ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
人間VS異形

隼樹に勝算はあるのか!?
第十五話:ダメな男
 こんな事は、初めてだった。
 自分の為ではなく、他人の為に本気で怒る事など初めてだった。
 その事に、自分でも少し驚いた。
 けど今は驚くよりも、目の前の相手を殴りたい。ぶっ飛ばしたい。
 自分の大切なモノを壊そうとするアイツを、この手でブチのめす。

「トカゲ面ァァァ!!」

 だから塚本隼樹は、全力で異形に向かっていく。
 異形は黙って、向かってくる隼樹を見据える。
 拳が届く射程距離に入った瞬間、両者とも同時に腕を振りかぶった。

「うらああああ!!」
「ムンッ!!」

 二つの拳が、同時に放たれた。
 両者の拳は、互いの顔を殴りつける。
 隼樹は、歯を食いしばって踏ん張り、左の拳を強く握る。腕を振りかぶり、左の拳が異形の顔に直撃した。
 そのまま殴りぬけて、一旦異形から離れて距離をとる。
 隼樹は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
 異形は、ぽりぽりと頭を掻く。

「……オ前ガ私ヲ探シテルト知ッタ時カラ、薄々感ヅイテハイタガ、ヤハリ気付イテイタカ。イツ気ガツイタ?」
「初めてお前と会った日だ。俺が街中に出て逃げたら、お前は道を歩く人達を『手』でどかして追い掛けてきた。後から疑問に思った。お前の鉄壁の障壁は、どんな攻撃も、上から降ってくる瓦礫も弾くのに、何故あの時は障壁を使って人を弾かなかったのか……」

 そこで一旦言葉を切り、隼樹は短く笑う。

「そこで俺は、一つの仮説を立てた! お前の障壁は、魔導師や兵器による攻撃、障害物に対しては絶大な防御力を誇るが、『魔力を持たない普通の人間』に対しては、その効力を発揮しないんじゃないか、てな!」

 以前、モニターで見て頭の中で引っ掛かっていたのは、コレだ。
 障壁を展開させれば、わざわざ手で人をどけていく必要はない。異形が手で人をどけていたという事は、異形の障壁は普通の人には通用しない可能性があるという事だ。

「もちろん、たんに障壁を使わなかった可能性もあったが、どうやら俺の仮説が合ってたみたいだな」

 実際に隼樹の拳は、異形に届いた。
 魔力を持たない自分の拳が通用した事で、隼樹の仮説は立証されたのだ。
 異形は困ったように、頭をぽりぽりと掻いている。

「ヨク気付イタナ。ヤレヤレ。ヤハリ、アノ時、街中ニ出タノハ失敗ダッタカ」

 隼樹は拳を硬く握り締める。
 戦える。
 こんな自分でも、魔法が使えなくても戦える。その事が、隼樹の戦意を奮い立たせた。
 それに隼樹は、異形に関してもう一つ仮説を立てていた。ソレが正しければ、隼樹の勝率が上がる。

「うおおおおおお!!」

 雄叫びを上げて、隼樹は異形に向かって走る。
 異形も拳を振るって迎え撃つ。
 顔に迫る拳を、隼樹は身を低くして避けると、同時に足払いで異形を倒す。異形が床に倒れた直後、敵の顔を踏み潰そうと、足を上げて勢いよく下ろす。異形は床を転がって、隼樹の足を避けた。
 素早く立ち上がり、異形は隼樹の左脇腹に蹴りを入れる。痛みで顔を歪めるが、苦痛を意に介してる暇はない。すぐに反撃の前蹴りを、異形の腹に叩き込む。
 そこから壮絶な殴り合いとなった。隼樹が殴れば、異形も殴り返す。隼樹が蹴れば、異形も蹴り返す。
 だが、その殴り合いもそう長くは続かなかった。次第に異形の攻撃が、当たらなくなってきたのだ。
 異形の攻撃を避けると、隼樹はカウンターの拳や蹴りを相手に叩き込む。
 ──見える。異形の動きが見える。
 隼樹は興奮を抑えられなかった。
 『攻撃を見切る』力が身についているのだ。それにノーヴェの拳に比べれば、異形の攻撃は軽い。ノーヴェの訓練を受けて、隼樹は確実に強くなっていた。思わず隼樹は、笑みを浮かべる。
 そして、変化は異形にもあった。少しずつ動きが鈍くなり、隼樹よりも疲弊してる感じになっている。
 異形の様子を見て隼樹は、もう一つの仮説が合っていた事を確信する。彼が立てたもう一つの仮説──それは“異形は打たれ弱い”という説だ。
 今まで異形は、その鉄壁の障壁で魔法攻撃を防ぎ、魔導師達を葬ってきた。だから、相手の攻撃を受けた経験はない。こうした殴り合いは、異形にとって初めての体験なのだ。
 対する隼樹は、毎日ノーヴェの訓練を受けて打たれ強くなっている。

