についても問題があったとみて調べています。
法務省によりますと、刑務所や拘置所から、受刑者や勾留中の被告などが脱走した事件は、平成になって以降、9件起きています。このうち、平成8年2月には、東京拘置所で同じ部屋に収容されていたイラン人の被告7人が、鉄格子を切断して集団で脱走し、その後、全員が逮捕されました。平成16年8月には、さいたま市の拘置所で強盗傷害などの罪で勾留されていた被告の男が、運動場のフェンスを破って脱走し、翌日、警察に逮捕されています。今回、受刑者が脱走したことについて、法務省矯正局の三浦守矯正局長は、「あってはならないことであり、近隣の皆さまに深くおわびします。逃走した受刑者の身柄の確保に全力を尽くすとともに、原因を調査して再発防止に当たります」というコメントを出しました。