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スカリエッティは生きて帰って来るのか!?

話の最後の方はちょいエロ?
第三十話:幸せな欲張り者
 暴走モードに突入した塚本隼樹が、スカリエッティを引きずって出ていった後、食堂には重い空気が漂っていた。
 誰一人として、スカリエッティを助けに行こうとはしなかった。
 ナンバーズのメンバーは、何人か顔を青ざめている。トーレとチンクは青ざめてはいないが、顔を引きつらせていた。
 ヴィヴィオも、久しぶりに暴走モードの隼樹を見て、目に涙を浮かべている。

「パパ……恐い……」
「だ……大丈夫よ、ヴィヴィオ」

 隣にいるウーノは、抱きしめながらヴィヴィオを慰めた。

「あ、あの……隼樹さんって……怒るとあんなに変わるんですか?」

 ギンガが恐る恐る聞く。
 初めて暴走モードの隼樹を見て、ギンガは彼の豹変ぶりに驚いていた。

「まぁ、あたし等も何回かアイツのキレた所見た事あるけど……正直恐ぇよ……」

 ギンガの問いに、ノーヴェが答える。

「本人は、『いやー、俺なんか全然恐くないですよ』なんて言ってるっスけど、怒ったらマジで恐いっスからねー」

 ウェンディが言うと、他のメンバーもうんうんと頷く。

「……まぁ、怒りの理由は、殆どドクターだけどね」

 と静かに言ったのは、オットー。
 そんな話をしていると、食堂の扉が開かれた。全員の視線が、一斉に扉に向けられる。
 入ってきたのは、全身に包帯を巻いたスカリエッティだった。重傷らしく、点滴と松葉杖を使っている。変わり果てたスカリエッティの姿を見て、みんなギョッとした。
 彼に続いて食堂に入ってきたのは、隼樹。顔に巻かれてあった包帯が外れて、素顔を晒している。

「あ〜スッキリした」

 隼樹は、とても爽やかな笑顔をしていた。
 どうやらスカリエッティをボコボコにして、機嫌が良くなったようだ。

「あれ? みんなどしたの?」

 唖然としてる一同を見回して、隼樹は首を傾げた。

「と……とりあえず、食事を続けましょう」
「あっ、そうですね」

 ウーノに頷いて、隼樹は何事もなかったかのように席に着いた。


*


 約十分後。

「……!」

 今度は、隼樹の方が唖然としていた。
 目の前にいるギンガとノーヴェが、軽く十人前をペロリと食べて、まだ食べ続けているのだ。

「ぎ……ギンガも、なかなか食べるね……」
「はい」

 笑顔でギンガは頷く。
 ギンガの食べっぷりには、ナンバーズも驚いていた。
 隼樹は、料理を食べ続けてる二人を交互に観察するように見る。
 ふとギンガは、何かを思い出して食事の手を止めて、ノーヴェに顔を向けた。

「ノーヴェ。一つ、気になる事があるんだけど」
「なんだよ?」

 ノーヴェも食事の手を止めて、ギンガを見る。

「ノーヴェの固有武装って、私のデバイスに似てない?」
「あっ」

 ノーヴェも今気づいたらしく、目を見開く。
 すると、隼樹も二人の共通点を言った。

「そういえば似てるな。あとウイングロードとエアライナーも似てるし。それに大食いって所も同じだし」
「あ」

 隼樹が言うと、今度は食堂中の全員が声を上げた。
 ギンガとノーヴェには、今挙げたように幾つかの共通点がある。大食いだけでなく、使用している武器や能力まで似ている。果たしてコレ等を、偶然と片付けてよいものだろうか。
 気になった隼樹は、ある男に聞くことにした。

「おーい、スカリエッティ。これ、どういう事?」

 隼樹が聞くと、ミイラ男のスカリエッティは、反射的に体をビクッと大きく震わせた。

「の……ノーヴェは、クイント・ナカジマの遺伝子を元に生み出したからね。二人は姉妹のような間柄になる」
「えっ!?」

 全員が驚きの声を出した。

「それじゃあ……ギンガはノーヴェの姉的存在になるのか?」
「そうなるね」

 隼樹の問いに、スカリエッティが頷く。

「私の妹……」
「あたしの姉……」

 ギンガとノーヴェは、互いに顔を合わせると、僅かに頬が赤くなる。
 ノーヴェは恥ずかしくなったのか、ギンガから目をそらした。
 ソレを見て、ウェンディがクスクスと笑う。

