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赤夜叉「突然ですが、『ナンバーズ〜魔法が使えない男〜』第一回キャラ人気投票を開催しま〜す!」

隼樹「はあ? 何言ってんのアンタ?」

赤夜叉「一人3票持ちで、一キャラに2票まで投票できます!」

隼樹「いや、何で人気投票?」

赤夜叉「何か、やりたくなったから」

隼樹「それだけ?」

赤夜叉「締切りは11月20日(金)です。皆さんの沢山の投票お待ちしてます!!」

隼樹「えっ!? マジでやるの!? ねぇ、俺一位になれるかな!? つーか俺達のせいで、本編のシリアスな感じブチ壊しじゃね!?」


全てを破壊しようとする異形・ガルマ!

そして、隼樹がガルマに宣戦布告!?
第二十三話:これは喧嘩だ
 ガルマはゆりかご内部から、自分が映ってるモニターを世界中に流した。
 管理局の指示に従って、街から避難している人々も動きを止めて、空に現れた巨大モニターを見上げている。ミッドチルダ以外にもガルマが映ってるモニターが現れ、人々はみんなモニターを見ていた。
 ガルマは世界中の人々に、ゆりかごが衛生軌道上に辿り着き次第、地上攻撃を始めると宣告した。ガルマの宣告を聞き、人々は不安になってざわつく。
 モニターに映ってるガルマが続ける。

「衛生軌道上ニ辿リ着ケレバ、精密狙撃ヤ魔力爆撃等ノ強力ナ武装ガ使エル。ドコヘ逃ゲヨウトモ無駄ナ事ダ」

 逃げ場など、どこにもない事を人々に教えた。
 事態を理解した人々の不安が大きくなり、パニックを起こすのに時間はかからなかった。混乱は大きく広がっていき、人々は恐怖と絶望に染まった顔になる。混乱がピークに達すると、人々は押し合いながら我先にと逃げ出し始めた。

「まさか、世界が滅亡するのか!?」
「嫌だ! 死にたくない!!」
「どけっ! 俺が先に逃げるんだ!」
「押すなよ!」
「誰か助けて!!」
「これは夢だ! 悪夢だ!」
「管理局ゥゥゥ!!」

 人々の悲痛な叫び声が、綺麗な青空に響く。
 同様の事態が、ミッドチルダだけでなく、世界中で起こっていた。
 ガルマとゆりかごが、世界を大混乱に陥れた。


*


 モニターを見つめて、ウーノ達は愕然とした。
 彼女達にとって、ゆりかごはあくまで最終手段。ミッドの人々を人質にするという、脅しの手段の為に動かしたのだ。ソレも許されない行為ではあるが、少なくとも命を奪う事だけは絶対にしないと決めていた。
 だが、ゆりかごはガルマに奪われ、ソレで地上を攻撃すると宣告した。

「アア、ソウダ」

 モニターの中で、ガルマは思い出したかのように言う。

「管理局ニ言ッテオコウ。複数ノ戦艦ニヨル一斉攻撃デ、ユリカゴヲ落トソウトシテイルナラ、ソレハ無駄ナ行為ダ。ユリカゴヲ私ノ障壁デ包ミ、外部カラノ攻撃ヲ防御スル事ガデキル。私ノ障壁ハ、イカナル攻撃モ防グ」

 戦艦の砲撃すら防ぐと豪語するガルマに、ウーノ達は驚愕した。
 ガルマは続ける。

「信ジラレナイナラ、試シニ今、砲撃ヲシテモ構ワンゾ」

 ガルマは、自信に満ちた声で言った。自分の障壁に対する絶対の自信が、ガルマにはある。
 ウーノ達は、モニターに映ってるガルマを睨む。ゆりかごに残っている、ヴィヴィオ、クアットロ、ディエチの安否も気になる。
 ウーノ達の傍にいる塚本隼樹も、同じくモニターを睨んでいた。携帯電話を持っていない左手で、自然と拳を強く握る。
 その時、

「あああああああ!!」

 突然、モニターから悲鳴が聞こえてきた。声の感じから、悲鳴の主は女──それも幼い少女のようだ。
 隼樹達は、モニターに近寄って画面を疑視する。モニターの中で、ガルマはぽりぽりと頭を掻く。

