カスタマーレビュー

92 人中、48人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 1.0 「オレ達以外バカばっか」といよいよ公言することで、著者の活動を自己肯定しているだけの企画, 2011/12/17
レビュー対象商品: 愚民社会 (単行本(ソフトカバー))
“商品説明”を読むと、日本はいかに近代化が困難かを、”近代化”を政治・法律・経済・文化等の観点から定義しつつ、歴史に沿って丹念に議論する内容を期待するが、そういう内容では【全くない】。なにより、「愚民社会」という言葉は、本文中に一度も出てこない。もちろんその定義も書中にはない。「終わっている」という非学術的な言葉のimplicationも不明であり、本の内容以前に落第評価である。
宮台氏は自身がレギュラー出演しているラジオ番組で、「愚民社会」を「簡単に言うと(※これは宮台氏が良く使う、トリックフレーズであるので注意を要する)、依存体質の表れであって、それが3.11後の原発事故で現われた」と言っている。

■構成
まえがき
 何もしない大塚英志と、何かをする宮台真司の差異が、さして意味を持たない理由 宮台真司(5p)
2011年 1 すべての動員に抗して
      ――立ち止まって自分の頭で考えるための『災害下の思考』(25p、2011年、語り下ろし)
2003年 2 歴史を忘却する装置としての象徴天皇制(167p、初出:2003年、『新現実vol.2』)
2005年 3 アイロニカルな構造自体を示したい(221p、初出:2004年、『新現実vol.3』)
「あとがき」にかえて
 もう一度だけ「公民の民俗学」(※柳田國男)について 大塚英志(293p)

■評価
上三つの対談の関連性は、一切明らかにされていない。残り二つの既出の対談は、「愚民」をテーマにしたものではないことは、タイトルを見れば一目瞭然であるし、第2・3章は、『援交から天皇へ』や憲法学者奥平康弘氏との『憲法対論』がベースになっている。大塚氏との3.11対談に併せて、「愚民」というキーワードに引っ掛かりそうな昔の対談を引っ張りだしてきただけにしか思えない。第一章についても、宮台氏の『終わりなき日常を生きろ』がほぼそのまま節題になっているくらいである。よって、宮台氏主導の企画と考えてよく、本稿では宮台氏に焦点を絞る。いくつか引用したい。

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多数派政治よりも大切な民主主義の本質は、…1「〈任せて文句を垂れる社会〉から〈引き受けて考える社会〉へ」、2「〈空気に縛られる社会〉から〈知識を尊重する社会〉である」、3「〈行政に従って褒美を貰う社会〉から〈善いことをする社会〉へ」です。/(国民が何を意思できるという)民度がそもそも疑わしいのです。(37p/285p)

たいそうなことじゃなく、「ふざけたヤツを見ると腹が立つ」ということです。……(省の主要官僚である)麻布OBの経産官僚が何をどう考えているのかが麻布OBの僕には手に取るように分かる。…動機には近親憎悪が含まれます。麻布OBに限らず、似た「愚民視」を、至るところで感じる昨今です。例えば低線量内部被曝による…(132p)

アリストテレスの教養もないインチキエリートが、「家族のため」という言い草で合理性を欠いた戦争や原発を合理化するのが、日本という国です。/三島(由紀夫)一つとっても、…アイロニーとは構造的にどんな表現なのかを理解する初学者レベルの学力が、今は共有されていない。(146p/238p)
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1章だけでも突っ込みどころがあまりに多すぎてうんざりするので、2点だけ。
[1]>結局「昨日までは皆が天皇主義だといっていたから自分も天皇主義者、今日からは皆が民主主義と言っているから自分も民主主義者」というだけです。
そんなことは40年も前に、かの山本七平が名著『空気の研究』で詳細に論じている。それくらい、”愚民”でない〈教養〉ある宮台氏は知っているはずである(1章だけで184ものウィキペディア程度の脚注を降っているにも関わらず、こういう肝心な箇所に限って脚注がない)。

[2]宮台氏が批判する「低投票率=愚民社会」で、3章でバカ扱いしている左翼政党の副幹事長が、「無党派候補」と偽装して地方政治経験ゼロにも関わらず首長になってしまったのが、自身がブレーンだと実践をアピールする東京世田谷区である(54p・106p)。この矛盾をどう説明するのだろう?彼は民主主義の理念なき多数派政治を「糞食らえ」だというが、「みんなの意見」は案外正しいことが、宮台氏が「訓練を受けた」統計学では知られている。

