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[31077] 【習作】ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて-【逆行】
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/07 23:38
はじめまして。

読み専だったんですが、ふと思い立って書いてみました。

Arcadiaどころか色々初。

稚拙な文章ですが、ご指摘とか頂けたら幸いです。



12/31初投稿


1/3 ミスって消したしまったですよ・・。

色々感想を頂いた方々、感想が消えてしまいました。
申し訳ありません・・・。



[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第一話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/04 00:52
世界を救った勇者の住む国、グランバニア。



その国の一室でひとつの命が終わりを迎えようとしていた。








「お父さん!!死んじゃ嫌だ!!お父さん!!」

「パパ!!嫌だよパパぁ!!」

「あなた・・・。」



 そこには魔王との戦いで傷付き、決して解けない呪いを掛けられてしまったグランバニア王、リュカとその家族の姿があった。




「そんな顔をしないでくれお前達・・・。僕は幸せだった。父さんと母さんの仇も取れたし、ミルドラースを倒して世界を救うことも出来た・・・。もうこの世界に闇は無い。ゴホッゴホッ・・・お前達二人はもう僕が居なくても立派に生きていける。二人とも、母さんの事を・・・頼んだよ・・・?」

「お父さん?!」


「ボロンゴ、ピエール、いるかい?」


「グルルルル・・・。」
「此処に。」

「二人とはもう10何年も共に旅をしてきたけど、僕の旅はそろそろ終着点みたいだ。先に逝かせてもらうよ?もし生まれ変わってもまた友達になれるといいね・・・。」


「ガオゥ!!」
「我が主はリュカ様のみ!また相見えることを心待ちにしております!」



「それじゃ皆、先に父さんと母さんの処に行く・・・よ・・・。」



「お父さーーーん!!」



 僕の人生、何不自由の無い・・・とは言えないけれど、充実してとても楽しい、すばらしい人生だったと胸を張って言える。
 けれども、もし・・・もしひとつだけ願いが叶うとしたら・・・、もう一度父さんに逢いたかったな・・・。




薄れ行く意識の中で最後にそう思った。




そして意識は途切れた。





そして物語は動き出す。

彼の思いを乗せて。







『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて-』







 ガタン!!

「痛っ!?」

あれ?何だ?何故僕は床に転がっている?

僕は床、隣にはベット。痛いってことはベットから落ちたっていうことかな?

おかしい、僕は確か死んだはずだ。ミルドラースの呪いによって。

何故?なぜ??ナゼ???

辺りを見回してみると見慣れない部屋模様。あと少し揺れてるみたいだ。

何故僕は此処にいる?此処は何処だ??

それよりも何故


僕の背が縮んでいる???



そう一人で自問自答を繰り返していると、そばにあったドアの向こうから


「リュカ!どうした!寝ぼけてベットから落ちたのか?」


と、懐かしい声が聞こえてきた。

間違いではないか?しかし間違えることの無い懐かしい声。




「父・・・さん」



僕の思考はまだ追いつかない。




[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第二話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/04 00:52
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第二話』




頭が働かない。


3秒ほど経ってようやく頭が働きだし、現状を認識する。



「リュカ、大丈夫か?」

ドアを開けて大柄でひげを生やした男性が入ってきた。

忘れるはずもない。どこから見ても生前の父パパスの姿だった。





聞き違えることのない父の声、見違えることの無い父の姿。

リュカは声を振り絞るように問いかけた。

「父・・・さん・・・?間違いない・・・。父さんなんだね・・・?」

「どうしたリュカ?まだ寝ぼけているのか?っと、どうした、泣いてるのか?。
もしかして怖い夢でもみたのか?」

「え・・・?」

リュカはパパスに指摘され自分が涙を流していることに気づく。

「な、なんでもないよ?」

ちょっと恥ずかしそうに、リュカは誤魔化した。

「ふむ?まだ寝ぼけてるみたいだな。外に行って風にでも当たってきたらどうだ?」

パパスに促され、リュカは落ち着くためその指示に従うことにする。

「うん・・・父さん。ちょっと風に当ってくるよ。」

そしてドアを開き、外を見る。












ドアを開けるとそこは海だった。






「そうか・・・。僕のこの体、そして船・・・。そうか、思い出した。ビスタの港へ行く船・・・。父さんとサンタローズへ帰っている時か・・・。」

おぼろげながら記憶の片隅にあった昔の風景を思い浮かべリュカは現状を理解した。

ということはこれからサンタローズの村に向かうことになるだろう。

そしてレヌール城でのお化け退治、妖精の国への協力を経てラインハットへ。



リュカはここで思い至る。

そうか、父さんはこのままだとラインハットで殺される。

誰に?

そう、ゲマにだ。

「殺させない、今度は殺させやしない・・・!」

この刻に戻ったのは偶然なのか?はたまたここは夢の中なのか?
リュカはふとそう考えるが直ぐに考えを改める。

偶然でも夢でも何でもいい。今度こそ僕は父さんを殺させない。僕が殺させない。
その為に僕はここにいる。そう考えることにする。




リュカがそう決意をした時、船乗りが声を荒げた。

「港が見えたぞー。イカリをおろせー!帆をたためー!」

「どやら港に着いたようだな。坊や、下へいってお父さんを呼んできてあげなさい。」

いつの間にか隣に立っていた船長さんらしき人に言われ父さんを呼びに行く。




船室にいくとやはり幻では無いらしく父さんがちゃんとそこにいた。

「父さん、船長さんが港についたって言ったから呼びに来たよ。」

「そうか、港に着いたか!村に戻るのはほぼ2年ぶりだ……。」

パパスのその言葉にサンタローズの村を思い浮かべる。

もう何十年も前になるであろう故郷と呼べる村。

ラインハットの兵に滅ぼされてしまい最早帰ることが出来なかった村。

あののどかな風景、そして優しい村人達の顔を思い出しまた涙が出てくる。



「リュカ、また泣いているのか?お前はいつからそんな泣き虫になったんだ?わっはっは!」

「ほ、ほっといてよ父さん!」

リュカは少し顔を赤くしながらそっぽを向いた。

「まぁ久しぶり、といってもリュカはまだ小さかったから村のことを覚えてはいまい。よし、ではいくかっ!忘れ物をするなよ?」

と言って父さんは先に行ってしまった。

早く追いかけないと、と思ってリュカは急いで支度をした。




そしてふと今の自分の現状を思い出す。

自分には記憶がある。それもミルドラースを倒した先までの。
王になるべくオジロン叔父やサンチョに叩き込まれた知識もある。
そして以前契約した魔法は頭の中に入っている。


体は子供だけど・・・。

頭は問題ない。では体は?

