第十四話:戦闘開始と異形の目的
地上本部付近では、ヴィータとゼストが激しい空中戦を繰り広げていた。両者ともユニゾンをして、能力を向上させて戦っている。
振り下ろされる槍とハンマーが、火花を散らせてぶつかり合い、夜空に小さな光を発する。
「ゼストって言ったか。何企んでんのか目的を言えよ! 納得できる内容なら、管理局はちゃんと話を聞く!」
「……若いな」
ゼストが言葉を発した直後、彼の周囲に複数の火の玉が現れた。
「ちっ!」
ヴィータが舌打ちすると、彼女の周囲にも白い刃が数本現れる。
直後、炎と刃が衝突して爆発を起こし、煙が立ち込めた。
煙から離れ、ゼストは槍を構え直す。
「だが、いい騎士だ」
『旦那ぁ! 褒めてる場合かよ!』
ゼストの中にいるアギトが叫ぶ。
一方、ヴィータもハンマー型のデバイス『グラーフアイゼン』を構えて、ゼストを見据えている。念話で自分の中にいる、ユニゾンデバイスのリインフォース・ツヴァイに話し掛けた。
(リイン、気付いたか?)
(はい)
念話を繋げたまま、ヴィータはゼストに向かって突っ込む。
ゼストも槍を振るって迎え撃つ。
(向こうのユニゾンアタックは、タイミングがズレています。融合の相性が、あまり良くないようです)
リインがゼストとアギトのユニゾン状態を分析した。
何度目かの打ち合いを終えて、両者離れて距離を取る。
ゼストとアギトに対して、ヴィータとリインの融合相性は良く、ユニゾンアタックを合わせてくる。
すると、ヴィータの動きを見てゼストがある決意を固めた。
「アギト、融合を解除しろ。俺がフルドライブで、一撃で墜とす」
フルドライブという言葉を聞いて、アギトは驚愕した。
『冗談!? フルドライブなんか使ったら、旦那の体は……!!』
「終わらんさ。成すべき事を終えるまではな!」
槍を構え、強い決意のこもった声で言った。
ゼストの言葉に、アギトは怒りを露にする。
『ふっざけんな! 旦那の事は、あたしが護るって言ったろ!!』
アギトは両の手の平の上に、炎を出す。
『旦那の命は削らせねぇ! あたしが必ず旦那の道を通してやる!!』
両手を前に突き出して、炎の勢いを増させる。
『猛れ、炎熱! 烈火刃!!』
アギトが叫んだ直後、槍の刃部分が炎に包まれた。
ヴィータもグラーフアイゼンを構えて、油断なくゼストを見据えた。
*
地上本部の地下道。
ノーヴェとウェンディは、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの機動六課の新人四人と交戦中。
槍型デバイスのストラーダを持つエリオが、通路を走り、ウェンディが固有武装『ライディングボード』で、エリオに向かってスフィアを放つ。
スフィアに気付くと、エリオは素早くジャンプをして避ける。
その後も同じように全弾避けられて、ウェンディは少し困った顔になる。
「なかなか素早いっスね」
「ウェンディ! 遊んでないで、さっさと仕留めろ!」
ノーヴェは黄色い道を宙に作り出して、その上をジェットエッジで走る。
スピードを上げて、銃型デバイスを持つティアナの背後に迫る。ティアナが後ろを振り返ったと同時に、ノーヴェは彼女の顔目掛けて蹴りを放つ。決まったかと思われたが、蹴りはティアナの体を擦り抜け、彼女の姿は消えてしまった。
「なっ!?」
ノーヴェは驚いて目を見開き、床に着地して周りを見回す。
彼女の周りには、沢山のスバル、ティアナ、エリオ、キャロの姿があった。その数は二十を超える。
ノーヴェは舌打ちした。
「ちっ。幻影か!」
ノーヴェの言う通り、彼女を取り囲んでいる沢山のスバル達は、ティアナが作り出した幻影である。
だが、ティアナ一人では、これだけの量の幻影は作れない。キャロの補助魔法『ブーストアップ』で、強化されているのだ。
二人は大量の幻影の中に隠れて、必死に幻影を維持している。
『幻影制御、負荷増大』
『エナジーブート、リミット間近です』
二人のデバイスが、マスターに報告した。
キャロとティアナも、必死の表情で踏ん張っている。
(後もうちょっと……!)
