温泉旅館話 後編
隼樹がナンバーズと勝負したり、の……!
第三十二話:温泉旅館を楽しもうぜ! 後編
温泉旅館に到着してすぐに、ナンバーズ一行は温泉を満喫した。
そして、浴衣に着替えて一行は遊戯場にやってきた。UFOキャッチャーやシューティングゲーム等、様々なゲームがある。
その中で、隼樹達はある球技をやっていた。
「シッ!!」
カコォン、という乾いた音を立てて、玉が緑色の台の上を飛び交う。
台の両側には、隼樹とウーノが立っていて、手に持ってるラケットで玉を打ち合っていた。
そう、温泉といえば温泉卓球。
だが、ただの遊びではない。
勝ちたいのである。隼樹は、ナンバーズに一回でいいから勝ちたいのである。
だからと言って、隼樹は喧嘩では勝てない。勉強も無理だ。ナンバーズは頭も良い。
そこで隼樹は考えた。ナンバーズに勝つには、ナンバーズが経験してない事で勝負を挑めばいい、と。
そんで、卓球経験がある隼樹はナンバーズに卓球勝負を申し込んだ……のだが──。
「ハッ!!」
ウーノはラケットを振り抜いて、強烈なスマッシュを叩き込んだ。
ピンポン玉は隼樹の脇を通り過ぎて、後ろの壁にぶつかった。驚いた隼樹は、顔を引きつらせる。
「ハーイ、隼樹の負けー」
審判のセインが勝敗を口にした瞬間、隼樹はガクッと床に膝をつけた。
「ま……まだまだだな、俺……」
敗北した隼樹は、力無くその場にうなだれた。
全敗。
ナンバーズ全員と勝負して、隼樹は全敗した。
トーレのスイングは速過ぎて見えないし、オットーは地味に強いし、ノーヴェはスマッシュの威力が強すぎてピンポン玉を何個も壊すし、ウェンディとディエチは狙いが正確で外さないし、何気にウーノも強かった。
ドゥーエは試合中、浴衣をはだけさせ、胸の谷間を強調させて隼樹の視線を釘付けにさせた。集中力が切れた隙に玉を打つという、『お色気作戦』でドゥーエは勝利した。
「……スケベな自分が憎い!」
と敗北した隼樹は呟いた。
クアットロは、シルバーカーテンを使ってピンポン玉の幻影を作り出して混乱させる、なんてとんでもない反則技を堂々と使用した。
「いや、もはや卓球じゃねーよ!!」
と隼樹は試合中、抗議し続けた。
そんな感じで、隼樹はナンバーズに敗北してしまったのだ。
連戦で隼樹は、汗だくになって疲れ切っていた。
「いや〜、負けてしまったね、隼樹」
不意に声をかけられた。
隼樹が振り向くと、視線の先にはスカリエッティがいた。スカリエッティは、片手に牛乳瓶を持ってマッサージ機に座ってくつろいでいる。
「あたくの娘さん達……卓球も強すぎ」
「まぁ、常人より運動能力が高いからね」
言ってスカリエッティは、牛乳を一口飲んだ。
「……何か腹立つ。上唇に白いひげ出来てるぞ」
隼樹は目を細めて、スカリエッティを睨んだ。
そこへ、ギンガが近寄ってきた。
「元気出してください。隼樹さんも頑張りましたよ」
優しく微笑んで、隼樹を励ます。
「ギンガ」
ギンガの微笑みを見て、隼樹は顔を赤くした。そのまま、ジーッとギンガの顔を見つめる。
「いつまで見惚れてんだよ!」
イライラしたノーヴェが、隼樹の後頭部を叩いた。
卓球でナンバーズに勝つ、という隼樹の計画は破れた。だが、卓球勝負で敗北する事は、計算の内。
次の勝負で絶対に勝つ、と隼樹は心中で呟いた。
*
温泉卓球で汗を流した後、夕食を食べる為に一同は大広間に移動した。
敷かれている座布団の上に座って待っていると、料理が運ばれてきた。料理も和風で、隼樹はテンションを高くして食べる。
「そういえば最近、隼樹の手料理食べてないっスね」
口の中にあるオカズを飲み込んでから、ウェンディが言った。
「隼樹さんの手料理?」
箸を持つ手を止めて、ギンガが聞いた。
急に自分の料理の話が挙がって、隼樹は動揺して喉にオカズを詰まらせて、ウーノに背中を叩かれる。
「隼樹さん、料理できるんですか?」
