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ナンバーズと機動六課の戦闘開始!

つーか、隼樹も何かしなさいよ

仮にも主人公でしょ?

隼樹「俺だって、好きで活躍してない訳じゃねぇよォォォォ!!」
第二十話:戦場に綺麗も汚いもないんだよ!つーか悪役なんだから卑怯な手使ったっていいじゃん!
 『聖王のゆりかご』
 古代ベルカの王『聖王』が所持していた超大型質量兵器で、数キロほどある空中戦艦。主な武装は、側面42門と上部14門の対空レーザー砲門だ。衛生軌道上に達し、二つの月の魔力を受けると高い防御性能を発揮、同時に精密狙撃や魔力爆撃などの強力な対地・対艦攻撃が可能になり、次元跳躍攻撃も行える。



 聖王のゆりかご内部。
 通路のガジェットを破壊しながら、ヴィータは駆動炉を目指していた。
 襲い掛かってくるガジェットの群れを、ハンマーヘッドが大きくなっているギガントフォルムのグラーフアイゼンで、次々と粉砕していく。豪快にハンマー型デバイスのグラーフアイゼンを振回し、敵を倒す姿は正に鉄槌の騎士と呼ぶに相応しい。
 目的の駆動炉までもう少しだが、さすがに疲労の色が見えてきた。
 その時、ヴィータは視界に人影を捉らえた。
 通路の前方で、重狙撃砲・イノーメスカノンをヴィータに向けて構えているのは、ディエチ。

「ナンバーズ!」

 ディエチの姿を確認して、ヴィータは声を上げた。
 その間にも、ディエチはイノーメスカノンのエネルギーを溜めている。

「邪魔するなァァァァ!!」

 ヴィータが雄叫びを上げて、グラーフアイゼンを振り上げてディエチに向かっていく。

「発射!」

 引き金を引いて、イノーメスカノンから最大出力のエネルギー弾が放たれる。
 砲撃は真っ直ぐに、ヴィータに向かっていく。

「うおおおおおお!!」

 避けるだけの隙間が無いと判断したヴィータは、グラーフアイゼンを大きく振り上げて、砲撃を弾こうと勢いよく振り下ろす。
 だが、次の瞬間、

「バラけろ!」

 ディエチの呟きと同時に、グラーフアイゼンが当たる寸前で砲撃はバラけて拡散した。

「なっ!?」

 ヴィータは驚愕して目を見開き、グラーフアイゼンは空を振りぬく。
 グラーフアイゼンを振って無防備状態となったヴィータに、拡散した砲撃が降り注ぐ。何度も爆発と爆音を起こし、ゆりかご内部が少し揺れた。
 爆発が収まり、ヴィータが立っていた所に煙が立ち込める。

「ぐ……!」

 障壁を張る暇もなく、砲撃の雨を受けたヴィータは、バリアジャケットがボロボロになって、所々に傷を負って血を流していた。砲撃の威力は高く、直撃を受けてダメージもかなり大きい。
 必死に起き上がろうとしたが、ガジェットIII型という大型がやってきて、収納していたベルトアームでヴィータは何重にも縛られて拘束されてしまう。ディエチがやってきて、ヴィータの手にあるグラーフアイゼンを奪い取った。

「隼樹のアドバイスその2『敵のデバイスを奪って無力化させろ』」
「このっ……! 返せ! 離せ!!」

 デバイスを取り返そうと、ベルトアームを破ろうとする。だが負傷してる上に、AMFが充満している内部では力が出せない。
 ディエチはグラーフアイゼンを持って、イノーメスカノンを置いてきた場所に戻った。そしてイノーメスカノンをヴィータに構え、エネルギーを溜める。
 ヴィータは、必死にアームから脱出しようともがく。

「殺しはしない。気絶してもらうだけだ」

 呟いた直後、イノーメスカノンからエネルギー弾が発射された。
 エネルギー弾は、真っ直ぐにヴィータに迫り、直撃して爆発を起こす。エネルギー弾を受けたヴィータは、抉れた床に気絶して倒れる。ヴィータの動きを封じていたガジェットも、粉々になって壊れてしまった。
 ディエチは、倒れたヴィータの姿を見つめた。


