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前回までのあらすじ

隼樹「リインフォースは、美人でした」
平凡世界編
第7話:友達
 生きてるってそれだけで素晴らしい、と隼樹は思った。
 犬の怪物の一件の後、プレシアとアリシアを加えた一行はファミレスに居た。隼樹を挟むように左右にプレシアとアリシアが座り、向かい側の席にリインフォースが座っている。後から駆けつけたプレシア達に、リインフォースが自分の素性や事情について説明している。
 隼樹は、コーラを飲みながら彼女達の会話を聞いて、見守っていた。リインフォースが魔導書の管制人格と聞いた時は、流石のプレシアも驚いていた。管理外世界で、自分と同じ魔法を扱う者に出会ったのが意外だったのだろう。心なしか、プレシアの顔には安心と嬉しさが混じったような笑顔が浮かんでいる。自分と似た境遇で、同じ世界の者と出会えて、驚き以上に喜んでる様子だ。プレシアの反応を見て、隼樹は安心した。最初に彼女がリインフォースを見た時は、隼樹の浮気相手かと疑われ、半ば本気で命の危険を感じた。だが、誤解も解けて、同じ世界の仲間同士で話をしている。
 なので隼樹は、安心して喉にコーラを流した。
 隣に座ってるアリシアは、オレンジジュースを飲んでいる。
 二人がのんびりとしている間に、プレシアとリインフォースはお互いの事情を話し終えた。

「そう……貴女も沢山辛い思いをして、大変だったのね……」
「プレシア女史の方こそ、悲しい経験をしたのですね……」

 会話を終えた二人は、どんよりと暗い雰囲気になっていた。互いの不幸話を聞いて、気持ちが沈んでしまったらしい。
 ──お、重いぃ……!
 重苦しい空気を敏感に察した隼樹は、顔を引きつらせた。
 嫌な空気を払拭しようと、隼樹が考えてる時に、アリシアが口を開いた。

「リインフォースさんは、これからどうするの?」

 その台詞は、最初のファミレスで隼樹がリインフォースに放った質問だった。

「分かりません」

 リインフォースは、ゆっくりとかぶりを振った。主も居なければ、居場所も無いので、寝床の確保も出来ない状態で、本人にもどうしたらいいか分からなかった。
 気のせいか、場の空気が更に重くなったように感じる。
 慌ててプレシアは、囁き声で隼樹に相談した。

「隼樹、何とかならないの?」
「えっ? いや、無茶言わないで下さいよ……。言っときますけど、(うち)に泊めるのは無理っすよ? プレシアさんとアリシアで一杯一杯なんですから……」
「そこを何とか……出来ないかしら?」
「無理です。隼樹なら何でも出来ると思ったら、大間違いですよ!」

 プレシア達と同じく、力になってあげたい気持ちはある。しかし、これ以上家に人を増やす事は出来ない。
 頼ってくれるのは嬉しいが、さすがに無理な事は無理だった。
 だが、プレシアは引き下がらない。

「けど……このまま放っておけないわ」

 似た境遇のリインフォースを、プレシアは見捨てる事が出来なかった。何とか力になりたいが、この世界の出身で無いので、自分では衣食住の力にはなれない。
 だからプレシアは、自分達を救ってくれた隼樹に協力を求めているのだ。
 プレシアの頼みに首を傾げ、困った仕草をしていると、反対側からスーツを引っ張られた。横に向けた視線の先には、アリシアが居た。

「お兄さん、リインフォースさんを助けて……! お願い!」

 潤んだ瞳での上目遣いで、アリシアが訴えてきた。
 幼い少女の可愛い仕草に、隼樹は顔を顰めた。
 ──や、やめろォォォォ! なんちゅう可愛い仕草するんだ、この娘はァァァァ!
 心中で叫びを上げた直後、今度はプレシアに裾を引っ張られた。

「お願い、隼樹! 貴方だけが頼りなの!」

 両手で隼樹の右手を包むように握り、切なそうな顔でプレシアが頼み込んでくる。
 ──親子揃って頼み込んでくるなァァァァ!
 隼樹の叫びは、誰にも届かず心の中で響いた。
 すると、リインフォースが顔を上げた。

