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隼樹・赤夜叉「俺逹は、全ての最強チートオリ主逹に宣戦布告をする」

サード「バ●ロワⅡ? って言うか、アンタ逹じゃ返り討ちにされるでしょ? 瞬殺で」

隼樹・赤夜叉「ですよね〜」





セッテ「彼の事は、話で聞いた情報しか知らない。私の任務は、彼を護り、勝利に導くこと。ならば私は、その任務を遂行するだけです。『ナンバーズ〜魔法が使えない男リベンジ!〜』始まります」
No.17 勝負の幕開け
 腑に落ちなかった。
 俺は本局の自分のオフィスで、モニターを展開して隼樹の動きを見ていた。正直、何故あんな言動をしたのか理解出来ない。あんな事を言ったところで、奴等が何か得する訳でもない。管理局や機動六課を刺激して、敵愾心を煽るだけだ。
 全く理解に苦しむ言動だった。だと言うのに、何か胸に引っ掛かる。単なる馬鹿の挑発とも思える奴の言動に、不安感を抱いてた。杞憂だと思いたいが、不安が拭えない。
 何なんだ? この違和感……得体の知れない不安感は……?
 気味悪い不安感を払拭させる為に、俺は考えた。現状や奴がモニターで喋った言葉を、思い返す。
 アインヘリアルを襲撃したナンバーズに、特に大きな変化は見られなかった。素人が思い付きそうな、強化が施されてる様子も無い。あれだけの大口を叩いた隼樹が、何もしないなんて考えられない。
 次に、モニター越しに見た隼樹の不可解な言動だ。あんな事を言ったって、状況が好転する訳でも無いし、観ている者から不快に思われるだけだ。特に最後の言葉が、意味不明だ。まるで、自分達を捕まえる事を確認してるかのような感じだった。そんな事をして、一体何の意味がある? わざわざ奴が念押しするように確認しなくても、連中の逮捕──まあ、ナンバーズの何人かは保護だが、捕まる事は決まって……。
 そう思った時、俺は目を見開いた。
 ──あっ……! ま、まさか、アイツ……!?
 一つの可能性に気付き、俺は動揺した。

「どうしました、藤堂様?」

 俺の動揺を見て、部下のアリスが声をかけてきた。どうやら彼女は、奴の狙いが解ってないようだ。
 席を立ち上がり、アリスに指示を出す。

「アリス、俺について来い!」
「は、はい!」

 急いでオフィスを飛び出して、通路を駆ける。脳裏を過る隼樹を忌々しく思い、自然と拳は固く握り締め、歯を食いしばる。
 ──やられたっ……! あのクソ餓鬼! 別発想、別視点……機動六課に勝つ事など早々に諦めて、別狙いにきやがった……!
 奴の狙いは、ある意味で間隙を衝いてる。普通、両陣営の総力戦となったら、戦場に意識や注目が向く。奴は、ソレを利用した。戦場に出てる局員が、全く意識を向けてない所を攻めにきやがった。
 通路を駆ける俺達は、途中で足を止めて周囲を見回した。誰も居ないのを確認して、壁の一部に手を触れる。すると、触れた部分の壁が回転して、暗証番号を入力する装置が現れた。番号を入力して、ロックが解除される。
 静かに壁の一部が、扉のように開いて目の前に隠し通路が現れた。中に入ると、すぐに入り口は閉じられた。明かりに照らされた通路を進み、二人の局員の姿が見えた。

「藤堂様。どうされましたか?」

 局員が俺に気付き、敬礼してくる。

「ココに誰か侵入してこなかったか?」
「え? いえ、そのような事はありませんが……」

 どうやら、俺の方が一足早かったようだな。
 俺の予想が正しければ、奴は必ずココにやってくる。モニターでの言動の裏を読み取れば、もうコレしか可能性はない。
 そう思った時だった。

「やっぱり先回りされてたか」

 通路に男の声が上がった。
 俺はキッと目を鋭くさせて、声が聞こえてきた方へ顔を向けた。
 通路の奥から、ガジェット軍を従えた隼樹が、歩いてくる。やはり、奴の狙いはココだったか。ソレは予想通りだ。
 しかし、この俺でも予想出来なかった状況になっていた。

