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官邸の5日間(連載第5回)

朝日新聞朝刊に連載中の「プロメテウスの罠」の本日(2012年1月7日)掲載分を以下に引用します。
 
■官邸の5日間:5
 
まだやれますね
 
 14日午後8時9分、東電本店。記者を前に広報部部長の吉田薫(かおる)が「ご説明したい」とマイクを握った。
 
 「福島第一原発2号機なんですが、炉の中の水がほとんどなくなったような状況になっています」
 
 資料が報道陣に配布された後、午後8時40分に副社長の武藤栄(むとう・さかえ)(61)の記者会見が始まった。
 
 安全確保や放射性物質の拡散防止についての質問に、武藤は「将来についてあまり予断を持った考え方はできない」「将来のことですので」と明言を避け続けた。
 
 午後10時ごろ、官邸5階の廊下を経済産業事務次官の松永和夫が行き来していた。
 
 首相補佐官の寺田学は、経産相の海江田万里が「松永次官も東電の撤退をいいに来ているんだよ」とつぶやいたのを覚えている。
 
 午後11時ごろ、米大使のジョン・ルース(56)と官房長官の枝野幸男との電話会談があった。ルースがいった。
 
 「米国の原子力専門家を官邸に常駐させてほしい」
 
 日本の危機管理能力を米国は疑っている。国家主権に触れかねない要請だ。枝野は「なかなか難しい。検討したいが……」と丁重に断り、菅直人に報告した。
 
 2号機の危機をめぐり、官邸ではやりとりが続いていた。
 
 15日の午前0時を回ったころだった。官房長官執務室の椅子でうとうとしていた枝野を秘書官が声をかけて、起こした。
 
 「海江田大臣がお呼びです」 副長官の福山哲郎、首相補佐官の細野豪志、寺田がいた。
 
 「東電が撤退なんていってきて。とりあえず、そんなのあるかっていった」「そうだよね」
 
 枝野は「大事なことだから官房長官も直接話して下さい」といわれて細野から携帯電話を渡された。相手は福島第一原発所長の吉田昌郎だった。
 
 「大丈夫なんですね。まだやれますね」。枝野はそう尋ねた。吉田はいった。「やります。頑張ります」
 電話を切った枝野はいった。
 
 「本店の方は何を撤退だなんていってんだ。現場と意思疎通ができていないじゃないか」
 
 だが、2号機の危機は一向に好転しない。格納容器の圧力を上部から抜く弁を開けようとしたがうまくいかなかった。応接室の雰囲気は次第に重くなっていった。(木村英昭)
 


これは事実関係を述べているだけとしか言いようがないので、あまりコメントすることはありませんが、
 
>午後11時ごろ、米大使のジョン・ルース(56)と官房長官の枝野幸男との電話会談があった。ルースがいった。
 「米国の原子力専門家を官邸に常駐させてほしい」
  日本の危機管理能力を米国は疑っている。国家主権に触れかねない要請だ。枝野は「なかなか難しい。検討したいが……」と丁重に断り、菅直人に報告した。
 
このあと、米国の原子力専門家が日本政府と関わることになります。(常駐はしなかったようですが)
 
アメリカ合衆国原子力規制委員会(NRC)の委員長、グレゴリー・ヤツコ氏です。
(事故発生後、ニューヨーク・タイムズにはよく出てきたお名前です。)
 
ANNニュース 【原発】「設計や立地に間違いあった」ヤツコ氏(11/10/06)
アメリカのNRC=原子力規制委員会のヤツコ委員長が、「福島第一原発は設計や立地などに間違いがあった」と述べ、事故は起こるべくして起きたという認識を示しました。

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