ディード「一人の男から未来を聞かされ、彼は怒りを憶えた。他人の為に怒るのは、初めてだった。そして彼──隼樹兄様は、運命に挑むのです。『ナンバーズ〜魔法が使えない男リベンジ!〜』始まります」
No.12 運命への反逆と炎の救出劇
あの藤堂一也とか言う奴が居なくなってから、俺は牢屋でずっと考え込んでる。
確かに、奴の言う通り、自分の身の安全を一番に考えたら、ナンバーズに関する情報を管理局に渡すのが利口だ。けど、俺はソレをやらない。ソレだけは、絶対にやらない。アイツ等は、俺に充実した日をくれた恩人みたいなもんだ。そんなアイツ等を売るような事は、絶対にやらない。それに、アイツ等が居なくなったら、また俺は独りになっちまうしな。
理由は何であれ、とにかく管理局への情報提供は無しだ。
それよりも、どうやって黒幕の連中を潰すかだ。
仮に、俺が機動六課の連中に真実を話して、捜査が始まったとしても……上層部の連中が組織の威厳や沽券にかかわるだとか、何とかぬかして……逮捕されても表沙汰にならないで、闇に葬られるのがオチだ……。組織ってのは、そういう根回しをするからな。俺の世界でも、社員が起こした不祥事を隠蔽しようとした会社が、幾つもあった。
そんな汚いやり方で、テメェ等間抜け共の責任回避されてたまるかっ……!
怒りに歯を食いしばって、床の一点を睨むように見つめる。
俺の証言だけじゃ駄目だ。そもそも犯罪者扱いの俺の言葉なんか、信じてもらえない可能性がある。何か、無いか? もっと決定的な……壊滅的なダメージを与える方法……!
どうしたらいい……? どうしたら……?
普段使わない頭を使って、俺は必死に考える。真っ向から戦ったら、一也が言ってた通りに負ける可能性がある。いや、可能性があるじゃなくて、確実に負けるな。冷静になって常識で考えれば、たかが犯罪一味が複数の世界を管理してる超巨大組織に敵う道理なんか無い。スカリエッティが所有してる切り札の古代兵器が、どんな凄い代物か知らないけど、それでも圧倒的に戦力、兵力が違う。小学生でも解りそうな差だ。
なら、力勝負は駄目だ。別の方法で、管理局を倒すんだ。いや、巨大組織を倒すなんて、絶対に無理だ。なら、せめて組織のトップに居る黒幕の連中だけでも潰す方法は無いか? 何でもいい……何でもいいんだ……!
額に組んだ両手を当て、目を硬く瞑った苦渋の顔で俺は考える。
そうしてる間にも、一分、二分と時間は止まる事なく無情に過ぎていく。
その時、テレビニュースの光景が、俺の脳裏を過った。同時に、逆転の方法が俺の中で閃く。勝ちへの突破口が見えた。
──いける……! これなら倒せるかもしれない……黒幕の連中をっ……!
僅かな勝利の可能性を見出だして、俺は自然と拳を固く握った。
だが、連中を完全にぶっ潰すには俺一人じゃ無理だ。俺以外にも、それなりの数と準備が必要になる。何より、こんな所に閉じ込められてちゃ話にもならない。
苦々しい顔で、牢屋の中を見回す。犯罪者の魔導師を入れる事を考えて設計されてるのか、かなり頑丈な作りになってる。魔法どころか、筋力も並な俺じゃ破る事は出来そうにない。窓は見当たらないし、出入口は固い鉄格子に付いてる扉だけだ。仮に、何らかの方法で牢屋から出れたとしても、ココは局員がウジャウジャ居る所だ。魔法が使えない俺は、すぐに見つかって捕まるのがオチだろうな。つまり、脱獄は不可能って事だ。
いや、でも全く可能性が無いって訳でもない。一也の奴が言ってたが、公開意見何とかってのが地上本部って所でやるらしい。もしも、機動六課の連中が、その警備とかに出向くとしたら、一時的にココは手薄になるって事になる。脱獄するには、千載一遇のチャンスだ。そうなったら、その時を逃す手は無い。公開意見とやらが、いつ開かれるのか分からないけど、今の内に牢屋を出る方法を考えておいた方がいいかもしれない。ココから出る事が出来れば、ナンバーズの未来を変えられるかもしれないからな。
俺は脱獄の方法を考えたが、ロクな案すら思い浮かばなかった。
*
機動六課の牢屋に入れられて、数日が経った。
いつドゥーエに口封じされるか、冷や冷やしながら過ごしてたが、今日まで彼女が殺しに来る事は無かった。
もしかしたら、俺が口を割っていないから様子を見ているのかもしれない。そうでなければ、俺の油断を誘ってブスッと殺りに来るのかもしれない。うん、後者かな。
どっちにしろ、そう長く時間はかけられない。公開意見までに、脱獄計画を練らねば俺やナンバーズに平穏な未来はない。
──マ●ケルゥゥゥゥ! 俺に脱獄の力をォォォォォ! プリズン・ブレイクさせて下さァァァァァァい!
