中堅塗料メーカーの神東塗料(兵庫県尼崎市)は、東京電力福島第1原発の周辺自治体向けに、壁などに塗ってはがすと、放射性物資の約9割を除去できる塗料の事業化に乗り出した。米スリーマイル島原発事故の際に開発され、効果が認められた実績があり、国が被災地で実施する除染モデル事業への採用を目指す。(段 貴則)
除染用塗料は、1979年に発生したスリーマイル島原発事故の際、米原子力規制委員会(NRC)の要請で、防さび・防食塗料の世界最大手、米カーボライン社が開発。NRCから有効性の承認を受け、原発周辺施設などに使用され、現在も米国内の原発や放射線を扱う病院などで使われているという。
神東は、カーボ社と共同出資した子会社ジャパンカーボライン(東京)を通じて輸入販売する。
建屋の内外壁や床などに通常の塗料と同じように塗ったり吹き付けたりして、乾燥後は粘着テープのようにはがせる。放射性物質の除去率が高い上、はがした塗膜は小さく圧縮でき、放射性廃棄物としての保管処理も比較的容易なのが特長。
外壁など屋外を中心に行われている高圧水洗浄による除染作業は室内に不向きで、除去率も最高で5割程度にとどまる。汚染された洗浄水の回収も難しく、課題となっている。
神東グループは、独立行政法人・日本原子力研究開発機構が公募している、福島第1原発周辺の警戒区域などでの除染実証事業に名乗りを上げており、採用が決まるなどで需要が急増した場合は国内生産も検討する。
ジャパンカーボ社の湯浅浩俊社長は「原発事故で避難生活をしている被災者が、再び、ふるさとで暮らせるように役立てれば」と話している。
(2011/11/15 12:37)
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