ウーノ「『ナンバーズ〜魔法が使えない男リベンジ!〜』始まります。ああ……隼樹は大丈夫かしら?」
No.9 二番目は危険で超エロいです
その日も私は、研究室でドクターの研究をサポートしていた。目の前に展開している画面下のコンソールを叩き、データをまとめている。
いつも通りの作業なのですが、今日はどうも捗っていません。頭の片隅にある不安が離れず、目の前の作業に集中出来ないのです。
不安の種は、他でもない隼樹さんの事です。No.2のドゥーエとの一週間の同居生活の件ですが、彼にとって非常に危険なミッションだと思われます。同居相手のドゥーエは、身内には等しく優しく接します。教育係として、クアットロの面倒もよく見ていました。しかし、身内以外の者には容赦なく冷酷なのです。アジトである程度一緒に過ごしてきた私達は、隼樹さんの事を認めています。ですが、長くアジトを離れて外で活動しているドゥーエは、隼樹さんとは初対面であり、まだ身内とは思っていないでしょう。そう考えると、下手をしたら隼樹さんの命も危ないです。コレは、トーレも懸念していた事です。サードが同伴してるとは言え、現時点での戦闘能力はドゥーエの方が上であり、隼樹さんを護りきれる可能性は低いです。
小心者でネガティブ思考の隼樹さんは、本当に大丈夫なんでしょうか? 彼の事が心配で、時折コンソールを操作する手が疎かになってしまいます。
「ドクター」
「何だね、ウーノ?」
ドクターは作業の手を止め、私に振り返りました。
「彼をドゥーエの元へ送って、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「なに、心配ないさ。隼樹君は、私達の身内みたいなものだから、いくらドゥーエでも無茶はしないハズだよ」
「だといいのですが……」
ドクターの言葉を聞いても、私の不安はなかなか晴れません。
すると、心配する私を見てドクターが突然笑い出しました。
「ははは。そうしていると、まるで隼樹君の母親みたいだね」
「なっ!? ド、ドクター! からかわないで下さい!」
な、何を言うのかと思えば……わ、私が隼樹さんの母親だなんて……。ドクターが変な事を言うから、顔が熱くなってしまいました。
コレも全部、私に心配をかける隼樹さんのせいですね。帰ってきたら、うんっと叱ってあげましょう。
私は気を取り直して、作業に戻りました。
*
マジヤバい、と言う言葉以外思い付かない。思い浮かばない。
そんな窮地に、俺とサードは居た。ドゥーエが用意してくれた部屋に引き込もって、ベッドに座って俯いてる。隣に居るサードは、俺にピッタリくっついて離れない。ドゥーエに対する恐怖、サードの大きな胸が腕に押し当てられてる興奮が混ざって、もう自分でもよく解らないヤバい状態になってた。
嫌だよ……帰りてぇよ……。
ココ来てから、俺達に安息の時間は無い。ただリビングに居る時も、夕食の時も、ずーっとビクビクして過ごしてました。理由は、同居相手のドゥーエだ。知り合って僅か数分で、「殺しますよ?」って脅されたら、そりゃビビりますよ! ビビらずに、普段通りに過ごせる方がおかしいでしょ? 俺の護衛って事でついてきたサードも、泣いてしがみついてて全く護衛の役目を果たせそうにないしさ。つーか、何でロボットが泣けるの? 確かに、ドラ●もんも泣く事出来るけどさ。
とにかく、機械を怖がらせる程に恐ろしい女と一緒に居る俺は、もう気が気じゃない訳よ。
──ヤベーよ……! 絶対ヤベーって……! 俺達、無事に一週間を生き抜く事が出来るのかな……? もし、何か気に障るような事したら、俺殺されちゃうのかな? 鉤爪で引っ掻き殺されるのかな? 嫌だァァァァ! 童貞のまま死ぬのは嫌だァァァァァァ!
さっきっから、俺の頭の中こんなんばっかだよ。ネガティブの無限ループで、自分で自分を追い詰めて苦しいんだよ。
ああ、もう、やめだ! 止め! こんなんばっか考えてるから、どんどん不安になってくんだ……!