(脱出タイミングが出来るまで、頑張って!)
二人の想いに応えて、デバイスも維持を続ける。
一方、ウェンディは大量の幻影を見つめて、笑みを浮かべた。
「あたし等の目を騙すとは、驚きっスねぇ。それじゃあ早速、隼樹の考えた武装を試すっスよ!!」
ライディングボードを構えて、睨むように幻影を見据える。
ウェンディの目が濃いピンク色に光り、瞬時に目の前の全ての幻影をロックオンして、同時にライディングボードの銃口にエネルギーが溜まる。
次の瞬間、引き金を引いて、銃口から大量のスフィアが一斉に放たれた。放たれたスフィアは、全ての幻影を撃ち抜き、掻き消していく。
その中で、一人だけプロテクションを張って防ごうとする人影があった。
幻影の中に紛れて、攻撃の隙を伺っていたスバルだ。プロテクションを張ってスフィアを防ごうとするが、AMFの効果で突き破られてしまい、直撃を受けてしまった。
「スバル!!」
「そこかっ!!」
ティアナが叫んだと同時に、ノーヴェがスバルに向かって突っ走る。
籠手型の固有武装『ガンナックル』を装着した右拳を振りかぶり、無防備なスバルの顔面に叩き込む。
「ぐあああああ!!」
悲鳴を上げて、スバルは体を床に何度も打ち付けながら、吹き飛んだ。
「うわ〜。凄い便利っスねぇ〜、隼樹の考えた武装」
ウェンディは満足げな笑みを浮かべる。
その時、
「サンダー……!」
上から声が聞こえて、ウェンディは顔を上げた。
頭上に、青い電気を纏ったストラーダを、上段に構えたエリオがいた。
「レイジー!!」
「ちっ!」
ストラーダが振り下ろされるのと同時に、ウェンディはライディングボードを盾にする。
槍と盾がぶつかり合って、火花を散らせる。
「うおおおおお!!」
エリオがウェンディに意識を集中してる隙に、ノーヴェが接近する。
ガンナックルの後ろ側に二つの噴射口が現れ、エネルギーを噴射して、勢いが加速する。
「ジェットナックルゥゥゥ!!」
加速したガンナックルを、無防備なエリオの右頬に叩きつける。
「がぁ……!!」
加速したガンナックルの攻撃をモロに受けたエリオは、堅い壁を突き破って隣の通路へ吹っ飛んだ。
ウェンディは防御を解いて、安堵の溜め息をつく。
「助かったっス。ありがとうっス、ノーヴェ」
「油断してんじゃねーぞ、ウェンディ」
「すまないっス。それにしてもノーヴェの強化したガンナックル、凄い威力っスね」
「まぁな。それより、まだ敵は残ってんだ。さっさと潰すぞ」
「了解っス」
ノーヴェとウェンディは、残る二人の魔導師に目を向けた。
ティアナとキャロは、厳しい表情でデバイスを構える。
「一気にいくぞ!!」
ノーヴェは先ほどの黄色い道、『エアライナー』を作り、その上を走ってティアナとキャロに迫る。
「錬鉄召喚。アルケミックチェーン!!」
キャロがピンク色の魔法陣を展開させて、ソコから鎖を召喚してノーヴェを捕らえようとする。
だが、素早いノーヴェの動きを捕らえられず、鎖は全て空振りしてしまう。
「んなおせーモンに捕まるかよ!」
鎖を避けて、二人に近づくノーヴェ。
すると、魔力を溜めていたティアナが動き出した。彼女の周囲に、複数のオレンジ色の魔力弾が出現した。
「クロスファイアシュート!!」
ティアナの声を合図に、複数の魔力弾が一斉にノーヴェに襲い掛かる。
だが、魔力弾はノーヴェの後ろから飛来してきたスフィアによって、全て撃ち落とされてしまった。
ティアナは驚愕の表情で、スフィアが飛来してきた方を見ると、ライディングボードを構えたウェンディがいた。
「魔力弾までロックオンできるなんて、ホントに便利な能力っスね〜」
「そんな……!?」
「ティアナさん!」