「ヤレヤレ。モウ痛ミニ耐エラレナクナッタカ」

 ガルマは振返り、後ろにいる少女に顔を向けた。
 モニターにも、その少女の姿が映し出される。少女を見た瞬間、隼樹達は目を見開いた。

「ヴィヴィオ!!」

 ウーノが、少女の名前を叫んだ。
 映っているのは、王座に座って手足を固定されているヴィヴィオ。しかも、今まで以上に苦しそうにしている。
 それと王座の近くに、二つの人影が倒れていた。よく見ると、倒れているのは、クアットロとディエチだった。二人とも、主に顔をボロボロにされて、気を失って倒れている。

「クアットロ! ディエチ!」

 二人の姿を見て、トーレが叫んだ。
 傷ついた二人を見て、ナンバーズは怒りと殺意を燃え上がらせた。

「イヤァァァァァ!! あああああああ!!」

 その間にも、ヴィヴィオは目に涙を浮かべて、悲痛な悲鳴を上げる。

「ヴィヴィオ!!」

 ヴィヴィオの名を呼んだ後、ウーノはガルマを殺意のこもった眼差しで睨んだ。

「貴方、ヴィヴィオに何をしたの!?」
「ナニ、魔力ヲ吸イ上ゲル勢イヲ上ゲタダケダ。トロトロスルノハ嫌イデナ」

 淡々とした口調で、ガルマは答えた。
 ウーノはガルマを睨んだまま、ギリッと歯を食いしばる。
 すると、またヴィヴィオが悲鳴を上げた。

「痛いよォォォォ!! 助けて、ウーノお姉さん!! 隼樹お兄さん!!」
「ヴィヴィオ……!!」

 ウーノは、悲痛な顔でヴィヴィオを見つめる。何も出来ず、ただ見ている事しか出来ない自分に怒りが湧きながら、胸の前で拳を強く握り締めた。
 ウーノの隣で、隼樹はモニターを見ながら迷っていた。
 目の前でヴィヴィオが苦しみ、自分達に助けを求めている。短い間だったが、ヴィヴィオとは楽しい時間を過ごした。一緒にゲームをしたりして、徐々にナンバーズとも仲良くなって、楽しそうに笑っていた。
 そのヴィヴィオが、今は沢山の涙を流して苦痛に顔を歪めて苦しんでいる。
 このままにして、いいのか?
 ガルマを放っておけば、ゆりかごを使った地上攻撃が始まり、自分もナンバーズも死んでしまう。
 どうする……? どうする……?
 隼樹の心臓が高鳴り、いつの間にか大量の汗をかいて、携帯電話を持ってる右手と拳を握ってる左手も汗でグッショリと濡れている。
 またガルマと戦うか? いや、自分は一度ガルマに敗北しているではないか。それも完膚なきまでに──。
 ここで動くか動かないか、隼樹の中で葛藤が続く。

「……」

 ふと隼樹の思考が、一旦止まった。
 そして心中で呟く。
 ──俺は、まだ何もしてない。
 自分は、まだナンバーズのみんなに何もしてやれてない。ガルマと戦って負けた時も、最終的にセインに助けられてしまったではないか。ガルマに負けた事を言い訳にして、何もせずにウジウジして逃げようとしてる。つくづく自分は情けない男だな、と思った。
 携帯電話を握る隼樹の手に、更に力が入る。
 ここで動かなきゃ、ナンバーズの命も自分の命も捨てる事になる。自分勝手な考えだが、好きな女を見捨てる最低な男にだけは、絶対になりたくない。
 もう逃げるのはやめだ。まだ諦めたくない。
 隼樹は決意すると、携帯電話のボタンをプッシュした。


*


 ゼスト達がいる、地上本部の執務室。
 愕然とした表情で、彼等はモニターを眺めていた。
 その時、ガルマが映ってるモニターの隣に、新たなモニターが出現した。映っているのは、隼樹だ。

「隼樹さん!?」

 モニターに映ってる隼樹を見て、レジアスの後ろに立っている女性局員は、思わず声を上げた。

「隼樹……!?」

 女性局員が口にした名前に、ゼストが反応した。改めてゼストは、モニターに映ってる隼樹を見る。
 もしや、あの男が塚本隼樹か。とゼストは思った。
 実際に見るのは今回が初めてだが、隼樹の事はルーテシアやアギトから話は聞いている。
 あのスカリエッティから、メガーヌを解放してくれた男。ゼストは、ジッと隼樹を見据えた。