*


 ヴィヴィオがいる王座の間を目指して、なのはは通路のガジェットを破壊しながら進んでいく。
 通路を進んでいくと なのはの前にも人影が現れた。
 通路の先にいるのは、クアットロ。

「はぁ〜い。お待ちしてました♪」

 クアットロはニッコリ笑って、なのはを迎えた。
 なのはは、目の前にいるクアットロを睨む。

「……大規模騒乱罪の現行犯で、貴女を逮捕します! すぐに騒乱の停止と武装を解除してください!」
「それはできませんわぁ〜。これはドクターの夢ですものぉ〜」

 笑みを浮かべて、クアットロが続ける。

「ヴィヴィオには悪いけど、なのはママにはここで脱落してもらいますわ〜」

 言った直後、横の通路から数機のガジェットがやってきた。
 なのはは素早く、杖型デバイス『レイジングハート』を構える。
 レイジングハートの先端に、桜色の魔力が集束されていく。

「ディバインバスター!!」

 声と共に、レイジングハートから桜色の閃光が放たれた。
 閃光は襲い掛かってくるガジェットの群れを飲み込み、通路の先にいるクアットロに迫る。

「いや〜ん、こ〜わい♪」

 クアットロは少し身を屈めると同時に、身につけてるシルバーケープで体を覆う。すると、閃光が当たる直前、シルバーケープが銀色に光り出す。
 なのはが放った桜色の閃光は、磁力の反発する力のように弾かれて壁に激突する。クアットロが身を屈めたのは、閃光を弾きやすい角度に調節するため。

「なっ!?」

 閃光を弾かれて、なのはは一瞬動きを止めてしまった。
 その瞬間、見えない“何か”がなのはの手足の(けん)を斬った。壁や床に血が飛び散る。

「くっ……!」

 手足の筋を斬られて、なのははレイジングハートを手放して、その場に崩れてしまう。筋を斬られて、手足を動かす事ができない。顔を俯けて、痛みを堪える。
 クアットロが笑みを浮かべて、なのはに近づく。

「隼ちゃんのアドバイスその3『敵の不意を突け』。その4『敵が全力を出す前に倒せ』うふふ。管理局のエース・オブ・エースさんも、不意を突かれたら呆気ないですねぇ〜」
「っ……!」

 なのはは、顔を上げてクアットロを睨んだ。
 なのはの睨みも気にせず、クアットロは床に落ちたレイジングハートを拾う。

「ところで、貴女を傷つけたのが誰か、気になりませんか〜?」

 言ってクアットロは、指をパチンと鳴らした。
 その直後、なのはを傷つけた見えない何かが姿を現す。
 現れたのは、多脚生物のような形で鎌を持ったガジェットだった。光学迷彩を使える、ガジェットIV型だ。

「っ!!」

 ガジェットIV型を見た瞬間、なのはの表情が強張った。
 なのはの反応を見て、クアットロは満足そうな笑みを浮かべる。

「貴女にとっては、忘れられない相手ですよねぇ〜?」

 時は遡る。なのはが時空管理局に入居して二年目の冬。僅かな油断から、瀕死の重傷を負った。その時、なのはを負傷させた犯人が、ガジェットIV型と同型機なのだ。

「さて、貴女にはお仲間さんと一緒に、部屋でおとなしくしてもらいますわぁ〜」

 クアットロは用心して、なのはの手首と足首にAMF効力のある黒いリングを取り付ける。
 なのはは、悔しそうに歯を食いしばった。
 ガジェットIV型は、なのはを連れて部屋に向かって動き出す。
 クアットロは黒い笑みを浮かべて、ガジェットに連れていかれるなのはの姿を見つめた。