かぶりを振って、俺は考える事を止めた。
脅されはしたが、まだ殺されると決まった訳じゃない。俺達がヘマをしなけりゃ、向こうも手は出してこないハズなんだ。このまま個室に引き込もってれば、俺達の安全はほぼ確保されたようなものだ。
そうだ、ポジティブだ。ポジティブに考えるんだ、隼樹。こんな時くらい、ポジティブに思考を切り替えるんだ。
しかし、アレだな。ずっと緊張状態が続いてるから、喉が乾いたな。水分を欲するように喉をゴクリッと鳴らして、俺は扉に目を向けた。飲み物を手に入れるには、あの扉の向こうのリビングに出て、台所にある冷蔵庫まで行かなければならない。ソレはつまり、ドゥーエと言う悪魔が居る領域に足を踏み入れる事になる。
ドゥーエは怖いが、喉の乾きもそろそろ限界だ。
よし……! 行くか!
意を決して、俺は個室を出ようとベッドから腰を上げようとした。
「ちょっ……ちょっとアンタ! 何してるのよ!?」
俺の腕に引っ付いてるサードも、一緒になって立ち上がった。怯えが色濃く表れてる顔で、俺を見下ろす。
俺の身長は170より下だから、サードに見下ろされる形になるのだ。
「いや、ちょっと喉が乾いたから、飲み物を取りに台所へ……」
「あ、危ないわよ!」
心配してくれるのは凄く嬉しいけど、ゴメン。我慢の限界なんだ。
「サードは、ココで待ってて」
本当は一人じゃ怖いから、一緒に来て欲しいけど、男として格好悪い気がするから俺だけで行く事にした。
すると、怯えてたサードが、急に目を鋭く戻して言った。
「だ、だったら私も行く!」
「えっ!?」
「わ、私はアンタの護衛で来たんだし……友達だし……だから一緒に行く!」
顔を近くして言い寄られて、俺はサードの迫力に圧される。
ただ、途中の『友達だし』って言葉には、スゲー嬉しく思った。
「と、止めても行くからね……!」
腕をガッチリと掴まれ、こりゃテコでも離れないなと悟った。
諦めた俺は、サードも連れていく事にした。
俺とサードは、抜き足差し足忍び足、と極力音を殺して進み、静かに扉を開ける。いきなり全部開けないで、小さな隙間を作って、まずはリビングの様子をうかがう。見回すと、リビングにドゥーエの姿は無かった。多分、俺達と同じように自分の部屋に居るのだろう。リビングに居ないのは、好都合だ。
今度こそ扉を全部開けて、俺達はリビングに出た。ココでも、やはり足音を殺して歩を進める。姿が見えないとは言え、油断は禁物だ。何てったって、相手は潜入のプロだからな。熟練した泥棒の如く、慎重に台所を目指す。
そして、極限の緊張感の中で、ついに俺達は台所にある冷蔵庫の前に辿り着いた。
よっしゃあ! こうなったら、もうこっちのものだ!
目的地に到着した事で、少しテンションが上がった。
俺の背後に居るサードも、ホッと安堵の息を漏らした。
これで冷蔵庫から飲み物をゲットして、部屋に戻ればミッションコンプリートだ。
安心して、少し気を緩めた時だった。
ガチャッ、バタン。
扉の開閉音が聞こえた。
ん? 俺まだ冷蔵庫のドア開けてないぞ……? アレ? つーか、今の音後ろから聞こえたような……。
その瞬間、猛烈に嫌な予感がして、心臓が高鳴り出した。
俺は気配なんて感じる程器用じゃないが、後ろに“何かある”と思った。サードとは別の“何か”……いや、“誰か”が居る。
俺は、まるで油の切れたロボットのような、鈍い動きで後ろを振り向いた。
視線の先には、ドゥーエが立っていた。しかも、バスタオルで髪を拭いてる最中で、身体の方には何にも纏ってない。ほぼ完全に、裸の状態なのだ。
「わ、ちょっ……!?」
生まれて初めて女の裸を直接見て、俺はあたふたした。顔の熱が急上昇して、心臓の鼓動もバックンバックン激しくなる。
対してドゥーエは、男の俺に裸を見られたってのに、全く動じてない。それどころか、口元を吊り上げて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。首にバスタオルをかけて、裸で一歩ずつ歩み寄ってくる。
ちょっ……ちょっと……!? ヤバい! マジでヤバいって……!