脱獄の神に祈りを捧げるが、全く名案が浮かばない。ふざけてるように見えるけど、マジだからね。これでも真面目にやって、悩んでるから。
苛々が募ってきて、頭をグシャグシャと掻きまくる。伸びた髪の毛が、乱れたが気にしない。そんな事を気にしてるより、脱獄計画を練る方が大事だ。
気を取り直して、考えに集中しようとした時、ふと外が騒がしい事に気付いた。軽く舌打ちして、壁を睨む。
「んだよ。人が真剣に考え事してるって時に……」
マジうぜー、と思った。人が考え事してる時は、静かにしろって教わらなかったのか? ただでさえ、脱獄計画が立たなくて苛々してるってのに、迷惑な事だ。
外の騒ぎに更に機嫌を悪くしてると、牢屋に一人の局員がやってきた。
「あの、ちょっといいですか?」
フェイト・T・ハラオウン。『エース・オブ・エース』として名高い高町なのはと並ぶ、超が付く程の優秀な魔導師だ。この世界がマジでアニメと似た世界なら、ヒロインは彼女だろうね。
そんなエリート魔導師様が、わざわざ俺の所にやってきたのだ。話があるらしく、手錠をかけられた状態で取調室に連れてこられた。他には誰も居ない。二人っきりだ。
改めて見ると、このフェイトって女も結構レベル高いんだよな。勿論、女の魅力的な意味で。今更だが、密室で美少女と二人っきりと言う状況に、緊張してきた。そわそわして、落ち着かない。
「どうしても、スカリエッティに関する事を教えてくれませんか?」
またか、と俺は少々ウンザリとした。でも、相手も仕事でやってんだよな。まあ、口を割らない俺が悪いんだし、とっとと喋っちまえば楽なんだけど、意地でも喋らないぞ。折角、黒幕を潰す策を思い付いたんだから、今更諦める訳にはいかない。そうじゃなくても、話さないけどね。
「すいません。話せません」
今までと同じような返事をして、俺は口を閉ざした。もう話す事は無い、と態度で示す。
「そうですか」
俺の答えを聞くと、フェイトは険しい顔になった。何か、感情を押し殺してるようで怖いんだけど。
用が済んだら、早く俺を解放してくれ。
しかし、フェイトの話はまだ終わりじゃなかった。
「それじゃあ、コレだけでも教えて下さい。どうして貴方は、そこまでしてスカリエッティを庇うんですか?」
「え?」
お〜い、キミちょっと勘違いしてるよ? 俺は別に、スカリエッティを庇ってる訳じゃない。ナンバーズを裏切らない為に、黙ってるんだよ。スカリエッティは、オマケかな。
「スカリエッティは、多くの違法研究をしてきた広域指名手配されてる重犯罪者です! どうして犯罪者であるスカリエッティを庇うんですか!?」
「いや、それは……」
こ、怖ェェェェェ!
ま、また急に荒い様子になったよ。いや、情報を吐かない奴にイラつくってのは不思議じゃないんだけど、何故かフェイトだけなんだよな。俺の取り調べで、いつも感情的になって声とか荒くなるんだよ。他の局員は普通なのに、何でだ? いや、ギンガって娘もフェイト程じゃないけど、妙に熱くなるんだよな。絶対普通じゃないよ。スカリエッティと、個人的な因縁か何かあるのか? もしそうなら、捜査に私情は持ち込まないでよ。つーか、そういう人って普通、捜査から外されるんじゃないの?
