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番組バックナンバー
目次 > 2011年7月4日放送の番組バックナンバー


核のゴミ抱える村 青森・六ヶ所村の現実

青森県には使用済み核燃料の再処理施設など建設中のものも含め原子力施設が4つもあります。
日本の原子力発電を支える青森の人々が福島の原発事故をどう見ているのか取材しました。

青森県六ケ所村。
日本でただひとつの使用済み核燃料の再処理工場があります。


 

 

全国の原発で出た使用済み核燃料はそれぞれ敷地内のプールで冷やされた後、六ケ所村のプールに移されます。
核燃料は使った後、水で冷やし続けなければなりません。
福島第一原発では電源喪失でプールを冷やせなくなり、決死の給水活動を余儀なくされました。

 

【記者リポート】
「日本中の原子力発電所で出てくる使用済み核燃料はすべてこの港に運ばれてきます。関西の電力供給に使われたものも年に6回運ばれます。そして隣接する再処理工場に持ち込まれるのです」


使用済み核燃料は、「死の灰」と呼ばれる核分裂生成物を含んでいます。
1トン分の使用済み核燃料に近づくと20秒で即死します。
このため鉛で遮蔽した容器に入れられ厳重に扱われます。
六ケ所村の使用済み核燃料プールはすでに94%まで埋まっています。
国の描く核燃料サイクルは行き詰まっているのです。

ウランを燃やすとプルトニウムが生まれます。
再処理工場は生まれたプルトニウムを取り出すところです。
そのプルトニウムを燃料にして、さらに新たなプルトニウムを生み出すという高速増殖炉が実現すれば、今後資源の心配がいらなくなる、というのが国と電力会社の描いた核燃料サイクルです。
しかし高速増殖炉は事故やトラブル続きで開発のめどはまったく立っていません。
高速増殖炉が実現できない限り核燃料サイクルは成り立たないと専門家は指摘します。


【京大原子炉実験所 助教・小出裕章さん】
「ウランという資源は石油に比べても数分の1、石炭に比べたら数十分の1しかないという誠に貧弱な資源で、未来のエネルギー源にならなかった。私は足を踏み込んでから知ったわけですけど、原子力を進めてきた人たちは初めから知っていた。サイクルの中の一部が高速増殖炉ですから、高速増殖炉がなければ核燃料サイクルという概念自体が意味がなくなる」

高速増殖炉のめども立たないのに取り出したプルトニウムは長崎型の原爆4000発分に相当します。 
プルトニウムの毒性はウランの20万倍、核兵器の材料にもなるため再処理工場はIAEA・国際原子力機関が24時間監視する厳重な警備体制が敷かれています。

【自民党・河野太郎衆院議員】
「プルトニウムがこんなにたまっているのに、再処理工場を稼働して新しいプルトニウムを取り出してどうするんだという議論があったんですが、自民党の中も有無を言わさず押し切った。あたかも建て前が通るようなことを核燃料サイクルでやってきて、だんだん化けの皮が剥がれてきている。そろそろ『王様は裸だ』っていうのを言わないといけない。『王様は裸だ』と言っても『いやいやそんなことはない、立派な服を着てます』と言う」

さらに深刻なのが核のゴミの最終処分地が決まらないことです。
再処理工場ではプルトニウムを取り出した後の廃液をガラスで固めて高レベル廃棄物として保管しています。
高レベル廃棄物は手で触れるようになるのに10万年あるいは100万年かかると言われています。
国はどこかに最終処分地を決めて地下300メートルに埋めて捨てる計画です。
深い地中は地震でも揺れが少ないうえ物質を閉じ込める性質があり、10万年以上安全に管理できるというのです。


【京大原子炉実験所 助教・小出裕章さん】
「六甲山は931メートルの高さがある。でも100万年前はあの場所は海だった。100万年の間にあんなに高い山が出来てしまう。何百メートルという地の底に埋めたつもりであっても、100万年後には山になってしまう。10万年100万年先まで保証できる科学は残念ながら人間は持ってない」



 

六ケ所村で核廃棄物を預かるのは50年以内という約束です。
最終処分地が決まらないとその約束が果たせなくなります。
ところが畜産や再処理工場の協力企業を経営する村会議員は「あわてなくてもよい」と話します。

 

【六ケ所村議員 岡山勝廣さん】
「なんで30年とか50年たって持っていくの?ずっと六ヶ所に置けばいいじゃない。村も行政も再処理の日本原燃にもみんなにとっていいわけでしょう。我々はあの工場を受けた瞬間にメリットもデメリットも一緒に受ける覚悟を決めたわけですから、心配していただかなくてもいい」



六ケ所村には再処理工場の誘致で328億円が交付されました。
原子力関連企業が立ち並び、村の景色は一変しました。
雇用が生まれ、村の基幹産業とまで言われた出稼ぎ者の数は10分の1にまで減っています。
村に高校をつくり、進学率を全国平均に押し上げるという悲願の達成も再処理工場の効果だと言います。

 

【六ケ所村・古川健治村長】
「もし原子燃料サイクル事業が立地されていなかったら六ケ所はたぶん超限界集落になっていただろう。村民の幸せと村の躍進発展のために施設を有効に生かしていきたい」



 

村に恩恵を与えてきた原子力産業。
しかしひとたび事故が起きると大きな被害を受けるのは農家です。
哘清悦(さそうせいえつ)さん
再処理工場から30キロ余りの七戸町で農業を営んでいます。
トマトの栽培が好調で、ハウスを増やしたいと思っていましたが、その考えは変わりました。


【農業・哘清悦さん】
「福島の事故を見て、もういずれ青森県から脱出することを想定しておかなきゃいけないなと。ここに置いていかなきゃいけないものはあまりふやさないこと。体と現金、預金あとは技術だけ持って逃げるつもりでいないとならない。極端な話、日本に住めなくなったら海外でもトマトをやるつもりで考えなきゃいけない」

先月、六ヶ所村周辺の農家が農協の総会に集まりました。


【農家は…】
「安全っていうのが先立ってるから。なかなかいいとか悪いとかそこまでは」
「だって再処理施設はなければならないもんだろ?ストップとかそういうのできねえ。もうやるしかない。この間のは特別。何千年に1回だから」
「農家ばっかりでなく、みんな生きていけなきゃいけないから。地震津波にも絶対耐えられるような原発が欲しい。」
なんとか原子力施設と共存する道を探ろうとする農家が多い中、哘さんは福島の現実を直視しようとしない農協の姿勢に疑問を投げかけました。



 

【農業・哘清悦さん】
「100ページ以上の総会資料に原発のげの字がどこにも出て来ない。これに書いてないと言う事は触れたくないということ。そうじゃなくて本音で議論しなきゃならない時に来てるんじゃないの。」

多くの人が地域の発展を願って協力してきた原子力政策。
安全性の問題に加え、10万年に及ぶ廃棄物の管理という重い宿題をどうするのか、国民全員に突き付けられています。



2011年7月4日放送

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