身の危険を感じた俺だが、すぐ後ろに冷蔵庫があって退路が無い。逃げようにも逃げられなかった。
すると、サードが俺を庇うように前に出た。
「じゅ……隼樹には、指一本触れさせないわよ!」
サードとドゥーエが、真っ向から睨み合う。
数秒の沈黙の後、ドゥーエが動いた。素早くサードの身体に密着して、左手を下半身に伸ばす。
あっという間の動きに、サードは呆気に取られる。
「あっ!?」
「身を挺して他人を護ろうなんて……フフフ、可愛いわね」
動揺するサードに顔を近付け、ドゥーエは妖しく笑う。
それからドゥーエは、サードの下半身に伸ばした左手をスカートの中に潜り込ませた。
「えっ!? ちょっ……やめっ……んあっ!?」
「フフフ。機械でも感じるのかしら?」
な、何やってんだよ、この人はァァァァァ!?
目の前で行われてる事に、俺は顔を真っ赤にさせて内心にシャウトした。
いやいやいや、コレはヤバ過ぎでしょ!? 絶対にヤバいって……! だって……あ、ああ、あんなトコ弄って……! うわあああ……! わあああああああ! 無理無理っ! コレ、完璧に18禁だよ! この場じゃ、何にも描写出来ないアダルトな世界だから!
衝撃の光景を目にして、興奮して混乱する俺の前でドゥーエの責めは続く。もう、とにかく一方的に責めまくる。ドゥーエに激しく妖しい責めに、サードは身をよじらせて喘ぎ声を漏らしてる。
正直、コレくらいが限界だ。
しかしコレは、ホンットに……見てるこっちまで興奮する、ヤバい光景だ。
そして、俺の前でサードは果てた。
「あ……あ……んはぁ……!」
ズルズルとドゥーエの身体からずり落ち、床に仰向けに崩れた。
かなりヤバい状態だった。顔は赤く恍惚とした表情で、口の端から涎らしき液体を一筋垂らし、更には舌までだらしなく突き出してる。天井の明かりを受けて、ピンク色の舌が綺麗に光って見える。着ている黒スーツは乱れ、散々弄られた身体はビクンビクンッと痙攣してる。
──エロォォォォォ! サード、メチャクチャエロォォォォォ! って言うか、何でロボットのサードが昇天してんの!? おかしくね? いくらドラ●もんでも、昇天は……する、かもしれない……。つーか、マジでエロいんだけど……!
絶頂して倒れたエロサードを眺めていたが、途中でハッと我に返った。
馬鹿馬鹿っ! サードがやられたら、次は……!
俺は、恐る恐る顔を上げた。
倒れたサードの前に、ドS女・ドゥーエが立っていた。濡れた指先を舌で舐めて、妖艶な笑みを俺に向けてる。ゾクッと背筋に寒気が走って、俺は固まった。まるで、蛇に睨まれた蛙のように動けない。いや、例え動けたとしても、逃げられないだろう。
獲物の追い詰めた獣のように、ドゥーエはゆっくりと寄ってくる。勿論、裸のままだ。ドゥーエが寄ってくるにつれて、シャンプーの香りが濃くなる。
とうとうドゥーエは、俺の目前までやってきた。
「さあ、捕まえたわよ」
ドゥーエの蠱惑的な顔が間近に迫り、俺は緊張と興奮が混ざって、どうしたらいいか解らなくなってた。互いの顔が超至近距離にあって、ドゥーエの吐息が当たる。
「フフ。私の裸を見た罰です。さあ、貴方はどんな声でナいてくれるのかしら?」
「いや……! ドゥーエさん、ちょっと待って下さい……!」
「必死になって……可愛いわ」
ドゥーエは更に顔を近付け、俺の頬に狙いを定めた。
そして、濡れた舌で俺の頬をペロリッ、と味見するように舐めてきた。
──ヒィィィィ! 怖いけど、恐怖とは違った意味でドキドキする……!
俺の頬から口を放して、ドゥーエは妖しく舌なめずりをする。
「久々に楽しませてもらいますよ」
「あああああああああああああ!」
俺は、ありったけの声で叫んだ。
しかし、誰かが部屋に駆け付ける事もなく、ドゥーエの魔の手が止まる事もなかった。
俺は成す術もなく、ドゥーエの責めを受けた。
この時、ドゥーエからどんな目に遭わされたかは、俺から語る事は出来ない。ご想像にお任せする、とだけ言っておこう。
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