「あ〜、ノーヴェ顔赤いっスよ〜。照れてるっスか?」
「べ……別に照れてなんかいねーよ!」

 大声を出して、ノーヴェが否定する。が、真っ赤な顔で言われても、説得力がない。
 ウェンディと言い争っていると、

「ノーヴェ」

 不意に、声をかけられた。振り返ってみると、ギンガが微笑んでいた。

「これからは姉妹として、仲良くやっていこうね」

 ニッコリ笑うギンガ。

「……あ、ああ」

 顔を真っ赤にさせて、ノーヴェは小さく頷いた。
 ギンガも嬉しそうに笑っていて、なかなか微笑ましい光景である。
 隼樹は食事を再開するが、すぐに手が止まった。

「そういえば、この料理誰が作ってんだ?」

 ふと疑問に思い、隼樹は周りに聞いた。
 その問いには、スカリエッティが答える。

「食事を作っているのは、料理ガジェットだよ」
「ガジェット!? ここでガジェットが出るのか!? 犬型もあったし、いろんなの作ってるな」

 素直に感心しながら、隼樹は料理を口にする。
 うまい。目の前にある料理は、物凄くうまかった。コレを“あの”ガジェットが作ったのかと思うと、驚きである。多分ガジェットに、プロの料理人のデータがインプットされているのだろう。
 ロボットってスゲーな。

「いっそガジェットを商品化させて、一儲けしてみるか?」

 コーヒーを一口飲んで、隼樹は言った。

「ああ、そうだ」

 思い出したように、スカリエッティが言う。

「隼樹。キミの武器を作ろうと思ってるんだが、どんな武器がいいか、リクエストはあるかい?」
「俺の武器?」

 隼樹は片眉を上げて、怪訝な顔をする。

「おや? 嬉しくないのかい?」
「いや、嬉しくないっていうか……何で? 俺の武器を作る理由は何?」
「なに、世の中物騒だからね。それにキミは、自分だけ武器がない事を気にしていたじゃないか」
「まぁ……そうだけど……」

 言って隼樹は考える。
 確かに、自分だけ武器や能力がなくて、いじけてた時もあった。
 自分だけの武器を作ってくれるのは、正直嬉しいのだが、何故“今”になって言い出したのかが引っ掛かる。

「どうしたんだい、隼樹?」
「あ……いや、何でもない」

 スカリエッティに声をかけられて、隼樹は思考を中断した。
 言い出した理由が解らないので、隼樹は考えるのをやめた。
 代わりに、どんな武器がいいか考え始める。ノーヴェが使ってる籠手型や機動六課の隊員が使っていた銃型等、色々思い浮かべた。
 その中で隼樹は、ある武器を選んだ。

「刀がいいです」
「刀かい?」
「はい。日本刀がいいですね。って日本刀、分かります?」
「ああ、分かるよ」

 この世界で、日本刀って通じるんだ。その事に隼樹は少し驚いた。

「それじゃあ、食事を終えたら製作に取り掛かるとするよ」
「どうも。あっ、ビームや変形とか、余計な機能は付けなくていいから」

 変な機能を付けないように釘を刺して、武器の話を終えた。

「食事を終えて少し休んだら、午後の訓練を始めるぞ」

 トーレが言うと、メンバーは頷いて答えた。

「午後も訓練するんだ。いやー、大変だねー」

 他人事のように言って、隼樹はコーヒーを口にする。
 すると、トーレが声をかけた。

「隼樹。当然お前も訓練に参加するんだぞ」
「っ……はあ!!?」

 隼樹は、思わずコーヒーを吹き出しそうになったが、何とか堪えた。飲物を吹いて誰かの顔にかける、なんて失敗はもうしたくない。

「な……何で俺まで!?」
「お前もナンバーズの一員だからだ」
「ええええっ!? いや、まぁ、そりゃそうだけど……。俺もう戦わないよ? 絶対に戦わないから!」
「お前が何と言おうと、訓練参加は変わらん」
「嫌だァァァァァ!!」