ああ、もう面倒くせーな。でも、下手な事言うと殺されそうだしな。
「私は許せない……! 自分勝手な欲望で、人の命や運命を弄ぶあの男を私は許せない! 貴方は、そんな男を庇ってるんですよ!?」
フェイトの迫力が、更に増して取調室に声が響く。廊下まで届いてるんじゃないか? って思える程の声に、俺は圧倒された。
まあ、フェイトの言ってる事は正しいと思うよ。その異常な感情爆発の理由は解らないけど、スカリエッティが犯罪者で、許せないってのは正しいよ。ソコは、間違い無い。俺はよく知らないけど、アイツは悪事を沢山してきたんだろうから、逮捕されても仕方ない。
けど、悪いけど話せない。今、アンタ等に話しても意味ないんだ。本当の解決にならない。
「その……貴女の言ってる事は解ります……。スカリエッティは犯罪者だから、捕まえるべきだって……」
「だったら……!」
「でも! それでも、言えないんです……! 貴女に譲れないモノがあるように、俺にも譲れないモノがあるんです……!」
フェイトの言葉を遮って、俺は今の気持ちを精一杯伝えた。
「すいません」
最後に俺は、頭を下げた。
いや、決意を貫き通す為とは言え、何か悪い事しちまった気分になったから。フェイトだって、純粋に事件解決の為に、こうして捜査してる訳だしさ。まあ、ちょっと怖いけどな。
「いえ……私の方こそ、声を荒げたりしてすみませんでした」
冷静に戻ったフェイトも、謝ってきた。
最後は気まずい空気になって、取り調べは終わった。
それにしても、フェイトのスカリエッティに対する異様な執着心みたいなのは、何だったんだ? ちょっと気になるな。もし、アジトに戻れたら、直接スカリエッティに訊いてみるか。
ココから出れて、覚えてたらの話だけどな。
*
牢屋に戻った俺は、頭を抱えていた。
なんと、例の公開意見をやる日が、今日なのだ。牢屋に戻される時に、フェイトから聞いたんだ。どおりで外が騒がしいと思ったら、局員が地上本部とやらの警備をする準備をしてたんだな。
今日が公開意見の日だと知って、俺は頭を悩めた。機動六課も地上本部の警備に向かう、この絶好のチャンスを逃す訳にはいかない。
しかし、脱獄を実行したいが、肝心の脱獄方法をまだ考えてない。公開意見だって、ずっとやってる訳じゃない。長くても一日位で終わるだろう。猶予は、長くても一日だ。その間に脱獄方法を考えて、実行しなければならない厳しい状況なのだ。
ヤバい、ヤバいぞ。早く脱獄手段を思い付かないと、手遅れになっちまう。
改めて牢屋の中を見回すが、隙と呼べる箇所は無い。大袈裟かもしれないが、非力な俺から見たら鉄壁だ。ちょっとやそっとの事じゃ、破れそうにない。ああ、ダメだ。素人の俺が、脱獄なんて大それた事出来る訳がないんだ。ヤベッ、ネガティブ思考が邪魔して、全然集中出来ねぇ!
俺は悶えるように、頭をガジガジと掻いた。髪の毛は、更に乱れた。
その時だった。
突然、大きな音と共に牢屋が揺れた。
「おわっ! な、何だ!?」
ビビった俺は、慌てて室内を見回す。
そしたら、廊下から煙が漂ってきた。しかも、何だか焦げ臭い匂いまでして、室内が異様な熱さに包まれる。
「オイッ! コレ、火事じゃないか!?」
閉じ込められてる俺は、どうする事も出来ずにオロオロとしてた。
──どうするよ、コレ? どうすんのよ、コレ!? こんな時に、何で火事なんか起こってんだよ!?
恐怖でパニックになる俺の所まで、火の手が迫ってた。このままじゃ、焼け死ぬか窒息死だ。って、どっちにしたって死ぬんじゃん!
「ふっざけんな! 絶対死なねーぞ! 死んでたまるか!」
怒りに任せて、俺は鉄格子を蹴ろうと勢いをつけ、右足を振り上げた。
次の瞬間、鉄格子がバラバラになって崩れた。
「はあ!?」
不可解な現象に驚いて、俺は目を丸くした。
急に動きを止めようとしたから、バランスを崩して床に倒れてしまう。
「いって〜!」
地味に呟いて、痛みに顔を歪める。
「隼樹!」
上から聞き覚えのある声が降りかかり、俺は顔を上げた。
ソコには、黒のワンピース姿のサードが立ってた。スカートの丈が短くて、中が見えそうだ。
「サード!?」
「隼樹! ああ、良かった! 無事だったのね!」
「わっ!」
驚く俺を、サードは抱きしめた。
──いや、嬉しいのはいいんだけど、その、アレが当たってヤバい! 密着して、む、胸が押し付けられる形で……!
