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次代の力:広島・エネルギー最前線/2 老舗「中谷造船」の挑戦 /広島

 ◇電気推進船、燃費向上と騒音低減

 初詣でにぎわう世界遺産の島・宮島と対岸を結ぶJR西日本の小型フェリー「みやじま丸」。外見からは分からないが、06年5月に就航したこの船は「スーパーエコシップ」と称される次世代船。燃料の重油で発電機を回して電気の力で進み、燃費改善や騒音の低減を図っている。「環境にやさしい船を造りたい」。創業130年余りの歴史がある中谷造船(江田島市)の意欲が結実した船だ。

 環境への配慮が盛んに言われ始めた1990年代。現会長の中谷敏義さん(74)は、欧州で開発された電気推進船の存在を知り、研究に乗り出した。

 この船の特徴は、エンジンの位置が固定されないこと。従来は、プロペラとエンジンは直結されるため、船型は限定される。電気推進船では、エンジンとプロペラは電気的に接続されるので構造の自由度が高まり、抵抗を抑えた配置が可能となった。10%は燃費が向上するという。

 電気推進船のケミカルタンカー「千祥」を製造し、日本船舶海洋工学会の「シップ・オブ・ザー・イヤー2002」に選ばれ、次に目をつけたのがフェリーだった。船の運航で最もエネルギーを使うのは動き出すときと停船するとき。中谷さんは「発着の頻度が高いフェリーなど短い航路こそ、電気推進船の強みが生きる」と語る。

 乗客にとっても「やさしい船」になった。みやじま丸の場合、騒音は10~15%改善した。1階に椅子席34席、車椅子スペース8台のバリアフリールームの設置が可能になった。「高齢者にとっては、1階に客室がある方が楽。従来なら騒音で無理だった」

 中谷さんは08年に社長を退き、次男の尚道さん(39)に継いだ。11年3月には、電気推進船の大型フェリー「桜島丸」(桜島フェリー)が鹿児島で就航。今後は蓄電の技術に目を向ける。「出発時など動力がいる時に、蓄えた電気を使い、動き出したら発電に切り替わる。これができれば、燃費も環境負荷もより向上する」。老舗造船会社の挑戦は終わらない。【寺岡俊】

毎日新聞 2012年1月4日 地方版

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