総評。サブカルだの自然エネルギーと共同体自治だのジョブスだのTPPだの、横道に逸れまくりで読むのに非常に疲れる本書を読むくらいなら、宮台氏の師である小室直樹氏の『日本いまだ近代国家に非ず―国民のための法と政治と民主主義―』を読まれることを強く推奨します。「何もしない大塚英志と、何かをする宮台真司の差異」なんて、よほどの宮台フリークでない限り、全くどうでもいい(「愚民」の対象と意味は、官僚と国民の両方を別々に指していると読み取れる)。自らの社会的使命についての自覚について、宮台氏は師の足元にも及ばない。宮台氏はかつて『絶望から出発しよう』と言ったことがある。158p「日本は終わりです」?勝手に絶望してろ!
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このトピックの全投稿5件中1件から5件までを表示
最初の投稿: 2011/12/29 16:45:20:JST
投稿者により編集済み(最終編集日時:2011/12/29 17:03:38:JST)
ラザロフさんのコメント:
「みんなの意見」は案外正しい の「最も参考になったカスタマーレビュー」 (yokoyama氏, 2006/11/24投稿) には、「本書は、単に「たくさんの人が意見を寄せれば正しい答えに近づく」と書いた本ではない。多様性、独立性、分散性が満たされて初めて正解に近づくと主張している。実際には、これらを満たす集団はそれほど多くないように思う。/オンラインコミュニティでの議論が、極端な方向に走りがちなのはなぜか、など、むしろ「みんなの意見が正しくない」ことについての考察の方が面白いと思った。」と書かれているようですが…。

「宮台氏が「訓練を受けた」統計学では知られている。」ですか。へー。
評論家を気取るのでしたら、ぜひ コンドルセの定理 http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2007/20070115/1198/ ぐらいは知っておいてくださいね。

前の投稿への返答(返答日時: 2011/12/30 18:33:06:JST )
Ashurungさんのコメント:
コメントありがとうございます。
孫引きのようですが、ラザロフさん仰る通り『「みんなの意見」は案外正しい』は、単に「三人よれば文殊の知恵」を主張した本でもなく、その中身に対して批判もある研究だと理解しています(というか、私自身、本の論理展開の一部に疑問を持っています)。私がレビュー欄で上掲書を引き合いに出した意図は、「自分は統計学の訓練を受けている」という宮台氏の”愚民視”に水を指すためです。政治過程論の文脈を持った地方選挙の投票行動論に確率統計論を持ちこんだ研究などというのは、私が指摘した宮台氏の矛盾のレベルを遥かに超える議論だと思います。

で、ラザロフさんは、本書に対してどのようなご意見をお持ちなのでしょうか?
(率直に言ってしまえば、ご指摘頂いた一文を削除しても、私のレビューの有用性/無用性は殆ど変わらないでしょう)

前の投稿への返答(返答日時: 2012/01/01 9:58:04:JST )
ラザロフさんのコメント:
>で、ラザロフさんは、本書に対してどのようなご意見をお持ちなのでしょうか?

妙な質問ですね。私のコメントを理解するために、この本(や『「みんなの意見」は案外正しい』)を読む必要があると本気でお考えになりましたか?

私はただ、先に指摘したポイントが非常に重大なので(その重大性は、私の先の指摘を読むこの本の読者層には容易に理解できると思われます)、その旨指摘しただけです。
レビューをするのであれば、レビュー対象となる本を読まないのはおかしいですが、レビューに含まれる明白な知見の誤りを正すのに、レビュー対象となっている本を読まなければならないかのように言うのは明らかにおかしいです。

あなたはここを読む方々にできるだけ私が触れたポイントが重大である印象を与えないよう、注意深くポイントを外したコメントを書かれましたが、私のコメントの内容を理解できた方には、あなたのその種の注意深さがかえっていかがわしく映ったのではないかと思います。「(率直に言ってしまえば、ご指摘頂いた一文を削除しても、私のレビューの有用性/無用性は殆ど変わらない」などと保険をかけずに、誤りを率直に認め最初から削除されればよかったのに、なぜそうされなかったのですか。