キャロが叫んだと同時に、ティアナの腹にノーヴェの拳が叩き込まれた。
「がはっ!」
「きゃあっ!」
拳を受けたティアナは後ろに立っていたキャロと一緒に、壁に叩きつけられた。
二人を倒して、ノーヴェは床に着地した。
すると、後ろから物音が聞こえて、振り返って見る。
そこには、先ほどノーヴェに吹き飛ばされたスバルが立っていた。
「しぶといな」
ノーヴェは、スバルを睨みつけた。
*
時間は少し遡る。
地下の広い部屋で、チンクも管理局の魔導師と対峙していた。
紫色のロングヘアーの女性。色が違うが、スバルと同じリボルバーナックルを左手に装着している。スバルの姉、ギンガ・ナカジマである。
沈黙が続く中、チンクが口を開いた。
「『タイプゼロ・ファースト』。お前を捕獲する」
両手の指の間に、数本のスティンガーを構える。
ギンガもリボルバーナックルを構えた。
チンクは構えたスティンガーを、ギンガに向けて一斉に放つ。
ギンガは防御魔法『ディフェンサー』を使って、スティンガーを弾く。直後、弾いたスティンガーが爆発した。爆発によって、ギンガがいた所は煙に包まれる。
チンクは後ろへ下がって、煙から距離をとった。離れながらも、油断なく煙を見据えて、新たなスティンガーを手に構える。
構えた直後、煙の中からギンガが出てきた。爆発もディフェンサーで防いで、無傷の状態だ。
ギンガの姿を確認すると、再びチンクはスティンガーを投げる。
だが放たれたスティンガーは、ギンガの頭上や横を過ぎてしまった。
狙いがそれた?
ギンガは一瞬怪訝な表情をしたが、すぐに目の前の相手に意識を集中させた。
チンクとの距離を詰め、リボルバーナックルを装着した左拳を振り上げる。そしてチンク目掛けて、硬質フィールドを纏った拳を振り下ろそうとした時、ギンガの体に異変が起こった。
「なっ……!?」
体が動かない。いや、前に進まない。
どれだけ力を入れても、体が前に進まないのだ。よく見ると、細い金属の糸がギンガの体に絡まり、動きを封じている。糸の先には、壁や天井に突き刺さっているスティンガーがあった。
先ほど投げたスティンガーは、金属製の糸が繋がれているもの。スティンガーを外したのは、糸でギンガの体を捕らえるため。
「IS発動。『ランブルデトネイター』!」
チンクが言った直後、金属の糸が爆発を起こした。
密着状態でバリアを張る暇もなく、ギンガは爆発を受けてしまう。
爆音がなくなり、静まり返った部屋に煙が立ち込めた。
*
場所は変わり、機動六課隊舎。
大量のガジェットとナンバーズの襲撃を受けて、隊舎は炎に包まれて酷い状態だった。
その隊舎の前に、二つの影があった。
一つは、シャマル。はやてが使役する守護騎士の一人。癒しの能力が本領のデバイス『クラールヴィント』を使用する女性。
もう一つは、ザフィーラ。守護騎士の一人。現在は青と白の毛の狼の姿をしているが、人型にも変身できる守りの騎士。
二人の周辺には、破壊した沢山のガジェットが転がっている。
そして二人の前には、ナンバーズのオットーが空中で佇んでいた。
「たった二人で、よく護った」
二人を見下ろしてオットーが言う。
「だけど、もう終わり。僕のIS『レイストーム』の前では、抵抗は無意味だ」
オットーの手から、数本の緑色のエネルギーの線が放たれた。
「クラールヴィント! 防いで!」
隊舎の前に、バリアを張って攻撃を防ぐ。
同時に、ザフィーラが雄叫びを上げて、オットーに向かって飛び出す。
「ディード」
オットーは慌てず、ディードの名を呼ぶ。
その瞬間、ザフィーラの背後にディードが現れた。両手には、赤いエネルギー刃を備えた双剣が握られている。
「IS『ツインブレイズ』」