そういえば父さんが港のおじさんと話している時外に出たら魔物に襲われちゃったんだよな・・・。

よし、とりあえず外に出れば魔物が居るってことがから、試しに戦ってみよう。
まずは試してみなければ始まらない。それからどうやって行動していくか決めていこう。





そう方向性を決め、タンスの中にあったやくそうを腰のふくろに入れようとした時、
ふくろの奥でキラッと光るものを見つけた。

「あれ・・・?これって・・・。なんでこれだけあるんだ・・・?」


他のものは何もない。

けれどもその一つが僕の中ではとても、とても重い意味を持つ物。

以前貰った後に加工してネックレスにして肌身離さず持っていた。










母さんからのたった一つの贈り物。そして形見の品。


「賢者の石・・・。」

確証は無い。でもそう思ってしまう。

きっと母さんが僕の想いに手を貸してくれたんじゃないか、と。





[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第三話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/04 00:52
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第三話』




「母・・・さん・・・。」

賢者の石を握りしめ、呟くと、母さんが頑張ってと応援してくれているような気がした。

「必ず、必ず父さんを守るよ・・・母さん!」





僕は賢者の石を首から下げると父が待っている船の甲板へと向かう。

父は船長と会話を続けながら僕を待ってくれていたようだ。

「リュカ!遅いぞまったく。」

「ハッハ、そうは言ってもパパスさん、子供はすぐ周りのものなんかに気を取られるからしょうがないことですよ。」

「むぅ、そうはいってもだなぁ・・・。」

「坊や、ここでお別れだがたまにはこのオジサンのことも思い出してくれよっ?」

「はいっ!」

「ふむ。忘れ物は無いな?タンスの中も調べたか?」

「大丈夫だよ、父さん!」

「よし!じゃあ船長!ずいぶん世話になった・・・。体には気をつけてな!」

そう言ってタラップを歩き港へと足を降ろし振り返る。

「さようならパパスさん、坊や。また会えるのを楽しみにしているよ。」

「あぁ!ではまたな!」


父と船長は付き合いが長かったのだろうか。出航を見送る父の横顔は再会を心から待っている、そんな風に感じられた。



「パパスさん!パパスさんじゃないか!?無事に帰ってきたんだね!」

港の待合室の様な場所から中年の男性が僕らに向かって掛けてきた。

「わっはっはっ。痩せても枯れてもこのパパス、おいそれとは死ぬものか!リュカ。父さんはこの人と話があるのでその辺で遊んでいなさい。あまり遠くへいかないようにな。」



わかったと返事をし、父さんの横をすり抜けるように歩いていく。

目指す場所は港の外。幸い、この近辺の魔物はスライム程度のはず。

今の自分の力量を計るには丁度いいかもしれない。流石にこの時点でスライムに遅れを取るようではゲマを倒すには力不足なことこの上ない。

以前の記憶では5分程度戦闘をしていたら、父さんが助けに来てくれたはずだ。

5分もあればある程度の力量は掴めるはず。そう思い港の外へ足を踏み出した。





予想通り港を出てすぐスライムの群れに遭遇した。

とりあえずまずはちからを見ようと思い素手でスライムに殴りかかる。

が、スライムに当たるもあまりダメージを与えられていない。

「ちからは年相応、ということか・・・。なら。」

次にわざと攻撃に当ってみる。痛い。しかもかなり。

「体力とみのまもりも年相応、ということか・・・。それでも記憶の中にある最初の戦闘よりも痛くはない・・・のかな?しかし、正直不味いな・・・。」

ちからは無い、打たれ強さは少しだけあるというなんという微妙な状態なのだろう。

「これでゲマを倒せるのだろうか・・・。いや、倒せる倒せないじゃない。倒すんだ!」

と、少しというかかなり不安になった思考を振り切り呪文の詠唱を行う。




以前の自分の得意魔法にして最大魔法。

この魔法は覚えている、唱えられると自分の中にある魔力の源たるナニカが言っている。

急がないと父さんが来てしまう。そろそろこの戦いを終わらせよう。

「この魔物達を倒したら、父さんはすごいなって誉めてくれるかな?」

そういえば前は父さんに助けられて表の一人歩きは危険だって怒られたな、と思い出し苦笑が漏れた。

「そろそろ終わらせよう。いくよ、君たちには恨みも無いけど・・・。」

丁度スライム達が集まって呪文の効果範囲に入ってくれた。

そしてすかさず呪文を唱える。



「バギ・・・」

スライムに向かって


「クロス!!!!!」

リュカは叫んだ。













『しかしMPが足りない!!!』








リュカの目の前が真っ暗になった。






[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第四話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/04 00:53
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第四話』



※前回はわかりやすくする関係上、あえてアナウンスでMP切れを知らせました。
 以降はMP切れにアナウンスは入りませんのでご注意ください。





パキィーン




乾いた音が鳴り、その後リュカの周りには静寂が訪れた。



一瞬思考が停止し、視界が真っ暗になったような気がしたがリュカはなんとか止まった頭を動かし目の前のスライムを見つめなおした。

(なんで?!なんで出ない?!以前した契約も残ってるし、詠唱も完璧だったはず!なら・・・なんで??)



リュカはスライムと対峙しつつ混乱した頭の中を整理した。

(そういえば発動の瞬間、パキンって音が聞こえた・・・。あの現象は・・・・・・そうか、MPが切れたことなんてあまりないから忘れてたけど、あれはMPが足りなくて呪文が発動出来なかった時に起きる現象。ということは契約していない状態でなく、単に僕の今の体ではMPが少なすぎて使えない、ってことか・・・?)



この分だと他の呪文もこの状態では使えなさそうだ、と一度現状の考察を止め目の前のスライムを倒すことに考えを向ける。

「そろそろ父さんが来そうだ。流石にスライムの1匹でも倒しておかないと格好がつかないよね。」

そしてリュカは腰に付けた装備をとろうとして、何もないことに気がついた。

「武器が無い?確か部屋に立てかけてあったひのきのぼうを持って・・・あっ!」

そこで思い至った。確かに部屋に武器はあった。タンスのやくそうを取った後に持っていこうと思っていたのだが、賢者の石の事もありすっかり頭から抜け落ちてしまっていたようだ。

「やっちゃった・・・。まぁ、でもの程度の敵なら。」


しかたがないのでそのままスライムに殴りかかる。

いくらちからが弱いと言ってもリュカとて10年以上戦い続けている。以前では、1対1なら素手でもキラーマシンを圧倒できるほどの技量は持ち合わせていた。スライムごときに遅れをとるわけにはいかない。


確かに力はない。体力も無い。でも経験は無くならない。

うまく体重を乗せて放ったただのパンチ。

しかし自分でもいい感触を持った会心の一撃を出せたと思い、殴ったスライムは遠くに弾かれ、動かなくなった。







大丈夫、やれる。と感触を確かめた瞬間

「大丈夫か?!」

とパパスが助けに来た。

(やっぱり父さんが助けに来てくれた・・・。)

パパスはリュカをかばう様にリュカとスライムの間に立ち、スライムを憤怒の表情で見つめる。
「うちの息子を傷付けたのは・・・お前らかぁー!!!!」

近くにあった木が震えるほどの声を出し、スライムが「ピ、ピキーッ!」と怯える

すっかり怯えすくみあがっているスライムにパパスが剣を構える。



一閃



パパスがスライムに剣を向け、一撃を片方のスライムに入れた瞬間返す斬撃でもう片方のスライムに一撃を入れる。一呼吸の間に2撃。一瞬でスライム達は倒されてしまったようだ。





