首都圏で2009年に起きた男性3人の連続不審死にかかわったとして殺人などの罪に問われている木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判の初公判が10日、さいたま地裁(大熊一之裁判長)で始まった。3件の殺人罪について、木嶋被告は「私は殺害していません」と述べ、起訴内容を否認した。弁護側も無罪を主張した。
この裁判は今月5日の裁判員選任手続きから4月13日の判決まで100日間と、裁判員裁判では過去最長となる日程が組まれている。裁判員らは重い負担のなかで有罪・無罪を判断する。
木嶋被告は男性3人への殺人罪に加え、男性5人に対する詐欺や詐欺未遂、窃盗の計10件で起訴された。検察側は冒頭陳述で、木嶋被告が男性から現金を得ようとインターネットの「婚活サイト」に08年に登録し、複数の男性と同時進行で交際を続けて現金をだまし取ったと主張した。
その後、このサイトなどを通じて知り合った会社員寺田隆夫さん(当時53)、無職安藤建三さん(同80)、会社員大出嘉之さん(同41)を、09年1〜8月に被害者宅や埼玉県内の車内で、それぞれ練炭を燃焼させて一酸化炭素中毒死させたと説明。動機については「男性との交際を断ち切るため」との見方を示した。
これに対し、弁護側は冒頭陳述などで「木嶋被告は交際相手との結婚を本気で考えていた。死亡した3人を睡眠状態にさせてはいないし、練炭も燃やしていない」と反論。被害者に睡眠剤を飲ませ、遺体の近くで練炭に火をつけたことを示す証拠はないことなどから、「3人は自殺や、失火による火災での死亡の可能性がある」と指摘し、「疑わしい事件が三つあるから有罪とするのは許されない」と訴えた。
木嶋被告は起訴内容のうち、08年9月〜12月、死亡した男性3人とは別の男性2人にそれぞれ結婚話を持ちかけ、大学の授業料名目で総額約320万円をだまし取ったとされる件については詐欺罪が成立すると認めた。ただ、「真剣に結婚を考えていました。その点はうそではありません」と述べた。残る詐欺未遂などの事件はすべて否認した。