「なっ……!?」

 近づいてくる団体の中で、信じられない奴らを見つけて驚愕した。

「ば……馬鹿な……! 何故だ……? 何故、お前らがココに居る……!?」

 信じ難い光景に、思わず声を荒げる。
 ガジェット軍の他に、ナンバーズのセッテと囚われの身であるハズのギンガの姿があるのだ。
 ──馬鹿な! 何だ、この状況は……!? セッテはアジトでスカリエッティの護衛に就いて、ギンガは洗脳されて地上本部制圧に向かうハズだろう!? その二人が、何で隼樹と一緒にこんな所に来てるんだ……!?
 正直、訳が解らなかった。隼樹と言うイレギュラーな存在の介入で、歴史の流れに多少は変化が生じるとは思っていた。だが、奴とナンバーズ、ましてやギンガまで一緒になってココを攻めてくるなんて完全に計算外だ。予測すらしていなかった。
 動揺してる俺を見て、隼樹は口元を吊り上げ、不敵に笑った。

「ああ、やっぱり驚きましたか。まあ、無理も無いですよ。何せ、セッテとギンガさんが一緒に来る事は、俺にとっても誤算だったんですから」
「誤算、だと……?」
「そうです。まあ、俺にとっては“嬉しい誤算”ですけどね」

 怪訝に思う俺の前で、隼樹が経緯を語り出した。


     *


「隼樹さん」
「はい?」

 部屋を出ようとしたら、またウーノに呼び止められた。いや、心配してくれるのは嬉しいけど、俺は行くって決めたからね。女の子だけ戦わせて、男の俺が何もしないなんて情けないじゃないか。臆病者だけど、これでも一応男だからさ。
 しかし、ウーノが俺を呼び止めた理由は、少し違ってた。

「出発する前に、貴方に会わせたい人達が居ます」
「会わせたい人達?」

 はて? 誰だろう?
 そう思っていると、扉が開いて研究室に二人の女の子が入ってきた。

「あれっ!?」

 二人を見た瞬間、俺は驚きのあまり、目を丸くして声を上げた。
 研究室に入ってきたのは、セッテとギンガだった。ギンガは、地上本部襲撃の際に重傷を負わせて、捕獲してきたんだ。今は傷も完治した様子で、バリアジャケットとデバイスを身に付けてる。

「え……? あの、どうしてセッテとギンガさんが……?」
「私が連れてきたんです」

 歩み寄ってくるウーノが、説明する。

「隼樹さんの作戦を聞いて、捕らえたギンガの協力を得ようと考えたんです。管理局員である彼女を同行させれば、貴方の作戦には都合が良いと思い、治療を終えて意識が戻ったギンガに貴方の事や作戦の内容を教えました。敵である私の話に、最初は疑いを持っていたようですが、何とか信じてもらい、協力を得る事が出来ました」
「マ、マジですか……?」

 いや、マジで驚きだわ。
 俺も皆には内緒で準備してたけど、ウーノも俺の知らないところで色々やってたんだ。

「えっと……じゃあ、セッテは……?」
「セッテは、貴方の護衛も兼ねて戦力強化に加えました」
「でも、確かセッテはアジトで……」
「私達の事でしたら、ご心配はありません。それよりも、隼樹さんは自分の身と作戦の事だけをお考え下さい」

 優しく微笑むウーノを見て、何だかジンときちまった。
 ウーノ、優しすぎるよ。どこまで俺の事心配して、考えて尽くしてくれてるんですか? もう、お母さんって呼んじゃうよ? って言うか、お母さんって呼ばせて下さい!
 ウーノの優しさに感激しつつ、俺はセッテとギンガさんと向き合った。
 まず、ギンガと目が合う。敵地のど真ん中に一人で居る状況に、若干緊張した様子だが、捜査官としての意地か目は鋭い。臆病な俺と違って、堂々としてる。
 そんな彼女が綺麗で強そうで、ちょっと憧れる。

