昨日は、カンボジアで騙されたという日本の方の相談に乗っておりました。
ご本人には非常に申し上げにくいのですが、とても初歩的で安易な内容で騙されていまして、本当に日本人は騙されやすいと言いますか、良くも悪くも性善説で生きているんだなと改めて感じ、頭が痛くなりました。
こういう場合には日本の公的機関もどこも誰も助けてくれないそうで、困り果てて私に相談に来られたそうなのですが、とりあえず友人の警察幹部に連絡しまして相手を捕まえてもらい、返金するまで留置所にぶち込んでもらう事にしました。
何とも疲れました。
そもそも何で日本人は騙され易いのでしょうか?
その理由は実は明白です。日本とカンボジア間に限らず異文化間では、お互いの国の法律や税制度、文化や慣習、もっと平たく言ってしまうと『常識』が違うために、共同で何事かを進めようとすると、多かれ少なかれ、双方の間に認識のギャップや誤解、矛盾が生じます。
このギャップ等が存在したまま何とか事業などを進めしようとして、仕方無く自分が折れ、相手を信じて相手の土俵に乗ると大体相手にいい様にやられてしまい、結果的に「失敗した!」とか「騙された!」という事になってしまいます。
では、異文化間で何らかの事業を立ち上げようとして、何らかのギャップが生じて立ち止まってしまった場合や、後で「騙された!」とならないためには、何をどうすれば良いのでしょうか?
歩み寄りが必要なのは間違いありませんが、それは一方的な妥協をするという事ではありません。重要な事は、お互いが納得出来る新たな仕組みやルールを作るという事です。
ただ問題は、多くの日本人はお上が決めたルールに従う事には慣れてはいますが、自分がルール作りに積極的に関わって、相手を納得させつつ自分が有利になる様なルール作りをする、という事が非常に不慣れだったりする事です。
むしろ、自分が優位になる様なルール作りやルール変更の作業を、多くの日本人は不公平だと考える様ですね。
少し話は脱線しますが、日本以外では、どの国の人も性善説で動いてはいないというのは常識です。当然の様に、自分の利益の最大化を目指します。
従って国際社会で何かしらのルール作りをする際には、各々が自国もしくは自分が少しでも有利になる様に駆け引きをし、それをルールに組み込もうとするのは当たり前の事です。
そんな事すら知らず、ただ感情的になってTPPのルール策定作業に参加しないなどというのは信じがたい愚の骨頂でして、これは結局『最後に一番不利になったのは日本だけでした』という様な、お馬鹿な結果になってしまう可能性が高いかと思います。
TPPに加盟するかしないかの判断はルールを作った後に考えればいい話でして、ルール策定作業に参加して、日本の国益に与するルールがどうしても出来なかった場合には、「やっぱり不参加にします」と言えばいいだけの話です。むしろ、「日本に有利なルールが出来ないのであればTPPには参加しないよ」という態度を見せ、他国に対して日本に有利な条件をルールに盛り込ませる、といった駆け引きをする事が重要です。
私は欧州系の巨大金融機関にいたせいか、上記の様なやりとりは当たり前のだと思っていたのですが、どうやら多くの日本人にはこの常識が無かったりする様なのです。
「国際常識の無さ」。これが、異文化の国で日本人が事業を行う際に多くの問題を引き起こす大きな原因です。
話を戻しまして・・・。
文化や常識の違う異国で何事かを成し遂げようとする際に最も重要な事は、お互いが納得出来る新しい仕組みやルールを「自分が少しでも有利になる様に」作る事です。
後で泣き言を言いたくなければ、とにもかくにも自分がルール作りに関わる事です。
このカンボジアにも、『日本企業のカンボジア進出支援』を看板にしているコンサルタントと名乗る人が沢山います。でも、日本企業とカンボジア政府の双方が納得し、しかも日本の法律や税制に矛盾せず(←重要)、なおかつ日本企業が少しでも有利になる様に、新たな仕組みやルールを作る所まで話を持って行ける人は果たしてどのくらい居るのでしょうか?
ちなみに言うまでもない事ですが、『日本企業が少しでも有利になる様』に持って行くのは、コンサルタントに報酬を払う人、つまりクライアントが日本企業になるからです。
さて、上記の事を鑑みるに、コンサルタントを名乗る人が沢山いながらカンボジアで事業に失敗した人や騙された人が多いという事は何を物語るのでしょうか?
政府の偉い人を日本企業に紹介するだけでしたら誰でも出来ます。
双方が相容れられないギャップが表面化した際に、ぶっちゃけて言えば、クライアントの利益を最大化するための新しい仕組みやルールが作れない人は、コンサルタントを名乗ってはいけないと思います。
とにもかくにも、人脈だけでコンサルタントを名乗っている人(話だけはデカイという特徴があります)にはくれぐれも注意して頂きたいと思う次第です。