インタビュー急接近

文字サイズ変更

急接近:彬子さま 典範改正に向けた女性皇族自身の思いとは?

インタビューに答える彬子さま=大西岳彦撮影
インタビューに答える彬子さま=大西岳彦撮影

 <KEY PERSON INTERVIEW>

 女性宮家創設を視野に入れた皇室典範改正の動きが急浮上したことで、女性皇族の存在がクローズアップされてきた。どんな生活を送り、どのような活動をされているのか。寛仁親王家の長女彬子(あきこ)女王殿下(30)に聞いた。【聞き手・大久保和夫、川崎桂吾、写真・大西岳彦】

 ◇落ち着かぬ、任せるしか--寛仁親王家の長女・彬子さま(30)

 --現在、どのような生活を送られているのですか。

 ◆ 研究員として論文を書いたり、研究発表したり、ということが主な仕事です。最近は月に1、2回、講演や研究発表の機会をいただいています。

 --昨年12月には、勤務先の立命館大で「文化財の現在・過去・未来」国際シンポジウムをプロデュースされましたね。

 ◆ 前年に引き続いての開催で、漆器、竹工芸など伝統の技を継承する人にも話していただきました。文化財を残していくためには今何かしなければならないという認識は、みなさん、共通しています。しかし、異業種・異分野間で協力してこの問題に取り組もうとする動きはあまり見られません。そこで市民の方々と共に考えていくプラットホーム(基盤となる環境)のようなものを作りたいと思って、企画しました。一般の方たちから反応が返ってきたことはうれしかったですし、ありがたかったですね。

 --一方で皇室の公務があり、シンポの直前にも外交団の鴨場(かもば)接待が2回ありました。

 ◆ 鴨場接待はさまざまな国の方たちとお目にかかることができ、とても勉強になります。ただ、どうしても時間が足りなくなるので、移動する新幹線の車中で原稿などを書いています。

 --皇族女性として初めて博士号を取得されましたが、研究活動に関心を持った経緯は。

 ◆ 祖父(古代オリエント史研究で知られる三笠宮さま)の影響だと思います。幼稚園の頃から私の質問に三つくらい資料を出して、「ここにはこう書いてある。ここではこうだ。だから僕はこう思う」というふうに説明してくださいました。研究とはこのようにするものだと、子ども心に感じていたと思います。

 そして、初めての英国留学中のことですが、日本に関する質問が全部私に回ってきて、自分がいかに日本を知らないかに気付かされました。浮世絵一つとっても、外国人と日本人の視線は違います。日本美術に最初に出合った外国人たちがどう見ていたのかということが、論文のテーマにつながっていきました。

 --留学中のご様子は。

 ◆ 寮生活で食事は自炊していました。料理は論文を書いている時のよい気分転換でした。「プリンセス」としてではなく、日本から来た「アキコさん」として偏見なく付き合っていただきました。世界各国に友人ができたので、自分の狭い世界が広がったような気がいたします。

 --皇族ということを自覚されたのはいつごろでしょうか。

 ◆ 幼稚園の頃ですね。周りの子は電車で通っていましたが私は車でした。(皇宮警察の)側衛がお母さんたちに交じって迎えにきてくれて。「彬子ちゃんはお父さんがたくさんいていいね」と言われていました(笑い)。

 --「女性宮家」創設の動きはどう受け止めていますか。

 ◆ お国の決定に任せるしかないと思っています。一方で、今の議論は女性宮家を創設するかしないか(のみ)になっているような気がして、そこには違和感があると申しますか……。男系で続いている旧皇族にお戻りいただくとか、現在ある宮家をご養子として継承していただくとか、他に選択肢もあるのではないかと思います。女性宮家の議論だけが先行しているように感じられます。

 --将来は皇室を離れることを前提に生活されてきました。

 ◆ 「お前たちは結婚したら民間人だから」と、子どもの頃から父に言われてきましたが、その前提が大きく変わるかもしれないというので、私自身、落ち着かない状態です。

 ◇研究と公務、どちらも

 --現行の皇室典範のままでは皇族が極端に減るという問題についてはどうお考えですか。

 ◆ それは国民のみなさまがどのように皇室を見ておられるかということにつながってくるのではないかと思います。皇族の私がどうすべきかを申し上げるのではなく、国民のみなさまが残したいと思われるのであれば、自然と残っていくのではないでしょうか。こういった流れがあって初めて、将来を見据えた皇室典範の改正も議論されるべきだと思います。

 --立場が定まらないと、ご結婚にも踏み切れない、ということはありますでしょうか。

 ◆ 私は、結婚後も公務をすることに抵抗はありませんが、女性宮家創設はお相手の方の将来にも関わってくる問題ですので、決めるのであれば早く決めていただきたい。今は、子どもたちに日本の伝統文化に自然と親しんでもらうような寺子屋のようなことができないかと考えています。ただ、成人後に留学を5年間させていただきましたので、その分を公務でお返しできたらと思っています。研究と公務のどちらかを優先するというわけではなく、どちらも100%が目標です。

==============

 ■ことば

 ◇女性皇族

 天皇の娘と孫にあたる「内親王」は現在、皇太子家の長女愛子さま(10)、秋篠宮家の眞子さま(20)、佳子さま(17)の3人。天皇の曽孫以下の世代は「女王」で、寛仁親王家の彬子さま(30)、瑶子さま(28)、高円宮家の承子さま(25)、典子さま(23)、絢子さま(21)の5人がいる。

==============

 ■人物略歴

 ◇あきこさま

 学習院大を卒業後、英国オックスフォード大に留学。大英博物館の日本美術収集などに関する論文で博士号を取得した。09年10月から京都市の立命館大衣笠総合研究機構に勤務。

毎日新聞 2012年1月7日 東京朝刊

PR情報

スポンサーサイト検索

 

おすすめ情報

注目ブランド

特集企画

東海大学:山下副学長「柔道家として教育を語る」

学生時代の思い出から今の日本の課題まで

縦横に語ってもらった。

毎日jp共同企画