「いいんですか、ギンガさん?」
「私は、母を殺した戦闘機人事件をずっと追い続けてきました。その真相に辿り着けるのなら……私は、貴方に協力します!」

 なるほどね。
 今ので、機動六課での取り調べで、ギンガが熱くなってた理由が解った。母親の死の真相を確かめる為に、必死になってたんだ。多分、捜査官として今すぐにでも、スカリエッティを捕まえたいんだろうな。でもギンガは、スカリエッティを逮捕したい気持ちを抑えて、俺に協力する事で真相解明する道を選んだ。
 コレも、ウーノの説得のお蔭かな。
 ギンガの方は良しとして、次はセッテだ。まあ、本人も了解済みだろうけど、念の為にね。

「セッテも、いいの?」
「はい。ウーノから、既に話は聞いています。貴方を護り、作戦を成功させるのが私の任務です」

 むむっ、やっぱりと言うか何と言うか、セッテは機械的な反応だな。まあ、悪い奴じゃないんだけどさ。もうちょっと、こう砕けた感じと言うか、人間っぽい感じで喋ってくれるといいんだけどな。
 まっ、今はその事は置いときますか。
 ともかく、これで二人の助っ人が加わった。ぶっちゃけ、かなり心強く感じる。セッテは、ナンバーズ最強のトーレの教育を受けて、実力ではナンバー2に位置する。ギンガは管理局員だから、俺の作戦に加わってくれるのは好都合だ。

「よしっ! 行くか!」

 予想外の頼もしい助っ人が加わり、気合いも入る。
 セッテとギンガ以外にも、サードにガジェットも居るんだ。
 絶対に負けねーぞ。


     *


「──ていう事が、アジトであったんですよ」
「ぐっ……!」

 俺の説明を聞いて、一也が凄い形相で睨んでくる。
 気持ちは解らないでもないけどな。俺も同じ立場だったら、予想外の展開に歯を食いしばって相手を睨んでたと思う。
 そう、コレは俺や未来を知る一也にとって完全な誤算なんだ。ああすればこうなる、と狙った事じゃない。上手く言えないけど、とにかくこうなったんだ。計算とは別に、自然に起きた展開なんだ。俺にとっては、良い展開だけどね。
 悔しげな視線を向けたまま、一也が訊いてきた。

「ココへはどうやって入ってきた?」
「本局には、優秀な魔導師の集団転移で入りました。この隠し通路への入り口やパスワードは、ある人物から教えてもらってたんで、問題なく入れましたよ」

 優秀な魔導師ってのは、他でもないルーテシアさ。スカリエッティ側で魔導師って言ったら、あの()しかいないだろう? あっ、いや、ゼストとか言うオッサンもいたな。まあ、ぶっちゃけ、未来でドゥーエを殺したアイツの事は、好きになれんがね。理由なんて関係無く、ね。
 入り口やパスワードの件に関しては、スカリエッティを通じてドゥーエに教えてもらった。
 この大規模な戦争の死角を衝いて、勝つ為にな。

「途中、何人かの局員に見つかっちゃいましたけど、即眠らせました」

 何度も言うようだけど、殺しはやってないからな。俺だって、人殺しはやりたくない。勿論、セッテやガジェット逹にもやらせたくない。
 睨みを緩めず、一也が口を開いた。

「お前の狙いは、最高評議会か……?」
「そうです」

 流石、一也だな。あのモニターの一件で、俺の考えを見抜いたな。
 両陣営の真ん中に立ち、俺と一也は対峙する。

「頭を潰しに来たか……! 真っ正面からぶつかっても勝てない事を悟って、裏側から崩す為に、最高評議会が居るココにやってきた。そして、モニターであんな事を言ったのは、最高評議会の姿や企みを世間に(おおやけ)にする為の作戦だな!?」
「その通りです」