「あ、あの……無理しないで下さい。私なら、その……大丈夫ですから……」

 全然大丈夫そうに見えなかった。明らかに顔には不安の色が浮かんでおり、幸薄そうな雰囲気になっている。それに、彼女はお金が無いので、ネットカフェやカプセルホテルで過ごすという案も使えない。無一文で生きられる程、現代の世の中は甘くないのである。
 そんなリインフォースの様子に、隼樹は更に眉根にシワを寄せた。胸の中に、よく分からない罪悪感が芽生える。このまま見捨てたら、後悔しそうな気がするのだ。
 ──俺にどうしろって言うんだよ……?
 ガックリとうなだれる隼樹に、プレシアが耳元で囁いた。

「もし、彼女を助けてくれたら……今夜、私を好きにしていいわよ?」
「いい考えがあります!」

 一瞬にして心変わりした隼樹は、同時にある事を閃いた。


     *


「──と言う訳なんだよ、恭介君」
「と言う訳なんだよ、じゃねーよ」

 隼樹の話を聞いた青年は、顔を顰めた。
 場所は、隼樹が住んでる街にあるマンションの一室である。それなりに高級そうで、室内も広く、内装もしっかりとしている。そんな高そうな部屋に住んでいるのが、隼樹と会話をしている青年である。
 名前は、影地恭介(かげちきょうすけ)と言い、大学時代の隼樹の友人である。短めの黒髪、ややイケメンな顔、隼樹と同じ位の背丈、これと言って特に特徴が無い男だ。要するに、隼樹よりちょいマシだが地味な男なのである。違いを上げるとすれば、恭介の方が若干頭が良く、眼鏡をかけておらず、大学を卒業しても就職していない点である。

「何で俺が、見ず知らずの人を家に泊まらせなきゃいけねぇんだよ?」
「だからぁ、俺の家はもう一杯一杯だからぁ、知り合いの中で親離れしてマンション暮らしの恭介君の力が必要だって言ってるじゃなか~恭介君」
「いちいち語尾に“恭介君”って付けんな!」

 イラッときたらしく、恭介は声を上げた。
 友達の頼みとは言え、いきなり知らない人を泊める程、恭介はお人好しでは無い。
 怒りを鎮めるように、隼樹は「まあまあ」と両手をかざす。

「まあ、恭介君の言い分も分かるよ? 同じような事を、俺も親に言われたからな」
「だったら諦めて帰れ。俺は忙しいんだ」
「働いてもいないのに、どうして忙しいんだい恭介君? どうせ夜中までエロゲーやってるだけだろう、恭介君?」
「うるせーよ! 俺の勝手だろうが!」

 痛いところを突かれ、恭介は声を荒げた。
 部屋に引き籠もってる恭介は、隼樹以上に働く意欲が無い人間なのだ。働いたら負け、と言う完璧なニート思考で、ほぼ一日中パソコンゲーム(主にエロゲー)をプレイしている。
 知らない人物を家に入れられないと言うのもあるが、他人を招き入れてエロゲーがやり難くなるのを恐れているのだ。
 そんな恭介に、隼樹は不敵な笑みを浮かべて囁いた。

「けどさぁ、恭介君……果たして、彼女を見ても同じ事を言えるかな?」
「彼女?」

 訝しげに目を細める恭介を残し、隼樹は立ち上がって玄関に向かった。扉が開く音の後で、隼樹がリビングに戻ってきた。後ろには、居候の件のリインフォースが居た。彼女の後に、プレシア、アリシアと続いている。
 見知らぬ美女を前にして、恭介はポカンと口を開けたままでいた。
 茫然となってる恭介に、隼樹は言ってやった。