流石父さんだなぁ、とリュカが見惚れていると

「大丈夫か?リュカ。少しけがをしているみたいだな。ホイミ!」

と、父さんが心配そうな声を僕にかけながら、ホイミをしてくれた。

「大丈夫だよ、父さん。父さんが助けてくれたから。」

と、リュカ戦闘でのショックは隠しながらパパスに返事をする。

「まだまだ表での独り歩きはキケンだ。これからは気をつけるんだぞ?」

「わかった、父さん。」

「うん、いい返事だ。では行くとしよう!」

父さんが歩を進めた為、少し後ろをついていくことにした。



父さんに気が向いていたため、スライムの残骸が残る辺りで何かが動いたことに僕は気が付かなかった。







港からサンタローズの村までは確か2日程度の距離だったはず。

その間に幾度か魔物との戦闘を経験したが、やはりどの呪文も発動しない。

スカラも、バギマも、バギも、そしてホイミすらも・・・。

ホイミすら使えなかった事に少しリュカは不安を覚えた。

そうすると、自分のMPは限りなく0に近い。ゲマを倒す為には少し修業をしないといけないなと思ったところで父さんが最後の魔物を倒した。

「大丈夫か?リュカ。少し顔色が悪そうだが?」

「うん、大丈夫だよ父さん。ちょっと疲れただけだから。」

リュカはパパスに気づかれないよう努めて明るく返す。

「そうか、ならいいが・・・。あともう少しだ。頑張れるか?それとも父さんの背中にでもおぶさっていくか?わっはっはっ!」

「と、父さん!僕もうそんな歳じゃないよ!!」

「わっはっはっ!子供は黙って親に甘えていればいいんだ。ほら、乗りなさい。」

少し恥ずかしい気持ちになりながらもパパスの強引さの負けたように背中におぶさる。いや、恥ずかしいから強引さに負けたと思いたいのだろう。

心の中でそうは思っていても父の背中におぶさったリュカは心が温かい何かに包まれたような気がしていた。

「乗ったか?さぁ、それじゃあ行こうか。」

(父さん・・・。父さんの背中だ・・・。やっぱり、こんなに大きい・・・。それに、こんなに安心できる・・・。)

「リュカ、どうした?」

「な、何でもないよ父さん!」

「おかしなリュカだ、わっはっはっ!」

と、父さんの背中に揺られながら山道を進んでいった。






「リュカ、起きろ。リュカ。」

いつの間にか眠っていたらしい。パパスをみると少し傷があった。

「父さん、その傷は?」

「いや、大したことはないぞ。お前があまりに気持ちよさそうに寝ていた様だから起こさないように戦っていたんだ。そうしたら少し攻撃をくらってしまっていた様だ。何、かすり傷だ。気にすることはない。わっはっはっ!」

と、いくらこの辺りの魔物があまり強力ではないと言っても子供を背中に乗せたまま戦う人間が居るのだろうか?

相変わらず父さんはすごいな、と思いリュカはパパスに笑いかける。

「そういえばリュカ、さっきお前の体が少し光っていたからレベルが上がったんじゃないか?」

「本当?村に帰ったら教会の神父さんに聞いてみるね。」

「うむ、そうするといい。さて、先荷を急ごうか。」

「あ、待って父さん。少し試したいことがあるんだ。」

「ん?どうしたリュカ。」




パパスを呼びと止め、手招きすると、心を落ち着け先ほど失敗した呪文を唱える。

「ホイミ」





パパスを淡い光が包み、傷が癒えていった。


(出来た・・・。やっぱり、呪文を忘れたわけじゃない。MPが足りないだけなんだ・・・。)

リュカは自分の考えが正しいことに安堵した。

流石に子供のころと同じままではゲマに挑んでも前回の焼き増しになってしまうだろう。

(あとは修行あるのみ、かな?)

パパスが驚いた様子でリュカに聞いてきた。

「リュカ、お前呪文が使えるのか?」

「うん、前に旅先で遊んでた子のおじいさんが元僧侶の人でね。少し呪文のお話とか簡単な呪文の契約とかしてもらったんだ。ほら、父さんもホイミとか使えるでしょ?多分僕にも使えるかな?って思って。」

「お前という奴は・・・。まったく。」

呆れるように、でも少し嬉しそうにパパスはリュカを見ていた。


「さぁ、あと少しで村に着く。あとはもう歩けるか?」

「うん、父さん。」

いい返事だ、とパパスは言い歩き始める。

そのあとを遅れないようにリュカは追いかける。







そしてサンタローズの村に着いた。



「やや!パパスさんでは!?2年も村を出たままいったいどこに・・・・・・!?」

「うん、久しぶりだな。何、少し探し物の旅に出てきたんだ。」

「ともかく、おかえりなさい!おっと、こうしちゃいられない。みんなに知らせなくっちゃ!」


「おーい!パパスさんが帰ってきたぞーっ!!」


「えっ?!」

「パパスさんが!?」

「本当か!!」



村中から驚きの声が聞こえてくる。

父さんと村を歩いて家まで向かっていると色々な場所で声を掛けられた。


「パパスさん!あんた生きていたんだね!」

「よう!パパス!やっと帰ってきたな!」

「やぁ!本当にパパスさんだ!」

「わーい、パパスさんが帰ってきた!


道行く先で声を掛けられるパパスを見て、やっぱり父さんはみんなに好かれていたんだなと再確認したリュカ。




「旦那様!お帰りなさいませ。このサンチョ、旦那様のお帰りをどれ程待ちわびたでありましょうか・・・。さぁ、どうぞ中へお入りください。」

とサンチョが出迎えてくれた。

(サンチョ・・・若いな・・・。)

と、まったく関係の無いことを考えているリュカ。




中に入ると、何もかもあの頃のまま。年季の入ったテーブルに3人分の椅子。

そしてサンチョ愛用のおなべのふた。

何もかもが変わらない我が家。

そうリュカが懐かしんでいると2階から誰かが下りてくる音が聞こえる。

「サンチョさーん?」

若い、女性の声。若い女性というか、少女の声。この日、この場所で自分が知りうる少女は一人しか、いない。


少女は階段からこちらを見つけると小さく「あっ!」と呟いた。








リュカはこの少女が誰かをもちろん知っている。





レヌール城を一緒に探検し、ボロンゴの名前を付けた名付け親であり







自分の初恋の相手であり







そして






『また会おう』という約束を果たせぬまま病で倒れそのまま二度と会えなくなってしまった少女

ビアンカだ。




※このあたりからかなりオリジナル設定が入ってくる予定です。
 





[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第五話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/04 00:56
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第五話』