少し感心した様子で、ギンガが聞いた。
「ごほっ……いや、まぁ、作れる事は作れるけど……」
「作れるけど、味は微妙なんだよね〜。たまにマズイ時もあったし」
隼樹が答えてる途中で、セインが割って入った。
「いや、余計な事言わなくていいから!」
とセインに怒鳴る隼樹。
「そうなんだ。どんな味なのか、ちょっと気になりますね。一度食べてみたいです」
「え? そ……そう?」
あれ? 意外と好反応だな。やっぱり今の時代、男も料理作れないとダメなのかな。
しかし、隼樹はガルマとの戦いの後、入院したり、隊舎ではガジェットが料理作ったりと、最近は料理を作っていない。
今度、厨房を借りて料理の練習するかな、と考えながら隼樹はお茶を一口飲んだ。
まぁ、そんな雑談をしながら、夕食を食べ続けた。
*
「あー、美味しかった〜」
美味しい夕食を食べ終えて、みんな満足していた。
そして一同が部屋に戻ろうと、席を立とうとした時、
「みんな、ちょっと待ったァァ!!」
隼樹が、みんなを呼び止めた。
「ん? どうした、隼樹?」
トーレが隼樹に聞いた。
「突然だけど、みんなに勝負を申し込む!」
目をカッと見開いて、隼樹は大声で言い放った。
「勝負?」
トーレは首を傾げた。
「お前、まだ卓球で負けた事、根に持ってんのかよ?」
呆れたように、ノーヴェが言った。
「ちげーよ! むしろ、卓球で負ける事は想定内。あっちは前座。こっちが本番!」
そう言って隼樹は、懐から“ある物”を取り出した。
隼樹の手に握られてるのは、携帯ゲーム機だった。
「ゲーム、ですか?」
とウーノが聞いた。
「そう。スカリエッティに頼んで、コレと同じ型のゲーム機を作ってもらった。一人ずつ順番に、俺と対戦してもらう」
懐からゲーム機をもう一つ取り出して、隼樹は説明した。
「面白そうだな。いいよ、やろうよ」
「そういえば、隼樹が持ってきたゲームやるのは初めてっスね」
セインとウェンディは、隼樹が持ってきたゲームに興味を持って、勝負に乗る。
すると他のメンバーも、仕方ないな、と言って再び席に座った。
「で? 何のゲームやるんだ?」
一番手のセインが、隼樹の前に座って聞いた。
「ゲームはコレだ」
隼樹は不敵な笑みを浮かべて、ゲームの説明書をセインに見せる。
「花札だ」
花札? とギンガを含むナンバーズ一同は、首を傾げる。
花札とは、48枚の絵札を使い、決められた札のグループを作って点数を競うゲームである。最初に先攻である“親”と後攻である“子”を決め、互いに8枚、場に8枚配ってゲームを開始。先に役を揃えた方が勝ち、というシンプルなゲームなのだ。
初心者のセイン達は、隼樹から渡された説明書を読む。
その間に隼樹は、ゲームの電源を入れて準備している。
「よーし! ルールと操作方法は覚えたぞ!」
説明書を読み終えたセインが、ゲーム機を手に取った。
「準備はいいな?」
通信対戦の準備を終わらせて、隼樹はセインに聞いた。
「いつでもいいよ!」
セインは、やる気満々に答えた。
「よし! ゲームスタートだ!!」
隼樹が宣言した直後、花札が始まった。
そして──。
強かった。
ナンバーズではなく、隼樹が強かった。
先ほどの卓球勝負とは打って変わって、圧倒的強さでナンバーズに連勝する。
「オラァァァ! 三光! 青短じゃァァァァ!!」
役を揃えた隼樹が、物凄い気迫を放って叫んだ。
「くそっ! 負けた!!」
敗北したノーヴェは、拳を握って床を叩いた。
「ぶははははは! 俺は、ザコとは違うのだよ!!」
憎たらしい笑みをして、隼樹はノーヴェを見下ろす。
「この野郎! ムカつくんだよ、その顔ォォォ!!」
「ノーヴェ! 抑えるっス!」
「気持ちは解るけど……!」
隼樹に殴りかかろうとするノーヴェを、ウェンディとディエチが止める。
悔しがってるノーヴェ達の様子を見て、隼樹は邪悪な笑みを浮かべた。
──計画通り!