*


 スカリエッティのアジト。
 アジトの中を飛び交う、二つの閃光があった。閃光の正体は、セッテとフェイト。セッテは重りを外して、ブーメランブレードを使って戦っていた。対するフェイトは、金色の魔力刃を備えたバルディッシュを振るって戦っている。
 トーレは少し離れた所で、二人の戦闘を静観している。
 セッテが床に着地する。

「はあああああ!!」

 手に持っている二本のブーメランブレードを、宙にいるフェイトに向けて投げる。
 フェイトは、向かってくる二本のブーメランブレードを避けて、セッテに迫る。

「IS『スローターアームズ』!」

 セッテは焦らず、ISを発動させた。
 先ほど避けられた二本のブーメランブレードが、軌道を変えて、背後から再びフェイトに迫る。

「くっ!」

 ブーメランブレードに気付いて、フェイトは動きを止めた。
 バルディッシュを振るって、二本のブーメランブレードを弾く。直後、ブーメランブレードの中心にあるピンク色の球体から、光線が放たれる。

「うっ!」

 光線が手足に掠って、フェイトは顔を歪めた。
 だが、傷自体は大した事がなく、フェイトは怯まずバルディッシュを振り上げてセッテに突っ込む。
 対するセッテは、新たなブーメランブレード二本を出現させて構える。

「はあああああああ!!」

 雄叫びを上げて、フェイトはバルディッシュを振り下ろす。
 セッテは二本のブーメランブレードを構えて、バルディッシュの一撃を防いだ。フェイトの攻撃を防ぐと、セッテは弾かれたブーメランブレードを再び操作する。ブーメランブレードのピンク色の球体が光り出す。

「ハッ!?」

 フェイトが気付くと、周囲にはピンク色の無数のブーメランが二人を囲むように佇んでいた。ブーメランブレードの球体から発生した、ブーメランの形をしたエネルギーの塊だ。
 フェイトはその場を離れようとしたが、同時に無数のブーメランが一斉に彼女に襲い掛かった。
 高速でバルディッシュを振るってブーメランを弾くが、全てを防ぐ事ができず、幾つか体を掠めてしまう。バリアジャケットと体に切り傷を作り、フェイトはセッテから離れて距離をとった。
 フェイトは、セッテを睨んで歯噛みする。
 彼女の目的は、スカリエッティの逮捕。早くスカリエッティの元に行かなければいけないのだが、セッテがそれを許さない。しかも、まだ戦闘に参加していないトーレもいる。ソニックとライオットという切り札があるが、魔力の消費が激しいので今使う訳にはいかない。
 どう切り抜けるか考えていた時、通路の先から足音が聞こえてきた。三人が顔をそっちに向けると、一人の男が歩いてくるのを確認する。
 男は足を止めて、笑みを浮かべてフェイトに挨拶した。

「やぁ。ごきげんよう、フェイト・テスタロッサ執務官」
「スカリエッティ!!」

 スカリエッティの姿を見て、フェイトは敵意の眼差しを向ける。
 フェイトの敵意に動じず、スカリエッティは短く笑う。

「フッ。わざわざ私の娘達に倒されに来るとは、ご苦労だね」
「私はお前を捕まえに来たんだ! 広域次元犯罪者スカリエッティ!!」

 フェイトは高速移動魔法のソニックムーブで、スカリエッティに向かって突っ込む。
 だが、

「ライドインパルス!!」

 トーレがISを発動させて、高速移動でフェイトの前に立ち塞がる。

「なっ!?」

 いきなり目の前にトーレが現れて、フェイトは驚いて動きを止めた。

「はああああ!!」

 トーレはフェイトに向かって、腕にある紫色のエネルギー刃・インパルスブレードを振るう。
 フェイトもバルディッシュを振るって、インパルスブレードを受けて火花を散らせる。

「くっ!」

 フェイトは歯噛みして、トーレから離れた。
 同時にスカリエッティに向けて、数発の魔力弾を放つ。
 対するスカリエッティは、右手を前に出す。その手には、黒いグローブ型のデバイスが装着してある。スカリエッティは障壁を展開して、魔力弾を防いだ。
 魔力弾を防がれ、フェイトは悔しさで歯を食いしばる。