「ビアンカ・・・。」

他の人には聞こえないほど小さな声でリュカは呟やき、流れ出てきた涙を気付かれない様に拭いった。


涙を拭ったリュカは、過去の出来事を思い出していた。








ルドマンさんの試験を受け、水のリングを探索している時の事。

ルドマンさんの話では、山奥の村に水門がありその奥の湖に水のリングを祭る洞窟があるという。

話を聞き村に水門を開けてもらおうと向った時、偶然ダンカンさんに再会した。



『ダンカンさん・・・?もしかして、アルカパの町にいた、ダンカンさんですか?』

『確かに私はダンカンだが・・・、失礼ですがどちら様かな?』

昔の恰幅の良かった姿が信じられない程ダンカンさんは痩せ細り、生気の無い顔をしていた。

『リュカです。パパスの息子のリュカです。』

『パパス・・・?もしやサンタローズのパパスさんかね?』

『そうです。お久しぶりです。』

『そうか・・・大きくなって。よく生きていてくれた・・・。よく見るとパパスさんの面影が・・・。』


すると家の外から少し白髪が多い女性がこちらへ向かってきた。

『あんた、どうしたんだい?』

よくみると、ダンカンさんの奥さんだった。奥さんも昔にくらべ覇気の無い声をしていた。

『おぉ、おまえか。いいところに来た。パパスさんとこのリュカが生きていたんだよ。・・・』

『リュカ・・?リュカかい?あんた、大きくなって・・・。』

『おばさんもお久しぶりです。小さい頃はビアンカによくチビとかヘタレとか馬鹿にされてましたけど、背だって大きくなったし呪文もいっぱい使えるようになったんですよ!』

『本当に、立派になって・・・。ビアンカがいたらきっと・・うっ・・・。』

『おばさん・・・?ビアンカがいたら・・・って・・・、どういうことですか?』

『あの子は死んだよ・・・。半年前に病で・・・。』




ビアンカが死んだ。

その言葉を聞いた瞬間、僕の足元は何かが崩れた気がした。

何も考えられなかった。認めたくなかった。

おばさんがビアンカのお墓へ案内するといっても拒否した。

ピエールが今僕がしている事を告げ、水門を開けてもらい

僕は馬車の奥にうずくまったまま洞窟を進み、ピエールたちが水のリングを取ってきてくれるのを眺めていた。

ルドマンさんの屋敷では水のリングを渡した後、結婚はしないとだけ伝えると逃げるようにサラボナの町を飛び出した。



その後ルドマン家とは色々あり、フローラと結婚はしたのだけれどダンカンさんには会いに行かなかった。

会ったら、彼女の死を認めないといけない。でも僕にはそれが出来なかった。

彼女の事は自分の心の奥底に深くしまいこみ、考えないように生きた。

だけどある時、フローラが袋の奥底に捨てられずに仕舞いこみんでいた彼女のリボンを見つけボロンゴに付けてしまった。



『ボロンゴちゃんに付けて上げるね。』

ボロンゴとリボン。その組み合わせを見たとき僕の心は限界を迎えた。

フローラの前でみっともなく泣きだし語りだした僕の話を、フローラは優しく微笑みながら聞いてくれた。

全てを語り終えた時、フローラは立ち上がり今から山奥の村へ向かおうと言った。

僕はどうしても行きたくいと告げると

『一人では辛いのでしょう?でも貴方は私の旦那様。一人で辛ければ二人で行きましょう?』

と僕に手を差し伸べた。

その手を震えるてで掴むと、フローラはそのまま優しく抱きとめ

『貴方が一人で抱え込む必要はないのです。貴方だけで駄目なら、私にもその抱えている辛さを分け与えてください。それが夫婦というものでしょう?』

と、微笑んでいた。



僕らはその後、山奥の村でダンカンさんと再会し、フローラを紹介した後ビアンカのお墓へ向かった。

ビアンカのお墓を見た瞬間、僕は立ちくらみがしたけれど隣のフローラが優しく支えてくれていた。

そして静かに目を閉じフローラとともにお墓へ向きあう。そしてその目を開けた時、僕はようやくビアンカの死を受け入れた。

隣のフローラは僕が目を開けてもまだ目を閉じ、何かを祈るようにしている様だった。

その時、風が吹き抜け

『リュカ!また逢おうね!』

と、僕の耳に聞こえた気がした。










「父さんだけじゃなく、ビアンカにもまた逢えるなんて・・・。」

また生きている彼女に会えるとは思っていなかった。

パパスを救いたかった。

彼の後悔はそれだけだったはず。

しかし、再会した幼馴染の顔を見た瞬間

彼女の死を思い出してしまった。

パパスだけでなく、彼女の事も助けたい。そうリュカが思ったのは必然だろう。




部屋の喧騒をよそにリュカは考える

それはどれだけ過酷な道なのだろうか

時間が足りない そして手も

でも 救いたい 救ってみせる

幼馴染の両親の為にも彼女を

この時代に送ってくれた母の為にも父を






「それでも僕は・・・、救うって決めたんだ!」







物語は進む


リュカを軸に


時代が変わろうとも彼の才能は変わることがない


彼は変える事が出来るのだろうか





既に物語は変わっている


彼がこの地に降り立ったときに






[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第六話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/05 11:21
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第六話』



ビアンカ達との再会を終え皆でサンチョの手料理で食事をした後、彼女達は宿屋に帰って行った。

騒がしかった家が落ち着きを取り戻し、自室に戻ったリュカはベッドに寝そべりながら
これからの事を考えていた。

(まず、今の僕の状態を確認しておこう・・・。身体能力は年相応で呪文の契約は有効なままだけどMPが少なくてまともに使えそうな呪文は無し、か・・・。)

このままで果たしてゲマに届くのだろうか。以前の子供時代の戦いではダメージどころか当てることすらできなかったはずだ。

ただ悲観するほどではない。覚えていないのでなく使えないだけ。

(なら鍛えよう。幸いあと1週間くらい父さんは天空の剣の為に洞窟に籠っているはず。せめてバギクロスを唱えられないようじゃゲマを倒すなんて無理だよね・・・。それより、ビアンカの事はどうしよう・・・。)

一応、心当たりはある。以前グランバニア城の書物庫で偶然読んだ古代の書。
そこに載っていたものさえあればビアンカを助けることが出来るはず。
しかしその書物は数百年前の書物でありそこに記されていたものが本当にあるかどうかはわからない。
しかも場所は現在の地図であればグランバニア山山頂。山の町チゾットから山を下らず逆に頂上へ向かわなければならず、もちろん道が整備されているわけがない険しい道。

それを乗り越えなければならないのだ。

今の自分では恐らく登りきれない道であろう。

以前のビアンカが死んだのが村を訪れる半年前。不測の事態さえなければあと10年以上は大丈夫なはずだ。

それでもビアンカの事を考えるとすぐ探しに行きたい気持ちに駆られたが気分を落ち着かせる。



まずは父さんの事。父さんを助ける為に僕はここにいる。

一度ビアンカの件は心に仕舞いこみ、今後の方針を定める。

まず力をつける事。ゲマにも負けない力を。

その為にも鍛錬を積まなければならない。つまり戦わなければいけないということ。

時間は余りない。そうと思い洞窟へと出かけることを決める。

「とりあえず、今日は疲れたからもう眠ってしまおう・・・。子供の体だからかな?この時間でももう眠いや・・・。」

これからの事を思いながらリュカは静かに眠りに落ちた。







翌朝起きると隣で寝ていたパパスは既に起きている様でベッドの上には折りたたまれた服だけが置いてあった。


「今日はどうしようかな・・・?」

今日の行動を考える。とはいえ、鍛錬を行うことにしたのだから必然的に村奥の洞窟に向かうことになるだろう。

「幸い村の洞窟には強い敵はいないから、この体に慣れるのにも丁度いいかな?」

そう言い、準備をしながらリュカは自分のベッドの横に立てかけてある古びた剣に目を向ける。

昨日父さんにもらった銅の剣。船にひのきの棒を忘れてきたしまった事を伝えたら、家に着いた時に「昔使っていた剣だ」と僕にくれた物だ。

手に取ってみると、ずしりと重い感触が伝わり古くから使っていた物にも関わらず刃こぼれひとつないきれいな剣。
ただ、よく見てみると通常の銅の剣より短くそして薄くなっている。