得意なゲームで、ナンバーズに勝つ。これが隼樹の計画。
「さて、残るは……」
隼樹はノーヴェから視線を移して、最後の対戦相手を見た。
「私ね」
そう言って歩み出たのは、ウーノ。
「最後はナンバーズの作戦指揮官、ウーノ。相手にとって不足無しだな」
先ほどまで、ニヤニヤと笑みを浮かべていた隼樹の表情が変わった。真剣な顔で、ウーノを見据える。
そこへ、
「ちょっとぉ〜! 私を忘れてるわよぉ〜!」
二人の間に、クアットロが割って入った。不満そうに目を細めて、隼樹を睨んでる。
「いや、クアットロとは対戦しない」と冷ややかに突き放す隼樹。
「ええ〜!? どうしてよぉ〜?」
「だってクアットロ、シルバーカーテンでイカサマしそうなんだもん。ってか絶対するし。正々堂々って感じしないもん。だから対戦しない」
温泉卓球の時を思い返して、隼樹は対戦を拒む理由を説明した。
「何よ、それぇ〜! 放置プレイ? 酷いわ隼ちゃん!」
クアットロは両手で顔を覆うと、ドゥーエに泣き付いた。泣き付かれたドゥーエは、よしよしとクアットロの頭を撫でる。
「いや、泣いても対戦しないから」
そう言って隼樹は、ウーノとの通信対戦の準備をする。
通信が繋がって、二人のゲーム機の画面に二枚の札が現れた。
若い月をめくった、ウーノが親となった。
親が決まり、山札から両者に8枚ずつ札が配られた。場にも札が8枚用意され、準備が整った。
「ウーノ姉、頑張れ!」
後ろからナンバーズが、ウーノに声援を送る。
「ウーノママ、頑張って!」
ヴィヴィオも、ウーノを応援していた。
「あれ? ヴィヴィオ、パパの事は応援してくれないの? ウーノママだけ?」
ヴィヴィオからの応援がなくて、ちょぴり寂しくなる隼樹。
だが、すぐに気を引き締めて集中する。
「ゲームスタート!」
隼樹とウーノの対決が、始まった。
自分の手札を見て、札を置き、山札をめくる。その作業を交互に進めていく。
隼樹は、画面に映ってる自分の手札と場に並べられてる札を見て、考える。
花札は勝負勘や運の要素が多いが、それでも多少の知略は必要だ。相手がどの役を揃えようとしてるのか予測し、相手の狙いを阻止して、自分の役を揃えて勝利する。役を揃える事ばかり考えるのではなく、相手の狙いも読む。そう、花札は一種の心理戦でもあるのだ。
ウーノの狙いを予測しながら、隼樹は札を選んで場に置く。
ゲーム機から、パンッという札を置く乾いた音が聞こえてくる。
「カス二文」
先に役を揃えたのは、ウーノだった。
隼樹は顔を険しくさせて、チラリとウーノを見る。
「“こいこい”は?」
「するわ。こいこいよ」
ウーノは画面を見据えたまま、こいこいを宣言した。
さらに高い役を目指す時は、『こいこい』と宣言して、ゲームを続行するのだ。
ウーノのこいこい宣言により、札の応酬が再開した。
「赤短!」
次に役を揃えたのは隼樹。
「こいこいだ!」
すぐに隼樹は、こいこい宣言をした。
また札の応酬。
ゲームが進んでいくにつれて、ウーノの表情が険しくなっていく。
そして──。
「四光!! 赤短だァァァァァ!!」
四光を揃えた時点で、隼樹が勝利した。
「……私の負けだわ」
敗北したウーノは、力無くうなだれた。