「フッ。残念だったね」

 スカリエッティが言った直後、モニターが出現した。映ってるのはウーノだ。

「ドクター」
「どうしたんだい、ウーノ?」
「あの……隼樹さんの様子が……」

 少し戸惑った様子で、ウーノは後ろを向いた。
 ウーノの視線の先には、部屋の隅で座り込んでる塚本隼樹の姿があった。主人公なのに、随分と遅い登場である。
 隼樹の姿を見て、スカリエッティが声をかけた。

「隼樹、どうかしたのかい?」
「……別に。どうもしませんよ」

 少し拗ねた感じで、隼樹は答えた。
 すると、セッテが意見を言う。

「もしかして、自分だけデバイスが使えない事に、落ち込んでいるのでは?」
「……別に落ち込んでねーもん」
「ハッハッハッ! 素直になりたまえ隼樹」

 スカリエッティが言った直後、隼樹は振り返ってモニターに顔を出す。

「うるせーな! 別に落ち込んでねーって言ってんだろが!! テメー、ちゃっかり自分のデバイス持ってんじゃねーよコノヤロォォォ!! どうせ俺は、魔法もデバイスもISも固有武装も持ってねーし、使えねーよ! だからどうだってんだよ!? んな事で人間の価値決まるのかよ!?」

 そう叫ぶ隼樹の目には、涙が浮かんでいた。
 すると、傍にいるウーノが隼樹を慰める。
 スカリエッティ達の様子を見て、フェイトは唖然となる。
 だが、すぐに気を取り直して、スカリエッティが目の前に現れた今がチャンスと踏む。

「ライオット!!」
『ライオットブレード』

 カートリッジロードをして、バルディッシュの形態が変わる。魔力刃が、左右二刀に分かれた形態になった。

「オーバードライブ。真・ソニックフォーム!!」

 フェイトの体が、金色の輝きを放つ。
 異変に気付いたスカリエッティ達が、フェイトに向き直り、トーレとセッテは構える。
 輝きが消えて、フェイトの姿が見えてきた。バリアジャケットは装甲が薄くなり、ボディラインが強調され、手足の肌を露出したセクシーな物になっていた。

「おおっ!!?」

 フェイトの真・ソニックフォームを見て、隼樹は顔を赤くして興奮する。

「な、なんつー恰好だ……! あの人、露出狂なの!? ちょっと写メ……」

 隼樹が興奮しながら、携帯電話を取り出そうとした時、

「いだだだだ!」
「……隼樹さん。何しようとしてるんですか?」

 ウーノが目を細めて、隼樹の頬を引っ張る。

「痛い痛い! ウーノさん痛い! ウーノさん痛い!」
「……」

 隼樹は痛みを訴えるが、ウーノは無言で頬を引っ張り続けた。
 無言のプレッシャーを放つウーノを見て、トーレとセッテは若干顔を引きつらせる。
 場の緊張感が、隼樹によって削がれてしまった。
 フェイトは再び気を取り直して、二刀のバルディッシュを構える。


