第二十五話:勝利への執念と姉妹と世界
ガルマの右膝を潰した隼樹は、一旦離れて距離をとった。
膝を潰してしまえば、相手はバランスを崩して上手く動けなくなる。これも漫画から得た知識。
戦いを見守っているウーノ達は、隼樹の戦い方に驚いていた。ガルマのテリトリーの穴を見つけ、ソコへ誘い込んで動きを止めて、更に相手の足を潰す。容赦のない戦法だ。
潰された右膝を押さえながら、ガルマはゆっくりと立ち上がった。
「……ヤレヤレ。オ前ニハ驚カサレテバカリダナ」
ぽりぽりと頭を掻くガルマ。
「魔法ガ使エナイカラ、ソレヲ補ウ為ニ策ヲ考エ、相手ノ弱点ヲ見ツケ、隙ヲ突ク。ソシテ魔法ガ使エナイカラコソ、私ト戦ウ事ガ出来ル」
「……」
隼樹は何も答えないが、ガルマは構わず続ける。
「隼樹。ヤハリ魔導師ナンカヨリ、オ前ノ方ガ余程厄介ナ相手ダヨ」
右膝を折られ、不利な状況でもガルマは冷静だった。
その冷静さが、ウーノ達には不気味に感じた。
「サテ、続キヲ始メルカ」
右足を引きずりながら、ガルマは隼樹に向かっていく。
「おおおおお!!」
隼樹もガルマに向かって走り出す。
ガルマの顔に向かって、拳を放つ。ガルマは上体をそらして、突きを避ける。
「グッ……!」
だが、折れた右足ではバランスを保つのはキツく、痛みで顔を歪めた。
その隙に隼樹は、ガルマの左脇腹に蹴りを叩き込む。ガルマは痛みに耐え、すぐに反撃の拳を放つ。拳は隼樹の左頬を殴る。
地下道での時と同じような、激しい殴り合いが始まった。が、今回は隼樹が先手で、ガルマを負傷させた事で以前とは状況が違う。右足を潰されたガルマは、片足ではバランスが取り難く、また力も上手く入らなくて苦戦をしていた。一方、隼樹は自分が作った勝機を逃さぬように、ガルマに攻撃を畳み掛ける。
「いいぞ、隼樹!」
「そのままブチのめせ!!」
戦いを見守っているチンク達も、優勢に戦いを進めている隼樹に声援を送る。
それに応えるかのように、隼樹も攻撃の手を緩める事なくガルマを攻め続ける。ガルマの攻撃を避けて防ぎ、拳や蹴りを放つ。
モニターで戦いの様子を見ている世界の人々も、隼樹が押している姿を見て歓声を上げていた。
ウーノとドゥーエは、固唾を飲んで隼樹を見守っている。
「……ん……」
二人の戦いが続いてる中で、ディエチが目を覚ます。重い瞼を開いて、二人の戦いが目に入ってきた。
「え……? 隼樹!?」
驚いたディエチは、目を見開く。隣を見ると、クアットロが気絶して倒れている。
「クアットロ! クアットロ!」
手足が拘束されているため、声だけでクアットロを起こそうとする。
「ん……あ……ディエチ、ちゃん?」
クアットロも目を覚まし、ディエチの顔を見上げた。
ディエチは、クアットロが目を覚ましてホッとする。
「よかった。そうだ、クアットロ。隼樹が異形と戦ってるんだ!」
「え? 隼ちゃんが?」
言われてクアットロは、ヒビが入ってる眼鏡で、殴り合う二人の姿を見つけた。
片方はガルマ。そして、もう片方は隼樹。
「隼ちゃん!? どうしてこんな所に!?」
「多分、あたし達を助けにきたんだよ」
二人は、ガルマと戦ってる隼樹を見守った。
右足をやられ、体のバランスが悪くて攻撃のキレが以前よりも悪くなり、ガルマの攻撃は隼樹に防がれている。
逆に隼樹の攻撃は、どんどんガルマに決まっていく。ガルマが大振りで拳を放つと、隼樹はクロスカウンターを繰り出す。素人なので絶妙とまではいかなかったが、それでもガルマの顔に拳を叩き込めた。
戦いは、隼樹が優勢に運んでいた。だが、何度殴られても、何度蹴られてもガルマは倒れない。
その事で、隼樹の中で少し苛立ちが生まれた。
