いまや広島を代表する名所で、春にはオープンから4年目のシーズンを迎えるマツダスタジアム(南区)。そのグラウンドの地下が、巨大な貯留池になっていることを知っているだろうか。管理を担当する広島市下水道局大州水資源再生センター次長の中村嘉男さん(59)に、“秘密基地”のような空間を案内してもらった。
グラウンド下には、計1万5300立方メートルの水をためることができる。土地の低い広島駅南側の浸水対策として、7000立方メートルをためられる池が二つ。2・2メートルの流入管を使って水を集める。スタジアムの屋根やグラウンドに降った雨水をためて処理し、再利用するための水槽は右翼側グラウンドの真下にあり、計1300立方メートルの容量がある。浸水対策用の貯留池とを隔てるのは、大型車両が行き来できる幅7~8メートルの通路。貯留池にたまる土砂を運び出すためという。コンクリートの打ちっ放しのため、空気が冷たい。
雨水利用の仕組みはこうだ。まず、原水槽(1000立方メートル)に集められ、隣り合う別の水槽(300立方メートル)に送られて、ろ過や殺菌処理を施される。浄化された水の使い道は、場内のトイレやグラウンドへの散水、球場南を流れる全長73メートルの人工の小川「雨音の小径(こみち)」。せせらぎの水は、夏場は子どもたちが水遊びに興じる。
中村さんによると、1日に球場内で250立方メートルの水を使った実績があるという。能力上限の300立方メートルを使ったとしても、「ちょうど3連戦分です」。
東日本大震災と福島第1原発事故の後、大量の電力を消費するナイターに世論は厳しく、プロ野球はシーズン開幕を延期した。デーゲームを増やしたり、試合のスピードアップを図るなどして、球界は省エネ努力に余念がない。環境配慮が意識される時代になって建設されたマツダスタジアム。中村さんは「エコな観戦を実感してもらえれば」とファンにアピールする。【中里顕】
毎日新聞 2012年1月7日 地方版