 席を立ち上がり、隼樹は頭を抱えて叫んだ。
 はい、隼樹も午後の訓練参加決定。


*


 食事を終えて、部屋に戻った隼樹はベッドの上で横になった。

「はぁ」

 口から大きな溜め息をつく。
 午前の訓練で、身も心もヘトヘトに疲れていた。

「何で俺まで……?」

 隼樹には、自分も訓練に参加する理由が解らない。
 確かに隼樹も、新部隊『ナンバーズ』の一員ではある。だが、彼女達と違って隼樹は普通の人間。違法魔導師を相手にするなら、トーレ達で充分のハズだ。
 どうしても訓練参加の理由が解らず、隼樹は頭を悩ませる。

「ん〜。これはもしや……嫌われてるのか?」

 という答えを出した時だった。

「隼樹」

 扉をノックする音と共に、名前を呼ばれた。

「ん?」

 隼樹は体を起こして、扉に向かって歩いていく。
 扉を開けると、ディエチが立っていた。

「ディエチ。どうしたんだ?」
「午前の訓練。隼樹大変そうだったから、様子を見に来たんだ」
「そっか。ありがとう。結構疲れたけど、何とか大丈夫だから」

 隼樹はディエチを安心させるように、笑って言った。
 それから少し間をとって、ディエチが口を開く。

「あのね、隼樹」
「ん?」
「いきなりキツい訓練やらされて、辛いとは思うけど……決して隼樹の事が嫌いな訳じゃないから」

 顔には出さなかったが、隼樹は内心動揺した。さっき部屋で呟いた言葉を聞かれたか、と一瞬焦る。
 ディエチは、少し恥ずかしそうに頬を赤くして、真っ直ぐに隼樹を見つめた。

「私もみんなも、隼樹の事が大好きだから」

 微笑んで、気持ちを込めてハッキリと言った。
 言われた瞬間、隼樹の顔は真っ赤になる。真っ正面から言われると、やっぱり照れてしまう。
 その時、隼樹は思った。
 みんなの気持ちを、少しでも疑った自分は馬鹿だな、と──。

「うん。ありがとう。俺もみんなの事が大好きだ」

 隼樹も笑って応えた。
 するとディエチは嬉しそうに笑って、隼樹に歩み寄る。隼樹が戸惑っていると、ディエチは顔を近づけていく。
 そして次の瞬間──二人の唇は重なった。

「っ!!?」

 隼樹は目を見開き、耳まで真っ赤にさせて、体を硬直させた。
 心臓が高鳴り、体温がどんどん上昇していく。
 不意打ち。
 ドゥーエに続いて、ディエチにまで不意打ちキスを受けた。
 十秒ほどのキスをして、ディエチは唇を離す。

「……じゃあ、また後でね」

 顔を真っ赤にしながらも、ディエチは嬉しそうに微笑んで、その場を去っていった。
 残された隼樹は、一人ポツンと立ち尽くす。

「……え? えっ、マジでェェェェ!?」

 興奮が高まって、隼樹は大声を出した。

「ディエチとキス! ヤッベ、超嬉しいィィィ!!」

 拳を強く握り、テンションを高める。
 興奮冷めぬまま隼樹は、そっと唇に触れた。

「ディエチの唇……ドゥーエとは違う感触だったな」

 キスの感触を思い出して、隼樹は幸せそうな笑みを浮かべる。
 そんな隼樹を、文字通り“影”から見ている人物がいた。ISを使って、影に潜り込んでいるドゥーエだ。
 隼樹とディエチのキスシーンを目撃したドゥーエは、彼女の思い切った行動に驚いていた。
 ディエチ。おとなしい娘だと思っていましたが……なかなかやりますね。
 ふふふ、とドゥーエは黒い笑みを浮かべた。


*


 一同は、再び訓練場に集合した。
 クアットロは、訓練のデータを取る為に近くで見学。
 ヴィヴィオも午前の時と同じように、離れた所でシートを敷いて、その上に座っている。