*


 スカリエッティの研究室。
 ウーノのお仕置きから解放された隼樹は、引っ張られて赤くなった頬を手で摩る。

「いたた……何もそんなに怒らなくても──」
「何か言いましたか?」
「ハイ、言ッテマセン。スイマセンデシタ」

 ウーノに睨まれ、思わずカタコトで謝る隼樹。
 絶対にウーノを怒らせてはならない、と隼樹が思った時だった。突然二人の周囲に、緑色の光の粒のような物が現れた。

「ハッ!」

 ウーノが気付いた時には遅く、緑色の光の粒はバインドとなって二人を拘束した。

「うっ!」
「えっ!? ちょっ……何これ!?」

 バインドで拘束されて、隼樹は動揺する。

「探しましたよ、お嬢さん」
「っ!」

 突然声が聞こえて、ウーノと隼樹は横を向いた。
 そこには、いつの間にかアジトに潜入していた、ヴェロッサがいた。

「スカリエッティのもう一つの頭脳、戦闘機人12人の指揮官、No.1ウーノ。そして、謎の協力者、塚本隼樹」

 二人を見据えて、ヴェロッサが言う。

「キミ達の頭の中を、ちょいと査察させてもらうよ」

 言ってヴェロッサは、右手を上げると、緑色に光り出した。

「なっ!? ふっざけんな、この……!!」

 隼樹はバインドを破ろうと腕に力を込めるが、全く破れる気配がない。

「無駄ですよ。そう簡単には、僕のバインドは破れない」

 ヴェロッサが二人に近づく。
 隼樹は歯を食いしばって、近づいてくるヴェロッサを睨みつける。何とかウーノだけでも助けたいが、手も足も出ないこの状態では何もできない。
 何もできない事にイラついていると、ヴェロッサが二人の目の前に辿り着く。

「さて、査察を始めようか」

 ヴェロッサは、緑色に光る右手をウーノの頭に伸ばす。
 バインドを破ろうともがきながら、隼樹は叫んだ。

「やめろ!」

 隼樹が叫んだ直後、ウーノを拘束していたバインドが消滅した。

「なっ!?」

 ヴェロッサはバインドが破られた事に驚き、慌てて後ずさる。
 だがウーノは素早くヴェロッサに近づき、彼の顔面に右拳を叩き込んだ。不用意に近づいた事が、仇となった。

「ぶがっ!」

 鼻を潰され、ヴェロッサは手で鼻を押さえて怯む。
 その隙にウーノは、ヴェロッサの顔を掴む。そして勢いよく、彼の後頭部を堅い床に叩きつける。ガツンッ、という音が研究室に響いた。
 ヴェロッサは頭を強く打って気絶したらしく、ピクリとも動かない。

「……!!?」

 隼樹は驚いて、口をあんぐりと開ける。あまりの驚きに、体を拘束していたバインドが消えている事にも気付いてない。

「びょ……秒殺っ!?」

 ヴェロッサを倒したウーノは、ゆっくりと体を隼樹に向けた。

「ふふ。隼樹さんが思いついてくれた、AMF効果のあるこの制服と、教えて頂いた戦法で助かりました」

 ウーノはニッコリと隼樹に微笑んだ。

「は……ははは……。い、いや〜よかった、よかった。うん、無事でよかった」

 う……うん。顔面を殴って、鼻を潰すのは教えたけど……後頭部を床に叩きつける、なんて荒業は教えた覚えはないんだけどなぁ……まぁいっか。
 無理矢理自分を納得させた後、隼樹は気絶してるヴェロッサを縛って別室に放り込んだ。


*


 場面は戻り、トーレとセッテはフェイトと対峙していた。
 トーレは、真・ソニックフォーム状態のフェイトを分析する。速さのみを追求した、装甲の薄いバリアジャケット。
 それなら──。

「一撃当たれば墜ちる!」

 確信して、トーレは構えた。
 次の瞬間、フェイトは床を蹴って風の如く素早い動きで、セッテの前に現れた。

「下がれ、セッテ!!」

 トーレが叫び、咄嗟にセッテは後ろへ下がる。直後、高速でバルディッシュが振り下ろされ、セッテの持っていた二本のブーメランブレードは粉々に破壊された。
 武器は破壊されたが、何とかセッテは胸にかすり傷を負っただけで済んだ。
 トーレはフェイトを睨むと、遂に手足に付けている重りを外した。

「ライドインパルス!!」

 真・ソニックフォームに対抗して、トーレも重りを外した状態でのライドインパルスを発動する。
 次の瞬間、トーレはあっという間にフェイトの眼前に現れた。

「なっ!?」
「!?」

 突然目の前に現れてフェイトは驚き、トーレも自身のスピードに思わず驚いてしまう。
 だが、すぐに我に帰り、二人は再び高速移動を始める。紫色と金色の閃光が飛び交い、音を響かせてぶつかり合う。常人では捉らえられない、入り込む事ができない速さの世界で、二人の勝負が繰り広げられる。
 トーレとの衝突を繰り返す中、フェイトは徐々に焦っていく。何度かバルディッシュによる斬撃を放つが、全て防がれ、かわされているのだ。トーレの方がスピードが上で、フェイトの攻撃は読まれていた。
 一方、トーレの方も自身のスピードに驚き、嬉々していた。重りを外して軽くなった自分の体が、まるで自分のモノではないように感じてしまう。特訓の成果を実感して、口元に笑みを浮かべる。
 何度目かのぶつかり合いを経て、トーレが放った斬撃がフェイトの左腕を斬った。インパルスブレードに、フェイトの血が付着する。