ツインブレイズを振り下ろし、ザフィーラの背中に叩きつける。
「ぐわあああああ!!」
攻撃を受けたザフィーラは、地面に落下した。衝撃で地面に亀裂が走る。
オットーは、エネルギーの線を束ねて集束させると、特大のエネルギー砲を隊舎に向けて放つ。エネルギー砲はバリアを破って隊舎に直撃し、大爆発を起こして屋根を粉々に吹き飛ばした。
「ああ……!」
シャマルが短い悲鳴のような声を上げる。
傷ついたザフィーラが、必死に体を起こす。
「さようなら」
二人を見下ろして、ディードが呟いた。
次の瞬間、ディードのツインブレイズから赤いエネルギーの塊の斬撃が、シャマルとザフィーラに向けて放たれた。
*
ゼストとヴィータの空中戦は、まだ続いていた。
今は互いに距離をとり、様子を伺っている。ヴィータの方は、僅かに息が上がってきた。
すると、ゼストが何かに気付いた。何かが近づいてくる。
「むっ。オーバーSが既に動き始めている。時間切れだな」
『ちっきしょう! ちっきしょう!』
ゼストの中にいるアギトが悔しがる。
「ここまでだ。撤退するとしよう」
言ってゼストは、アギトとのユニゾンを解いた。髪の色が、元の色に戻る。
『ちっくしょう! せめて……せめてアイツらだけは……!』
ユニゾンを解除して、アギトは外に出る。
ヴィータは、グラーフアイゼンを構えたままゼストを見据えている。
その時、
『ヴィータちゃん、上!!』
「っ!」
リインの声に反応して、ヴィータは上を見る。
そこには、巨大な炎の球体を頭上に構えているアギトがいた。
「あたしが、ここで叩いとく!!」
炎の球体で、ヴィータを潰す気のようだ。
ヴィータは、アギトに向けてグラーフアイゼンを構えた。
ゼストが眉を寄せて、ヴィータを睨む。
『フルドライブ・スタート』
ゼストの槍型デバイスから、声が発せられた。
ヴィータが、アギトに向かって突っ込む。
だが、それよりも速く、ゼストがフルドライブモードでヴィータの前に飛び、槍をグラーフアイゼンに叩き込む。
「なっ……!?」
グラーフアイゼンを見て、ヴィータは驚愕した。
たった一撃。今までの中で最も重い一撃が、グラーフアイゼンに亀裂を走らせたのだ。
「はああああああ!!」
ゼストは槍を振り抜き、グラーフアイゼンを破壊してヴィータを撃墜する。
「うああああああ!!」
吹き飛ばされたヴィータは、建物の屋上に叩き落とされた。
ゼストは、顔をアギトに向けた。
「アギト。撤退だ」
アギトは、愕然とした表情でゼストを見つめる。
「あ……あ……」
自分を助ける為に、命を削るフルドライブをした。
自分のせいで、ゼストにフルドライブを使わせてしまった。
「ああああああああ!!」
アギトは涙を流し、悲痛な叫びを上げた。
*
場所は戻り、地上本部地下道。
他の地点で、ナンバーズと機動六課が交戦している中、隼樹は異形と対峙していた。
まだ異形に対する恐怖が完全に消えていないのか、足が小刻みに震えている。それでも目をそらさず、真っ直ぐに異形を見据えていた。
沈黙が続いていたが、やがて異形が口を開いた。
「見ツケタ? 私ヲ探シテイタノカ?」
「……そうだ」
「ソウカ。私モ、オ前達ニ用ガアルンダ」
隼樹は、ゴクリと唾を飲み込んだ。緊張と恐怖で、額から嫌な汗を流す。
「レリックハ、何処ニアル?」
「……お前に渡す物なんて無い」
「強ガルナ。怖ガッテルノハ、解ッテイル。足ガ震エテイルゾ」
震えている隼樹の足を見て、異形が言った。
隼樹は震えている自分の足を見ると、手でバンッバンッと叩く。しかし、震えはなかなか止まらない。いつまでも震えている自分の足にイライラして、恐怖を振り払うかのように、今度は拳で叩き始めた。何回か叩くと、震えは止まった。