きっと毎日大事に手入れをしてきたであろうその剣を構え振ってみた。

短くなったことにより扱いやすくはなっているが、まだ自分の力では剣に振り回されてしまうであろうと感じるくらい重い。



まだ素手で殴ったほうがいいのではないかと考えながら素振りをしていると急に部屋のドアが開き

「坊ちゃんぼっちゃあああああああぶない!?」

サンチョが入ってきた。剣を振っている時に急に入ってきたものだから危うくサンチョを斬ってしまうところだったが、寸前でサンチョが飛びのき被害は出なかった。

「坊ちゃん!部屋の中で素振りをしないで下さい!当たったらどうするんですか!!」

危うく斬られかけたサンチョは少し顔を青くしながら僕を責めてきた。

「ごめんサンチョ。今度から気をつけるよ。・・・惜しかったなぁ。」

「坊ちゃん!?」

「はは、サンチョ。冗談だってば。それで、どうかしたの?」

と、サンチョをからかいつつ用事を聞いてみる。

「旦那様が先程お出かけになられたので、坊ちゃんはどうするかと思いまして。」

はやいな、父さんはもう出かけたのか・・・。そういえば以前も村に帰って早々と出かけていた気がする・・。

「僕も久しぶりに村に帰ってきたから色々見て回ってくる。夕飯までには帰るよ。」

村、というか洞窟の中を色々見て回るつもりだけどね。

「わかりました。では気をつけていってらっしゃい。あと、危ないので洞窟には近づいては駄目ですよ?」

そう言われても行くしかないのだけれど、心配を掛けないように返事だけは元気にしておく。

「わかった!それじゃいってくるね、サンチョ!」

背中に剣を背負いサンチョに悪いと思いつつ家を出て洞窟へ向かった。




洞窟へ向かう途中、教会の前を通りかかった時にリュカは思い出した。

「そうだ、一度教会へ行かないと・・・。今のレベルの確認をしておかなくちゃ。」

そのまま教会へと歩を向け、中へと入った。




教会の中へ入ったリュカは神父と話そうとさらに奥へと進んだ。

しかし、外出中なのか神父はおらず代わりに礼拝堂には白い子猫が一匹鎮座していた。

「神父様は留守かな?・・・猫しかいないし、猫に聞いてもわからないよね。仕方ない、出直そう。」

そのまま来た方向へ向きなおし帰ろうと思った時、後ろで「にゃぁ」と鳴き声がした。



振り返ると先程の子猫がこちらを見ている。

「どうしたの?もしかして君、僕のレベルがわかるの?」

と、軽い気持ちで聞いてみた。猫は人間の言葉はわからない。だから冗談のつもりだったが、子猫は「にゃぁ」と返事とも取れる鳴き声をし、こちらに向かってテクテクと歩いてきた。

「そうかい、じゃあ僕のレベルを教えてくれるかい?」

リュカは苦笑しつつ子猫へとしゃべりかけた。

「にゃぁ、にゃぁ。」

子猫は2回鳴いた。つまり、今の自分のレベルは2ということだろうか?

「僕のレベルは2ってことかな?」

と、リュカが聞くと子猫は「にゃぁ」と肯定とも取れる鳴き声で返してきた。

リュカはその子猫のレベル判定をあまり信用していない。本来であれば洗礼を受けた神父が神に祈り問いかけ、初めてわかることなのだ。

少し不思議なこの子猫の事が気になり観察していたが、リュカの足にすり寄ってくるくらいで別に何かおかしいところがあるわけではなさそうだった。



リュカは神父が戻ってくる気配がない事を感じ、教会から出ようとする。

すると子猫はリュカのマントに爪を立てて肩まで登ってきた。

リュカは子猫を降ろそうかと考えたが、持ち上げようとしてみると爪を立ててリュカの肩から離れようとしなかった。

「仕方がない、君も一緒に来るかい?」

リュカが聞くと子猫は「にゃぁ」と返事をした。

案外人間の言葉がわかっているのかな?とリュカは考えた。

冷静に考えてみれば魔物ですら人間の言葉がわかり、理解するのだから子猫が人の言葉を理解できても不思議じゃないな、と思うことにした。

そのまま一人と一匹は教会を出て洞窟へと向かっていった。




洞窟の入り口に着くと近くで素振りをしていたおじさんが

「坊主、この先は洞窟だ。迷子になるかもしれないし、危険な目に遭うかもしれない。だから入っちゃだめだよ。わかったかい?」

と言ってきたので、「わかりました。」と返事をし、注意がこちらから離れ視線を外した瞬間に洞窟へと入った。





洞窟に入ると、僕は肩に乗っていた子猫を地面へと降ろした。

もう置いて行かれることがないと分かったのか、子猫はあっさりと肩から地面へと降ろされる。

「本当に、君は賢いな。」

およそ猫らしからぬ賢さをもった子猫を見てリュカは微笑む。

ただリュカの微笑みはすぐに中断された。

敵が現れたのだ。






スライム2匹ととげぼうず1匹。

(とりあえず、数をこなさないとな・・・)

まずは慣らし。パパスから貰った剣を構え魔物と対峙すると、スライムに標的を定めリュカは斬りかかった。

銅の剣を持ったため、先日の戦闘に比べ若干すばやさが落ちてしまっている気がするがまずは構わず以前の感覚で上段に剣を構え振り降ろしてみる。

以前の感覚だと大振になってしまうのかあっさりとスライムに避けられた。

その後スライムの反撃に会うが、正面から来た敵を軽くいなす。

「やっぱり当らない、か。」

こちらの攻撃が当らない。もちろん、あちらの攻撃も当たってないが。

「うーん、やっぱり戦い方を変えるしかないか・・・。」

そう言いリュカは切っ先を少し下に向け突進する。所謂突き。こちらであればそこまで腕力が無くても大丈夫であろう。

元々断ち切ることを前提にしている剣だが、厚みが薄くなっている為突きでも十分に刺す事が出来そうだ。

そのままスライムに剣を突きたて、攻撃を受けたスライムが弾けた。

続いて2体目のスライムにも剣を突き刺した。2体目のそれも簡単に弾け辺りに残骸が散らばった。

残ったとげぼうずに向きなおし、リュカはある事を試す。

詠唱を始め周りで砂埃が巻き上がる。

(うん、今度は大丈夫・・・。)

リュカは目標を見定め最後の言葉を紡いだ。


「バギ!」


詠唱を終えたリュカの掌から無数の風の刃がとげぼうずに向かって飛び出した。

とげぼうずは回避する間もなく風の刃に蹂躙され絶命した。


(うん・・・やっぱりバギくらいまでなら使える。だけど、今のバギ1回でもうMPが無くなったみたいだ・・・。当分バギクロスとかの高Lv呪文は使えそうにないな・・・。)


とげぼうずの周りから風が止むとリュカは少し体が温かくなるのを感じた。

みると自分の体が薄く光っている。どうやらレベルアップしたようだ。

「これでようやくLv3かな?」

剣を背中に背負いなおし離れていた子猫を迎えに行く。

子猫を拾い上げ顔の前まで持ち上げるとリュカは試しに子猫に問いかけた。

「ねえ、今の僕のレベルはいくつなのかな?」

子猫は「にゃあ、にゃあ、にゃあ」と3回鳴いた。

先程より回数が増えている。本当にレベルがわかっているみたいだ。

「ありがとう、それじゃもう少しだけ手伝ってくれるかな?」

子猫に問いかけると「にゃあ!」と元気よく鳴いた。

「よし、じゃあもう少し奥まで行こうか。」

リュカは子猫と共に洞窟の奥へと進んだ。




洞窟に入ってからどれくらい時間が経っただろう。お昼前に洞窟に入ったはずだからそろそろ夕飯の時間くらいだろうか?
地下2階の通路を歩いていたリュカはサンチョとの約束もあり少し時間が気になった。

そろそろおなかもすいてきたので家に帰ろうと相手にしていたおおきづちに剣を突きたてた。

おおきづちから剣を引き抜くとおおきづちは倒れこみ立ち上がらなくなった。

「さて、これで・・・あ、レベル上がったみたいだ。」

今日5度目のレベルアップ。子猫に確認してもらったら7回鳴いてくれた。

「切りもいいところだしそろそろ戻ろうか。」

リュカが話すと子猫も同意の鳴き声をあげてくれた。

念の為、以前ダンカンさんの薬の為に洞窟に来ていた親方が居ないか確かめ、いないようなのでそのまま戻ろうと階段の方へ歩を進めようとした時、通路の奥から話し声が聞こえた。