「どうした? 貴様の速さは、その程度か!?」
「くっ!」

 痛みに耐えて歯を食いしばり、フェイトはトーレから離れて距離を取った。二刀のバルディッシュを一つに合わせて、大剣に戻して両腕で振り上げる。
 フェイトは、勝負をかける事を決意したのだ。
 対するトーレも、両腕にあるインパルスブレードを倍以上に巨大化させ、刃も薄くさせて切れ味を増させた状態に変化させた。

「はあああああああ!!」
「てあああああああ!!」

 フェイトがバルディッシュを振り下ろしたのと、トーレが動き出したのは同時だった。
 両のインパルスブレードを交差させて、挟むようにしてバルディッシュの魔力刃と激突する。互いに渾身の力をこめて、刃の間から激しい火花が散る。
 その時、トーレのインパルスブレードに小さなヒビが走る。ヒビを見てトーレは歯噛みし、フェイトはこのまま押し切ろうとする。が、今度はフェイトの魔力刃にヒビが走った。フェイトは動揺し、魔力刃を疑視する。ヒビは大きな亀裂となって刀身全体に広がり、耐えられなくなった魔力刃はガラスのように粉々に砕け散った。

「っ!!?」

 魔力刃が砕けた瞬間、フェイトは驚愕して目を見開く。
 その隙にトーレは、高速でフェイトの背後に回り込んだ。

「終わりです!」

 フェイトが振り返る前に、トーレはインパルスブレードを振り下ろす。
 避ける事が出来ず、フェイトはインパルスブレードの一撃を受けて、床に向かって垂直落下した。落下の衝撃で床が揺れ、煙が立ち込める。
 トーレは床に着地して、油断なく煙を見据えた。
 煙が晴れてくると、少しヘコんだ床の中心に倒れているフェイトの姿が見えた。
 薄い装甲ではトーレの一撃に耐えられず、気絶して倒れている。

「やったァァァァァァ!!」

 モニターで戦いの様子を見ていた隼樹は、トーレが勝利した瞬間にガッツポーズをした。
 ウーノも安堵の表情を浮かべる。
 フェイトに勝利したトーレが、バルディッシュを回収してスカリエッティに近づく。

「終わりました、ドクター」
「ああ、ご苦労。見事な勝利だったよ」

 トーレの勝利に、スカリエッティも満足げな笑みを浮かべた。
 勝利ムードの中、ふと隼樹はある事を思い出す。

「あっ、そういえばセインは?」
「あっ」

 一同の動きが止まった。
 みんな、セインの事をすっかり忘れてました。


*


 市街地の防衛ライン。
 異形は、数人の魔導師隊に囲まれていた。

 「ナルホド。聖王ノユリカゴ、カ……」

 騒ぎの情報を聞き出した異形は、ぽりぽりと頭を掻く。

「フフ。ソレモ使エソウダナ。聖王ノユリカゴ、私ガ頂コウ」

 新たな道具を見つけて、異形は上機嫌に笑う。

「そ……そんな事はさせんぞ!」

 動揺しながらも、魔導師隊は一斉に杖を異形に向けた。
 異形は、自分を取り囲んでいる魔導師を、グルリと見回す。

「私ノ邪魔ヲスルトイウ事ハ……死ヌ覚悟ハ、出来テイルノダナ?」
狙いを、レリックから聖王のゆりかごに変更!?

セインの戦闘は、次回でやる予定!

って予定かよ!?


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