「ホウ、隼樹カ。マタ顔ヲ合ワセル事ニナルトハナ」

 ガルマは隼樹の顔を見て、少し驚く。
 隼樹は、何かを決意した顔で、口を開いた。

「俺が行く」
「ン?」

 ガルマは、僅かに首を傾げる。

「俺が戦う……今度こそお前に勝つ!」

 臆する事なく、ガルマに言い放つ。その声には、普段にはない凄みと気迫が加わっていた。
 執務室にいる全員が、驚いて目を見開いた。

「隼樹さん! 何を勝手な事を言ってるんですか!?」

 隼樹が映ってるモニターから、ウーノの声が聞こえてきた。
 だが隼樹は、ウーノの声に耳を貸さない。
 数秒の沈黙の後、ガルマが口を開く。

「……確カニ、オ前ナラ私ニ対抗デキル。コレハ事実」

 ガルマは、モニターに映ってる隼樹を見据えたまま続ける。

「ダガ、私ニ敗北シタノモ、マタ事実。オ前ハ私ニハ勝テン」
「言っただろ。今度こそお前に勝つ」

 隼樹も引く気は無いらしく、目を鋭くして答えた。

「ホウ」とガルマは薄く笑う。

 今の隼樹の顔を見て、ガルマは以前の彼とは違う何かを感じ取った。あの時は、ただ怒りに任せていたが、今の隼樹は違う。
 ──面白イ。
 ガルマは、思わず笑みを浮かべた。

「イイダロウ。ナラバ来ルガイイ、我ガ“ユリカゴ”ヘ。私ノ元マデ辿リ着ケタラ、相手ヲシテヤロウ」

 隼樹に、自分の所まで来るように言った。

「フフ。世界ノ未来ヲ賭ケタ決戦、ト言ッタトコロカ」

 愉快そうにガルマが笑う。
 すると、隼樹が口を開いた。

「……そんなんじゃない」
「ン?」

 ガルマが笑いを止め、怪訝な表情になる。
 執務室にいる一同も、同じような表情をした。

「これは……」

 決戦なんて大それた事ではなく、ましてや決闘なんて殺し合いでもない。第一、そんな世界の運命を背負った戦いなんて、隼樹には出来ない。というか、そんなプレッシャー背負いたくない。
 だから、これから始めるのは、自分の大切なモノを護る為に自分の拳を振るって戦う──。

「喧嘩だ」
「喧嘩カ……フフ。確カニ、オ前ニ決戦ヤ決闘トイウ言葉ハ似合ワンナ」

 ガルマは納得して、短く笑った。

「デハ、オ前ガ来ルノヲ楽シミニ待ッテイルゾ」

 言って、ガルマが映ってるモニターは消える。
 すぐに隼樹が映ってるモニターも消えた。
 二つのモニターが消えて、再び執務室に沈黙が訪れた。


*


「この大馬鹿者がァァァァ!!!」

 怒声と共に、トーレの右拳が隼樹の頭に振り下ろされた。
 ゴツンッという音の後、隼樹は涙目になって両手で殴られた箇所を押さえる。

「っ……!!」

 あまりの痛みに、隼樹は悲鳴を上げる事も出来ない。これがギャグなら、ドデカイたんこぶが頭に出来ているだろう。

「勝手にガルマとの対決を決めおって! 一体何を考えている!?」

 頭の痛みに悶えてる隼樹に、トーレが怒鳴った。
 そこへセインが、やんわりと止めに入る。

「ま……まぁまぁ、トーレ姉。少し落ち着……」
「お前は黙っていろ!!」
「はいっ!」

 トーレの怒声一発で、セインは高速で下がった。

「隼樹さん」

 ウーノが隼樹に近寄る。その顔は、厳しい表情をしていた。

「前に約束しましたよね? もう勝手な行動はしない、と」
「……はい」

 頭を押さえたまま、隼樹は答えた。

「……何故、約束を破ってまで勝手な事をしたんですか?」

 ウーノは厳しい目付きで、隼樹を見据える。研究室が緊張感に包まれ、静寂が訪れた。
 しばらくして、隼樹が沈黙を破った。

「……今、ここで動かなきゃ……俺、後悔すると思って……。このまま何もしないのは、嫌だったから……俺……」

 隼樹は、グッと拳を握りしめて、叫ぶ。

「俺、みんなを護りたいんだ!!」

 顔を真っ赤にさせた隼樹の大声が、研究室に響いた。
 ウーノは少し目を見開いて、トーレ達も目を大きく見開いて驚いている。セインだけ、少し頬が赤くなっていた。

「そうですか……わかりました」

 ウーノの顔が厳しい表情から、いつもの優しい表情に戻った。

「貴方がそこまで言うのでしたら、止めはしません。その代わり、一つ約束をしてください」
「何ですか?」

 隼樹が聞くと、ウーノは真剣な表情で彼を見据える。

「必ず勝って生きて帰る、と約束してください」
「……は、はいっ!」

 ウーノに見つめられ、耳まで真っ赤にして動揺しながらも、隼樹は答えた。
 元々負ける気も死ぬつもりも無かったが、これでますますガルマに負ける訳にはいかなくなった。この約束は、絶対に護らなければならない。
 今まで二人のやり取りを見守っていた、トーレが口を開く。