周りにいるナンバーズも、ガクッと肩を落とす。
「や……やった……」
一方、ウーノに勝利した隼樹は、ゲーム機を持つ手を震わせていた。
「やった……遂に俺は……俺はナンバーズに勝ったんだァァァァァ!!!」
立ち上がり、両手を上げて隼樹は歓喜の声を上げた。
ギリギリの勝利だった。もう少し役を揃えるのが遅かったら、ウーノが先に猪鹿蝶を揃えていた。
今までナンバーズに訓練で負け続けてきた隼樹が、ゲームとはいえ初めて掴んだ勝利。握り拳を固くして、ガッツポーズをとる。
まぁ、クアットロとは戦ってないが。
「パパ」
すると、ヴィヴィオが隼樹に声をかけた。
「ヴィヴィオもゲームしたい」
「ん〜? よかろう。俺に挑戦する事を許す」
ナンバーズに勝利して、完全に隼樹は調子に乗っていた。
こうして、隼樹とヴィヴィオの対決が始まったのだが──。
「ご……五光ォォォォォ!!?」
画面を睨みつけて、隼樹が叫び声を上げた。
五光という役を揃えたのは、隼樹ではなくヴィヴィオだった。
「ウーノママ。ごこうって何?」
「五光っていうのは、花札で一番高い役なのよ」
ヴィヴィオに聞かれて、ウーノが答えた。
勝負を見守っていたギンガが、口を開いた。
「それじゃあ、ヴィヴィオの勝ちなんですか?」
「ヴィヴィオ、凄いっス!」
「やるじゃねーか、ヴィヴィオ!」
「見事だ!」
ナンバーズが、ヴィヴィオを褒める。
褒められたヴィヴィオは、「えへへ♪」と嬉しそうに笑った。
一方、ヴィヴィオに敗北した隼樹は、呆然とゲーム機の画面を眺めていた。
「ば……馬鹿な……! 五光だと!? アレ揃えるの超難しいんだぞ!」
画面から目を離して、隼樹はナンバーズから褒められまくってるヴィヴィオを見る。
「これが……聖王の力なのか!? ヴィヴィオ……恐ろしい娘……!」
隼樹は花札で、ヴィヴィオの聖王の力を垣間見た……気がした。
*
花札を終えて、一行はそれぞれの部屋に戻った。
そしてナンバーズは、タオルを持って温泉に入りに行く準備をする。初めての温泉旅館だし、せっかくだから夕食後にもう一度入ろう、と決めていたのだ。
準備を整えて、ナンバーズとギンガ、ヴィヴィオが廊下に集まった。
「それじゃあ、温泉に入ってきますね」
「うん。ゆっくり入ってきな」
部屋に残る隼樹は、ウーノ達を見送る。
ウーノはヴィヴィオと手を繋いで、メンバーと一緒に歩いていく。
「もし覗いたら、殺すからな!」
途中でノーヴェが振り返って、隼樹に言った。
以前アジトで、隼樹はナンバーズの入浴を覗いた事があるのだ。
「わかった、わかった」
気だるげに隼樹は返事をした。
だが、ナンバーズの姿が見えなくなると、ニヤリと口元を歪ませた。
隼樹は急いで部屋に戻り、誰もいないのを確認して、自分の鞄の中から幾つか道具を取り出す。
悪いな、ノーヴェ。
心中でノーヴェに謝りながらも、隼樹は邪悪な笑みを浮かべた。
*
旅館の夜の定番イベントと言えば、そう、覗き、である。
この温泉旅館には、外の景色を楽しめる露天風呂があった。大きな岩風呂を竹垣の目隠しが囲む、よくある普通の露天風呂。
室内の温泉はもう利用したので、ナンバーズは露天風呂にやってきた。