「恐怖ヲ感ジルノハ恥デハナイ。ムシロ、生キ延ビル為ニ必要ナ感情ダ」
地下道に異形の声が響く。
隼樹は顔を上げて、異形を睨むように見る。
「オトナシク、レリックノ在リカヲ言エ」
「……お前、レリックを手に入れて、どうするつもりなんだ?」
隼樹が質問すると、異形はぽりぽりと頭を掻いた。
「世界ノ滅亡ダ」
「世界の滅亡?」
異形の答に、隼樹は目を細めた。
「実ニ単純ナ目的ダロ? 私ハ別ニ世界ヲ創リ替エヨウトカ、新タナ秩序ヲ作ロウトカ、ソウイッタ思想ハ持チ合ワセテハイナイ。タダ破壊ヲ行ウダケダ」
特に感情もこもっていない声で、異形は淡々と続ける。
「レリック一ツノ暴走デ、村一ツヲ消シ飛バス事ガデキル。レリックヲ、ミッドチルダノ中心デ、シカモ一ツデハナク数十個暴走サセタラ、ドウナルト思ウ?」
あくまで淡々と、異形は言った。
話を聞いている隼樹は、胸の中がざわつく感じがしていた。とてつもなく嫌な予感がする。コイツはとんでもなく、ヤバイ事をしようとしている。
「間違イナク、ミッドチルダハ跡形モ無ク消滅スル。イヤ……最悪、『次元断層』ガ起コルカモシレンナ」
「次元……断層……?」
聞き慣れない単語に、隼樹は小さく呟いた。
言葉の意味は解らないが、不吉な予感だけはした。そして、その予感は的中する。
「何ダ、知ラナイノカ? ナラバ教エテヤロウ。『次元断層』トハ、イクツモノ並行世界ヲ消滅サセル大災害ダ。ツマリ、コノ世界ダケデナク、他ノ世界モ消エルトイウ事ダ」
変わらず、淡々とした口調で異形が語った。
ここ以外にも存在する、複数の世界も崩壊させる災害だと聞かされても、いまいちピンとこないし、信じられない。だが、この異形が嘘を言うとも思えない。これがもし本当なら、この世界にいるスカリエッティやナンバーズも消えてなくなるという事だ。
そう考えた瞬間、隼樹の中で猛烈な怒りが込み上げてきた。
「……ふざけんな」
「フザケテナドイナイ。私ハ真面目ダシ、冗談ハ苦手ダ」
「うるせェェェェ!!」
隼樹は叫んだ。
自分の中にある、恐怖を吹き飛ばすかのように。自分の中にある、怒りを声と共に異形にぶつけるかのように。
隼樹の怒りは爆発し、恐怖を凌駕した。
「世界が滅ぶとかなんて、どうでもいい。だけど……だけどアイツらは……ナンバーズのみんなは……絶対に死なせない……!」
歯を食いしばり、噛み付きそうな鋭い眼で、異形を睨みつける。
強い怒気を放つ隼樹に、異形が問う。
「……ナラバ、ドウスル?」
「お前をぶっ殺す……!」
隼樹から怒気と共に、殺気も放たれる。
それらを受けても、異形は全く動じない。
「無駄ダ。オ前ハ私ニハ勝テン」
「トカゲ如きが、人間様に勝てると思ってんのか!?」
普段の隼樹からは、想像できない荒々しい口調で、挑発のような言葉を発する。
「以前トハ、マルデ別人ダナ。臆病者ノ皮ヲ被ッタ獣ノヨウダ」
異形は、今の隼樹を見た感想を言った。
隼樹は、かけている眼鏡を外すと、持ってきたケースにしまい、ケースをズボンのポケットにしまった。
「イイダロウ。相手ニナッテヤル」
異形も雰囲気が変わり、戦闘態勢に入った。
隼樹も懐中電灯とコンパスを捨てて、拳を握って構えた。
正直、恐くないと言えば、嘘になる。だが、ここで引く訳にはいかない。引きたくなかった。ここで引いてしまったら、大切なモノを失ってしまうからだ。
逃げたくない。大切な人達を護る為に──。
だから隼樹は、前に出る。床を蹴って、異形に向かって走っていく。
隼樹の戦いが、始まった。
明かされた異形の目的!
そして隼樹の戦いが始まる!
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