「いいのか、ウーノ?」
「ええ」

 ウーノは頷いて答えた。
 次にトーレは、スカリエッティに聞いた。

「ドクター」
「私も止めはしないよ。隼樹の好きにするといい」

 とスカリエッティも、隼樹がガルマと戦う事を止めない様子。
 二人の意見を聞いて、トーレは溜め息をつくと、隼樹に顔を向けた。

「仕方ない。だが、我々も一緒に行くぞ」
「えっ!?」

 トーレは続ける。

「当然だろう。お前に、ゆりかごまでの移動手段も、ガルマの手下の怪物を倒す手段も無いだろう?」
「う……」

 確かに、トーレの言う通りだ。隼樹一人では、ゆりかごまで辿り着けないし、怪物軍団を退ける実力もない。ぶっちゃけ、それらの手段を考えるのを忘れていた。

「ゆりかごに辿り着き、更にガルマの所に着かなければ意味がないからな。我々が共に行く事に、異存はないな?」
「……わかった。頼む」

 隼樹も、ここは素直に従った。

「よし、では行くぞ! セッテ! セイン!」
「了解!」

 セッテとセインは、声を揃えて応えた。セッテの胸の傷は、スカリエッティの治療を受けて既に治っている。
 ナンバーズを見て、隼樹は思わず武者震いがした。これほど頼もしい人達は、他にはいない。
 準備も整い、出発しようとした時だった。

「待ってください」

 ウーノが、隼樹達を呼び止めた。
 隼樹達が振り返ると、ウーノは予想外な言葉を口にする。

「私も同行します」
「えっ!?」

 ウーノの発言に、隼樹だけでなくトーレ達も驚いた。
 それも当然。ウーノも戦闘機人だが、他のメンバーに比べて戦闘能力は低い。主にスカリエッティのサポートや、作戦指揮等を中心に動いているのだ。そんなウーノが、一緒に戦場へ行くと言い出したのだから、驚きである。

「ウーノさん?」
「何故お前まで?」

 トーレが理由を聞いた。

「ヴィヴィオが苦しんで、隼樹さんがガルマと戦いに行こうとして、トーレ達も協力しようとしてるのに……私だけ何もしないなんて出来ないわ……!」

 ウーノは覚悟を決め、決意を固めた顔をしている。

「私も、ヴィヴィオと妹達を助けたいの」

 強い想いを胸に、ウーノはヴィヴィオ達を助けたいと言った。

「だが……」

 トーレ達は、ウーノを連れていく事に戸惑う。
 するとウーノは、スカリエッティに振り返った。

「ドクター」
「構わないよ。フェイト・テスタロッサ達は、部屋に閉じ込めてあるから私の方も問題はない。行ってきたまえ」

 スカリエッティは、ウーノもゆりかごへ行く事を許す。

「ありがとうございます」

 僅かに頭を下げて、ウーノは礼を言った。

「ドクターの許しも出ました。私も同行します」

 こうして、ウーノも一緒にゆりかごに行く事が決定した。
 隼樹としては、ウーノを危険な戦場に連れていきたくなかったが、説得している時間はないし、おそらく説得は無駄だろう。

「よし、行くぞ!」

 ウーノも加わり、今度こそ出発しようとした時だった。

「待ちなさい!」

 また女性の声が、隼樹達を止めた。
 思わず隼樹達は、ズッコケそうになった。
 またかよ! 誰だよ! と思いながら、隼樹達は振り返る。そこには、意外な人物がいた。

「な……ナカジマさん!?」

 隼樹だけでなく、ウーノ達も驚いて目を見開いた。
 立っていたのは、部屋で眠っていたハズのギンガ・ナカジマだった。
 目覚めるのは、確か明日だったハズなのに凄いな、と隼樹は思った。