そして竹垣の裏に、足音を殺し、息を殺し、気配を殺している黒い影──塚本隼樹の姿があった。
目的は勿論、ナンバーズの裸を見ること。だが、ギンガやヴィヴィオの裸も見たいな、とも思っている。
緊張してきて、額から汗が流れる。前回覗きをした時も緊張したが、人数も増えた事で緊張感も増していた。
大丈夫だ。
心中で、隼樹は呟く。
大丈夫だ、俺なら出来る。
自分に言い聞かせて、深呼吸をして落ち着かせた。
まずは、前後左右、そして影の中に敵の気配がないか確かめる。前回とは違って、今回はナンバーズ全員が温泉に向かった事を確認してある。シャドウクイーンを使用するドゥーエも、メンバーと一緒に温泉に向かった事は、ちゃんと確認済みなので心配はないと思うが、油断は禁物だ。
周りに誰もいない事を確認して、隼樹は懐から“ある物”を取り出した。それは、手の平サイズの四角い形をした小さなスイッチ。
スイッチを押した瞬間、パッと隼樹の姿が消えてしまった。
『シルバーカーテンもどき』。
隼樹がスカリエッティに頼んで作らせたのが、コレである。クアットロのシルバーカーテンと同じく自分の姿を隠せるが、性能はオリジナルよりも劣る。
次に隼樹は、少し離れた所にある一本の巨木に向かった。この木に登れば、露天風呂全体を見渡せる。しかも葉も茂っているので、身を潜める事ができる絶好のポジション。昼間の内に調査をしておいたのだ。
隼樹は早速、木に登り始める。葉の音を立てないように、慎重に登り、ベストポジションにまで辿り着いた。
そして、懐から双眼鏡を取り出した。コレで離れた場所から、安全に、確実に、ナンバーズの裸を覗く事が出来る。
完璧だ。
隼樹は、ニヤリと笑みを浮かべて、双眼鏡で露天風呂を覗き見る。
「っ!!」
その瞬間、ナンバーズの裸体が目に入った。
多少湯気が立っているが、さほど視界の邪魔にはならない。
──計画通り!
イヤらしい笑みを浮かべて、隼樹は覗きを続ける。
みんな出るトコは出て、締まるトコは締まってるエロい良い体をしている。
殆どのメンバーは、タオルで体を隠していない。つまり丸見え。
チンクも体が小さい事を気にしていたが、別に気にする必要はないぞ。だって、チンク可愛いもん。幼い体型だからこそ、大人な体型とは違う魅力があるんだよ。なんて事を、チンクの裸体を見ながら思っていた。
その時、ふと疑問が思い浮かんで、隼樹は双眼鏡から一旦目を離す。
「……そういえば、チンクとオットーってどっちが胸小さいんだろ?」
疑問を解消する為、隼樹は早速リサーチを開始した。
オットーを発見。すかさず、チンクと胸の大きさを見比べる。
何度か見比べて、隼樹は結論を出した。
「オットーの方が、僅かに大きいな」
まっいいやな、とまとめて、隼樹は覗きを再開する。
ウーノも、やっぱりスタイルいいな。ボン、キュッ、ボーンだよ。
ヴィヴィオ可愛いな。
ノーヴェも、なかなかエエ身体しとるやんけ。
セッテも、結構胸あるなぁ。いつか揉みたい。
ギンガもエロい身体してるな。戦闘機人レベル高けーな、オイ。
そんな感じで、順調に覗きをしていた時だった。
「ん?」
隼樹の視界に、二人の人物が入った。
母親と思われる女性が、小さな女の子の頭を洗っている。
一般の宿泊客か?