通路の先に行ってみると2匹のスライムがおり、こちらに気がついたのかリュカの方へ寄ってきた。

「こんなところにニンゲンがいる!いじめないで!ボク悪いスライムじゃないよ!」

と片方のスライムが叫んだ。

普通の人間であればスライムが喋れば驚いて逃げ出すか、人語を喋るスライムとして見世物小屋にでも売りつけるか。もしくは今このスライムが言っていた様にいじめる、ないしは殺す、という選択肢かもしれないが今スライムと話しているのはリュカである。

「ごめんね、驚かせたかな?驚かせるつもりはなかったんだ。」

「ねえねえ、君は僕が怖くないの?ニンゲンは僕が喋るとみんな逃げ出したりするんだけど・・・。」

「別に、特には。それに僕の仲間には人間の言葉を喋れる魔物が一杯いた・・・からね。今更スライムが喋ったくらいじゃ驚かないよ。」

以前の仲間たちを思い出し少し寂しくなったが努めて明るく振る舞った。

「そうなんだ。よかった・・・。またいじめられるのかと思ったよ。」

「あはは、そんなことはしないから安心してね。」

リュカがそのスライムと話をしていると「あの・・・。」と遠慮がちな声が聞こえ、もう一匹のスライムがこちらを見ていた。

「どうしたんだい?大丈夫、君もいじめないから。」

「ううん、そうじゃないの。聞きたいことがあるんだ。」

スライムから質問されると思ってもいなかったのでリュカは興味が湧き続きを聞いてみることにした。



「あの、君って2日くらい前に港の近くにいなかった?」

「うん、いたよ。港に船で戻ってきたばかりだったんだ。」

「その時にスライムと闘ったりしなかった?」

「うん、スライム3匹と戦った。僕が倒せたのは一匹だけだったけどね。」

スライムはリュカの返答に「そうか、やっぱり・・・。」と呟いた。

「それがどうかしたのかい?」

スライムは少し地面に俯いていたが顔?を上げまっすぐに僕の目を見てきた。

「あの時君に倒されたスライムは僕なんだ。剣とかじゃなかったから、無事だったみたい。それでね、僕を倒した君にお願いがあるんだ。」

スライムからのお願い。意外な申し出にリュカはお願いを聞いてみることにした。






「僕の名前はスラリン。君と戦ったあとから君の事が僕の中から離れないんだ。僕は見ての通りスライム・・・魔物だけど、僕と友達になってくれないかな?」




[> はい
   いいえ






※戦闘の描写が・・・できな・・・い・・・



[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第七話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/06 23:14
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第七話』





リュカはスライムの言葉に少し驚いた。

驚いた理由は二つある。

一つ目はスライムの名前がスラリンだったこと。スラリンは以前の旅でも彼の仲間になってくれた魔物だ。

オラクルベリーでモンスターじいさんと話をして
「お主は不思議な目をしている。きっとお主なら魔物と心を通わせることができるはず。」
と言われた後、サンタローズの村の近くで出会った魔物として最初の仲間。

よくスライムを見るとうっすらと傷がある。
そういえば以前のスラリンも目元に傷があったはずだ。
恐らく、僕と旅したスラリンと同一スライムに違いはないだろう。


二つ目は今、このタイミングで友達になってほしいと言われたことだ。

以前は幼少時代にモンスターと心を通わせる事は出来なかった。
ボロンゴは例外だがそれでも彼以外は僕に近付いてくる魔物はいなかった。

「どうして・・・どうして僕と友達になりたいんだい?」

リュカは尋ねる。そしてスラリンは返す。

「何かね、ボクにもよく解らないけど・・・。君を見て、君と戦って、ボクの中が懐かしい気持ちでいっぱいになったんだ。なんでだろう?君とはあの時が初めてのはずなのに・・・君はなんでか知ってる?」




「うーん・・・・そうだねぇ・・・。」

リュカはスラリンの言葉に考え込む。

彼が言っていた友達になりたいという言葉。
出来るのならば僕も彼と友達になりたいと思う。
以前の彼との冒険は楽しいものだったし、能天気そうに見えて実はすごく負けず嫌いだということも知っている。

「ごめん、僕にもわからない。君とは初めて有ったはずだから。」

とりあえず以前の事は黙っておく事にした。

「でも、僕も君とは初めて会った気がしないよ。君は僕と友達になりたいって言うけど、僕はもうすぐこの村から出て行ってしまうかもしれない。もし村から出たらしばらく、もしかしたら長い間君と会うことは出来なくなると思う。それでもいい?」

「そうしたら、ボクも君に着いて一緒に行くよ!こう見えてもボク、しっかり者なんだ♪戦闘中は役立たずかもしれないけど・・・。」

それも知っている。

色々と無駄遣いをする僕やヘンリーを嗜めたり、お肉をねだるボロンゴを叱ったりいつも馬車の奥で居眠りをしていたガンドフに毛布を掛けてあげたり。

確かに戦闘にはあまり目立った活躍はしていなかったが、一番の古株ということで兄貴分としてみんなの世話をしてくれたし、僕の手助けもしてくれたかけがえのない仲間だ。

だからこそ僕は








「そうか・・・。なら、君とは友達になれない。ごめんね。」





そのお願いを断った。







「え?!な、なんでさ?」

スラリンが慌てて僕に問いただす。

「ごめん、スラリン・・・。僕の旅に君は連れて行けない。旅には危険が付いて回し、最悪死ぬことだってあるんだ。そんな旅に連れていくことは出来ないよ。」

「そ、そんな・・・。」

本当は付いてきて欲しい。スラリンが居たことで僕らがどれだけ楽しい旅を続けられたか。

でも僕はその考えは追い出した。





スラリン・・・。

『リュカ、下がって!ボクが行く!!』

『スラリン、君じゃ危ない!僕とピエールで切り込むから、下がって補助を!』

『わかったよリュカ、もう、本当に僕の事信用してないんだから!』

『適材適所だよ、ほら、君は下がって補助を!』

『はいはい、わかったよ~だ。』



彼との旅を思い出す。



そして彼の最期を思い出す。

『このままじゃ逃げ切れない!リュカ、先に行って!ボクはここで奴らを引き付ける!』

『くっ、引くんだスラリン!僕が代わりに!』

『大丈夫、リュカ。スクルト!ボクでもやれるってところ、見せてあげるから!だから先にぃっ?!』

『スラリン?!』

『っつー・・もうみんなまともに動けない!だからボクがやるんだ!!くっ、それにっ!ボクにだって囮になる事くらいできる!だから、早く皆を連れて!』

『スラリン・・・!!ごめん、必ず戻るから!』

『うん、リュカ。また会おうね!!』


僕らを逃がす為に殿を務めたスラリン。体制を立て直して僕らが戻ってきたときにはもう彼と魔物達の姿はなく、残っていたのは青い、青い水溜りだけだった。



(ここで彼を連れていくと、また同じことが起こるかもしれない。二度も彼を身代わりにしたくない・・・。)

リュカはそう考えスラリンの申し出を断った。

「なら、一緒に行くのは無理でも友達になるっていうのだけでもダメ?もしここが君の故郷なら戻って来るよね?それならボクは君が戻ってくるまでこの洞窟で待ってる。君が帰ってきたらここに来てくれればボク達はまた会える。それでも、ダメかな?」

スラリンは少し寂しそうに言った。

「そうだね・・・。それでも君はやっぱり元の・・・うわっ?!」

スラリンへ言葉を掛けていると肩に乗っていた子猫が急に僕から飛び降り、スラリンの背中?に飛び乗った。

「にゃー」

スラリンが「う、うわわぁっ?!」と驚いたが子猫はスラリンの頭のツノ?の周りに器用に手を回しスライムネコになった。

スラリンの上が気にいったのか、猫は少し嬉しそうな顔をしながら「にゃーにゃー」と鳴いている。下にいるスラリンはどうしようかと少しうろたえ気味になっていた。

「ふふ・・・あっはっは!!」

リュカは可笑しくなって笑いだした。うん、やっぱりスラリンはスラリンだ。ちょっと抜けてるところもそのままだし。それに、やっぱり僕はスラリンが好きなんだ。友達の誘い、断れないよね?