「こちら、リインフォースさん。住む場所が無くて、恭介君の家に是非泊まりたいんだと」
「マジでかっ!?」

 今までで一番の大声で、恭介はリアクションした。
 大きく開いた目を丸くさせ、まじまじとリインフォースを見つめる。

「この美人コスプレ姉ちゃん誰だ!?」
「だ~か~ら~さっきも説明したじゃないか、恭介君。ミッドチルダって別の世界からたってきた、リインフォースさんだよ。それから、後ろに居るのは、プレシア・テスタロッサさんと娘のアリシアちゃん」
「ど、どうも初めまして」
「初めまして」
「こんにちは」

 紹介を受けて、三人は恭介に挨拶した。
 現れた美女美少女に、恭介の驚きと興奮は増すばかりだった。

「マジかよっ!? えっ? って言うか、マジでリインフォースさん家に泊めちゃっていい訳!?」

 物凄い勢いで、隼樹に詰め寄った。
 そんな恭介の様子を見て、困惑気味にリインフォースが隼樹に尋ねた。

「あの、隼樹……。この男は、一体どうしてしまったのですか?」
「えっと、翻訳しますと……『マジでこんなコスプレ美女を、俺の家に居候させていいのか? イヤッホー! 超嬉しい!』と言ってます」

 隼樹の翻訳を聞いて、リインフォースは引き気味に後ずさり、恭介から距離を取る。身の危険を感じたらしく、自分の両肩を抱いて怯えた様子をしていた。
 プレシアも警戒して、アリシアを護るように抱いている。

「オイッ! 何勝手な事言ってんだよ! 三人ともドン引きしてんじゃねーか!」

 額に血管を浮かべ、恭介が怒鳴った。

「世の中第一印象が大事なのによぉ、これじゃあ最悪じゃねーか!」
「まーまー落ち着こうよ、恭介君」

 怒る恭介と宥める隼樹。
 その時、玄関の方から扉が開閉する音が聞こえてきた。全員の視線が、玄関がある方に向けられる。小さな足音が、リビングに近付いてくる。
 扉が開き、一人の女性がリビングに入ってきた。

「あっ、おかえり姉貴」

 恭介の一言で、家族の者だとプレシア達は察した。
 姉貴と呼ばれた女性は、艶やかな黒の長髪、吸い込まれそうな感じの黒の瞳、上下黒のスーツを着ている。整った顔は無表情だが、無愛想と言うよりも凡人には無い神秘的な魅力があるように捉えられる。顔だけでなく、スタイルも良い。胸は大きく腰は引き締まって、ミニスカートから覗く足もスラリと細くて長い。モデル顔負けの美貌だ。
 恭介は立ち上がり、帰ってきた姉の隣に移動した。

「俺の姉貴の影地静香(しずか)だ。姉貴、この人達は林の……ええっと、知人だ。プレシア・テスタロッサさんに、娘のアリシア、それにリインフォースさん」

 紹介をした後、静香は無言で会釈した。
 プレシア達も、ペコリと頭を下げた。
 すると静香は、一同の横を通り過ぎて自分の部屋に向かう。

「そうだ、姉貴。林に頼まれて、リインフォースさんを家に泊めたいんだけどいいかな?」

 自室に向かう姉の背中に、恭介は声をかけた。
 扉を開け、静香は立ち止り、無言で一度頷いた。それから部屋の中に入り、扉を閉めた。
 終始無言で去っていった静香に、プレシア達三人はポカンとなっていた。
 苦笑いを漏らして、恭介は頭を掻いた。

「あはは……すいませんね。俺の姉貴、喋らないんすよ」
「そ、そうなの。人見知りする娘なのかしら?」
「ええ、まあ……」

 曖昧な返事をして、恭介は頷いた。
 姉の許可も下り、影地姉弟(きょうだい)との顔合わせも済んで、リインフォースは影地家に居候する事が無事決まった。問題が解決して、隼樹は一安心した。もし断られたらどうしようと少し不安だったが、恭介は性格からしてクリアしてるし、姉の静香も無口ではあるが良い人だから、何とかなるとは思っていた。この二人に頼って正解だった、と隼樹は思った。
 壁にかかってる時計を見て、隼樹は立ち上がった。