「うらあああああ!!」

 気合いと共に放たれた拳は、異形の顔を殴りぬけた。

「グッ……!」

 拳を受けた異形は、バックステップをして隼樹から離れる。
 頭をぽりぽりと掻きながら、異形は隼樹を見据えた。

「ナルホド。ソレナリニ訓練ヲ受ケテイル、トイウ事カ。ソレナリニ強イ上ニ、ナカナカノ打タレ強サダ」
「おっかない姉ちゃんに、鍛えられてるからな。打たれ強さには、自信があるんだよ」

 隼樹は口元の血を、手で拭き取る。

「ヤレヤレ。魔導師ヨリモ、オ前ノ方ガズット厄介ナ相手ダナ」

 言って異形は、コキッコキッと首を鳴らす。
 隼樹は、ノーヴェの訓練で身についた自分の力を実感して、笑みを浮かべる。
 ──勝てる。
 戦況は、僅かに隼樹が押している感じだ。このままいけば勝てる、と隼樹は思った。
 すると異形は、ぽりぽりと頭を掻いて言った。

「デハ私モ、ソロソロ本気ヲ出ソウ」
「え……?」

 隼樹は耳を疑った。
 今、コイツ何て言った?
 そろそろ本気を出す。異形は、まだ本気を出していなかったのか。

「本気ヲ出スノハ久シブリダナ」

 異形は、黒い威圧感を放つ。
 獲物を狙う獣のように床に四つん這いになり、射抜くような鋭い眼を隼樹に向ける。
 異形から放たれる威圧感に圧されながらも、隼樹は構える。
 四肢に力を入れて、異形はカッと目を見開いた。

「イクゾ」

 次の瞬間、四肢の力で異形は天井に向かって飛び跳ねた。

「速い!?」

 驚きながら隼樹は、異形が飛んだ先を見た。
 だが、ソコに異形の姿はなく、振り返ろうとした時、背中に衝撃が走った。痛みで目を閉じる。

「ぐぅ……!」
「コッチダ」

 異形の声が聞こえ、目を開いて隼樹は驚愕した。
 ダダダダダッと激しい音を立てて、手足をバネのようにして壁や天井を蹴って、物凄い速さで地下道内を縦横無尽に跳ね回っている異形がいた。

「な……!? これは……!?」

 驚いてる隼樹に、跳ね回っている異形が襲い掛かる。前、横、後ろ、あらゆる方向から異形の突進のような攻撃を受け続ける隼樹。

「は……速ぇ……! それに動きがメチャクチャで軌道が読めねぇ……!!」

 どこから攻撃してくるのか予想できず、異形の動きに翻弄されて隼樹は冷静さを失っていく。

「サテ、打タレ強イオ前ハ、ドコマデ耐エラレルカナ?」

 壁や天井を跳ね回る音と一緒に、異形の声が地下道に響いた。
 隼樹は顔の前で腕を交差させて、防御の体勢を取るが、体中に衝撃と痛みが走る。このままでは、一方的に攻撃を受け続けて倒れてしまう。
 マズイ! この場所はマズイ!
 此処は奴のテリトリーだ。此処で戦っていたら、奴には勝てない。どこか広い場所に……そうだ、地上だ。地上に出るんだ。
 思いつくと、すぐに隼樹は走り出して地下道を進む。

