第一話~授業開始~
第一話 「境界線前の整列者達」
空がある。
晴れた、朝の空だ。青の色には薄白い。
今俺が居るのは、通っている武蔵アリアダスト教導院の屋上で寝ていた。
ヒマな時やサボる時は大体ここで寝ていることが多い。
「・・・今の夢は・・・あの男は・・・一体・・?」
今まで夢を見ることは多かったが、今回はやけにリアルだった。
あの夢を見る時は妙にその時に記憶ははっきりしている。
俺には記憶がない。10年前に傷だらけで発見されてから保護され、酒井のじいさんに保護された。正直最初自分が何なのか分からず自暴自棄になっていた。
今考えれば恥ずかしい話だが・・
「ん?騒がしいな?」
アリアダスト教導院の正面、橋の上に見知った奴らが居た。
どう考えても俺のクラスメイトだ。
確認すると同時に時報のチャイムが鳴り始めた。
「もう時間か・・・」
少し考えてから、
「もうひと眠りするか・・・」
と俺は再び眠りの中に入ろうとする。
もしかしたらまた同じ夢を見れるかもしれないし・・・
と考え事をしてたら、
「――――五回サボれるの」
なんですと!?
堂々とサボれるですと!!俺の意識が一気にやる気になった。
俺はそのまま屋上から飛び降りた。
「よぅ――――し」
よく通る声が、校舎に向かって飛ぶ。
「三年梅組集合―――。いい?」
声の響く武蔵アリアダスト教導院の正面、橋の上、そきに人影が幾つもある。
まず門側には一人の女が立っていた。黒い軽装甲型ジャージの、背筋の伸びた女だ。
短めの髪の後ろ、背には一本の線がある。白塗りの、金属を柄とした長剣だった。
彼女の正面。校舎側。そこに、黒と白の制服を着た若者達がいる。人であれば、人でない者もいる。そんな彼らに対して、女は笑みを作ってこういった。
「では、―――――これより体育の授業を始めまーす」
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「いい? ――――先生、これから品川の先にあるヤクザの事務所までちょっとヤクザ殴りに全速力で走って行くから、全員ついてくるように。そっから先は実技ね。遅れたら早朝の教室掃除よ。 ――――ハイ返事は?」
「―――Jud.」
返答を了解の意味を示す言葉を皆が返した。
「教師オリオトライ、――――体育とヤクザとどのような関係が。金ですか?」
同時に手を上げた男子“会計 シロジロ・ベルトー二”という腕章をつけた長身の男子が、教師に質問をした。
「馬鹿ねぇシロジロ、体育とは運動することよ?そして、殴ることは運動になるのよね。そんな単純なこと、―――知らなかったとしたら問題だわ」
名を呼ばれた生徒を袖を、横の女子制服の姿の子が引っ張る。“会計補佐 ハイディ・オーゲザヴァラー”という名札のロングヘアは、笑顔のままで、
「ほらシロ君、オリオトライ先生、最近表層の一軒家が割り当てられて野放図に喜んでたら地上げに遭って最下層行きになってビール飲んで暴れて壁割って教員課にマジ叱られたから。――――つまり中盤以降は全部己のせいなんだけど初心を忘れず報復だと思うよね」
「報復じゃないわよー。先生、ただ単に腹が立ったんで仕返すだけだから」
「同じだよ!!」
皆が突っ込むが、オリオトライは気にする風もない。そして彼女の背の長剣を鞘ごと手にして脇に抱えた。鞘の表面、ブランド名であるIZUMOのエンブレムを撫で、IZUMO特有の斬撃効果重視でわずかに折れ曲がったデザインの柄に指を添える。そうしてこう言った。
「休んでるの、誰かいる?ミリアム・ポークウと、東は来てないとして―――」
問に周囲がそれぞれの顔を見渡した。
すると黒い三角帽の少女、“第三特務 マルゴット・ナイト”という腕章の金髪少女が口に開く。彼女は背にある金の六枚翼を左右に揺らしつつ、
「ナイちゃんが見る限り、セージュンとソーチョー、それとナナくんがいないかなぁ」
その声に、彼女の腕を抱いている黒翼の少女“第四特務 マルガ・ナルゼ”が首を傾げた。
「正純は小等部の講師をしに多摩の小等部教導院に行ってるし、午後から酒井学長を三河に送りに行くから、今日は自由出席のはず。ナナシは多分いつものサボり」
「じゃあトーリについて知ってる人いる?」
問いかけに皆が一つの場所を見た。皆の中心から少し後ろに下がったところ。そこに立つ茶色いウェーブヘアの少女だ。彼女は腕を組み、口に弓の笑みを作ると、
「フフ、皆、うちの愚弟のトーリのことがそんなに聞きたい?聞きたいわよね?だって武蔵の総長兼生徒会長の動向だものね。フフ。―――でも教えないわ!」
