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児童ポルノ画像 :拡散止まらず ファイル共有ソフトが温床

 ◇摘発強化も「いたちごっこ」

 個々のパソコンに所有する画像や音楽などをインターネットを通して共有・交換できる「ファイル共有ソフト」を使った児童ポルノ画像の拡散に歯止めがかからない。大手接続業者は昨年4月から児童ポルノサイトへの接続を強制的に遮断(ブロッキング)しているが、ファイル共有ソフトには有効な流通防止策がないからだ。警察はファイル共有ソフトを使った違法行為の摘発を進めるが、利用者は後を絶たず警察との「いたちごっこ」が続いている。【遠藤孝康】

 11年7月5日朝、福岡市内のマンションの一室に福岡県警少年課の捜査員数人が立ち入った。ファイル共有ソフトで児童ポルノ画像をネット上に公開しているパソコンが、この部屋にあることが分かっていた。「なんでうちに」。住人の20代の男は家宅捜索令状に驚いたという。

 男の部屋のパソコンでは捜査員の予想通りファイル共有ソフトが起動中だった。慌ててソフトを閉じようとする男を捜査員が制止して調べた。ソフト内のフォルダーに保存された300本以上のファイルの多くが児童ポルノ画像だった。

 ファイル共有ソフトは無料でダウンロードでき、児童ポルノに関係する言葉を入力して検索すれば、同じソフトを起動させている他人が所持する児童ポルノ画像が入ったファイルが次々に現れる。

 男が使っていたファイル共有ソフトは「カボス」と呼ばれ、ファイル入手と同時に、同じソフトを使う他人もダウンロードできる状態になる。県警は男を児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)容疑で現行犯逮捕した。

 大手接続業者によるブロッキング以降、警察は児童ポルノ愛好者が画像入手手段としてファイル共有ソフトに移行する可能性が高いとみて、全国でファイル共有ソフトを使った児童ポルノ禁止法違反事件の摘発を強化している。11年上半期(1~6月)の摘発件数は141件と前年同期(62件)の2・3倍に上った。

 だが、「援助交際」を通じた児童へのわいせつ行為などで供給される児童ポルノ画像が、ファイル共有ソフトによって拡散する状況は変わらない。福岡県警の捜査員は「こうしたソフトを使って児童ポルノ画像を公開することが違法行為だという認識が、利用者に薄い」と話す。

 有識者ら24人に警察庁などもオブザーバー参加してつくる「児童ポルノ流通防止対策専門委員会」でも、議論の焦点はブロッキングの対象サイトをいかに増やすかで、ファイル共有ソフト対策についての議論は進んでいない。同委員会の事務局を務める一般社団法人「インターネットコンテンツセーフティ協会」(接続業者などで構成)の吉田奨事務局長は「欧米でも同じ状況にあり、業界としてはまずはブロッキングの対象を広げることが先決。ファイル共有ソフトを使った児童ポルノ対策は難しく、捜査当局による検挙にゆだねるしかない」と打ち明ける。

 福岡県警少年課の佐田政博次席は「放置していれば違法な画像はもっと広がる。摘発を進めて流通・拡散防止を図りたい」と話している。

2012年1月7日

 

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