「はは、そうだね。君はここにいる。僕はここに来る。そして会ったら、一緒に遊ぼう。子猫も君を気にいった様だしね?」

「いいの?」

「うん、でも僕の旅には連れて行けない。それでも、いいかい?」

「うん、しょうがないけど我慢する。よろしくね!そういえばキミの名前はなんていうの?まだボク君の名前を聞いて無かったよ。」

あぁ、そういえば。とリュカは自分の名前を告げていないことに気付いた。

「僕の名前はリュカ。こっちの子猫は・・・そういえば知らないや。」

ついでに子猫の名前も知らないことに気付いた。

「あはは、何それ?さっきも言ったけど、ボクの名前はスラリン。よろしくね、リュカ!」

「こちらこそよろしく、スラリン。」

と、手がないので頭を撫でてあげるとスラリンは少しくすぐったそうな顔をした。

「君は明日もここに来るの?」

「うん、僕は多分明日もここに来るよ。それじゃまた明日、だね。」

「うん、また明日!」

「にゃー!」

子猫も交えて再会を誓う。



「あのー・・・。」

すっかり話に置いてかれてしまったスライム君はぼっちで少しさみしかった。





「坊ちゃん!もう夕飯の時間は過ぎてますよ!何処に行ってたんですか!」

日が暮れ、周りが真っ暗になった頃リュカは家に帰り着いた。帰り着くなりサンチョの怒った顔で迎えられ、僕は夕飯抜きにされたらどうしようか、とそんな事を考えていた。

「あれほど夕飯前にはと言ったのに・・・。あれ坊ちゃん、その子猫はどうしたんですか?」

サンチョ僕の肩に乗っている子猫にようやく気がついたようだ。

「実はね、教会に行ったとき礼拝堂で懐かれたみたいなんだけど神父様に聞いたら教会の飼い猫じゃないらしくて、丁度3日前くらいに礼拝堂に居着いたんだって。それで神父様も困ってた所に僕が懐かれたらしく、飼ってあげられないかってお願いされたんだ。」

ちなみに神父様に今のレベルを確認してもらったら、レベル7だって言われた。もしかしたら本当にこの子猫はレベルがわかるのかもしれない。

「うーん、飼うですか・・・。それは旦那様に聞いてみないといけませんね・・・。」

サンチョは父さんに相談しないと、と言った。




早速2階に上がり父さんにお願いをしてみる。

「父さん、この子猫飼ってもいい?」

「何?リュカ、お前に世話が出来るのか?もし自信が無いなら飼ってはダメだ。父さんやサンチョは世話はしないぞ?」

「大丈夫、父さん。絶対に僕が世話をするから。いいでしょ?」

父さんは悩んだようだったが、飼う許可をくれた。

「必ず自分で世話をするんだぞ。わかったな?」

「はい!」「にゃー」

子猫も元気よく返事をしたようだ。




「それで、名前はなんていうんだ?」

父さんから言われ、まだ名前が無いことを思い出した。

「名前はこれから付けようと思って。父さん、いい名前ない?」

と、父さんに聞いてみる。

「そうだなぁ・・・。」

父さんは少し考え、候補を挙げた。

「トンヌラなんて・・・。」

「ダメ。」「にゃっ」

と、僕ら二人に即ダメ出しされ

「そうか・・・父さんの付ける名前じゃダメか・・・。」

と、少しいじけてしまったようだ。

気を取り直して名前を考える。



確かこの子はメスだったはず。それならば

「プックル・・・。モモ・・・。チロル・・・。」

以前ビアンカがボロンゴの名前を付けるときに挙げた候補を呟いてみると「にゃん」と子猫が反応した。

「プックル?」反応無し

「モモ?」反応無し

「チロル?」「にゃん」

「チロルがいいのい?」「にゃー」

と、チロルに反応を示した。

「そうか、それじゃ君の名前はチロル。よろしくね、チロル!」

「にゃー」

「やっぱりトンヌラのほうが・・・。」

「父さんは黙ってて!(にゃー!)」

「むぅ・・・。すまん・・・。」




こうして我が家に子猫が一匹、やってきた。




※段々と厳しくなってきました・・・。



[31077] ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第八話
Name: 恭◆e803ccf5 ID:774f8010
Date: 2012/01/07 23:40
『ドラゴンクエストⅤ -刻を越えて- 第八話』



皆が寝静まった真夜中、リュカはベッドから静かに起き上がった。

隣のベッドでパパスが熟睡しているのを確認し、着替える。

そろりそろりと階段を下り、サンチョが居ないことを確認して家を出た。




村の夜は早い。闇に覆われたこの時間に、外を歩いている人はまったく居ない。

その暗闇の中をリュカは歩く。

洞窟の辺りまで来て誰も居ないことを確認しリュカは一息ついた。

「流石にこの時間には誰も居ないか。居てもらっても困るんだけど・・・。さてっと。」

確認しようと思っていた呪文がある。流石に目立つ呪文なので人が居ないところで試さなければいけなかったのでこんな夜中になってしまった。

この呪文が使えればこれからの幅がかなり広げられる。

そしてリュカは呪文を唱え始めた。

「・・・目的地はアルカパにするか。」

詠唱を終え、アルカパの町を頭に思い浮かべる。


「ルーラ!!」




リュカの周りを光が包みはじめる。光は強くなりリュカが目を開けていられなくなるほど強い光を放った。

足元に浮遊感を覚え、そのまま空高く浮き上がり何かに引かれリュカは動き出す。

夜の空をリュカが飛ぶ。山を越え、草原を超えリュカが飛ぶ。

そして、リュカの体は下へと引っ張られ始め、無事にアルカパの町の前に着地した。


「成功した・・・。」

リュカはルーラが成功したことに安堵した。

ルーラが使えることによって、自分に行けない場所は無い。

これでグランバニアであろうが、サラボナであろうが、エルヘブンであろうが、きっと魔界のジャハンナまでもいけるであろう。



その時リュカはふと母の故郷に行ってみようと思い立った。

「久しぶりに母さんの故郷に行ってみようかな。」

呪文の詠唱をしつつエルヘブンの町を思い浮かべ詠唱を終える。

「ルーラ!!」



またリュカの周りを光が包んだ。

そして浮遊感が訪れる。

浮き上がり、リュカの体を上空へと押し上げた後












リュカの体はまた元の場所へと落ちた。



「な、なんで?」

リュカは困惑した。ルーラは正常に唱えれたはず。それなのにまたアルカパの町の前に自分はいる。

なぜ?