 ホントに、全部見抜いてんだな。
 俺が認めると、急に一也の表情が変わった。さっきまで悔しそうに歪んでた顔が、不気味な笑みに変化した。

「ククク。なるほど、隼樹君の狙いは悪くない。だが……その程度の戦力で潜り込んできたのが、隼樹君の運の尽きだ!」

 不敵な笑みを浮かべる一也の周囲に、沢山の人影が現れた。
 通路に集まったのは、総勢50人以上の局員らしき魔導師だ。最高評議会が居る部屋に続く通路は、かなり横幅が広いから大人数でも収まる。
 魔導師の軍隊を従えた一也は、完全に余裕を取り戻してた。

「カカカ! 隼樹君にとって最大の不運はこの警備だ! 最高評議会直属の護衛魔導師部隊! 言っておくが、この魔導師部隊は今戦場に出撃()てる魔導師以上の実力者揃いだ。その程度の戦力では、万が一にも突破される事は無い!」

 野郎、やっぱそう簡単には通してくれないか。
 一也の言ってる事は、ハッタリなんかじゃなさそうだ。魔導師部隊が現れた瞬間、セッテやギンガ逹が素早く身構えた。あの反応の早さと険しい顔、相手をかなり警戒してる。つまり、相手の魔導師部隊は手強いって事だ。
 確かに厄介そうだけど、悪いな一也。こっちには、誤算とは別に、前もって用意してある切り札があるんだよ。

「ぐわっ!」
「なっ!?」

 悲鳴の直後に、驚きの声が上がった。魔導師部隊の一人が悲鳴を上げ、驚きの声を発したのは一也だ。

「どうした!?」
「大丈夫か!?」

 近くに居る魔導師が数人駆け寄り、倒れた魔導師を看る。

「切り傷があるぞ!」
「馬鹿な!? 我々に気付かれずに、一体どうやって……!?」

 突然の不可解な現象に、魔導師部隊の何人かは混乱してる。
 そりゃそうなるわな。連中にとって、意味不明な現象だ。でも、(タネ)を明かせば何て事ない。
 すると、一也が鋭い目で睨んできた。
 ん? もしかして、気付かれたか?

「貴様……まさか、貴様……!?」
「ククク……!」

 おっと、思わず笑いが漏れちゃった。
 しかし、一也の気付きは相当だな。勘がいいのか、今の状況を推理して見抜いたのか。まあ、正直どっちでもいい事だけどさ。

「そうです。多分、アンタの考えてる通りですよ。それじゃあ、種明かしといきましょうか」

 俺の声を合図に、何も無かった所にロボットが現れた。
 ガジェットⅣ型。ガジェットシリーズ最後の型で、実力も最高クラスだ。昆虫のような足が付いてて、両手は鎌、見た目は気持ち悪いが凄い機能を持ってる。ソレは、姿を隠す光学迷彩だ。この機能を使えば、ロボットのガジェットⅣ型は完璧に気配を消して、奇襲を仕掛ける事が出来る。あのエース・オブ・エースの高町を墜とした事もある、高性能ガジェットだ。いや、マジで凄いね。
 あの晩、クアットロが見せてくれたのが、このガジェットⅣ型だったのさ。
 ガジェットⅣ型を見て、一也は狼狽える。

「ば、馬鹿な……!? ソイツは、ゆりかごの駆動炉の護りに着いてるハズだ……!」
「その通り。その通りなんですけど、何機か譲ってもらいました」
「譲ってもらっただと……!?」

 怒りと悔しさで、ギリッと音を立てて一也は歯を食いしばった。
 コレも、一也にとって計算外の事だろうな。

「ココの警備が、それなりに厳重な事は大体予想してました。それに、アンタが来る事も」
「何?」

 俺の言葉に、一也は怪訝そうに片眉を上げた。

「アンタなら、俺の計画に気付いてココに駆け付けてくる。思ってた通りに、アンタが来てくれて安心しました。だって俺が倒したいのは、最高評議会ともう一人……」

 一旦言葉を切り、俺は一也を指差した。

「アンタなんだから……!」
「ぐっ……!」

 これで舞台は整った。

「さあ、始めよう! アンタと俺の最初で最後の勝負を……!」
──殺すっ……! 奴等を……いや、隼樹(ヤツ)を、ココでキッチリと……!


次回『躊躇してる時じゃない』


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