勝負を急ごうと、右腕を大きく振りかぶる。
その時、ガルマの目がカッと見開かれた。
繰り出される拳を、ガルマは素手で受け止め、同時に顔を隼樹の腹に向けて、口を大きく開く。隼樹が怪訝な顔をすると、ガルマの開かれた口の中で光球が作られる。
瞬間、隼樹の脳が、本能が危険信号を発した。
直後、ガルマの口から黄色い光線が発射され、隼樹の右脇腹辺りを貫く。
「っ……!!?」
光線を受けた隼樹は、目を硬く閉じて後ろに吹き飛んだ。
その光景を見て、ウーノ達は目を見開いて驚愕した。
「隼樹ィィィィ!!」
ウェンディが、隼樹の名を叫ぶ。
ヴィヴィオやディエチ達も、愕然とした表情をしている。
吹き飛んだ隼樹は、壁に激突して、ドサッと床に倒れた。
「がはっ!!」
倒れた直後、口から血を吐いた。
「隼樹さん!!」
「隼樹お兄さん!!」
ウーノとヴィヴィオが叫んだ。ヴィヴィオは、目から大粒の涙を零している。
「考エガ甘カッタナ、隼樹」
口から白い煙を吐きながら、ガルマが言う。
ノーヴェ達の視線が、ガルマに向いた。
「私ハ“攻撃魔法ガ使エナイ”等ト言ッタ覚エハナイ。ダガ、危険ヲ察知シテ咄嗟ニ横ニ動イタノハ、大シタモノダ」
「汚ぇぞ、テメェェェ!!」
ノーヴェが涙目で、ガルマに向かって怒鳴った。
ガルマは、ゆっくりとノーヴェに顔を向ける。
「汚イ? 管理局ト敵対シテイタオ前カラ、ソンナ台詞ガ出テクルトハ思ワナカッタゾ」
可笑しそうにガルマが言った。
「ソレニ、汚イトハ人聞キガ悪イ。私ハ騙シタ覚エハナイ。今マデ攻撃魔法ヲ使ワナカッタ私ヲ見テ、オ前達ガ勝手ニ攻撃魔法ガ使エナイト思イ込ンデイタダケダ」
「くっ……!」
言い返す事が出来ず、ノーヴェは歯を食いしばってガルマを睨みつける。
その時、通路から走ってくる音が聞こえてきた。音は、王座の間に近づいてくる。
「隼樹!!」
王座の間に辿り着いたトーレが、室内に入ったと同時に叫んだ。外の怪物達を倒し終えて、王座の間にやってきたのだ。彼女の後ろには、セッテやディード、他のみんなも揃っている。
「トーレ!」
チンクが振り返って、トーレ達を見た。
ウーノ達もトーレ達を見る。
「ウーノ姉様! 隼樹兄様は!?」
「……隼樹さんは……」
ディードに聞かれて、ウーノは青ざめた表情で指差す。
指差す先を見ると、右脇腹から血を流して倒れてる隼樹の姿を見つけた。
「隼樹兄様!!?」
隼樹を見た瞬間、ディードが悲鳴にも似た声を上げる。
トーレ達も、驚愕して目を見開く。
「ゾロゾロト、大勢デヤッテキタナ」
動じた様子もなく、ガルマはトーレ達を見回す。
ドゥーエは胸の前で拳を握り、倒れてる隼樹をジッと見つめた。
*
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
脇腹に穴が空いた。
苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。
穴から血が流れ出ていく。
床に倒れてる隼樹は、目に涙を浮かべ、傷口を押さえて、ダンゴムシのように丸まっていた。傷口から流れてくる血は、赤い池を作っている。
痛い。苦しい。死ぬ。
前にガルマと戦った時も、体中傷だらけにされて倒されたが、今の苦痛はその時以上。いや、比べものにならない程の苦痛だった。出血と共に、体中の力も抜けていく感じがする。
死ぬ? 死ぬのか?
傷ついた隼樹に、『死』の恐怖が襲い掛かった。
嫌だ。死にたくない。誰か助けて。そうだ。このまま倒れてれば、ナンバーズのみんなが助けて……。
そこで隼樹は、ハッとなる。
……馬鹿野郎! 何考えてんだ、俺は!
