日々坦々

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ついに「原子力ムラ」の中心人物、原子力学会会長・東京大学大学院の田中知教授までもが「小出詣で」(東京新聞)

Category: 原発・環境問題   Tags: 東京新聞  

<脱原発のココロ>京大原子炉実験所助教 小出 裕章さん(62)今度こそ止めたい
(東京新聞「こちら特報部」1月9日)

 昨年十月三十日、東京都港区のJR浜松町駅近くの喫茶店。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章(62)は約二時間、日本原子力学会会長で東京大学大学院教授の田中知(さとる)(61)らと向き合った。

 東京電力福島第一原発事故後、原発の危険性を訴え続けて四十年の小出は「不屈の研究者」として広く知られるようになった。一方の田中は、原発を推進することで互いに利益を得る企業や研究者の排他的集団「原子力ムラ」の中心人物だ。

 「原子力の学問をどうしたらいいか」と問われた小出は諄々(じゅんじゅん)と説いた。
 「原子力を推進するような学問はすべてやめるべきだ。ただ、今回の事故処理、使用済み核燃料、各原発の廃炉の問題などが残っている。これらの負の遺産を乗り越えるための専門家を育成する必要がある」

 面談を申し入れたのは田中側だ。小出は多忙を理由に一度は断るが、再三の申し入れに根負けし、上京した際に時間をつくった。
 田中は、面談の狙いについて「東大グローバルCOEの活動の一環で、いろんな人の意見を聞いている」と説明する。グローバルCOEとは、大学院の先端研究拠点を文部科学省が重点支援する事業のこと。田中らの拠点の名前は「世界を先導する原子力教育研究イニシアチブ」だ。小出の主張は届いたか。田中は「今はノーコメント。シンポジウムなどで成果を公表する機会はあるかもしれない」と言葉少なだ。

 小出自身もかつては原子力学会に所属していたが、三十年前、関西電力の副社長が会長に就任したのを機に脱会した。学会誌から名指しで批判され、小出の反論文を載せる、載せないでもめたこともある。いわば因縁の相手だ。

 小出は皮肉まじりに田中らの意図を推し量る。
 「東大は原子力を推進してきた学問の中心、学会は安全神話一辺倒の集まり。私のことは無視すればよかったが、事故が起きてからは、そうもいかなくなった。彼らも、ものすごい危機感を感じている。懲りずに推進の旗を振ろうとするだろうが、少なくとも私の意見も聞いたという形を作らざるを得なくなった」

 「こちら特報部」は福島事故発生翌日の昨年三月十二日、いち早く小出に電話取材した。小出は「政府や電力会社の説明はウソだった。もういいかげん、原発はやめろと言いたい」と声を荒らげた。四月九日の特報面では単独インタビュー記事を掲載した。

 その後の活躍は「小出ブーム」といっても過言ではない。
 毎週末は講演で全国各地を飛び回る。既に三月末まで予定はいっぱいだ。事故前も月に二、三回は講演をこなしていたが、参加者は十数人、多くても百人程度。それが事故後は千人規模も珍しくない。講演内容などをまとめた「小出本」は十六冊も発行され、ネット上にはファンサイトも登場した。マスコミの取材は引きも切らない。

 「とてつもなく忙しくなった。自分の仕事も手が付けられない状態だ」
 助教は昔で言うところの助手。事故前まで、助手よりも教授の方がありがたがられた。それが一転、事故を過小評価した「御用学者」の権威は失墜。放射能の恐怖におびえる人たちは、小出の言葉に救いを求めた。ついには、原子力学会会長までが「小出詣で」に出掛けたのだ。

 自身は「小出ブーム」をどう見ているのか。
 「事故を引き起こした東京電力と政府は犯罪者だ。犯罪者が自らの罪をきっちり言うことなどあり得ない。小さく、小さく見せようとする。情報は隠す。それは3・11から今日まで全く変わっていない。だから私のような人間の話を聞きに来る。ありがたいとは思うが、こんなことにならなければ良かったと思う」

 英雄視されることを極端に嫌う。
 「運動の指導者になれとか、もっと政治とコンタクトを取れとか、さまざまなことを言ってくる人がいるが、政治もヒーローも大嫌いだ」
 事故後、原子力政策や再生可能エネルギーに関する政府の審議会や委員会のメンバーに、原発に批判的な学者が起用されるようになったが、小出は「あまり興味がない。私には声はかからないし、かかってもやらない」と素っ気ない。

 “万年助手”の清貧な雰囲気に変化はない。大阪府熊取町の京大原子炉実験所の研究室は昼なお暗く、エアコンは「スイッチを入れたことがない。たぶん壊れている」。学内には「御用学者」のレッテルを貼られた教授もいるが、「そういう人たちは私とすれ違う時は横を向いている。事故後も相変わらずだ」。
 一九七九年の米スリーマイル島事故、八六年の旧ソ連チェルノブイリ事故、九九年の東海村臨界事故…。大事故のたびに反原発運動は盛り上がるが、いずれも尻すぼみに終わってきた。今度こそ勝てるのか。原発を止められるのか。
 「今までにない広がりで原発を考えてくれるようになった。ここまで来たんだから、今度こそは止めたい。でも、政府や電力会社の圧倒的な力の前に、私は負け続けてきた。今、この戦いに勝てるかと問われれば、大変不安だ」
 首相の野田佳彦は昨年十二月十六日、「事故収束」を高らかに宣言した。政府と電力各社は、原発の再稼働をあきらめていない。

 「事故は進行中だ。溶けた核燃料は原子炉格納容器の底を突き抜けているかもしれない。東電の発表によれば、格納容器床面のコンクリートを最大六十五センチ溶かしているが、外殻の鋼板まで三十七センチ余裕があるという。これは単なる計算にすぎない。仮定の置き方で答えはいくらでも変わる」
 「火力発電所と水力発電所があれば電力は足りるのに、政府と電力会社は毎日のように『停電するぞ、節電しろよ』というウソの宣伝を流し続けている。多くの人が、まただまされようとしているように感じる」

 「収束宣言」の翌日、北九州市内で小出の講演会が開催された。ある女性が質問した。
 「3・11以来、何かしなければいけないという気持ちがあったが、何もしていない。何かできますか」
 小出はこう答えた。
 「こういう集会に行くと、『どうしたら原発をなくせるか』と聞かれるが、知っていればやっている。私は、原子力の学問の場にいる人間としてやらなければならないことを続ける。歌のうまい人は歌えばいい。署名もデモも一つの手段だ。これだけは自分がやりたいと思うことを、皆さんがやるようになった時、原発は必ず止まる」
(敬称略、佐藤圭)

<デスクメモ> 厚遇されないとわかっていても、自ら正しいと信じる道を歩む。そういう生き方はなかなか実践できるものではない。まして、それを貫こうとすればなおさらだ。しかし、清貧さなくして、真理は探究できるものなのだろうか。“万年助手”を良しとする科学者には、確かに「ムラ」は似合わない。 (木)

●こいで・ひろあき 1949年東京生まれ。原子力の平和利用を志し、68年、東北大学工学部原子核工学科に入学。在学中の70年、東北電力女川原発の反対闘争に触れ、反原発の立場から研究を続けることを決意。74年、同大学院工学研究科修士課程修了。同年から京都大学原子炉実験所。







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