「揃ったな。では訓練を始めるぞ」

 言って後、トーレは隼樹に顔を向けた。

「隼樹。お前はセッテと模擬戦をしてもらう」
「何ぃ!? セッテだとォォォ!?」

 模擬戦の相手を聞いて、隼樹は驚愕して目を剥く。
 ナンバーズ最強のトーレの教育を受けたセッテは、トーレの次に強いと言っても過言ではない実力者だ。
 そんなセッテと模擬戦なんかしたら、どうなるか分かったもんじゃない。

「あ、あの〜すいません。何か急にお腹が痛くなってきたんで、医務室に行きます〜」

 隼樹はお腹を押さえて、そそくさと立ち去ろうとする。
 トーレは溜め息をついて、チラッとセッテを見た。

「セッテ」
「はい」

 セッテは頷くと、隼樹の肩をガシッと掴んだ。
 肩を掴まれた瞬間、隼樹の顔が青ざめた。

「では行きましょう、隼樹」
「ヒィィィィィィ!!」

 セッテに引きずられながら、隼樹は悲鳴を上げた。


*


 そんなこんなで、セッテと模擬戦をする事になった。
 隼樹とセッテは、距離を離した状態で対峙している。
 徒手空拳の隼樹は拳を構え、セッテは両手にブーメランブレードを構えていた。
 飛び道具使い相手には接近戦だ、と判断した隼樹は、地を蹴って走り出す。距離を縮めようとするが、セッテがソレをさせない。
 すかさずセッテは、二本のブーメランブレードを投げる。放たれたブーメランブレードは、弧を描いて左右から隼樹に襲い掛かった。

「おわっ!」

 隼樹は体勢を低くして、間一髪ギリギリで二本のブーメランブレードをかわす。
 その隙にセッテは後ろに跳んで距離を離し、ISでブーメランブレードを操作して隼樹を狙い続ける。

「わっ! よっ! ほっ! はっ!」

 襲ってくるブーメランブレードを、とにかく避け続ける隼樹。

「よくかわし続けますね」
「そ……そりゃあ、ノーヴェの訓練を受けてたし……小学校の頃にやったドッジボールでは、最後まで中に残ってた気がするからな……!」
「最後の方は曖昧ですね。ところで、『ドッジボール』とは何ですか?」
「後でェェェェ!!」

 ブーメランブレードをかわし続けてる隼樹は、汗だくで息も上がっていた。
 このままでは埒があかないと考え、セッテは次の行動に出た。
 ブーメランブレードの中心にあるピンク色の球体から、無数のエネルギーの塊を放つ。出てきたエネルギーの塊はブーメランの形になって、隼樹の周囲を完全包囲した。

「げっ!」

 周囲を見回して、隼樹は顔を引きつらせた。

「さぁ、どうします、隼樹?」

 ブーメランブレードを手に戻して、セッテは隼樹を見据えた。
 隼樹は周囲のブーメランを見回して、この状況をどう切り抜けるか考える。
 どうすればいい……。どうすれば生き残れる……?
 普段使わない頭を使って、必死に打開策を考える。
 この無数のブーメランを全て避けるなんて不可能だし、だからと言って拳で弾いて防ぐのも不可能。消去法で、隼樹は一つの案を思いついた。
 同時に、セッテが操作して無数のブーメランが、一斉に隼樹に襲い掛かる。

「ええいっ!」

 迷ってる暇はないと判断して、隼樹は行動に出た。
 両腕を顔の前で交差して、前方から迫ってくるブーメランの雨の中に突っ込んだ。腕で顔を防御して、体を傷つけながらブーメランの雨の中を突き進む。
 隼樹の行動に驚いて、セッテは目を見開いた。
 全身に傷を作りながらも、隼樹はブーメランの雨から抜けて、セッテの前に出る。

「うおおおおおおお!!」

 防御を解いて拳を振りかぶり、隼樹はセッテ目掛けて突きを繰り出した。
 セッテは瞬時に冷静さを取り戻して、突きをかわす。右手に持ってるブーメランブレードで、隼樹の後頭部を叩く。