「逃ガサン」

 異形も地下道を跳ね回りながら、隼樹の後を追い掛ける。
 追い付くと、すぐに容赦ない追撃を隼樹に浴びせた。

「がっ……!」

 打撃を受け続けて、体中傷だらけになり、服もボロボロになっている。
 痛みと疲労で走る事も困難になり、呼吸も荒くなっていく。何度目かの攻撃を受けて、とうとう隼樹は倒れてしまった。
 堅く、冷たい床の感触が頬に伝わる。立ち上がる力も、もう残っていない。
 後ろから、足音が近づいてくる。倒れてる隼樹のすぐ後ろで、足音は止まった。

「人間ニシテハ、ヨク頑張ッタ」

 倒れてる隼樹を見下ろして、異形が言った。

「ダガ結果ハコレダ。私ノ邪魔ヲシナケレバ、素直ニ言ウコトヲ聞ケバ、ホンノ少シダガ寿命ガ延ビタモノヲ」

 隼樹は、拳を握った。弱々しく握った。
 弱い。
 恐い。
 自分は弱い。
 死ぬのが恐い。
 死にたくない。
 怯えて隼樹の体が、ガタガタと震える。
 自分は弱くて、何も護れない。自分の命も護れない。死ぬのが恐い。

「オ前ノ名前ハ……確カ、隼樹ダッタナ」

 異形が、ゆっくりと腕を上げる。隼樹にトドメを刺す気のようだ。

「サラバダ、隼樹」

 倒れている隼樹目掛けて、異形の腕が振り下ろされる。
 その時、後ろから異形の障壁に何かが当たった。

「ヌッ!」

 異形は腕を途中で止めると、後ろを振り返った。
 だが、後ろには誰もいない。
 確認を済ませて前に向き直ると、ソコには堅い床から上半身を出して、隼樹を掴んでいるセインがいた。

「貴様……!?」
「IS『ディープダイバー』!」

 無機物の中を潜行するディープダイバーを発動させて、セインは隼樹を連れて床の中に沈んでいく。
 異形が素早く腕を伸ばすが、二人は床の中に姿を消して、空振りした。
 すぐに異形は、床に手をつける。当然、床は堅く、入る事は出来ない。

「壁等ヲ通リ抜ケル事ガデキルノカ。イイ能力(のうりょく)ヲ持ッテイル」

 床から手を離し、異形は地下道の奥に視線を向けた。

「私ガ来テイル事ヲ仲間ニ報告サレテ、撤退デモサレタラ面倒ダナ。急イデ連中ノ仲間ヲ捜スカ。モシ見ツカラナカッタ時ハ、仕方ガナイ。私モ撤退スルトシヨウ」

 異形は、地下道の奥を目指して走り出した。


*


 セインは、隼樹を腕に抱いて、ディープダイバーで地下道の床の中を潜行していた。
 幾つかモニターを展開させる。映っているのは、他のナンバーズだ。

「こちらセイン。地下道で異形を見つけた!」
「解った。全員すぐに撤退だ!」

 セインの報告を受けて、トーレが全員に指示を出す。異形の姿を確認したら、すぐに撤退するようにスカリエッティとウーノから言われているのだ。
 すると、ノーヴェが口を開いた。

「けど、まだ『タイプゼロ・セカンド』が……!」
「『タイプゼロ・ファースト』は姉が捕獲した。『聖王の器』も、ルーテシア嬢が捕獲したから、今回はこれで充分だろう。すぐに撤退するぞ」
「……わかった」