そう思ってよく見ると、その二人は隼樹が知っている人物だった。
長い紫色の髪を有するその親子は、メガーヌとルーテシア。
「ええええっ!! 何でメガーヌさんとルーテシアァァァァ!?」
予想外の入浴者に驚いた隼樹は、思わず大声を出してしまった。
「誰だ!?」
ナンバーズが、声がした方向へ顔を向けた。
しまった、と隼樹は慌てて口を塞ぐ。
大丈夫だ、シルバーカーテンもどきで姿は隠されている。
そう思った直後、効力が切れて葉の茂みの中に、隼樹の姿が現れた。
シルバーカーテンもどきィィィィィ! もうちっと頑張ってよ、もどきィィィ!
心中で叫ぶ隼樹
。
「いや、まだだ。まだ終わらんよ! この茂みの中に隠れていれば……」
「木の上に誰かいるっス!」
ウェンディが、木の上に潜んでる隼樹をロックオン機能で捉らえた。
「ば……バカなァァァァァ!! 俺の完璧な覗き計画が崩れただとォォォォ!!?」
その直後だった。
竹垣の向こうから、高速で桶が飛んできて、隼樹の顔面にヒットした。眼鏡にヒビが入り、隼樹は地面に落下する。
「じゅ〜ん〜き〜!!」
桶を投げたのは、顔を真っ赤にさせて怒りの形相をしているノーヴェだった。
覗き計画失敗。
手足を縛られた状態で、隼樹はナンバーズに囲まれていた。ちなみにナンバーズは、ちゃんとタオルを身体に巻いてるからね。
「あ、あの……すすす、すいませんでした」
青ざめた顔から大量の冷汗を流して、隼樹はナンバーズに頭を下げて謝った。
ゆっくりと頭を上げて、隼樹はメガーヌとルーテシアを見る。
「メガーヌさんとルーテシアも……ホントにすいませんでした」
二人にも頭を下げる隼樹。
メガーヌは、顔を赤くして無言で隼樹を睨んでいる。ルーテシアは、顔を真っ赤にさせて俯いていた。
「隼樹さん」
顔を真っ赤にさせたギンガが、隼樹に歩み寄った。ちゃんとタオルは巻いてるから。
隼樹は、ビクッと体を震わせた。
「どうして、覗きなんかしたんですか?」
腰に手を当てて、隼樹を見下ろす。
相当怒ってるらしく、物凄い迫力が伝わってくる。
「その……みんなの裸が見たいな、と……下心が我慢できなくて……」
ギンガの迫力に圧されて、下手な言い訳はしないで隼樹は正直に理由を言った。
理由を聞いて、ギンガは呆れて溜め息をついた。
「……セインの言った通り、隼樹さんは本当にスケベな人ですね!」
プイッとギンガは、ソッポを向いてしまう。
ガクッと肩を落として、隼樹は落ち込む。
「ママ。どうして、パパは怒られてるの?」
ヴィヴィオが首を傾げて、ウーノに聞いた。
「女性の裸を、隠れて覗き見てたからよ」
「悪いことなの?」
「そう。悪いことよ」
ふーん、と呟くと、ヴィヴィオは隼樹に顔を向けた。
「パパ、悪いことしたらダメだよ」
とヴィヴィオにまで、注意されてしまった隼樹。
もう何と言うか、人としてダメダメになってしまった。高速で奈落に落ちていってる感じだ。
「さぁ〜て。それじゃあ、覗きをした隼ちゃんには、お仕置きをしなくちゃねぇ〜」
クアットロが歩み寄って、隼樹の前に立つ。
顔を上げて、隼樹はクアットロを見た。
クアットロは、普段かけている眼鏡を外して、結んでいる髪も解いて下げている。その顔は、何となくドゥーエに似ている感じがする。隼樹は知らないが、実はクアットロはドゥーエに教育を受けていたのだ。