ええっ? と皆が疑問の声を作る。すると対する彼女は意味ありげに一つ頷き、
「だって朝八時過ぎに、このベルフローレ・葵が起きたらもういなかったから、しかしあの愚弟、人の朝食作って行かず、朝から早起きとは――あの愚弟、地獄に堕ちるといいわ!」
「あのー、喜美ちゃん。また芸名変えたの?」
「そうよマルゴット。私のことはベルフローレと呼ぶの、いい?」
「三日前はジョセフィーヌじゃなかったかな?」
と襟首掴まれてがくがく揺らされているナイトが視線をそらして言っている。
「あれは三件隣の中村さんが飼い犬に同じ名前をつけたから無しよ!!」
オリオトライは出席簿に黙々とチェックを始める。
「じゃ、トーリは無断遅刻で、ナナシはサボりかな?っと――」
彼女の台詞に、皆が力ない笑いを作った。ま、まあ、という声も聞こえる。
そして対するオリオトライも、そんな皆に対して苦笑で返す。
「まあサボり魔のナナシはともかく、聖連の暫定支配下にある“極東”武蔵の総長はこのくらいじゃなきゃね」
彼女はちょっと辺りを伺うように視線を配ってから、口を開く。
「歴史再現の名のもとに、各国の代表が教導院の学生に姿を変え、極東を分割支配している今、極東の代表には聖連の都合のいい人物。“葵・トーリ”――」
オリオトライは、空を見上げながらゆっくりこう言った。
「彼のように、もっとも能力のない者が選ばれる。しかも“不可能男”なんて字名まで与えてね」
「もう百六十年昔からそうだもんね。本来この神州の大地はすべて僕達極東のものなのに――」
と言葉を投げかけてきたのは、眼鏡をかけた少年だった。“書記 ネシンバラ・トゥーサン”という腕章の彼は、宙に表示していた鳥居型の表示枠を出して、
「ずっと頭下げたり協力したり金払ったりで、この武蔵は極東の中心になろうにも移動ばっかりの権力骨抜きでどうしようもない。 何しろ各国の学生は上限年齢が無制限なのに、極東の学生は十八歳で卒業だし、―――それを越えたら政治も軍事も出来ないんだから」
「極東ではよく言うわね、―――学生は特権階級だ、って」
「聖連所属国の物言いだと、学生じゃないものは人にあらず、ですよね」
ネシンバラの言葉に、皆の中から、おい、という声がいくつか生まれる。中でも一人、“御広敷”という名札をつけた丸い体型の少年が袋菓子を口にしつつ、
「小生、 あまりそういうこと言ってると危険ではないかと―――」
「大丈夫だよ」
ネシンバラが言う。
「あいつら、いちいち僕達の声を拾ってる暇はないさ、なにしろもうすぐ三河圏内だからね。」
「へぇ大人ぶって。でもまあ、そんな感じで面倒で抑え込まれたこの国だけど、君らこれからどうしたいか―――」
その言葉と同時に女教師はわずかに身を低くし、
「――解ってる?」
そして彼女の動きに合わせ、瞬間的に反応した者達を見ると、
「いいねぇ、戦闘技能を持ってるなら、今ので“来〟ないとね。ルールは簡単、事務所にたどり着くまでに先生に攻撃を当てることが出来たら―――」
告げる。
「出席点を五点プラス。意味解る?―――五回サボれるの」
最後の言葉に、皆が表情を変えた。五回という言葉に、皆はひそひそと、
「つまり朝の一限を五回サボれるのか・・・・。だったら―――」
と皆が己の希望を小さく重ねていく中、はい、と手を挙げたのは“第一特務 点蔵・クロスユナイト〟という腕章の少年だ。彼は帽子を目深にかぶったまま、横にいる航空系半竜の“第二特務 キヨナリ・ウルキアガ〟とともに、
「先生、攻撃を“通す〟ではなく“当てる〟でいいので御座るな?」
「戦闘系は細かいわねぇ。――――でもまあ別にそれでいいわよ?手段も構わないわ」
その言葉に、ウルキアガが腕を組む。彼は龍眼で点蔵を見下ろし、
「聞いたか? 女教師が何したっていいと申したぞ点蔵。拙僧、想像力を使用してもいいか?」
「Jud.。しかと聞いた。しかし女教師、オゲ殿のさっきの話以外にも、先日酒場で尻を触られ“そうになった〟とかで居住区画の床を抜く暴動を一人で起こしたで御座るよ」
「フ、点蔵、現実を前にしても想像力は無敵だ。忍びの貴公がそんなことにも気付かぬとはな」
「成程。――では、あの、オリオトライ先生、先生のパーツでどこか触ったり揉んだりしたら減点されるとこあり申すか?」
「または逆にボーナスポイント出るようなとことか」
「あはは、授業始る前に死にたいのはお前ら二人か」
半目で言ったオリオトライは舌をだし、
「――――んじゃ「ちょっと待ったー!!」って!?」
ドォーン!!