 チンクに言われて、ノーヴェは渋々撤退命令に従った。

「そうだ。あと、隼樹も一緒にいるんだ」
「えっ!?」

 セインの言葉に、ナンバーズは同時に驚きの声を出した。

「何で隼樹がいるんだよ!? アジトで待機してるハズだろ!?」

 ノーヴェが声を荒げた。
 すぐにウーノは、隼樹の部屋の中をモニターに映す。ソコに隼樹の姿はない。

「一体どうやって……?」

 モニターを見つめて、ウーノが呟いた。
 すると、チンクが言った。

「そこら辺は、戻ってから本人に直接聞こう。セイン。お前は隼樹を連れて合流しろ」
「了解」

 チンクに答えて、セインはモニターを閉じて、みんなとの通信を切った。
 無機物内を潜行しながら、腕に抱いてる隼樹を見る。隼樹は顔を伏せたまま、ずっと黙り込んでいた。

「隼樹。どうやって地上本部に来たんだ?」
「……」

 セインが質問するが、隼樹は黙ったまま答えない。
 少し逡巡して、またセインは質問をした。

「どうして地上本部に来たんだ?」
「……」
「答えたくないのか?」
「……」
「まぁ、今は別にいいけどさ。戻ったら、ちゃんとみんなに話しなよ?」
「……」
「でも良かったよ。たまたまあたしが見回ってた所で」
「……」

 隼樹は黙ったまま、一言も喋らなかった。
 それからセインも口を閉じて、しばしの間沈黙が続いた。

「……ごめん」

 不意に、隼樹が口を開いた。
 セインは、隼樹に顔を向ける。隼樹の体は、小さく震えていた。

「……俺……護りたくて……みんなの事……護りたくて……」

 震える声で、隼樹は続ける。

「……でも、ダメだった……勝手な事して……俺……弱くて……恐くて……情けなくて……全然ダメだった……!」

 震える声には、悔しさがこもっていた。

「……ごめん……ごめん……!」

 隼樹の目から、涙が溢れ出る。肩を震わせ、とめどなく涙を流し続けた。

「……そうか。あたし達の為に頑張ったんだな」

 セインは笑みを浮かべて、空いてる手で隼樹の頭をくしゃくしゃと撫でた。

「泣きな。お姉ちゃんの腕の中で、いっぱい泣きな」

 ギュッと力いっぱい、隼樹の体を抱きしめる。

「戻ったら、みんなにも謝ろうな?」

 セインの言葉に、隼樹は微かに頷いた。
 隼樹が頷いたのを見て、セインは満足そうに笑った。


*


 地上本部襲撃から帰還して、全員がアジトの一室に集まっていた。
 部屋の中央に、手当てを受けた隼樹が椅子に座っていて、彼を取り囲むようにナンバーズが立っている。スカリエッティとルーテシアも、少し離れた所に立っていた。
 ナンバーズは、アジトを黙って抜け出して、勝手な行動をとった隼樹を厳しい目で見つめている。
 重い沈黙が続いてる中、ウーノが口を開いた。

「隼樹さん。何故勝手な行動をとったのですか?」
「……どうしても、地上本部に行きたくて……。でもウーノさん達に言っても、許してくれないと思って……」
「では、どうやって地上本部まで移動したんですか?」
「それは……」