「ヴィヴィオちゃん、ルーお嬢様ぁ〜。このお仕置きは、お子様には見せられないので、外で待っててください」
お仕置きを始める前に、クアットロはヴィヴィオとルーテシアの退室を言い出した。
聞いた瞬間、隼樹は猛烈に嫌な予感がした。子供には見せられないお仕置きって、一体何なんだ。
「ルーテシア、ヴィヴィオちゃん。行きましょう」
クアットロに言われて、メガーヌがルーテシアとヴィヴィオを連れて出ていった。
「え? ちょっ……何すんの? 俺、何されるの?」
不安と恐怖が大きくなっていって、隼樹は小刻みに体を震わせる。
クアットロは、瞳にサディスティックな光を宿して、妖しい笑みを浮かべていた。
「うふふ。今回はぁ〜全年齢対象小説では描写できない、とっても恥ずかしいお仕置きをするのよぉ〜♪」
「はあ!? ま……まさか……!」
クアットロがやろうとしてる事を察したのか、隼樹の声は震えている。
「ま……待て、クアットロ! お願いだ! それだけはやめてくれ!」
怯える隼樹は、必死にやめるよう訴える。
何とか逃げようともがくが、手足を縛られて逃亡は不可能。
「うふふふ。それじゃあ、始めますわよぉ〜♪」
ナンバーズとギンガの視線が集まる中、クアットロは隼樹に恥ずかしいお仕置きをする。
「ああああああ! お、俺が悪かった! 覗きした俺が悪かった! だからやめ……くうっ……! やめてくれ! やめてお願いやめてお願いやめてお願いやめておねがァァァァァァァァ! あぁあ!!」
満天の星空の下、露天風呂に隼樹の悲鳴が響いた。
だが、悲鳴は途中で快感へと変わった。
*
お仕置きが終了した後、一行は部屋に戻ったのだが──。
「クアットロォォォォ! お前だけは許さねェェェ!!」
部屋に戻った途端、隼樹は複数の枕を取り出してクアットロに投げた。顔を真っ赤にさせて、かなり興奮している。
一方、クアットロはシルバーカーテンで自身の幻影を複数作り出して、隼樹を翻弄していた。
「うふふ。当たらないわよぉ〜♪」
「ちくしょう! このやろう! よくも皆の前で……あ……あ……あんな恥ずかしい事をォォォォ!!」
「だ、か、ら、お仕置きなのよ〜。何も痛め付けるだけが、お仕置きじゃないのよ。それに、隼ちゃんも気持ちよさそうにしてたじゃない。可愛かったわよ〜♪」
「いや……確かに気持ちよかったけど……ってそういう事じゃねぇェェェェ!!」
怒りに任せて、隼樹は枕を投げ続ける。
ここに、第一次枕投げ大戦が開戦した。
ウーノ達は床に座って、顔を真っ赤にさせて俯いている。露天風呂で見たお仕置きの光景が、ナンバーズに強い衝撃を与えたのだ。
ただし、ドゥーエだけはお仕置きの光景を思い返して、一人ニヤけていた。
みんなの様子がおかしい事に、一人何も知らないヴィヴィオは首を傾げる。
しばらくして、隣の部屋からトーレがやってきて注意された。が、トーレも顔を真っ赤にしていて、注意した時もいつもの迫力がなかった。
翌日、ナンバーズはチェックアウトして温泉旅館を出た。
しばらく隼樹とナンバーズの間に、気まずい雰囲気が続いた。
次回より
ナンバーズ〜魔法が使えない男〜
新章 開始!
ゆりかご事件から三ヶ月後
ついに奴が動き出す!
ナンバーズ最大の危機が迫る!!
+注意+
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