心中で、自分を叱咤した。
それじゃ、何にも変わんねぇだろ。何の為に、一人でガルマと戦うと決めたんだ。
無理矢理四肢に、体に力を入れる。右脇腹から激痛が走り、顔を歪め、涙が流れて歯を食いしばって耐える。
生きるんだ。勝つんだ。勝たなきゃ意味がないんだ。
激痛に耐えて、隼樹は体を起こした。
*
「隼樹さん!!」
体を起こした隼樹を見て、ウーノが叫んだ。
「何ッ!?」
ガルマが驚いた様子で、隼樹を見る。
ナンバーズも、ギンガもシグナム達も、みんなが隼樹を見た。
左手を床につけて、息を荒くして、右手で負傷した右脇腹を押さえて、隼樹は上体を起こしている。
「……驚イタ。マダ立チ上ガロウトスルカ」
この時初めて、ガルマは動揺した。
隼樹は、無理矢理傷ついた体で立ち上がろうとする。
「隼樹、もういい!」
見兼ねてトーレが叫んだ。
「お前は充分戦った! 後は我々に任せろ!!」
だが、隼樹は首を横に振る。
トーレは歯を食いしばり、眉を寄せる。
「隼樹!」
「……ダメなんだ……」
隼樹が小さく呟く。
「ダメなんだよ……。俺……俺、まだ……何もしてないんだ……」
声を発するだけで、痛みが体中に走る。
隼樹は、右手を伸ばして床に転がっている破片を掴む。壁に激突した時に、散らばった破片だ。
破片を掴むと、隼樹は驚くべき行動に出た。
「ああああああああああああああああああ!!」
王座の間に、隼樹の絶叫が響き渡った。
隼樹は、掴んだ破片を右脇腹の傷口に無理矢理押し込んだのだ。
「なっ……!!?」
隼樹の行動に、全員が驚愕して目を見開き、体が固まった。
大量の涙を流し、激痛に耐えながら、隼樹は新たな破片を掴み取る。
そして、今度は後ろに空いてる傷口に押し込む。
「あああああああああああああああああああああ!!!」
再び王座の間に、隼樹の悲痛な絶叫が響く。
ウェンディは辛くなって、思わず目を閉じて耳を塞いでしまう。
その時、
「馬鹿者!!」
トーレがウェンディに怒鳴った。
怒鳴られて、ウェンディは目を開く。
「目を閉じるな! 耳を塞ぐな! しっかりと隼樹の姿を見ろ!!」
誰よりも助けに行きたいハズなのに、トーレは耐えて隼樹を見守る。
トーレに叱咤され、ウェンディも隼樹を見守る事を決めた。
「ナ……ナンテ奴ダ……! 傷口ニ破片ヲ押シ込ンデ、無理矢理止血ヲシタ!?」
ガルマは、隼樹の驚きの行動に面食らっていた。
止血を済ませると、隼樹は足に力を入れて、立ち上がろうとする。
「俺は今まで……元の世界でも……いろんな事から逃げてきた……。地下道で……お前と戦った時も……最後は逃げようとした」
体を襲う激痛と戦いながら、少しずつ体を上げていく。
「けどもう逃げねぇ!!」
叫び声と共に、ガタガタと震える足に力を込めて、隼樹は立ち上がった。
「今度こそ俺は逃げずに、戦って勝つんだ!!!」
決意を叫び、隼樹は射抜くような鋭い目で、真っ直ぐにガルマを見据えた。
「隼樹さん……!」
最後まで戦い抜こうとする隼樹の姿に、感極まってウーノは手で口を押さえて涙を流す。
ガルマは、目をそらさず隼樹を見据え返している。
「……生キヨウトスル意志。ソシテ何ヨリモ凄マジイ──」
隼樹は、ガルマに向かって歩き出す。
「勝利ヘノ執念!」
今、隼樹を動かしてるモノを、ガルマは感じ取った。
隼樹は、覚悟を決めた顔でガルマに迫る。
ガルマは、思わず笑みを浮かべた。
「面白イ! 決着ヲツケルゾ、隼樹!!」
「うおおおおおおお!!」
気合いを放ち、隼樹はガルマに向かって走り出す。
互いの間合いに入り、同時に拳を繰り出し、両者の顔を殴り抜ける。
右脇腹が痛み、隼樹は苦痛に顔を歪めて動きが鈍り、体をフラつかせた。
ガルマの方も右足が痛むが、怯まず隼樹に追撃の拳を放つ。拳は隼樹の右頬を殴り、隼樹は口の中を切って血を吐き出す。
その時、チンクが叫んだ。