 隼樹は口ごもる。
 ルーテシアの転送魔法を使ったと言えば、彼女も咎められるかもしれない。
 どうごまかすか悩んでいると、ルーテシアが手を挙げた。

「私の転送魔法で送ったの」
「ルーテシア!?」

 ルーテシアが名乗り出て、隼樹は驚きの声を上げた。
 一方、ウーノは特に驚いてる様子はない。

「やはり、お嬢様の転送魔法を使ったのですね。妹達が貴方に手を貸す訳がありませんから、予想はしていました」

 消去法で、協力者はルーテシアだったのだろう、と考えていたようだ。

「ウーノさん。ルーテシアは、俺の頼みを聞いてくれただけなんです! だから……」
「そうですね。悪いのは隼樹さんだけですね」
「う……!」

 ルーテシアはお咎め無しで済みそうでよかったが、何か複雑な気分になる隼樹。

「それでは、隼樹さん。どうして異形の障壁の弱点を、私達に黙っていたんですか?」

 ウーノに問われ、隼樹は気を取り直して答えた。

「自分の意見に自信がなくて……。それに、異形の障壁の欠点をみんなに話して、俺が異形と戦おうとしたら……みんなに止められるかなぁ、と思って……」

 言った直後、ノーヴェがイラついた顔で一歩踏み出す。

「当たり前だろ! お前弱いんだからよ!!」
「……ごめん」

 ノーヴェに怒鳴られて、顔を俯いて隼樹は謝った。

「ごめん、じゃねーよ! 一人で無茶しやがって! セインが助けに入らなかったら、死んでたかもしれないんだぞ!!」
「……ごめん」

 隼樹には、ソレしか言えなかった。

「ノーヴェ。もういい」
「ちっ!」

 トーレに止められて、ノーヴェは舌打ちした。
 隼樹は、申し訳ない気持ちで一杯だった。みんなを護るなんて決めときながら、みんなに心配をかけてしまったのだ。こんなバカでマヌケな奴は、他にはいないだろう。

「隼樹さん。貴方がどれだけ皆に心配をかけたか、わかりましたか?」
「……はい」
「では、今後はもう勝手な行動は取りませんね?」
「はい」

 みんなの前で、隼樹はもう勝手な事はしないと約束した。
 席から立ち上がると、隼樹はナンバーズを見回す。

「みんな……本当にごめん!!」

 頭を下げて、ナンバーズのみんなに謝った。

「分かればいい。頭を上げろ」
「もう、一人で無茶しないでね」

 トーレとディエチが言うと、他のナンバーズも頷く。
 隼樹は頭を上げると、セインに顔を向けた。地下道の床の中を潜行していた時の事を思い出して、隼樹は顔を赤くする。

「セイン……その……助けてくれて、ありがとう」
「どう致しまして」

 セインは笑って、隼樹に応えた。
 次に隼樹は、ノーヴェに顔を向けた。
 目が合って、ノーヴェは不機嫌そうな顔で隼樹を睨む。

「何だよ?」
「その……心配かけて、ごめん」

 隼樹が謝ると、ノーヴェは僅かに頬を赤くした。

「べ……別に、あたしは心配なんてしてねーよ!」

 言ってノーヴェは、ソッポを向いてしまう。
 これで、今回の件は終了……と思われた時だった。

「隼樹さん。これで終わりだと思ったら、大間違いですよ」
「え?」

 ウーノの声を聞いて、隼樹は体を小さく震わせた。
 何か……凄い嫌な予感がする。

「うふふ。悪い子には、お仕置きをしなければいけませんからね」

 笑みを浮かべてウーノは、ゆっくりと隼樹に歩み寄る。
 顔は笑っているが、ウーノからは得体の知れない威圧感が放たれていた。何か彼女の周囲から、『ゴゴゴゴゴ』という音が聞こえてくる。
 近寄ってくるウーノを見て、隼樹は顔を引きつらせる。背中に悪寒を感じて、顔は青ざめて冷汗を流す。

「あの〜、すいません。病院に行ってもいいですか? 何か幻聴が聞こえるんですよね〜」

 言いながら、隼樹はジリジリと後ずさる。
 いや、隼樹だけでなく、トーレやチンク──というかウーノを除く全員が後ずさっていた。もちろんスカリエッティも。

「ウーノさんの周りから『ゴゴゴゴゴ』って音が聞こえてくるんですよ。人気漫画で使われてる、あの音にソックリな音が聞こえてくるんですよ〜」
「入院は許しませんし、逃げる事もできませんよ。貴方はチェスや将棋でいう『詰み(チェック・メイト)』にはまったのですから」
「それェェェェェ!! その台詞も、人気漫画で見たァァァ!! ってかウーノさん知ってるの!?」

 青ざめた表情で、隼樹は必死に叫んだ。

「大丈夫よ、隼樹さん。貴方は何にもしないで、ジッとしていればいいのよ」

 ニッコリ笑って、ウーノは隼樹の前で立ち止まった。

「あああああああああああああああああああああ!!!!」

 アジト全体に、隼樹の悲鳴が響き渡った。
次回は、隼樹がキレる!?


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。