ウイルスに対する脆弱さを抱えたスマホが爆発的に普及し、それを狙うウイルスが急増する――。スマホに関係する通信会社やセキュリティー会社の専門家の多くは、スマホのウイルス被害が表面化するのはもはや時間の問題と見ている。
ひとたび被害が広がった場合、収束に向けて従来よりも難しい対応を迫られる懸念がある。スマホ向けのサービスは、主力となる通信回線を提供している携帯電話会社に加え、端末メーカーやOSの開発者を含め多様なプレーヤーが絡んでいるからだ。深刻な事態が広まった場合、解決に向け各プレーヤーが複雑な連携や調整を迫られることになる。
現時点では潜在的なリスクにすぎないスマホのウイルス感染に対し、可能な備えはあるのか。
総務省の研究会がまとめた中間報告では以下の3点を挙げている。
第1はOSの更新だ。次々生まれるウイルスに対抗するため、スマホ向けOSは対策を講じたうえでバージョンアップをしている。古いOSのままだとウイルス感染の確率が高くなる。更新の案内が来たらすぐ更新すべきだ。
製品名 | 提供元 | 主なウイルス対策機能 | 価格 (1年版) |
---|---|---|---|
マカフィー ウイルススキャン モバイル | マカフィー | ウイルス検出、危険なサイトのブロック | 2980円 |
ウイルスバスターモバイル for Android | トレンドマイクロ | 不正アプリや危険なサイトのブロック | 2980円 |
エフセキュア モバイルセキュリティ for Android | エフセキュア | ウイルス検出とブロック、インストール済みアプリの通信制御 | 3500円 |
ノートン モバイルセキュリティ | シマンテック | 不正アプリや危険なサイトのブロック | 2980円 |
カスペルスキー モバイルセキュリティ9 forアンドロイド | カスペルスキー | ウイルス検出とブロック | 2625円 |
第2は不用意にアプリをダウンロードしないことだ。アプリはスマホがウイルスに感染する主要ルートと考えられる。アプリのダウンロード時にはついつい、契約内容をよく読まずにOKボタンを押してしまいがちだ。しかし、よく読むと「全地球測位システム(GPS)情報を提供する」など、個人情報が漏れてしまう条件が記載されているケースもある。取り込む際には、こうした点にも目を通し、疑わしければダウンロードを避ける。提供元の信頼性もチェックすべきだ。
3つ目の対策は、多少の出費を迫られるため、最終手段と位置づければよい。それはウイルス対策ソフトの活用だ。セキュリティー各社は11年に入り、相次ぎスマホ向け製品を発売した。通信会社経由で利用できるサービスも増えている。ただ、多くの商品が年間で数千円と安いとはいえないのが難点だ。
スマホ向けウイルスでとりわけ注意を払うべきなのは、社員に端末を携帯させている企業だろう。
社員のスマホがウイルス感染し、そのまま社内システムにアクセスすれば、情報流出などの被害を受ける恐れもあるからだ。
企業向けにスマホに関するセキュリティー強化のアドバイスをするサービスが増えている。システム開発大手の伊藤忠テクノソリューションズが12月初旬にスマホ向けのセキュリティー対策の企業向けセミナーを開いたところ、想定の倍以上の申し込みがあったという。業種も商社・メーカー・小売……と様々。「11年に入って急にスマホのウイルス報告が増えだして、企業担当者も焦りをみせている」(企画開発部の望月祐幸氏)という。
ソフト開発のクオリティソフト(東京・千代田)は12月、国内外すべての拠点で情報端末のセキュリティー状態を一元管理できるシステム「ISM 4.0i」の提供を始めた。スマホもPCも同時に管理可能。社員がウイルス感染の恐れがあるアプリをダウンロードしても、起動できないのでウイルスのまん延を防げるという。
多くの日本企業が拠点を持つ中国や東南アジアでは日本以上にスマホの普及速度が高く、ウイルスの発見も相次いでいる。クオリティの飯島邦夫常務は「ウイルス感染の危険は世界規模で考えなくてはならない」と指摘する。
ウイルス対策といえばパソコン――という時代は今は昔。従来の携帯電話と違い、スマホは「世界共通仕様」のOSを搭載している。世界中からウイルス攻撃を受ける恐れを持っているのだ。気づかぬうちに感染し、誰かに被害を与えてしまわぬよう、早急な対策が必要だ。
(電子報道部 岡田真知子)
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