「さ~て、じゃあ無事リインフォースさんの住まいも決まった事だし、俺達は帰りましょうか」
「そうね。そろそろお暇しましょう。恭介君、今日はありがとう」
「バイバイ、恭介お兄さん!」

 プレシアとアリシアが、笑顔で恭介に礼と挨拶をした。
 二人の笑顔に、恭介の表情が緩む。四十代のオバサンと小さな子供だが、二人共美人美少女なので、礼を言われて良い気分になる。

「いや、そんな……」

 恭介は照れ隠しするように頭を掻き、顔が赤くなった。
 そんな恭介を見て、隼樹は少し表情を険しくさせ、軽く舌打ちした。何だか面白くない、と思った。プレシアが自分以外の人に笑顔を向けるのも、その笑顔を向けられた人がデレデレするのも、何か嫌に感じる。
 ムスッとしてる隼樹を横目で見て、プレシアは気付かれないようにクスリと小さく笑った。すぐに隼樹が、妬いている事に気付いた。それが嬉しくて、思わず笑ってしまった。
 三人は、部屋を出ようと玄関に向かって歩いた。
 そこへ、

「待って下さい!」

 後ろから、リインフォースに声をかけられた。
 隼樹達は足を止めて、振り返ってリインフォースを見た。
 赤い瞳を真っ直ぐ隼樹に向け、リインフォースは言った。

「隼樹──貴方のお蔭で助かりました。貴方に出会わなければ、ロストロギアで狂化した犬に襲われてどうなっていたか分かりませんし、寝床も見つける事も出来ませんでした。こうして生きていられるのは、貴方のお蔭です。この恩は、決して忘れません。ありがとうございます!」

 感謝の意をこめて、素敵な眩しい笑顔を浮かべた。
 リインフォースの笑顔を見て、やっぱり助けてよかったと思った。危険な目に遭ったけど、彼女の笑顔を見れただけでも、体張った甲斐があったと思えた。


     *


 その日の深夜。
 自室で、隼樹はプレシアと向かい合っていた。リインフォースの件で、プレシアが「協力してくれたら私を好きにしていい」と言ったので、隼樹はエッチする事を要求した。プレシアも頬を赤くさせて戸惑ったが、嫌がらずに首を縦に動かしてくれた。

「そ……それじゃあ、脱ぐわね……」
「は、はい」

 生唾を飲み込む隼樹の目の前で、プレシアは服を脱ぎ出した。服の下から、ブラジャーに収まり切らない豊満な胸が現れ、脱いだ時にタプン、と大きく揺れた。熟された身体は、若い女子には無い大人独特の色香があった。
 プレシアの胸が目に飛び込んだ瞬間、隼樹の体温が一気に上昇した。同時に、男のセンサーが反応してビシッと起立する。
 ソレを見て、プレシアは嬉しそうに笑う。

「ふふ。こんなオバサンの身体で悦ぶなんて……嬉しいわ」

 続いてスカートも脱ぎ、下着姿となる。
 刺激的な紫色の下着姿のプレシアは、普段の優しい母親とは違う、魅惑的な雰囲気を纏っていた。
 緊張と興奮が高まっていき、熱くなってきて隼樹は額から少量の汗をかく。
 そんな隼樹に、プレシアがソッと両手を伸ばして、首に絡めた。

「私に任せてくれればいいから。いいわね?」
「は、はい」

 さっきと同じように答え、隼樹はプレシアのされるがままにやられる。
 詳しい描写は出来ないが、簡単に説明すれば隼樹が受け、プレシアが責めに回っていた。但し、SMプレイでは無い。隼樹には、痛みで快感を憶える趣味は無いからだ。何と言うか、女性に気持ちよくされるのが好きなのである。勿論、自分から責めるのも好きだが、プレシア相手では受ける方が良いようだ。
 プレシアの手や足、胸や口、●●●で責められ、隼樹は快楽の絶頂に達した。
 朝から大変だったが、無事に一日を過ごす事が出来たのだった。


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