前の投稿への返答(返答日時: 2012/01/03 14:52:29:JST )
投稿者により編集済み(最終編集日時:2012/01/03 14:53:01:JST)
Ashurungさんのコメント:
手短に結論から先に申し上げます。削除する予定は、今のところありません。
なぜなら、本引用は上述した「「自分は統計学の訓練を受けている」という宮台氏の”愚民視”に水を指す」という意図を持った引用であり(その意図とレビュの有用性/無用性に与える影響は当然別物です)、さらに、そもそも「重大な知見の誤り」があるとは私は考えていません。原題“The Wisdom of Crowds”を「みんなの意見は“案外“正しい」(引用符引用者)と意訳されていることそれ自体が、安直に「たくさんの人が意見を寄せれば正しい答えに近づく」と誤解されるリスクを回避するタイトリングだと私は考えています。当方の意図に対して誤解リスクの方が大きいというのは一つのご意見として受け取ります。

最後に「注意深くポイントを外した」「「いかがわし(い)」とご指摘の私のコメントについて。
“保険”などという生易しいものではありません。貴殿にとっては「非常に重大」ゆえ看過しえないのかもしれませんが、私にとっては「知見の誤り」とは言えず、しかもレビュー対象本の中身とは全く関係がないという意味で「非常に重大」でもありません。引用はあくまで本書に対するレビューの一環です。勿論、私が特定の意図を持って引用している以上、その引用に「明白な知見の誤り」(もしくは誤った誘導等)があれば、修正する必要があるでしょうが(繰り返しになりますが、私はそうは考えていません)、そうでなければ、レビューの主題から外れた議論の応酬になります。私はここでその種の議論をするつもりは全くありません。

前の投稿への返答(返答日時: 2012/01/10 12:06:03:JST )
投稿者により編集済み(最終編集日時:47分前)
ラザロフさんのコメント:
返信遅くなりました。

相変わらず、読者の注意が厳しくゆきとどかないことを悪用した、ある意味「うまい」コメントをされる方ですね…。ちょっと驚きました。

あなたは「原題“The Wisdom of Crowds”を「みんなの意見は“案外“正しい」(引用符引用者)と意訳されていることそれ自体が、安直に「たくさんの人が意見を寄せれば正しい答えに近づく」と誤解されるリスクを回避するタイトリングだ」と、さらっと書いていますが、そもそもそのタイトルは「彼は民主主義の理念なき多数派政治を「糞食らえ」だというが、 「みんなの意見」は案外正しい ことが、宮台氏が「訓練を受けた」統計学では知られている。」という文章の中に登場しています。こちらの行文を確認すれば、もともとのあなた自身の意図が「たくさんの人が意見を寄せれば正しい答えに近づく」という誤解を(あなたがその時点でイメージした)「統計学」の立場から肯定するものだったことは明らかです。これが「重大な知見の誤り」であることは、「コンドルセの定理」 http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2007/20070115/1198/ の内容を踏まえれば容易に理解できるはずだと思います(言うまでもないですが、レビュー対象本の中身と関係があるかどうかで重大性を問題にしてよい性質の話ではありません。「多数派政治」・衆愚政治を話題としているならなおさらです。また、彼は「議論の応酬」を避ける自分の正当性を強調するような文章でコメントを終えていますが、こちらの話は議論の余地があるような話ではありません。あくまで「知見」の話であり、それを「統計学」的に問題にしたのは彼自身です)。

また、もとの日本語タイトルは『みんなの意見は案外正しい』ではなく 『「みんなの意見」は案外正しい』 です。あなたは「案外」に引用符をつけて強調しましたが、もとのタイトルは別の箇所(「みんなの意見」)にすでに強調を付しているのです。この点の認識が、あなたが行った強調への評価を大きく左右することは明らかですよね。「みんなの意見」に強調が付されていたことをしっかり覚えている人には、あなたがある種の印象操作をした(あるいは、結果的にそのように働く文章を書いてしまった)ように映るでしょうが、覚えていない人には、あなたが『みんなの意見は案外正しい』というタイトルの注意深い解釈を私に諭したように映ると思います。

残念ながら、現時点の投票結果を見る限り、「コンドルセの定理」を踏まえてこちらのやりとりを評価された方はいらっしゃらないようですね。「コンドルセの定理」は決して理解するのが難しい話ではないので、これからこちらのやりとりを読まれる方には、ぜひ先に示したリンク先の説明を押さえた上で評価してくださるようお願いしたいです。
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