それよりも、何でサードがこんな所に居るのか訊こう。
「ちょっ……サード! 何で、こんな所に……?」
「何でって……アンタを助けに来たに、決まってるでしょ!」
「お、俺を助けに?」
「そうよ。六課を襲撃して、アンタを救出しに来たのよ!」
俺から離れて、大きな胸を張るサード。
正直、物凄く嬉しかった。口封じされる事ばかり考えてたから、余計に嬉しいわ。
ん? 六課を襲撃?
「じゃあ、この火事は……」
「六課隊舎を襲撃した時に炎上したのよ」
「んな無茶苦茶な! アン……アンタ、下手したら俺脱獄どころか死んでたよ!?」
「男が細かい事、気にするんじゃないわよ」
「いや、細かくないでしょ!」
なんつー無茶苦茶な事するんだ、この女は! 助けに来たのか、殺しに来たのか判らんわ。あーあ、さっきの感動が台無しだよ。
複雑な心境を抱いた時、ふとサードの後ろに人が居る事に気付いた。女の子で、髪は茶色で長く、頭にはカチューシャを付け、見覚えのあるボディスーツを着てる。
「サード。その人って……」
「ん? ああ、コイツね」
サードは横に移って、俺に女の子を見せた。
「ナンバーズのNo.12、ディードよ。アンタが捕まってる間に、動き出した新しいナンバーズ」
「ディードです。無事で良かったです、隼樹兄様」
丁寧にお辞儀をするディードの両手には、ビームサーベルみたいな武器が握られてた。どうやら、鉄格子を斬ったのは、この娘のようだ。
それよりも、俺はディードの言葉が引っ掛かった。
「は、初めまして。塚本隼樹です。あの……ところで、何で『隼樹兄様』? 別に兄妹、じゃないですよね?」
「私にとっては、兄のような存在です。お会いできて嬉しいです」
「あ、そ、そう?」
な、何だよ。照れるじゃないか。ただ、嬉しいと言ってる割には、あんまり表情が変化してないね。真顔だね。まあ、いいけどさ。
すると、何故かサードが少し不機嫌な様子で言った。
「ホラッ、さっさと外に出るわよ! 建物の中に居たら、私達はともかくアンタが焼け死んじゃうでしょ!」
「いや、元はと言えばアンタらが……」
しょうもない言い争いをしながら、俺達は建物の外に出た。
外に出て、俺は愕然とした。中からは分からなかったけど、外から見て建物は酷い有り様だった。一言で表すなら、『地獄絵図』が正しいだろう。建物は半壊して、大小の瓦礫が転がっていて、オレンジ色の炎が燃え上がってる。更に、外には傷だらけで倒れてる二つの影があった。一つは金髪の若い女性で、全体的に緑色の服を着てる。もう一つは、毛並みが青い大型な狼だ。一人と一匹は、あちこちに負った傷から血を流して地面に倒れてる。
「コレ……やり過ぎだろう……」
燃える建物を眺めて、呆然と呟いた。一応、死人は出ないように配慮してるようだが、コレは明らかにやり過ぎだ。
けど、俺を助ける目的もあってやった事らしいから、俺は他に何も言えなかった。
外には、もう一人新しいナンバーズが居た。No.8で、名前はオットーと言い、ジャケットを着た茶髪の男の子だ。
「撤退します。隼樹兄様、ガジェットⅡ型に乗って下さい」
「あ、ああ」
ディードに促されて、地上で待機してるガジェットⅡ型に乗ろうとした時だった。
「機動六課襲撃……私の言った通りになったでしょう?」
声が聞こえて、俺は振り返った。
一同の視線が集まる先に、一人の男が居た。
藤堂一也。俺と同じく、別の世界からミッドチルダにやってきた人間だ。
局員の制服を着てる一也を見て、ディード逹が武器を構えた。
すると一也は、両手を上げて無防備である事を示す。
「待って下さい。私は別に、貴方逹を捕まえに来た訳ではありません。魔導師でない私では、戦闘する事すら出来ませんからね」
「それなら、何をしに来た?」警戒心を剥き出しで、ディードが尋ねた。