リュカは考え、一つの可能性に行きついた。

断定は出来ない。しかしこれならば、説明がつく。

「とりあえず、今日はもう家に戻ろう。」

感覚的には恐らくもうMPが足りなくルーラは使えないはず。なら試すのはまた明日にしなければ。

リュカは思い懐からキメラのつばさを取り出す。

「サンタローズの村へ。」


そしてキメラのつばさを放り投げた。






村の前まで着き、門番が居ることを確認して武器屋の裏から回り込んで家まで帰りパパスが寝ているのを確認してリュカはベッドに横になった。

今日のアレは一体なんだったのか。恐らくそうであろう理由に当りをつけリュカの意識は睡魔の海に潜っていった。





次の日も昼間はチロル・スラリンと一緒にレベル上げをし、夜まで時間を待っていた。

そして今夜もまた一人洞窟の前までやってきた。

「昨日はアルカパには行けたから・・・。今日はラインハットにいってみよう。」

そう考え詠唱を始める。

そしてラインハットの城下町を思い浮かべ呪文を唱える。



「ルーラ!!」






目を開けるとそこはラインハットの城下町だった。

成功した。大丈夫だとは思っていたが、リュカは安堵した。

問題は次の場所。

次はグランバニアにしよう。

そう決め、詠唱を始める。

町を思い浮かべ、呪文を唱えた。





そして目を開けると予想通りそこは








ラインハットだった。



ここでリュカは一つの結論に達した。

「やっぱり・・・。僕が知っている町は全部、10年以上も先の未来の町なんだ。今の街並みを知らないから・・・。だから飛べないのか・・・?」

恐らく、当っているだろう。

ルーラは以前行ったことのある場所へ飛ぶ呪文。

この時代のリュカはラインハット、アルカパ、サンタローズ以外に行ったことが無く、今の時代のグランバニアやエルヘブンにはもちろん行ったことが無い。

以前の旅では行ったことはあるが、それは今から10年や20年もあとの話だ。

きっと今の街並みとは違うのであろう。

リュカはルーラで飛べない理由をそうリ結論付けた。


困った、どうしようか。リュカは考える。

ルーラを当てに考えていたことがかなりある。

最悪、父さんを連れて一度ルーラでグランバニアに戻る事も考えていたし、ビアンカの為に考えていた古文書に記載されている物の探索も出来ない。

「どうしよう・・・。」

リュカは悩んだが、すぐ思考を切り替えた。
出来ないものは出来ない。無い物ねだりをしても変わらない。

だから出来ることをしよう。




次の日もリュカは洞窟へ行った。

朝から晩まで魔物と戦い、ようやくレベルは10に達した様だった。

そして家に帰り、その日の夜は外出をしなかった。もう検証は済んだし、あとは己の力を磨くのみ。




そして次の日の朝、薬草を取りに行った親方がまだ戻ってきていない事を耳にした。



昨日の昼、僕があそこにいるときには親方はいなかった。ということは夕方から夜にかけて洞窟に向かったのだろう。

リュカは親方を探しに独津へ向かった。

そして3階まで行くとやはり親方はそこにいた。石の下敷きになって。


そして、やっぱり寝ていた。



親方の石をどかしてお礼をされ、親方はすぐに洞窟の外へ向かった。

「そろそろアルカパの町へ行く事になるのか・・・。」

リュカは洞窟の奥へ足を向けた。



「リュカ、おはよう!」

スラリンが元気よく挨拶をしてきた。

「おはよう、スラリン。」

リュカもスラリンへ挨拶をし返す。

「スラリン。あのね、これから僕はちょっと村の外へ出かけて来るんだ。多分、1週間くらいで帰ってこれるとは思うけど・・・。」

「そうなんだ・・・。さみしくなるなぁ・・・。でも1週間で戻ってくるんでしょう?」

「うん、それくらいで戻ると思うよ。だから、それまで待っててくれるかな?」

「うん、ボクたち友達でしょ?友達の帰りはいつまでも待てるよ!」

スラリンがニコっとリュカへ笑った。

リュカもスラリンへ笑い返した。

「それじゃ、行ってくるね!」

「うん、行ってらっしゃい!またね!」

二人はまた会おう、と再会を約束した。





そしてリュカは家に帰り、少し早目の睡眠を取った。


次の日の朝、リュカが1階へ降りるとパパスやおかみさん、サンチョ、ビアンカと皆が勢揃いしていた。




「おきてきたか、リュカ。親方が無事戻って薬が手に入ったのでおかみさんとビアンカ今日帰ってしまうらしい。しかし女二人では何かと危ない。二人をアルカパまで送ろうと思うんだが、お前も付いてくるか?」

「ビアンカ、もう帰るの?」

わかってはいたが、僕は聞いてみた。

「うん、お父さんの病気をすぐにでも直してあげたいからね。」

ビアンカはお父さんが心配なのか、早く町に帰りたそうにしてた。

父さんは付いてくるか、と聞いたが多分僕を連れていくつもりなのであろう。もうすでに僕の旅の支度がしてある。

断るつもりもないので、「もちろん行くよ。」と返事をしておいた。

「よし、そうと決まったら早速出かけることにしよう!」

父さんは、旅支度を済ませた僕の荷物を渡し家を出ようとする。

その時、2階からチロルがおりてきた。そのままサンチョの前を通り過ぎ僕の肩へと飛び乗る。

「お前もいくかい?」と聞くと「にゃあ」と返してくる。

それを見たビアンカが隣で「可愛い!!可愛い!!」と言っていた。

チロルは僕の肩からビアンカの方へ飛び移ると、ビアンカの顔に頬ずりをし始めた。

「きゃあ、くすぐったい!やめてよー。」

そういいつつビアンカの顔には笑顔が溢れている。

「この子の名前なんて言うの?この前まではいなかったわよね?」

「チロルっていうんだ。この前教会で懐かれて、そのまま飼い始めたんだ。」

「ふーん、君チロルっていうんだ。いい名前だね♪」

ビアンカはチロルが気にいったのか、肩に乗ったままのチロルを優しく撫でている。

そこへ「なぁ、リュカ。」と、父さんが声を掛けてきた?

「父さん、どうしたの?」

「やっぱりそいつの名前はトンヌラが・・・「父さん(おじさま)は黙ってて!!(にゃあ!)」そうか、すまん・・・。」

父さんはどうあってもトンヌラと呼びたいようだ。






村を出て少し経つとグリーンワームとおおねずみの群れに出くわした。ビアンカとおかみさんを後方へ下がらせ僕と父さんが前へ出る。

「リュカ、大丈夫か?」

恐らく僕が初めて会ったであろう魔物を相手に大丈夫かと父さんが聞いてくる。

「大丈夫だよ、父さん。これでも僕、少しは強くなったんだよ?」

と強気で返してみる。

「みててよ。・・・・バギ!!」

僕の手から無数の風の刃が飛び出す。風の刃はおおねずみに向かって飛び、おおねずみにダメージを与えていく。

「ほう・・・。リュカ、やるようになったな。どれ、私も負けてられないなっ!」

と、父さんは言葉を言い終わった瞬間グリーンワームを一撃で倒した。

流石父さんだ、と考えているとこちらのおおねずみも風の刃に耐え切れなくなったのか、倒れ動かなくなった。

「父さん、こっちは終わったよ。」

「そうか。ふむ・・・、リュカ。お前いつの間にそんな腕を上げたんだ?」

父さんが感心してくれたので

「えへへ、父さんにヒミツでチロルと特訓したんだよ!」

と、僕は少し子供っぽい言葉で返した。

心の中では「まだ本気じゃないけどね。」と思ってはいたが。

「さて、まだまだ先は長い。道を急ごう。」

「うん!」


(やっぱり父さんと並んで旅をするのは楽しいな・・・。)

僕らの後ろでおかみさんとビアンカも僕と父さんのやり取りを見て優しい笑みを浮かべていた。






もうすぐアルカパの町に着く。



リュカは思う、親友の事を。

永き刻を共に過ごした親友の事を。





※まだアルカパにすら着いていないんだ・・・。やっぱり書くのは難しいと思います。

スクエニ板に行こうか迷ってます。行ってもすぐ帰ってきそうではありますが・・。


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