「しっかりしろ! 姉達がついている!!」
「諦めないで! 頑張って隼樹さん!!」
ギンガも、大声で隼樹を励ます。
隼樹は、カッと目を見開くと拳を握って殴り返した。
最後の戦いが、始まった。
*
同じ頃、世界中の人々が、モニターに映ってる隼樹に声援を飛ばしていた。
「頑張れ、隼樹!」
「負けるなァァァ!」
「お前なら勝てるぞォォォ!」
隼樹の戦ってる姿を見て、絶望と恐怖に染まっていた人々の心が動いた。
世界が一つになって、隼樹に力強く、熱い声援を送った。
*
「うおおおおおお!!」
隼樹の突き出した拳が、ガルマの顔面にめり込む。
負けじとガルマも、隼樹の顔を殴り返す。拳で顔を殴る音が王座の間に響き、床に両者の血が飛び散り、紫色と赤色の池を作っていく。
殴り合いは続き、二人とも動きを止める様子はない。
「勝ちなさい、隼樹!!」
胸の前で拳を握り、戦いを見守っているウーノとドゥーエが同時に叫んだ。
「はい!!」
二人に応え、隼樹は内にある力を振り絞って拳を振るい続ける。
殴り合いに終止符を打つ為、ガルマが動く。
「コレデ、オ前ノ意識ヲ、執念ヲ砕ク!!」
ガルマは、隼樹のある場所に狙いを定めると、拳を放つ。
狙いは、先ほどガルマの魔砲で貫いた右脇腹。
放たれたガルマの拳は、隼樹の右脇腹の傷に叩き込まれた。
「っ……!!」
直後、右脇腹に衝撃を受け、激痛が全身に広がる。ぶわっと目から涙が溢れ出て、顔をぐしゃぐしゃにして苦痛で歪めた。
顔を俯け、激痛で意識が飛びそうになり、倒れそうになる。
その時、隼樹の耳に、沢山の声が入ってきた。
「頑張れ、隼樹!」
「負ける事は許さんぞ!」
「隼ちゃん、私達がついてるわよ!」
「隼樹お兄さん、頑張れ!」
ナンバーズのみんなとヴィヴィオ、ギンガ達が隼樹に声援を飛ばす。
「……うう……!」
その声で、隼樹は意識を繋ぎ止めた。
拳を握り締め、顔を上げて腕を振りかぶる。
「うおおおおおおおおお!!!」
「タ……耐エタ!!?」
驚愕しているガルマの顔面に、隼樹の強烈な一撃が叩き込まれた。
再び壮絶な殴り合いが再開された。
鼻から鼻血を、口から血を垂らし、内蔵にも痛手を負いながらも、どれだけ傷つこうとも、隼樹は決して止まらない。
このままでは埒があかないと判断したガルマは、勝負を決めに出る。
両者の拳が、同時に突き出された。互いの顔に直撃して、衝撃に耐えられず大きく体のバランスを崩す。
その時、ガルマが動いた。
「……トドメ、ダ!」
誰にも聞こえない、小さな声で呟くと、ガルマは体勢を直して口を大きく開く。
先ほど隼樹の右脇腹に風穴を開けた魔砲で、勝負を決めに出たのだ。
確実に隼樹を仕留める為、狙いは腹ではなく、顔。
口に魔力が溜まり、黄色い光球が生成される。
隼樹も体勢を直し、自分の顔に向けて放たれようとしている光球に気付く。
同時に、ガルマの口から黄色い魔砲が放たれる。迫り来る魔砲を、隼樹は目を見開いて捉らえ──首を引っ込め、素早く体勢を低くして魔砲をかわす。
魔砲は壁に激突し、王座の間が揺れる。
刹那の攻防を終えて、二人の動きが止まった。
体勢を低くしたまま、隼樹は既に拳に力を込めている。
隼樹を見下ろして、ガルマはフッと短く笑った。
「うおおおおおおおおお!!!」
下から突き上げるように拳を繰り出し、ガルマの腹に叩き込んだ。
ガルマが怯んでる隙に、右の拳に最後の力を込めて、真っ直ぐに突きを放つ。隼樹の拳はガルマの顔面に直撃し、そのまま押して床に後頭部を叩きつけた。衝撃で、床にヒビが広がる。
両者の動きが止まり、王座の間が静まり返った。
隼樹が、ゆっくりと拳をガルマの顔から離す。ガルマは大の字で、床に倒れている。
立つな。
隼樹は息を切らし、朦朧とする意識でガルマを見下ろす。
立つな、立つな、立つな。もう戦う力なんか残っていない。
力を使い果たし、隼樹は立っているのも限界な状態だった。