「なに、貴女逹の友達の隼樹君に別れの挨拶をと思いましてね」
一也を見て、俺は少し寒気がした。
燃え盛る隊舎、倒れてる仲間の横で、一也は笑っていた。初めて牢屋で会った時と、同じ笑顔だ。
俺は無言で、一也を睨むように見据えた。数秒の沈黙の後、俺は歩み出した。
「隼樹!」
「隼樹兄様!」
「大丈夫。話をするだけだから」
心配してくれるサードに言ってから、俺は一也に近づいていった。
ちょっと警戒して、二、三メートル間隔を空けた位置で足を止めた。
俺と向かい合って、一也は小さく笑い出した。
「ククク! ピタリ、私の言った通りになったでしょう。まあ、本来ならナンバーズが回収するのは聖王の器だったのですが、ソレが貴方に変わった。以前の地下騒動で、貴方が先に聖王の器を回収してしまったからです。
しかし、そんなのは大した問題ではない。結局のところ、流れは、歴史は何も変わらない! 聖王の器は、どっち道スカリエッティの手に一度渡るのですから。
そして、次の最終決戦で時空管理局の前に敗れる……! 完璧なシナリオだ!」
「アンタ、何が目的なんですか……?」
コイツの長ったらい話なんて、心底どうでもよかった。
そんな事より、コイツが何を企んでるかが気になる。時空管理局に属してるみたいだが、どう見ても正義の為に働く善良な局員とは思えない。寧ろ、腹に一物抱えてそうだ。
俺が質問すると、一也は笑顔を絶やさず答えた。
「なに、単純な事です。私の望みは、貴方逹が時空管理局に敗れ、逮捕される事です。
今後の私の計画に、貴方逹社会のゴミ共は邪魔なんです」
『社会のゴミ』と言う言葉に腹を立てるも、我慢して二度目の質問をする。
「アンタの計画って、何ですか?」
「さすがに、そこまで教える事は出来ません。それに、これから捕まる貴方に教えたところで、意味なんてありませんから」
コイツの笑顔は、他人の神経を逆撫でする感じだな。イケメンなんか、皆死ねばいいのに。
ああ、ムカつく! コイツ、久々にマジでムカつく!
「じゃあ潰しますよ」
「え?」
余裕綽々してる一也に、ガツンッと言ってやる。
「俺が、アンタを潰しますよ! ナンバーズを勝たせて!」
俺の言葉を聞いて、一也は口を開けてポカンとなった。
ややあって、一也は笑い出した。
「ククク。何を言うかと思えば……! そんなのは不可能ですよ! そうならないよう、運命は決まってるんです」
「いいや、勝たせます! アンタみたいな小物に負ける訳には、いきませんからね!」
「何……?」
おっと、今の言葉が気に障ったみたいだな。目付きが変わって、初めて顔から笑顔が消えたぞ。
プライド高そうだからな、ちょっと刺激したら、かかりやがった。
「だって、そうじゃないですか? アンタ自身が何かした訳でもないのに、大物ぶって、正直格好悪いですよ? これじゃあ、小物と言われても仕方ないですよ」
相手を刺激させる言葉を選びながら、目の前の一也に悪口を言う。
眉根にシワを寄せて、一也は不愉快な様子になってる。もう一押しだな。
「あ、もしかして……俺に負けるのが怖いんですか? だから自分で動こうとしないんだ。社会のゴミ如きに負けたら、一生の恥ですもんね」
喋ってる内に、何か段々熱くなってきたな。妙にテンションも上がってきた。相手を挑発するのって、何か楽しいな。
おっ、一也の奴、言いたい放題言われて、悔しそうに歯を食いしばってるぞ。睨みを利かせながら、一也が近付いてきた。
正直怖いけど、ここで怯む訳にはいかない。小さな勇気を振り絞って、睨み返す。
間の距離は縮まり、顔が近いほぼ零距離で睨み合う。
睨んでくる一也に、俺は不敵に笑ってやった。
「そうですよ……! 悔しかったら来いよ、藤堂っ……!」
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