「事情は分かっています。私もガルマの映像を、部屋で見ていましたから」

 どうやらガルマのモニターが、世界中に流れる前から起きていたようだ。機動六課との戦闘に夢中になって、みんな気付かなかったらしい。
 隼樹達を真っ直ぐに見据えて、ギンガは驚きの発言をした。

「私も行きます」
「えっ!?」

 隼樹は再び驚く。

「貴女達の事を見逃す訳にはいかないけど、今はガルマを倒して、ゆりかごを止める事が最優先。だから、私も貴女達と一緒に行きます」

 敵であるギンガからの、協力の申し出。
 思わぬ協力者の登場に、隼樹達はただただ驚くしかなかった。

「えっと……ドクター?」

 困惑の表情を浮かべて、セインがスカリエッティに聞いた。

「別に構わないよ。デバイスは、そこの机の上にある」

 これまたアッサリと許可して、スカリエッティは机の上を指差す。
 ソコには、ギンガのデバイスが待機モードで置かれていた。ギンガは机に近づくと、デバイスを手に取った。バリアジャケットを身に纏い、籠手型デバイス『リボルバーナックル』とローラースケート型の『ブリッツキャリバー』を装着した。
 準備を整えると、ギンガはスカリエッティに目を向ける。

「ゆりかごを止めたら、必ず貴方を逮捕します」
「フッ。私は逃げも隠れもしないよ」

 短く笑って、スカリエッティは答えた。
 スカリエッティから目を離し、ギンガは隼樹達に歩み寄る。

「それじゃあ、行きましょう」
「貴様が仕切るな」

 トーレはギンガを睨む。
 すると、突然スカリエッティが大声で言った。

「では諸君! 我々がガルマを倒し、ゆりかごを止めて世界を救い、管理局よりも優れている事を世界に証明してやろうではないか!!」
「えええええっ!!?」

 隼樹とギンガが、同時に驚いて声を上げた。
 こ……このマッドサイエンティスト、ピンチをチャンスに変えおったァァァ! 確かにソレも、管理局に勝利する形の一つだよ! 侮れねェェ!!
 隼樹は心中で叫んだ。
 ギンガはスカリエッティを睨むが、すぐに顔をそらして隼樹を見る。

「そういえば、貴方も戦闘機人ですか?」

 真っ直ぐに隼樹を見つめて、ギンガが聞いてきた。
 ギンガと目が合い、隼樹は顔が赤くなって動揺する。

「い、いえ! 俺は普通の人間で、塚本隼樹って言います!」

 ドキドキしながら、隼樹は自己紹介した。
 ──ギンガさん、可愛い。
 なんて隼樹が思っていると、背後から凄まじい殺気を感じた。
 隼樹は悪寒を感じ、冷汗を流しながら、ゆっくりと後ろを振り返る。
 ソコには、黒いオーラを放つウーノ達がいた。

「隼樹さん。何デレデレしてるんですか?」
「我々の前で、いい度胸をしているな」
「隼樹。覚悟はよろしいですね?」
「浮気だ、浮気だ!」

 ウーノ達が、拳を握ったり固有武装を構えて、ジリジリと隼樹に迫る。
 隼樹も青ざめた表情で、ジリジリと後ずさった。

「ちょっ……待って、違う違う! あの……ホラ! 今こんな事してる場合じゃないよ! キミ達の敵は誰? 僕じゃなくてガルマでしょ?」
「今はお前だァァァァァ!!!」

 怒りの形相でウーノ達が、一斉に隼樹に襲い掛かる。

「ぎゃああああああああ!!」

 暴力の爆心地で、隼樹は悲鳴を上げた。
 その光景を、ギンガは顔を引きつらせて眺めて、スカリエッティは愉快そうに笑って見ていた。
 制裁が終わった後、ボロボロになった隼樹を連れて、ウーノ達はゆりかご目指して出発した。


*


 一体何を考えているんですか、隼樹さんは?
 レジアス達がいる執務室で、女性局員は内心怒っていた。
 この女性局員、実はナンバーズのドゥーエが変装している姿なのだ。IS『ライアーズ・マスク』で姿を変えて、地上本部に潜入して、用済みのレジアスを暗殺しようとしていた。
 だが、ガルマの出現で計画が狂ってしまった。
 更に隼樹のガルマに対する宣戦布告で、ドゥーエは怒っているのだ。一人で無茶をしようとしている隼樹に──。
 ドゥーエには、隼樹がガルマに戦いを挑んだ動機は、大体察しがついていた。
 大方、私達の為に戦おうと決めたのでしょう。世界を救う、なんて大それた事は彼は考えませんから。世界を困らせてやろう、なら考えそうですが。
 ドゥーエは溜め息をついた。ガルマがゆりかごを強奪して、地上攻撃を仕掛けると宣告して、もはや暗殺どころではない。
 隼樹も、ドクターやウーノ、妹達と同じくらい大切な人です。放っておく訳にはいきませんね。
 レジアス暗殺をやめて、ドゥーエはゆりかごへ行く決意をした。
 その時、