「がっ!!」

 後頭部に強い衝撃を受けて、隼樹は地面に倒れた。
 セッテは振り返って、倒れた隼樹を見下ろす。気を失ったらしく、隼樹は倒れたまま動かない。

「まさか、あんな思い切った行動に出るとは……」

 セッテは先ほどの隼樹の行動に、驚きを隠せなかった。


*


「ん……」

 気絶していた隼樹は、目を覚ました。

「気がつきましたか?」

 セッテが、目覚めた隼樹の顔を覗き込んだ。

「セッテ……ん?」

 意識がハッキリしてきて、後頭部に妙な感触がするのに気付いた。何なのか気になって、手で後頭部にある物を触る。
 柔らかい感触がした。

「え……? これって、まさか……」

 ある答えに辿り着いて、隼樹は顔が赤くなっていく。

「はい。私の膝枕です」
「膝枕ァァァァ!!?」

 予想が的中して、隼樹は顔を真っ赤にさせて叫んだ、。
 女性に膝枕されるなど、生まれて初めての事なのでドキドキしている。

「私の膝枕は嫌ですか?」
「い……嫌じゃないです!!」

 隼樹は顔をブンブン横に振って、言った。

「では、もう一度やりますか?」
「え……? やるって……膝枕を……?」
「はい」
「いいの?」
「はい」
「……じゃあ……お願いします……」

 隼樹は再び横になって、セッテの膝の上に頭を乗せた。
 その間も、セッテはずっと無表情だ。

「……俺、負けちゃったか」

 セッテの顔を見上げながら、隼樹がポツリと呟いた。

「はい」

 セッテが無表情に答える。

「弱いなぁ、俺……」

 隼樹は、弱い自分に溜め息をついた。

「確かに貴方は負けましたし、まだ弱いです。ですが、貴方が先ほどブーメランの包囲を破った方法には、驚きました」
「アレしか、手が思い浮かばなくて……」

 ダメージを最小限にして、セッテとの距離を縮めるにはあの戦法しかなかったのだ。

「貴方は、まだまだ強くなれますよ」

 セッテが、優しく隼樹の頭を撫でた。
 隼樹は恥ずかしくなって、セッテから目をそらしてしまう。

「あ……ありがとう」
「いいえ」

 セッテは無表情のまま、隼樹の頭を撫で続けた。


*


 周りにいる他のメンバーは、何かいい雰囲気になってるセッテと隼樹を見て、嫉妬と殺意を燃やした。
 その中で一人だけ、怪しいオーラを放ってる者がいた。
 ──ふふふ。隼樹。貴方が誰のモノなのか、判らせる必要があるようですね。
 誰にも見えないように、ドゥーエは黒い笑みを浮かべた。


*


 あっという間に時間は過ぎて、深夜となった。
 自室で隼樹はパジャマに着替えて、ベッドで横になっている。

「こりゃ明日、筋肉痛だな……」

 セッテとの模擬戦を思い返して、隼樹は呟いた。
 結局午後の訓練は、セッテと一戦しただけで、後は見学して終わった。

「ふぁ〜。もう寝るかな」

 欠伸をかいて、隼樹が寝ようとした時だった。

「隼樹」

 扉の外から、声が聞こえてきた。

「ん?」

 こんな時間に誰だろう、と思いながら隼樹は体を起こす。
 扉を開けると、そこにはドゥーエがいた。

「ドゥーエ。どうしたんだ? こんな時間に」
「隼樹」

 ドゥーエは隼樹の問いには答えず、体を近づける。
 体が密着して、ドゥーエの胸の感触に隼樹は興奮して顔を赤くした。
 ドゥーエは顔を上げて、上目遣いで隼樹を見る。

「隼樹。貴方、今日は妹達と随分イチャイチャしてたわね」
「い……イチャイチャって……そんな……」

 動揺を隠せないで、隼樹はうろたえる。
 そんな隼樹の耳元に、ドゥーエは妖しい笑みを浮かべて顔を近づける。ドゥーエの甘い吐息が耳にかかって、隼樹の興奮が高まっていく。

