沢山笑って、家族が増えて、幸せだった
私達は、貴方との日々を忘れない
エピローグ
ゼツとの闘いから二ヶ月が経った頃、ある墓場にナンバーズの姿があった。
ここは、隼樹の故郷である地球。日本のある町にある墓地の中に、塚本隼樹のお墓が立てられていた。先頭に立つウーノが、古い花と新しい花を替えた。
あの闘いの後、ナンバーズは隼樹の出身世界を特定した。管理局のなのはも地球出身だったが、別次元だったので違ったが、ソレを元に調べて見つけ出したのだ。隼樹の家を見つけて、家族にも会い、事情を説明した。最初は信じてもらえなかったが、息子の死を聞かされて、ショックを受けて泣き崩れた。両親は、怒りと悲しみに任せてナンバーズに罵倒を浴びせた。隼樹を護れなかった責任から彼女達は、正面から両親の感情を受け止めた。
ナンバーズは、部隊を解体して管理局からも離れ、今は世界を渡り歩いて旅している。上層部がうるさく引き止めてきたが、スカリエッティの技術の一部のデータを差し出す事で承諾してくれた。ギンガは、陸士部隊に戻っている。
自由の身になった今でも、月に一度は皆で墓参りに来ている。
「あれから、もう二ヶ月経つのね」
「ああ、そうだな」
ウーノの呟きに、チンクが頷いた。
チンクは、ゼツから受けた傷も完全に癒えて、元気になっている。
「聞くっスよ、隼樹。ノーヴェったら、寂しくて毎晩枕を涙で濡らしてるっスよ」
「ウェンディ! 余計な事言うな!」
墓場に来ても、変わらず騒がしいウェンディとノーヴェだった。
「そうそう。クアットロもね、隼樹がいなくなってからしばらく元気なかったんだ。今もまだちょっと落ち込んでるけど」
「べっつに~、私は落ち込んでなんかいないわよ~」
珍しくディエチが、クアットロを弄るような事を言う。彼女の言葉に対して、クアットロはどこか強がったように返した。最高の弄り相手を失って、彼女なりに寂しがってるのだろう。それでも、隼樹の墓の前で強がってみせるのは、意地なのかもしれない。
「トーレも、寂しがってましたね」
「……奴も家族、だからな」
セッテの言葉に、トーレは少し恥ずかしげに答えた。エロくて、臆病で、エロかったが、それでも彼は大事な家族なのだ。その事は、死んでからも変わらない。
「隼樹が居なくなって、随分静かになっちゃったからな~」
「はい」
「そうだね」
頭の後ろで腕を組むセインが、溜め息をついた。その後に、ディードとオットーが小さく声を出した。普段は陽気なセインも、この時ばかりは割とおとなしかった。ディードとオットーは、一見無表情に見えるが、その顔には悲しみが滲んでいた。
「キミのツッコミを受けられないのは、私としても寂しいものだね」
スカリエッティは、何度も隼樹のツッコミと言う暴力の被害に遭った。しかし、彼にとっては今まで経験した事がなく、新鮮な出来事だった。それ故に、今となっては良い思い出である。
『隼樹よぉ、テメーどんだけ幸せもんか分かってんのか?』
スカリエッティの手にある無名刀が、羨ましそうに言った。そんな無名刀も、隼樹を死なせてしまった事に責任を感じている。自分の力不足のせいで、闘いが長引いてしまったと思っているのだ。ナンバーズからは、「お前だけの責任ではない」と言われたのが唯一の救いだった。
「隼樹。私達は、元気でやっていますよ」
微笑みを浮かべ、隼樹の墓にドゥーエが話す。脳裏に浮かぶのは、隼樹とのキス場面だった。おそらく、キスをした回数ならドゥーエが一番だろう。
「私も、隼樹さんの分まで精一杯生きていきます」
ギンガは、スカリエッティのアジトで目覚めた時の事を思い出す。隼樹の進言が無ければ、自分も機動六課との闘いに駆り出されていた。隼樹のお蔭で、妹や仲間達と闘わずに済み、新たな家族を得る事が出来た。
妹達の話が一通り終わったところで、ウーノがヴィヴィオを前に出した。
「さあ、ヴィヴィオもパパに挨拶しましょうね」
「うん」
コクリと頷き、ヴィヴィオは自分より少し大きい墓を見上げた。
「パパ。ヴィヴィオは元気だよ。ウーノママとお姉さん達とスカリエッティおじちゃんと一緒に、色んな世界に行ってるの。コレ、その時に拾った石。パパにあげるね」
ヴィヴィオは、持ってきた石を墓の前に置いた。その石は、陽の光を受けて、まるで宝石のように輝いている。
「隼樹」
チンクは、胸の前で手を握った。手の中にあるのは、赤い石だった。隼樹がミッドチルダに来る原因となった、あの赤い石だ。ゼツとの闘いの後、形見として肌身離さず持っている。この形見を巡って、ナンバーズが争ったのは、また別の話だ。
「今の私達が在るのは、お前のお蔭だ」
形見を片手に、チンクは微笑み、ずっと伝えたかった想いを告げる。
「ありがとう」
ナンバーズ~魔法が使えない男~・完。
『ナンバーズ〜魔法が使えない男〜』を最後まで読んでいただき、ありがとうございます! 途中から長期放置して、ご迷惑おかけしました。それでも読んでくれた皆さんには、本当に感謝してます。
こうして、何とか完結も出来て一安心です。
『ナンバーズ〜魔法が使えない男〜』は終わってしまいましたが、他にもまだ続いてる小説があるので、そちらもよろしくお願いします。
では。
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