入口にいるウーノ達も、ヴィヴィオも、モニターを見ている世界中の人々も固唾を飲んで見守っている。
すると、ガルマが目を覚まして、言った。
「……フッ。脳ニ強イ衝撃ヲ受ケテ、シバラク動ケン」
ガルマは、どこか満足げな表情で続ける。
「私ノ負ケダ」
この時、勝敗が決した。
ガルマが負けを認めて、しばらく呆然としていたが、
「や……」
体を震わせて、ナンバーズやギンガ達が一斉に飛び跳ねる。
「やったァァァァ!!」
トーレは握り拳を固め、セインとウェンディが抱き合って喜ぶ。
「やったわ、ドゥーエ! 隼樹が勝ったわ!!」
「ええ、隼樹がやってくれたわ!!」
ウーノとドゥーエは、互いの手を握り合って隼樹の勝利を喜んだ。
他のメンバーも、ギンガ達も世界中の人々も歓声を上げる。
世界中が、歓喜の声で包まれた。
隼樹は、意識が朦朧としていてフラついている。
「勝った……?俺……勝ったのか……?」
一気に体から力が抜けて、隼樹は仰向けに倒れた。
「隼樹!!」
ウーノとドゥーエが隼樹に駆け寄り、他のナンバーズとギンガ達も走り出す。
「隼樹! しっかり!」
傷ついた隼樹を抱えるウーノとドゥーエ。
隼樹は、首を動かして二人の顔を交互に見る。
「う……ウーノさん……ドゥーエさん……俺……勝ったの……?」
「はい。貴方が勝ちました」
「貴方の勝ちよ、隼樹」
二人は、ガルマに勝った事を隼樹に教えてあげた。
「勝った……? 俺が……? マジで……?」
隼樹は二人の言葉を聞いて、思わず涙を流す。
「ふふふ。隼樹は泣き虫ですね」
泣いてる隼樹を見て、ドゥーエが微笑む。
「隼樹お兄さーん!」
王座の方から、隼樹を呼ぶ声が聞こえてきた。呼び方からして、ヴィヴィオだろうか。声が近づいてくるところからして、ナンバーズに拘束を外してもらったようだ。
隼樹が顔を向けると、衝撃の光景が目に入ってきた。
「隼樹お兄さん!!」
走って近づいてくるのは、黒いジャケットを身につけて、長い金髪で、スタイルの良い、見たこともない美女だった。
「え……? 誰……?」
美女を見て、隼樹は目を丸くする。
「ああ、聖王になったヴィヴィオね」
ウーノがアッサリと答えた。
「ええええええ!? ヴィヴィオォォォォォ!!?」
聞いた瞬間、どこに残っていたのか、大声で隼樹は叫んだ。
「落ち着いて、隼樹! 傷に響くわ!」
ドゥーエが、興奮してる隼樹を落ち着かせる。
隼樹は、できるだけ気分を落ち着かせ、できるだけ冷静に、近づいてくるヴィヴィオらしい人物の観察を始めた。
翡翠の右目、紅玉の左目のオッドアイ。“隼樹お兄さん”という呼び方。
まさか……本当にヴィヴィオなのか?
隼樹の頭が混乱して、冷静さが失われていく。
「は、ははは……ヴィ……ヴィヴィオが……ヴィヴィオが大人で、大人なヴィヴィオで、子供なヴィヴィオは消えて、みんな大人になりましたぁ……」
意味不明な言葉を発して、隼樹はガクッと意識を手放した。
「隼樹? 隼樹ィィィィ!!」
王座の間に、ウーノとドゥーエの声が響いた。
周りのみんなも、隼樹が気絶して慌てる。
「……ヤレヤレ」
近くで倒れてるガルマは、呆れて溜め息をついた。
*
ミッドチルダから少し離れた森林の中。
黒い編笠を被った男が、モニターを眺めていた。ソレは、隼樹とガルマの戦いが流されていたモニターだ。
編笠の男は、モニターに映ってる隼樹を見て口元を歪めて、不気味な笑みを浮かべた。
「ふふふ。塚本隼樹か。面白い! ふはははははは!!」
編笠の男の高笑いが、森林の中に響き渡った。
激闘の末、勝利を掴んだのは隼樹!
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締切りは今週、20日の金曜日!!
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