「セッテには膝枕をされて、ディエチとはキスをしましたよね?」
「えっ!? な、何でソレを!?」

 激しく動揺する隼樹。

「私が得意とするのは諜報です。貴方の事なら、何でも知ってますよ」
「そ……それって、つまり……ストーカー、みたいな……?」

 苦笑いを浮かべて、隼樹は言った。

「ストーカーではありません。貴方を見守っているんですよ」

 ふふふ、と妖艶な笑みを浮かべるドゥーエ。

「も……物は言いよう、ですね……」

 ははは、と苦笑する隼樹。

「いいですか、隼樹。判っていないようですから、ハッキリ言わせて頂きます」

 ドゥーエは右手で隼樹の頬に触れて、顔を近づけていく。
 隼樹は目を見開いてドキドキしながら、近づいてくるドゥーエの顔を見つめる。

「貴方は、私のモノです」

 言ってドゥーエは、隼樹と口付けをした。

「ん……んんっ……。私以外の女性に手を出す事は、許しません」

 ドゥーエは唇を離して、隼樹を見つめて言った。

「でも……俺、ドゥーエだけじゃなくて、ナンバーズみんなが好きなんだ」
「欲張りですね」
「……ごめん」

 謝って隼樹は、顔を俯いてしまう。
 ドゥーエは、両手を隼樹の頬に添えた。そして顔を上げさせて、自分と向き合わせる。

「解っています。貴方が、私達全員を好きだという事は──。ですが、どうしても貴方を独り占めしたい気持ちが、抑えられないんです」
「ドゥーエ……」

 ドゥーエを見つめ返して、隼樹は彼女の肩を掴んだ。
 そして次の瞬間、隼樹の方からドゥーエにキスをした。

「──!!」

 ドゥーエは驚いて目を見開くが、すぐに隼樹とのキスを味わう。
 強く抱き合って、熱い接吻を続ける。

「ん……んふっ……んんっ……!」

 互いの舌を絡ませて、いやらしい声を口から漏らす。
 長い接吻を終えて、ドゥーエは唇を離した。

「──ぷはっ! はぁ……はぁ……隼樹……」

 ドゥーエは頬を赤くして、少し息が乱れている。

「俺……みんなが好きなんだ」

 真っ直ぐにドゥーエを見つめて、隼樹が想いを言った。
 隼樹の想いを聞いて、ドゥーエは微笑んだ。

「……本当に、隼樹は欲張りですね」

 隼樹は恥ずかしさをごまかすように、頭をグシャグシャと掻いた。
 ドゥーエはクスクスと笑って、再び隼樹に顔を近づける。

「隼樹。私は諦めませんよ。必ず貴方を、私のモノにしてみせます」

 改めて決意を固めて、最後にドゥーエは、隼樹と軽いキスをした。

「それじゃあ、おやすみなさい」

 妖艶とも黒いモノとも違う、優しい微笑みを浮かべて、ドゥーエは去っていった。
 ドゥーエの背中を見送って、隼樹も部屋に戻る。ベッドで横になって寝ようとしたが、胸の高鳴りがしばらく収まらなくてなかなか眠れない。
 俺って幸せ者だな、と今日一日を振り返って隼樹は思った。


*


 翌日。
 隼樹は寝不足と筋肉痛で、訓練を休んだ。






〜おまけ〜


 昼食の時間。
 食堂で食事をしている中、ふと隼樹がある疑問を口にした。

「そういえば、みんな管理局の制服着てないけど、いいの?」

 すると、チンクが隼樹の疑問に答えた。

「ああ。ウチの部隊は、服装自由だからな」
「そうなの!?」

 チンクの答えに驚いたのは、陸士部隊の制服を着てるギンガだ。
 一方、ラフな恰好をしてる隼樹は安堵していた。

「よかった〜。俺、制服ってあんまり好きじゃないから、助かった〜」
次回は、ナンバーズと一緒に温泉旅行!?

混浴したり、卓球したり、花札をしたりする……予定!

果たして隼樹は、ナンバーズに勝てるのか!?

つーか仕事しろよ、お前等!

隼樹「やっとハーレムらしい展開が来たな! この温泉旅行で、ナンバーズと混浴! そしてギンガに告白を……!」


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