オリオトライは後ろに飛ぼうとしたと同時に、空から皆が聞き覚えがある声がし、上を向くと同時に前にいた点蔵とウルキアガの二人の頭が橋と激突し、その上、皆にとってなじみの顔がいた。
「って・・・ナナシ!?」
そこに居たのはクラスの中でも、一番のサボり魔で通っている白髪の青年“ナナシ〟であった。
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「ってどったの皆呆けた顔して?」
周囲を見ると皆が、またか、と言った顔をした。
「・・・ナナシ。あんた一体どこで何して油売っていたのかしら?」
すぐ後ろに気配を感じ、振り向くと、我らが担任リアルアマゾネスことオリオトライ・喜美子がいた。どうみても怒りマークが見える。
「え~っと、屋上で物思いにふけとりました・・・」
「へ~とりあえず、そこ退いておこうか、二人が下敷きになってるわよ」
「へ?」
下に視線を向けると、点蔵とウルキアガの二人が頭を地面に激突していた。
「なにしてんの?二人とも」
そこにいた二人に質問する。周りから、いやお前が踏み台にしてんだよ!!と突っ込まれてる声がするがスル―しよう。
「「なにしてるではないわ!!」御座るよ!!」
踏みつけられた姉好き半竜と、全然忍んでないパシリで金髪巨乳大好きで、告白が断られた数なら武蔵随一のパシリが一気に起き上がった。
「今拙者だけ、無駄に罵倒されたような・・・・」
「気のせいだからな変態パシリのパシ蔵」
「今完全に口に出てたで御座るよ!!完全に悪意で御座るよね!!しかも今自分の名前、完全に変えられてるで御座よ!!何気にひどいで御座るよ、この人!!」
点蔵からめちゃくちゃツッコミがくるがキニシナイ。
「んで、先生授業内容教えてくれ」
「普通にスル―!?」
点蔵が後ろでいじけ始める。それをウッキーが慰めている。
オリオトライがやれやれとため息をする。
「まったく――ナナシアンタ今回ので三回目よ!いい加減にしないとまた厳罰になるわよ」
「そんいや、そんだけなんのか・・・まあきーつけます」
「まあいいわ、適当に誰かに聞きなさい」
「えー」
先生、そりゃないぜ。と言うがあんたがちゃんと出席しないからよ、と一蹴された。
「しゃあない、智教えて」
と近くにいた10年前からの幼馴染の一人で長身の黒髪、左目に緑色の義眼を入れた女性“浅間・智〟に聞いた。よく人を後ろから人をズドンする巫女。
俺も被害が何度かあったりする。
「なにか不本意なこと言われた気がするんだけど・・・」
ジト目でこっちを見る智。何か反応したら射抜かれそうだから視線をそらした。
「は~、ナナシ君。あのね・・「――んじゃ」「は?」」
と、智が説明しようとしたと同時に、オリオトライが後ろに跳んだ。
皆も同時にえ?っと反応した。
橋を下って奥多摩の先端に行く下り階段へと、オリオトライは跳んでいく。
皆反応が一瞬遅れる。この間に攻撃されでもしたら、皆死んでるだろう。
「―――く、追え!!」
一対多の追いかっけこが始まった。
数日中にちゃんとした設定を投稿しようと思います。
ブリーチ設定を取り入れてるので、斬魄刀みたいに、刀の名を言って解放したり、『卍解!!』・・・とか言わせてみたいな・・・(-_-;)
まあそんな設定にすると最強すぎる可能性があるのでしないのですが、それなりに面白い内容に頑張ってしますのでよかったら今後も応援お願いします。
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