「ゼスト殿!?」

 執務室に、二人のナンバーズが入ってきた。
 現れたのは、チンクとノーヴェ。
 二人の姿を確認すると、ドゥーエは笑みを浮かべた。

「チンク、ノーヴェ。いい時に来ましたね」

 ライアーズ・マスクを解いて、ドゥーエは正体を現す。
 その場にいる全員が、驚いて目を見開く。

「お前はナンバーズの……!」

 ゼストも警戒する。

「ドゥーエ!?」
「えっ? あれがNo.2のドゥーエ?」

 ドゥーエがいる事にチンクが驚き、ノーヴェも初めてドゥーエを見て目を丸くしている。
 二人が驚いてるのも構わず、ドゥーエが状況を説明した。

「異形・ガルマが、ゆりかごを強奪し、世界中にモニターを流して、地上攻撃をすると宣告しました」
「ゆりかごが……強奪!?」
「地上攻撃!?」

 衝撃の事実を知らされて、二人は更に驚く。

「隼樹がガルマと戦う為に、ゆりかごへ向かっています! これから私達も、ゆりかごへ向かいます! 地上本部に突入している他の妹達にも連絡しなさい!」

 驚いてる二人に、ドゥーエが有無を言わさぬ勢いで指示を出す。

「わ……分かった!」

 二人は慌てて、同じく地上本部に突入しているウェンディ達と通信を繋げる。
 そう離れた所に行ってなかったらしく、連絡を取ってから数分でウェンディ達は執務室にやってきた。

「全員揃いましたね」

 ウェンディ達が到着したのを確認して、ドゥーエが近づいてくる。

「あれ? もしかして、ドゥーエっスか?」

 ドゥーエを見て、ウェンディが驚きの声を上げた。

「そうよ。けど出会いを喜んでる時間は、ありません。急いでゆりかごへ向かいます」

 ナンバーズが揃い、ゆりかごへ向かおうとした時だった。

「待ってくれ」

 後ろから、呼び止められた。
 振り返って見ると、ゼストがナンバーズを見据えている。

「俺も行く」
「貴方も?」

 ドゥーエは目を細めて、ゼストを睨む。
 ゼストは振返り、ドゥーエの睨みを背中に受けながら、レジアスを見る。

「レジアス。あの隼樹という若い男は、特別な力もなく、しかし何かを護る為に、あの異形と戦おうとしている……なのに、俺達は一体何をしているんだ?」

 ゼストに問われ、レジアスは目を伏せて沈黙を続ける。

「俺は行く。手遅れになって、何かを失うのはもう御免だ」

 言ってレジアスに背を向けて、ゼストはナンバーズに近づいた。

「俺も共に行かせてくれ」
「……わかりました。では急ぎましょう」

 少し逡巡した後、ドゥーエはゼストの同行を認めた。

「旦那ァァァ!」

 執務室を出ると、通路の先からアギトがやってきた。その後ろには、シグナムとリインフォース・ツヴァイがいる。

「ナンバーズ!?」

 アギト達は、ナンバーズの姿を見て動きを止めた。
 ナンバーズとゼストは、アギト達に現状を説明した。説明を聞いて、アギト達は驚く。

「アギト、それからベルカの騎士よ。これから俺達は、ゆりかごを止めに行く。お前達はどうする?」

 ゼストが問い掛けると、答えはすぐに返ってきた。

「もちろん、旦那について行くさ!」
「どうやら、今は争う相手が違うようですね。わかりました騎士ゼスト、それからナンバーズ。私とリインも協力しましょう」
「協力するです!」

 アギト、シグナム、リインフォース・ツヴァイもゆりかごを止める為に、協力する事になった。

「それでは、行きますよ!」

 ドゥーエ達も、ゆりかごを止める為に動き出す。
 世界の存亡を賭けた、全面対決が始まろうとしていた。
次回『第二十四話:ナンバーズ集結! 隼樹の逆襲!!』

次回、大勝負!

隼樹 対 ガルマ!

ナンバーズも集結し、未来を賭けた大喧嘩開始!!


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