日本はCOP17で13年以降の温暖化ガス削減の数値目標を設けない方針を示した。一方、東欧諸国やロシアの政府が持つ余剰排出枠の13年以降の扱いについては、COP17では決まらなかった。もし、余剰分の13年以降への持ち越しが認められなかったり、一部しか持ち越せないことになれば、「換金売り」が東日本大震災後の原子力発電所の停止で温暖化ガスの排出量増加が見込まれる日本政府や日本企業に向かう可能性もある。そうなれば、排出枠価格はさらに下がるかもしれない。
こうした市場の変化に、CDMによって多くの排出枠をつくってきた開発事業者はビジネスモデルの転換を余儀なくされている。
中国で水力発電プロジェクトなど40の排出枠創出事業を手がけているエコ・アセット(東京・港)。中国では新たな事業開発はせず、案件の開発地をラオスやカンボジア、バングラデシュなどに移している。13年以降に国連に新規登録できる排出枠の創出事業は、後発開発途上国(LDC)での自然エネルギー開発などに限定されるためだ。
EUの民間企業が参加する排出量取引制度(EU―ETS)でも13年以降は、CDM由来の排出枠の利用に対する制限が強まり、LDCで創出されたものなどに絞られる。日本が京都議定書の排出削減期間延長に参加せず、削減義務を負わないなか、ほぼ唯一の買い手となるEU市場に売れる排出枠づくりに、排出枠ビジネス関連企業の目線は移っている。
12年までの京都議定書の削減目標達成に向け、排出枠を追加取得する際の負担が減るという面からは、排出枠の価格下落は日本にとって朗報かもしれない。もっとも、これまで政府や電力会社が排出枠取得に投じた費用は決して少なくない。むしろ、排出枠相場に翻弄されてきたと言ってもおかしくない。
日本は13年以降の当面の削減義務からは逃れたが、地球温暖化問題は引き続き未解決のテーマとして残り続ける。20年の発効をめざす温暖化ガス削減の次期国際枠組み「ポスト京都議定書」の交渉に臨むうえでも、排出枠価格の大幅下落に象徴される現行制度の問題点の検証は欠かせない。
(産業部 宇野沢晋一郎)
排出枠、COP17、温暖化ガス、脱・炭素社会
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