昔、つきあっていた人に会いました。

最後に会ったのは、かれこれもう６年近く前。

今は転勤で東京から離れた場所にいる彼。

こちらへ来る用事があるので
ランチでもどう？と
連絡があったのは少し前のこと。


互いに嫌いになって別れたのではなかったので
私の中で会うということはとても自然に思える。



話をしたり、ぶらぶらと歩きながら
私はこの人のことが好きだ、と思う。



少し困ったように笑う口元とか
その口元からこぼれ落ちる言葉の響きとか
しっかりとした手のかたちとか
彼の選ぶ全てのものとか




好きだった、ではなくて
やっぱり好きだ、と。

でも、好きだからといって
必ずしもずっと一緒にいられる訳ではないのが
人生だったり運命だったりするわけで。

だからこそ、いつまでも幸せでいて欲しいと、願った。




別れるとき、いつものように握手をする。

　　ありがとう。
　　またね。




別れ際の見守るようなやさしい笑顔。

不思議なことに、あぁ、この懐かしい笑顔が
一番大好きだったんだよなと過去形で
感じている自分に気付く。


恋は相手だけを見つめていればいい。
大好きなその人だけを。
二人の間に流れる楽しいことだけを。


でも、愛や結婚は全く違う、と私は思う。

二人を超えた沢山の人の過去や未来
甘い言葉よりも辛い現実や厳しい出来事に両の手を広げてゆく。
だからこそ、得られる実りはそこにしかなくて
今の私の中にはいくつもの豊かな実がなっていることも
私はちゃんと分かっているのだ。